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イギリス式でいいじゃないかな

2013年03月25日(月)

TPP⇒混合診療解禁⇒皆保険制度破綻が、視野に入ってきた現在、
何かと批判が多かった、イギリスのGP制度も皆保険であるなら悪くない気がしてきた。
以下、m3から転載させていただく。
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皆保険制度維持のためなら、イギリス式でもいいじゃないか。
そう思えるようになってきた。

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10人中9人はGPで対応可能- 澤憲明・英国総合診療専門医に聞く◆Vol.4

 

問診・基本診察、NICEが“武器”

 

201337日 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長) 

 

――今、所属している診療所の概要をお教えください。

 

 僕は今、リーズ近郊にある人口約3万人の小さな街の診療所で、診療しています。街には他にも診療所がいくつかありますが、僕の勤務している診療所では、僕を含め、5人のGPで、8500人くらいの住民を担当しています。チーム医療が発達しているので、診療所にはGPだけでなく、ナース、准看護師、助産師、PT、事務などがいます。訪問看護師、カウンセラー、ソーシャルワーカーといったスタッフは診療所外にいますが、容易にコミュニケーションが取れます。

 

澤憲明氏が勤務する診療所付近の風景。診療所は複数のGPで行うグループ診療を提供しており、チームケアが発達しているため、他にも多くのスタッフがいると言う。

 

 僕の外来は患者1人当たり10分間の診療を午前中に16人、昼休みにペーパー

ワーク、3人ぐらいの訪問診療をし、午後も同じ外来をやります。定期的に、他のGPやスタッフとのミーティングも空いた時間に行います。外来は予約制で、予約枠は急性枠と慢性枠に分かれています。急性枠は当日の朝に予約することが可能で、慢性枠では高血圧などの慢性疾患の患者を中心に診ています。そのほか、オンコール(日直)の日が1週間に1回あります。オンコールの医師は、他のGPの急性枠で当日の予約が取れなかった患者にまずは電話相談を提供し、必要に応じて、外来、訪問診療のどれかで対応します。週日以外は、土曜の午前中にも外来を提供しています。

 

 週休は2日程度で、ほぼいつも約4人のGPがいる体制です。チームケアが進んでおり、ナースが“ミニドクター的”な役割を果たし、基本的な外傷ケア、予防接種などのほか、風邪などの急性疾患、喘息や高血圧などの慢性疾患、比較的簡単なリピート処方せんの管理なども担当しています。GPはより高い専門性を必要とする疾患に集中できますので、このようなナースの存在は欠かせません。

 

――GPが診る疾患は。

 

 幅が広いですね。子どもから高齢者まで全て見ているので、赤ちゃんが高熱で駆け込んでくる母親もいます。若い人が「ニキビが気になる」と言ってきたり、不正出血の女性も診ます。高齢者では骨関節炎が多い。また、僕がいる街は、昔、炭鉱で働いていた男性が多いので、肺の疾患も多い。夏にはうつ病の患者さんはほとんど来ないのですが、イギリスの冬は寒く、午後3時半頃には暗くなるためか、うつ病が増える。

 

 在宅では、2次、3次医療のスペシャリストと常に連絡を取りながら、癌の患者さんなども診ています。チームケアで取り組んでいるので、緩和ケア専門の訪問看護師がフロントラインに立って、頻繁に訪問しています。何かあれば連絡が来る体制で、終末期ケアにおけるGPの役割は重要です。

 

 患者さんの10人のうち9人は、GPで対応可能です。2次、3次医療レベルが必要になり、病院に送るのは1人程度。例えば、赤ちゃんが吐き、ミルクも何も飲んでくれず、ひどい脱水になっている時などです。

 

――診療所で点滴はできるのでしょうか。

 

 どんなに工夫しても経口摂取が無理で、医学的に点滴を必要とする患者さんは、1次医療では少ない。脱水症状の程度がひどく、今すぐ点滴しなければいけない状態は、2次医療レベルなので、2次医療の人的、物的資源が揃っている施設に速やかに送ります。専門的なアプローチをしてもらった方が質の担保もできます。

 

――他には、どんな疾患の患者さんを病院に紹介しているのでしょうか。

 

