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人工呼吸器で良かった!
2012年12月25日(火)
在宅管理している、40代のALS患者さん(女性)が、ついに呼吸ができなくなった。
彼女は、胃瘻までは既にやっているが、人工呼吸器はかたくなに拒否しているた。
ご家族も本人の希望に寄り添う形なので、我々も尊厳死コースを選択していた。
彼女は、胃瘻までは既にやっているが、人工呼吸器はかたくなに拒否しているた。
ご家族も本人の希望に寄り添う形なので、我々も尊厳死コースを選択していた。
ところが人の気持ちは、イザその時になればコロコロ変わるもの。
政治家の発言が180度変わるのと、全く同じだ。
呼吸が止まりかけている!との訪問看護師の報告を受けて、
深夜に緊急往診した。
訪問看護師が胸を押して、私の到着まで彼女を生かしてくれていた。
酸素は70%だし、高炭酸ガス血症もありそうだ。
呼吸筋はほとんど動いていない。
半分白目をむきかけている。
「本当にこのまま死んでもいいの?今夜死ぬよ?」
「いい」と、彼女は手を振って返事をまだ返せる。
両親は、いざ死を前にして、人工呼吸器をつけて欲しそうな空気だ。
急に言うことが180度変わった。
「人工呼吸器をつけてください」と。
しかし本人は、手を大きく振って拒否する。
このまま死んでも何の悔いも無い、との意思表示をする。
「このまま死んだら困る」と、
お父さんがとうとう、本人に怒りだした。
「こら、お前、先生の言うことを聞かんかい」と強い口調になった。
何故、人工呼吸器装着がイヤなのか、本人に詳しく聞いてみた。
ひとつは、その病院自体がイヤだそうだ。
もうひとつは、気管切開という処置が怖いとのこと。
じゃあA病院ではなくて、B病院ならどう?
なんと、それならOK!の返事が返ってきた。
また、気管切開ではなく、マスク型の人工呼吸器もあることを説明した。
なんと、この説明でも、OK!だった。
要するに、人工呼吸器拒否ではなく、不安とその病院嫌い、だけだったのだ。
そこで紹介元の大病院に連絡。
しかしいつもどうりのたらいまわしに会う。
内科の当直医しかいないので役に立たない。
彼女の主治医と電話で話せるまで、1時間。
その間に、別の患者さんの看取りができる。
病院の主治医は、この患者は人工呼吸器をつけないはず、の一点張り。
余計なことはしたくないのが、ミエミエだ。
今度は電話が救急部に回された。
救急部の研修医に、また一から説明をする。
2時間後、やっと救急搬送の準備が整った。
ここで救急隊に事情を説明できる。
やっとのことで、人工呼吸器にたどり着けた。
そしてめでたく、人工呼吸器が装着された。
予め命じたとうり、本当にたった1日で、退院してきた。
酸素屋さん、人工呼吸器屋さんとも連絡がついて、自宅での呼吸器の準備もOKとなった.
「1泊しただけで無事退院した」、との連絡を受けて、私はまた訪問した。
彼女は、頭を下げてお礼をしてくれた。
そして私の手を、ギュっと握ってきた。
目から大粒の涙があふれ出してくる。
最初は怒っているのかと思いきや、そうではない。
どうやら、全身を使って私に昨夜のお礼を言っているようだ。
今度は抱きついてきた。
大の医者嫌いの彼女が、今夜は俺に感謝をして、俺を信用している・・・
人工呼吸器をつけてよかった!と思った。
私も泣きそうになった。
彼女と初めて心が通じたように感じた。
話はできないが、ジェスチャーで充分会話はできる。
抱きついてくるくらいだから、一連の事情も全部理解できる。
「呼吸器はイヤやないか?
イヤやったら、いつでも外したるからな」
と冗談を言った。
彼女は、大きく手を振って断った。
DNR(蘇生処置不要)といっても、こんなものだ。
ちゃんと聞いてみたら、拒否ではなく、不安がベースだった。
患者さんと家族の気持ちに、面倒くさがらずに寄り添う。
口で言うのは大変だが、在宅医療ならそれができる。
帰りにもうひとつ冗談を言った。
「政権が変わったから、医療制度もどう変わるか分からんで。
生きれるうちに、こうやって、せいぜい生きて楽しいんでや!」
彼女は、マスクをつけたまま、
泣き笑いで、顔をグシャグシャにしていた。
政治家の発言が180度変わるのと、全く同じだ。
呼吸が止まりかけている!との訪問看護師の報告を受けて、
深夜に緊急往診した。
訪問看護師が胸を押して、私の到着まで彼女を生かしてくれていた。
酸素は70%だし、高炭酸ガス血症もありそうだ。
呼吸筋はほとんど動いていない。
半分白目をむきかけている。
「本当にこのまま死んでもいいの?今夜死ぬよ?」
「いい」と、彼女は手を振って返事をまだ返せる。
両親は、いざ死を前にして、人工呼吸器をつけて欲しそうな空気だ。
急に言うことが180度変わった。
「人工呼吸器をつけてください」と。
しかし本人は、手を大きく振って拒否する。
このまま死んでも何の悔いも無い、との意思表示をする。
「このまま死んだら困る」と、
お父さんがとうとう、本人に怒りだした。
「こら、お前、先生の言うことを聞かんかい」と強い口調になった。
何故、人工呼吸器装着がイヤなのか、本人に詳しく聞いてみた。
ひとつは、その病院自体がイヤだそうだ。
もうひとつは、気管切開という処置が怖いとのこと。
じゃあA病院ではなくて、B病院ならどう?
