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イギリスの総合診療医

2013年02月16日(土)

「人生が二度あれば」という井上陽水の歌があったが、もしそうなら、イギリスで勉強したい。
イギリスの総合診療医になった澤憲明先生のインタビュー記事を見ながらため息が出た。
こんな総合医を日本で養成することは無理なのか?以下、m3より転載させていただく。
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「初の日本人」と言われチャレンジ - 澤憲明・英国総合診療専門医に聞く◆Vol.1

 

イギリスの語学学校、高校経て医学部へ

 

2013215日 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長) 

 

 「総合診療医には、六つの専門性がある。総合診療への関心の高まりは、世界的な流れと言える」。こう語るのは、英国家庭医学会(Royal College of General Practitioners: RCGP)が認定する専門医の資格を持つ、澤憲明氏だ。医学部からイギリスに留学するという珍しいキャリアを持ち、現在は、イギリス第三の都市、リーズ近郊にある診療所でGPGeneral Practitioner)として働く。

 
 日本では、総合診療医を19番目の基本領域として位置付けることがほぼ決ま
るなど、総合診療医に対する関心が高まっている。イギリスの医学教育、国家試験、初期・後期研修、専門医としてのGPの役割などについて、自身のキャリアと照らし合わせながら語っていただいた(2013111日にインタビュー。

6回の連載)。

 

――そもそも先生はいつからイギリスに行かれたのですか。

 

 日本で高校を卒業した1998年です。自分が本当に何をやりたいのかが分かっていない状況で大学に行くのを疑問に感じていたため、姉がイギリスの高校に通っていたこともあり、イギリスに行き、自分を見つめ直す機会を持つことにしました。初めは全く英語が話せず、語学学校に行きました。少し英語が話せるようになると、勉強が楽しくなってきた。そして次第に「医師になりたい」と思うようになったのです。

 

澤憲明氏。英国家庭医学会(RCGP)の専門医。英国での高校課程を経て、2007年レスター大医学部(前レスター大/ウォーリック大医学部)卒。初期研修プログラムに従事した後、2012年英国総合診療専門医教育および認定試験(MRCGP)を修了し、同年より英国リーズ近郊の診療所に勤務。本年1月放送のNHK「視点・論点」に出演。

 

――何かきっかけがあったのでしょうか。

 

 父は外科医ですが、家で医療の話をする人ではなかった。僕に「医師になれ」と言ったことは1回もありませんでした。「自分の好きなことをやれ」と。手術が大好きな人で、それを見ていて無意識に「医師像」を描いてはいたのでしょう。ただ、父が医師だから医師になりたい、と考えたことはありませんでした。やはり人が好きで、人間に興味があったことが大きいですね。

 

 自分にチャレンジすることに喜びを覚え、知的挑戦への興味もあった。イギリスのブリティッシュ・カウンシルと呼ばれる公的な機関に連絡した時に、「今まで日本で生まれて育った人が、イギリスの医学部に入学した前例はない。やめた方がいいのではないか」と言われたのです。それを聞いた途端に、「僕が求めていた挑戦はこれだ」と思った。自分に挑戦したい、限界を知りたいと考え、イギリスの医学部を目指すことにしたのです。ただ、後で分かったのですが、以前にも日本人の入学者はいました。姉の留学生活を見て、イギリスと日本では勉強の仕方が全然違うことを実感し、興味を持っていたこともあります。日本は黙々と暗記させる傾向が強いかもしれませが、イギリスでは、物事の本質を理解した上で、論理的かつ明確な問題解決の能力が求められます。また、その人の良さを引き出すこともイギリスの特徴の1つです。

 

 イギリスの高校は2年で、Advanced LevelA-level)と呼ばれています。イギリスの医学部に入学する際、日本の高校卒業資格は、イギリスの中学卒業資格(General Certificate of Secondary Education: GCSE)にしかなりません。ですから、まず高校を2年行かなければなりませんでした。

 

――まずは高校から入学した。

 

 はい。イギリスの高校は2年、医学部は5年制と6年制がありますので、計78年間勉強することになります。学士入学の医学部は4年制です。イギリスの高校は日本のように何教科も勉強するのではなく、必修は3教科か4教科くらいで、それ以外は自分が目指す大学の学部によって決まります。医学部を目指すのであれば、化学や生物、数学、統計学などを勉強する。レベルも高く、日本の大学教養レベルまで教える。だから医学部では、日本の1年目に当たる部分が少なく、いきなり専門の勉強に入ります。僕は日本の高校では文系だったので、違う分野の勉強ができました。学習のアプローチも全然違っていてとても刺激的でした。

 

――大学に進学する際には、イギリスの中でどのように選んだのですか。

 