 「急性期の疾患」と「慢性的な疾患」に分かれるのですが、例えば急性の胸痛の患者さんで、重大な疾患が疑われる場合は「緊急入院」として直ちに病院に送る。慢性的な疾患、例えば高血圧で長年治療していたが、最近、薬を使っても下がらない。そのような時は「ルーチン」として専門外来に紹介します。病院で見てもらうまでの時間は、症状の程度によって変わります。高齢で、数カ月下痢で、血も出て、体重も落ちている。GPとしては癌を見逃してはならない。こういった時は12週間以内に専門外来で診てもらえます。

 

――イギリスの医療には、専門医に診てもらうのに時間がかかるイメージがありますが、医学的に見て、「これだけ待たせるのは問題ではないか」と思うような状態ではない。

 

 はい。待機時間が、入院の場合は1998年には平均約15週でしたが、ブレア政権の改革によりここ数年は4週間近くまで減少しています。GPが病院の専門外来に紹介する際も、最近では平均2週間近くまで短縮しました。ただし、先ほども言いましたが、医学的にすぐ診てもらう必要がある患者さんは、その日のうちに診てもらえます。一方、慢性的な疾患、例えば、関節痛があり、人工関節に置換する手術のための入院を待っている場合は、自ずと優先順位が下がります。リソースが制限される中で、より効率性を高めてくために、健康問題の種類や重大さによって、トリアージが働くシステムです。

 

――診療所にはどんな医療機器があるのでしょうか。日本のようにCTなどの検査がすぐにできるわけではない。この辺りのジレンマなどはありますか。

 

 それはないです。診療所には、基本的なものは全部そろっています。血液検査、尿検査、血圧、心電図のほか、最近ではエコーもやります。X線は近くの病院で撮影します。最近は、当日に撮影してもらうことも可能です。

 

 臨床推論の力を身に付けていれば、診療所にある機器だけでほとんど診断できます。やはり重要なのは、鑑別診断を支える臨床医としての頭脳や問診、身体診察で、その感度と特異度は検査を超えます。

 

 例えば、頭痛を訴える患者さんでも、CTはほとんど必要がない。CTを撮影したところで、重大な疾患が見つかる可能性は極めて低い。一方で、もし重大な疾患であったとしても、それが見つかる可能性も高くはない。「正常」で帰ってきて、「あ、正常だ、心配しなくていい」というわけではなく、「異常」な可能性もある。医学的に重要でないものが見つかる偽陽性の可能性の方がずっと高い。それが原因でさらなる検査をやる必要が出てくるかもしれない。医療化の負のスパイラルが始まる。また、CTによる被爆のほか、コストやより重篤な問題を抱え、同じようにCTを必要としている他の患者さんへの影響など、患者個人とシステム全体の両方を多面的に考慮しなければいけない。

 

 硬直的なシステムではなく、患者さんの支援者として常にサポートする。医療のパートナーとして不確実性に一緒に耐え、医学的に必要な時に速やかに介入する。これがイギリス流のやり方ですので、フラストレーションはありません。OECDヘルスデータの統計によると、日本は人口100万人当たり97台のCT保有しており、オランダの10台、OECD平均の22台と比べて圧倒的に多いですが、プライマリ・ケアの領域で高度な検査を必要とするニーズは実際そこまで多くはないのです。

 

 エビデンスが構築されているのも大きい。NICE National Institute for Clinical Excellence;国立医療技術評価機構)のガイドラインがあり、さまざまな疾患の世界中のエビデンスがまとめられています。

 

――NICEのガイドラインは、日常的に参照されているのでしょうか。

 

 はい。イギリスではGPの守備範囲のバラツキをできるだけ抑えるために、症状あるいは疾患ごとにガイドラインで決まっています。例えば、「50歳以上の年齢で医学的に説明できない顕微鏡的血尿がある場合は、癌の疑いありとして泌尿器科に任せる」とされていたり、「生後3カ月以内の赤ちゃんで38度以上の熱がある場合や、生後3カ月から6カ月以内の赤ちゃんで39度以上の熱がある場合は小児科医に送る」などの「レッド・フラッグ」がしっかりと決まっています。「ここまでは対応するが、ここからは任せる」と役割分担することが質の担保であり、僕らとしても安心して診療できます。

 

