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良し悪しではなく、止めどき
2013年03月19日(火)
良し悪しではなく、止めどきを自己決定してほしいという願いを込めて。
3月16日の産経新聞兵庫版から転載させていただく。
産経新聞抗がん剤シリーズ第16話(最終回)治療継続か生活優先か
良し悪しではなく、「止めどき」
ステージⅣの膵臓がんと診断されたBさん(54歳、女性)は、抗がん剤の相談で来院。専門病院で手術不能と判断されました。点滴の抗がん剤とTS-1という飲み薬の治療が開始され、腫瘍マーカーの値は半分まで低下。しかしその半年後には食欲低下と、体重減少(7kg減)へ。「このまま抗がん剤を続けるべきか?でも、もう疲れたわ」とのこと。私は「休むという選択肢もあるのでは?」と提案。Bさんはその言葉に反応し、抗がん剤治療をピッタっと中止。「止める!と決めたら、気が楽になり元気が出ました」と笑顔です。同時に長年勤務していた商社も、スパッと退職。その1ケ月後、こう言われました。「先生、私、これから沖縄に移住するの」。「ええ?沖縄?」。Bさんは、実は子供なしのバツイチ。仕事一筋に生きてこられました。沖縄は、再婚していない元・夫が暮らす街。余命が長くないと悟ったBさんは元・夫に相談。彼は「俺がお前の死に水を取ってやる」と言ってくれたそうです。抗がん剤を止めて沖縄で暮らすBさんから時々メールが届きます。2匹の犬とゆっくりした時間が流れる沖縄では、背部痛みもかなり和らいでいるようです。地元の病院で緩和医療を受けながら、のんびり暮らしておられます。
Cさん(28歳、女性)は胃の痛みで当院を受診。スキルス胃がんでもはや手術不能でした。入院と外来で3月間、抗がん剤治療でがんと闘ってきました。しかし、体重は減るばかり。在宅での栄養剤の点滴と緩和医療を依頼されました。Cさんもバツイチですが、5歳になる男の子がいます。病院に抗がん剤を打ちに行く間は子供と遊べないのが悩み。子供を実家の両親に預けての治療継続。しかしある日、Cさんは飲み薬の抗がん剤を含めて治療を全部中止。副作用が相当辛かったようです。中止後は実家で両親の援助も受けながらの生活へ。「子供と遊んでいる時間が一番楽しいの」と子供との時間を優先されました。抗がん剤が効かなかったことも中止の決断を早めました。結局、抗がん剤を止めてから2ケ月後に、ご実家で両親に見守られる中、旅立たれました。もし子供がいなければもう少し長く抗がん剤をしていたかもしれません。
Dさん(83歳、男性)は、肺がんで抗がん剤治療を3ケ月間続けてきました。しかし衰弱が著しく、当院に在宅医療を依頼されました。自宅で栄養剤の点滴をしながら、息子さんが病院に抗がん剤を打ちに連れていく日が2ケ月間続きました。抗がん剤を打った日は、かなり衰弱されます。強い背部痛に、麻薬を使おうとしました。その説明の中で「緩和医療」という言葉を使ったら激怒されました。息子さんは「緩和医療」=もうお手上げ、と誤解されていたのです。「先生はもう諦めているみたいやけど、俺は絶対、諦めへんからな!」これが息子さんの口癖でした。結局、息子さんはぐったりしたお父さんを車に乗せて、亡くなる前日まで外来抗がん剤治療に通われました。
以上、抗がん剤治療は止めどきが一番難しいと思います。始めるのは簡単ですが、引き際は実に難しい。主治医とよく相談のうえ、できれば自己決定して下さい。抗がん剤は、良悪しではなく、「止めどき」なのです。(シリーズ終わり)
キーワード 緩和医医療
肉体的、精神的な痛みを薬物や非薬物治療で和らげる医療。がんと診断された時から、緩和医療が始まる。また最近は、がんに限らず全ての病気に適応される概念とされている。
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