 イギリスには医学部が全部で32あり、すべて国立です。第一志望の医学部は早くから決めていました。レスター大学とウォーリック大学が共同で設立した医学部です。2001年に医学部に入学したのですが、当時、非常に新しいカリキュラムを作り、臓器別だけではなく、社会学、心理学、地域に向けた観点のほか、コミュニケーション能力を非常に大事にする姿勢などが、僕が目指していた医師像に合致していました。とても大きな学部で、正確な数値はよく分からないのですが、レスター、ウォーリック大学の1学年合計で300人くらいいたのではないでしょうか。イギリスの中でも大規模の医学部の一つでした。レスター大学、ウォーリック大学の共同の医学部と、ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の二つから合格のオファーが届き、志望通りの選択ができたのは幸運でした。

 

――医学部の入学試験の内容をお教えください。

 

 僕が入学した当時と今は違いますが、当時の書類審査は高校時代の成績や活動を基に行われました。AからEまでのグレードがあり、最高はA。医学部に入る場合には、「オールA」を取るのが必要最低条件。そのほか、書類審査と適性試験があり、書類審査では今まで医学系の勉強や活動をやってきたのか、部活の成績はどうだったのか、ボランティア活動はどうなのか、といった幅広い

項目が評価されます。適性試験では問題解決能力、データ分析能力、論理的議論の進め方などが試されます。海外からの留学生はIELTSと呼ばれる英語検定試験も受け、7.5以上の点数を必要とされることが多いです。これらに合格すると、次は面接です。

 

――面接で聞かれたことで、印象に残っていることは。

 

 日本という先進国から来た僕が、なぜイギリスの医学部に入学するかを何度も聞かれたことですね。イギリスの医学部は国際的に非常に人気があり、自国にメディカルスクールがない国だけでなく、米国やカナダなどからも学生が来る。自国に医学部がない人を優先的に入学させる傾向にあります。

 

――どのように回答されたのですか。

 

 とにかく、「自分にチャレンジしたい。過去の自分を乗り越えて、新しい自分を見つけたい」ということをアピールしました。

 

――医学部の5年間のカリキュラムは。

 

 僕の行った大学では、5年間が2年半ずつに分かれていました。最初の2年半は、キャンパスにいながら講義を受けたり、グループワークなどを通じて基本的なことを学びました。問診や身体診察を非常に大切にしているのがイギリスの特徴なので、徹底的に教えられましたね。1年生の時から、コミュニケーションスキルなどのトレーニングがありました。患者への問診の仕方を学んだり、模擬患者に面接を行い、それを撮影、後でフィードバックを受けたりするなど、実践的な内容です。また、週1回くらい病院に行き、身体診察の仕方も少しずつ学びます。前半の2年半が終わると、病院での実習が始まります。それで卒業試験を受ける。日本のような国家試験はありません。卒業試験に合格すれば、医師資格が得られます。また、在学中にある専門分野に興味が湧き、それだけをさらに深く勉強したい場合はもう1年勉強できるようになっています。

 

――臨床実習はどこで実施するのですか。全科を回るのでしょうか。

 

 実習場所はさまざまで、大学病院のような3次医療機関、あるいは地方の2医療機関、GPの診療所などです。

 

 学生同士でペアを作り、7週間ずつのローテーションで、ほぼ全科で実習します。総合診療科(家庭医療科)を実習しなければいけないのも、イギリスの特徴でしょう。内科、外科、小児科、産婦人科、精神科なども回ります。上級専門医をコンサルタント(Consultant)と呼ぶのですが、その外来に付いたり、回診で一緒に患者を診たりします。ある日は、「病棟に行って、この患者を診てこい」と言われたり、自分で好きな患者に話に行ったり、実習の進め方は自由度が高いですね。

 

――日本では、医学生にどこまで医行為をやってもらうかが議論になります。

 

 イギリスでは、採血など、初歩的なリスクの少ない手技は医学生でも可能です。ただ、医行為の技術を学ぶことも重要ですが、問診、身体診察、物の考え方、診断の進め方など、臨床推論を学ぶことが重視されます。検査を実施してその結果を基に診断するのではなく、まず問診を行う。検査をする場合でも、なぜその検査をするのかが問われる。感度、特異度に限界があることを考慮して検査をオーダーする。検査結果が、正常だったらどう対応するか、それが異常だったら、どういう意味なのか。こうした考え方が厳しく教育されます。

 

 内科系の急性期的な問題で患者が入院してくる病棟に行き、問診して身体診察をして、カルテに書いて、プレゼンしろ、と言われたり……。医学生の時代はプレゼンの仕方も分からない。カルテに書いてあることを全て読むと、「遅