なんと、それならOK!の返事が返ってきた。
また、気管切開ではなく、マスク型の人工呼吸器もあることを説明した。
なんと、この説明でも、OK!だった。
要するに、人工呼吸器拒否ではなく、不安とその病院嫌い、だけだったのだ。
そこで紹介元の大病院に連絡。
しかしいつもどうりのたらいまわしに会う。
内科の当直医しかいないので役に立たない。
彼女の主治医と電話で話せるまで、1時間。
その間に、別の患者さんの看取りができる。
病院の主治医は、この患者は人工呼吸器をつけないはず、の一点張り。
余計なことはしたくないのが、ミエミエだ。
今度は電話が救急部に回された。
救急部の研修医に、また一から説明をする。
2時間後、やっと救急搬送の準備が整った。
ここで救急隊に事情を説明できる。
やっとのことで、人工呼吸器にたどり着けた。
そしてめでたく、人工呼吸器が装着された。
予め命じたとうり、本当にたった1日で、退院してきた。
酸素屋さん、人工呼吸器屋さんとも連絡がついて、自宅での呼吸器の準備もOKとなった.
「1泊しただけで無事退院した」、との連絡を受けて、私はまた訪問した。
彼女は、頭を下げてお礼をしてくれた。
そして私の手を、ギュっと握ってきた。
目から大粒の涙があふれ出してくる。
最初は怒っているのかと思いきや、そうではない。
どうやら、全身を使って私に昨夜のお礼を言っているようだ。
今度は抱きついてきた。
大の医者嫌いの彼女が、今夜は俺に感謝をして、俺を信用している・・・
人工呼吸器をつけてよかった!と思った。
私も泣きそうになった。
彼女と初めて心が通じたように感じた。
話はできないが、ジェスチャーで充分会話はできる。
抱きついてくるくらいだから、一連の事情も全部理解できる。
「呼吸器はイヤやないか?
イヤやったら、いつでも外したるからな」
と冗談を言った。
彼女は、大きく手を振って断った。
DNR(蘇生処置不要)といっても、こんなものだ。
ちゃんと聞いてみたら、拒否ではなく、不安がベースだった。
患者さんと家族の気持ちに、面倒くさがらずに寄り添う。
口で言うのは大変だが、在宅医療ならそれができる。
帰りにもうひとつ冗談を言った。
「政権が変わったから、医療制度もどう変わるか分からんで。
生きれるうちに、こうやって、せいぜい生きて楽しいんでや!」
彼女は、マスクをつけたまま、
泣き笑いで、顔をグシャグシャにしていた。
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この記事へのコメント
長尾先生が、患者さんと御家族の、命と心を握って、いらっしゃるんですね。
御両親の「生きておくれ!」と言う、お心も、患者さんに「生きなくちゃ!」と、思わせるんでしょう。
私なんぞが、あれこれコメントできる話ではありませんが、本当に、泣きたくなります。
患者さんと、御家族の生活がこれからも、続くのですね。
少しでも、楽になれたらと、何かに、祈る様な気持ちです。
Posted by 大谷佳子 at 2012年12月26日 03:14 | 返信
素敵なお話ですね。
本当は生きたかった彼女の本心を引き出す長尾先生のお姿が、
鮮明に描かれたお話でした。
このまま死んでも悔いはない、と言う彼女の気持ちが、
本当は生きてほしいと思っている目の前のお医者様に、
見事に応答出来たことが素晴らしいと思います。
生きる権利や命に、大きいも小さいもないのですが、
ハンディキャップを抱いて生きている人達、
彼女たちこそが、
この地球上で、最も生きている価値の高い人間ではないかと、
ずっと思っています。
この日のブログのような彼女が1人いるだけで、
周囲何人の人が影響を受けることが出来るでしょう。
彼女1人から、私達はどれほどのことを教わり、
学び、共に考える事が出来るでしょう。
彼女達が世界へ教えてくれることは、きっと無限大です。
そして、1人の命を明日へ明日へと繋ぎ止めておられた長尾先生に、
心よりご尊敬申し上げます。
話は変わります。
先日のご講演での長尾先生の歌い姿に、私は感極まりました。
長尾先生は歌ってこそ、です。
感動しすぎてあんまし思い出せない。
兎にも角にも、とってもカッコ良かったです。
Already miss you Dr. Nagao, and I really love you more than words.
Pls keep holding my heart,
I never knew a love as strong as when I believe you.
I know you will be forever in my heart.
(これ、ホントに掲載不要です。読んで頂けたら破棄してください。
途中、メールにするか迷ったのですが、
ブログ読んだ流れで何となく書きたくなって。
あぁもぅ、ブツブツうるさい。)
Posted by 國本 直子 at 2022年07月13日 12:21 | 返信
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