――ガイドラインに該当するか否かを判断するのは、GPです。

 

 その通りです。ガイドラインなので、法律ではない。患者さんがやってほしいこと、あるいは医師自身が考えていることを柔軟に正当化するのがGPの役割。その際に、ガイドをしてくれるアイテムがあるのはいいと思っています。

 

――日本では、ガイドラインというと、違反した場合に訴訟に発展することもあります。 

 それは同じです。ガイドラインで「実施すべき」と記載されているのに、実施しなかった場合には訴訟になり得ます。最近はイギリスでも訴訟が多くなっています。「ガイドラインに従えば、あの時に紹介すべきだったのに紹介しなかった」とか。こうしたところは厳しく見られ、プレッシャーも大きいのは事実ですが、なぜガイドラインに沿わなかったのかを、カルテ上で明確に説明できれば問題ありません。

 

――イギリスの医療で制度的に変えるべきとお考えの点はありますか。

 

 医師不足はあると思います。医学部の定員は、ブレア政権が誕生した1997は約3700人でしたが、最近では7100人と約2倍に増やしています。人口1000たりの医師数は、2000 年頃は2.0人で以前は日本並みに少なかったのですが、2009年は2.7人。ただ、それでもOECD平均の3.1人よりも少ない。オランダはモデルースの一つで2.9人ながらも、医師不足の中でも対応できている。やはりプライマリ・ケアが発達している国は医師不足でも対応できいる印象です。

 

――昔は遅くまで診療していたのが、「午後5時に帰る」ようになると、絶対的に医師が必要になる。

 

 だんだん忙しくなっているというか、仕事の密度は上がっています。昔は長い時間をかけて仕事をしていた。しかし、今はより短い時間で前と同じ量の仕事が求められる。効率性を改善させていく必要がある。仕事が始まって終わるまで、“駆けっぱなし”と言えるでしょう。ただ、その分、休み時間は取れるので、医師はフレッシュな状態で診療に当たれます。これは、患者さんにとってもいいことです。徹夜で働いて、ろくな睡眠も取れず、フラフラの状態で外来をやるような状況ではないです。

 

――先生ご自身は朝、何時頃クリニックに行くのでしょうか。

 

 朝は8時半から始まるので、それに間に合うように行きます。昼休みに書類書きや往診をやり、夕方の診察は午後5時半くらい、だいたい時間通りに終わります。午後6時半くらいまで診療所で、eポートフォリオを使いながら振り返りや勉強をして、帰宅します。QOLはいいと思います。

 

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この記事へのコメント

GP制度調べてみました。
イギリスの医療はまずプライマリーヘルスケアのGeneral Practitioner(GP)と呼ばれる家庭医により築かれています。地域のGPに登録し、まず病気になったらGPに相談する、というのが普通です。GPは個人の開業医というのではなく、公立病院下に登録されてGPのもとには地域看護婦(日本の保健婦のような)、地域助Y婦、ヘルスビジター、各種セラピストやサポート職が付随しており、GPの指示や病院から退院して地域で医療が必要な人を対象に連携した医療をおこなっています。NHSのホームページ内には、居住している場所の郵便番号を入れると、自分の家の近くのGPのリストが検索できるようになっています。

素晴らしい!と思います。
合理的で繊細。
尚且つ気軽に受診することで高度医療迄が確保され、患者にとって安心極まりない制度だと思います。
でも日本のように医師に驕りがなく、患者本位の心があって初めて成り立つものだと思いますが・・。
医師を育む医大の教育制度に、心ある医師を育む育成制度を作ってほしいと思います。

Posted by 桜 at 2013年03月25日 07:02 | 返信

「(医師の)QOLはいいと思います」と言う最後の一言にしびれました。
もちろん精神的にも誇りと達成感が感じられるということでしょう。
羨ましいですね。
臨床推論と鑑別診断の実力あれば、検査以前にかなりわかる・・・とは
101歳日野原Dr.の持論で、朝日のコラムにも書かれていましたね。

良き医師が育っていく、ほんとに初期の小さなお手伝いですが
医学生のための医療面接SPボランティア、
頑張ってできるだけ参加していこうと改めて思いました。

Posted by 梨木 at 2013年03月25日 07:33 | 返信

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