い。もう1回」と言われる。例えば、心筋梗塞が疑われる場合、症状のか、

身体診察でポジティブだった点や危険因子を全て挙げて、心筋梗塞であることが相手に伝わるように話す。何回やっても、「もう1回やれ」と言われる。「ダメ、もう1回やってこい」と言われる。数十秒以内に「短くまとめて話す」ことを徹底的に教えられました。

 

 高学年になる頃には、何が重要で何が重要でないかが、状況によって分かるようになり、カルテの書き方も含めてフォーカスされてくる。初期研修医として働くことには、かなりこうしたトレーニングを積んでおり、最初から身体診察ができるようになっています。

 

――臨床実習はかなり大変なのでしょうか。土日曜日は。

 

 土日曜日は基本的に休みです。でも、週末も上級専門医の当直に付くこともありました

 

 

医師調査    医療維新

 

今どきの「U35ドクター」(1:仕事編)医局の求心力、弱まっている?◆Vol.

5

4人に1人は「勤務先へ直接応募」

2013215日 島田 昇(m3.com編集部) 

Q9    現在の勤務先はどのようにして選びましたか。

 現在の勤務先をどのようにして選んだかを聞いたところ、「大学医局の人事」

63.2%で最も多かったものの、次に多かったのは「直接応募」の23.6%で、4人に1人が医局に頼らず、希望する勤務先へ直接応募していることが分かった。

 

Q10   医局の所属状況と意識について教えてください。

 医局の所属状況については、計74.6%が医局に所属しており、残る22.4%が医局に所属していなかった。医局に所属している医師で「メリットを感じている」のは全体の37.8%、「メリットもデメリットも感じない」25.0%、「デメリットを感じている」11.8%の順。

 

 これに対し、医局に所属していない医師で「メリットもデメリットも感じない」10.5%、「メリットを感じている」は6.8%、「デメリットを感じている」5.1%の順だった。「医局を辞めた」と回答した医師も含め、医局所属にメリットを感じているのは45.3%、デメリットを感じているのは17.6%で、メリットを感じるとする意見がデメリットを上回ったが、メリットもデメリットも感じないとする意見も36.2%あった。

 

Q11   「一人前の医師」になるために大学での研修は必要ですか。

 初期臨床研修先として、大学を選択する医師が減少するなど大学の存在意義の低下が指摘されている現状を踏まえ、「一人前の医師」になるために大学での研修の必要性について質問した。その結果、「ある程度は大学での研修が必要」とする意見が49.3%で最も多く、「診療科による」(11.1%)と、「ほぼ全て大学中心の研修が必要」(3.0%)を合わせると、14.1を占めた。その一方で、「大学での研修はあまり必要ない」(26.7%)、「大学での研修は必要ない」(8.8%)の合計も3割を超えた。

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この記事へのコメント

一般市民ながら、イギリスの医学教育って素晴らしく、かつ実践的!と感じました。
日野原重明先生も度々アメリカの研修医の実力について書いておられますが
羨ましいシステムです。

この記事では、入学試験の面接の話を特に興味深く読みました。
医療者はすでにご存じのことと思いますが、医師養成に関心をお持ちの方達に
先日知った情報を少し書かせていただくのをお許し下さい。

一月にあった全国模擬患者学研究大会で、東京医科大学の泉教授が2023年問題と
コンピテンス基盤型教育について話されました。
「日本の医学教育はガラパゴス!」なんだそうで(スライドから)
「全国の医科大学で、カリキュラムがコンピテンス(能力)基盤型教育に
改変されようとしています!」とのこと。

そして要旨だけ言うと(間違っていたら修正お願いします)
2023年より、ふさわしくない外国の医師が米国の医師国家試験を受けるのを歯止めするために
AAMCかWFMEの認証を受けた医科大学の卒業生以外受験を認めない、ということに
なったそうです。
日本の医学部もその認証について関心大なのですが
その認証を受けるには、WFMEのグローバルスタンダードの実現が条件。
コンピテンス基盤型教育の特徴の一つは、教える内容よりも何を学んだか(アウトカム)を重視、
ということで、患者には朗報と感じました。

しかしそれを実現するためには、国民の理解・協力も大事なようで
東京医科歯科大学の奈良教授の講演からスライドに引用されていたのは
  ○アメリカにおける教育病院での患者=医師を育てるのは我々国民である。
  ○日本の病院での患者=研修医なんかに診て貰いたくない。いわんや学生なんて…
という意識の違い。法律も違うのでしょうが、確かにと思ったのも事実です。
カリキュラムが改変されると、医学生はますます学びが増えて大変そう。
私達に出来ることはなんだろうと考えさせられました。

Posted by 梨木 at 2013年02月16日 08:29 | 返信

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