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末期がん患者さんとのお花見

2013年03月19日(火)

産経新聞に連載している抗がん剤シリーズもいよいよ大詰めだ。
毎年やっている末期がん患者さんとのお花見大会について書いた。
3月9日の産経新聞より転載させていただく。
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産経新聞抗がん剤シリーズ第15回    止めどきを知る

                    末期がん患者さんとのお花見

 

毎年、クリニックの近くで末期がん患者さんを運んでお花見をしています。夏に抗がん剤を中止したAさん(58歳、男性)が年末まで生きている確率は5%くらいかな、と思っていました。しかし、年末の忘年会では一緒に酒を飲むことができました。その時点では、桜の花見などは、確率0%だと思っていました。「いくらなんでも無理やろなあ」と思いながらお花見のチラシをAさんの部屋の壁に貼っておきました。果たして、花見の日までAさんは生きていました。クリニック主催のお花見に、Aさんは歩いて参加されました。私の下手な歌のあとに、Aさんはなんとギター演奏を始めました。両肺に大量の胸水が貯まっていることを誰も知りませんし、気がつきません。「元気で呑気なオッサンがおるなー」という顔でながめています。しかし演奏後のAさんは、汗びっしょりになり、「もう、これでこの世に思い残すことはないわ!」と呟かれました。


 Aさんの親友のBさん(61歳、女性)も同じ、末期の肺がんでした。私は、偶然、両者の主治医でした。それにしても親友同士が同じ臓器の末期がんになるのは珍しい。当初は、BさんがAさんのお見舞いに来ていました。しかし年が明けてからは、形勢が逆転しました。Bさんの方ががんの進行が早く、寝たきり状態になりました。昨年は見舞われていた人が、年が明けたら逆に見舞っていた。そしてあっという間に、Bさんはご自宅で旅立たれました。そしてAさんはBさんの葬儀に参列しました。2週間後には偲ぶ会がありAさんに誘われて私も出席し、また一緒にお酒を飲みました。「あいつ、追い抜いていきよった・・・」とAさん。「みんないつか逝くから同じだよ」と私は心の中で呟きました。


 そうこうしている間に、桜も散り、GWになりました。さすがに、Aさんは自宅から出ることが無くなり、本格的な在宅医療となりました。しかしお喋りのほうは相変わらず元気でした。私たちが訪問すると、いつも笑い声が絶えません。絶対に無理だと思っていた、GWも無事通過しました。その頃から背中の痛みが強くなり麻薬を増量。しかし衰弱は進む一方で、本当の終末期になっていきました。そんな中、Aさんは59歳の誕生日を迎えました。子供さんや訪問看護師や友人たちと誕生パーテイをしました。やはりとても嬉しそう。その頃から子供さんたちは、順番に泊まり込みはじめました。特に私が指示したわけではありません。子供達から見ても終末期だと判断したからでしょう。皆で
ケーキを囲んで、歌を歌いました。


 結局、その2週間後、Aさんも静かに旅立たれました。Aさんは抗がん剤治療を止めてからも8ケ月間仕事を続け完璧な終活をしました。私たちと忘年会、お花見、お誕生日会まで楽しみました。親友の葬儀や偲ぶ会にも一緒に参加。予想より、半年以上は長生きされました。あの時、ちょうどいいタイミングで抗がん剤を止めたからでしょう。もしあの時、止めていなければ、もっと早かっただろと私は想像します。抗がん剤の止めどきを、身をもって教えてくれました。末期がんと共存しながらでも働けること、そして「人生とは楽しむことである」ことを。あれから、もうすぐ3年。また花見の季節が巡って来ます。

 

キーワード 末期がん

がんが全身のあちこちに転移して、かつ増殖・進行している状態。一般的には、もはや有効な治療法は無い。末期がん患者さんの余命は様々で、がんができる臓器によってかなり異なる。

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この記事へのコメント

最近になって日本の癌学界でも癌組織体の根源細胞である癌の幹細胞の存在が注目され始めました。癌の幹細胞に関する研究が進展すれば、将来の癌治療に重大な転機を齎すものと期待されます。小生は1992年以来、癌の幹細胞に対処する治療概念、すなわち、今までにない全く新しい治療概念を記載した論文17篇を国際的な医学雑誌に発表しています、それらの論文資料にご関心のある方には、個人的に無料で郵送致しますので郵送できる宛先をお知らせ下さい。
猶、”がん幹細胞”や”平田病院 平田陽三”の項目でGoogle検索やYahoo検索をしてみて下さい、参考になると思います。

Posted by 平田陽三 平田病院 at 2013年03月19日 10:20 | 返信

ガンになっても楽しめる時間があることを、多くの人に知ってほしいと私も思うようになりました。

私たちの場合は、父の治療について、休眠治療+放射線治療で、今まで普通の生活をさせてもらってきましたが、そろそろ時が近づいてきたと感じています。

時が来ることは理解していましたし、それまでの時間を猛毒の副作用に苦しむことなく、穏やかにこれたことに感謝しています。
平穏死についても、先生の本をゆっくりと読んで、自分自身の考えも持つことができつつあります。もちろん、その場になると、どうなるのかはわかりませんが。

先日、循環器でかかっている内科クリニックの先生に在宅をお願いしました。 OKをもらったのですが、放射線の副作用で肺が真っ白になったレントゲンを見て、真っ青になり、「大病院を紹介します!」と。

思わず、椅子から落ちそうになりました。
今まで話しをして理解してくれていたと思ったのですが、「緩和ケアはしたことがない」「クリニックでは電話がつながる時間が限られているから」などなどの言い訳をたくさん並べてくださいました。

怖くなったのでしょう。

先生のように、末期な様態であっても人間として扱ってくれる医師が、もっと増えてくれるといいなと思います。

Posted by よしみ at 2013年03月21日 01:17 | 返信

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