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パソコンは見るが、患者は診ない

2013年03月27日(水)

ある入院患者さんのご家族に依頼されて、久々に「病(やまい)の院=病院」を訪れた。
詰所の横に座りこんで、その患者さんは叫んでいた。
「早く私をここから出せ! 君たちは狂っている!」と。 たしかに、当たっているのだが。
 

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その患者さんは、病院での延命処置を拒否している。
しかし無理やりされたので、抗議活動をしていたのだ。

3日前から、ハンガーストライキに入ったのか、
全く食べていないので、奥さんが見るに見かねて私を呼んだのだ。

目を吊り上げて叫んでいたその患者さんは、私を見つけるなり、
少し笑顔を見せたのでホッとした。

個室に戻り、その患者さんの話を伺った。

・承諾なしに手術をされたこと
・承諾なしに延命措置をされていること
・病院の飯がまずいこと
・退院させてくれないこと、などを切々と訴えた。

さらに、文句は、続く。

・患者の話を聞いた医師や看護師は一人もいない
・耳が遠いので、耳元で話した医療者は皆無だと
・立ったままで遠くから上から目線で話す医師ばかり
・その内容が、全く分からない、と・・・

その患者さんは、家族に入院させられたことも恨んでいる。

「その時、タクシーを呼んでくれていたら平穏死できたのに、
 救急車を呼ばれたから、こうして生き延びてしまった・・」と
泣いて訴えている。

そう、90歳代なのだ。

「やまいの院」という場自体が、その高齢者にスピリチュアルペインを
与えていると気がつく職員は、何千何百人の人間がいても、皆無だろう。

人生の大先輩が、スピリチュアルペインを訴えているのに
それに耳を傾けるスタッフはゼロ。

すぐ横の看護師詰所には、10人位の若い看護師と3人の若い医師がいるが、
全員が、パソコンに向かって、熱心に「作業」に没頭している。

よく、診察室で「パソコンばかり見て、患者の顔を見ない医者」と言われるが、
入院病棟では、「詰所のパソコンばかり見て、ベッドサイドに行かない医療者」となる。

老人の魂の叫びにも、私の訪問にも、全く反応せず、
ただひたすら、全員が画面と格闘している、午後1時半の医療者たちよ。

気が付いて欲しいな。

異様なのは、職員だけではない。

廊下やエレベーターですれ違う患者はみな、ピコピコのアラーム音が鳴る
点滴袋や機械をぶら下げている。

みんな虚ろな目をしている。
やせ衰えて、余命いくばくもない。
私には、死刑囚に見える。

誰のための病院なのか?
誰のための医療なのか?

病院の時代の改革は、難作業だろう。
しかし誰かがいい出さなきゃ、動かない。

その意思を強くさせてくれるのは、
皮肉にも「ピコピコナース」たちだ。

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※本ブログは転載・引用を固くお断りいたします。

この記事へのコメント

先日、大学付属病院に検査のため、約12日入院しておりましたが、
ご指摘通り詰所では大勢の看護師と医師が画面と格闘。
ワゴンにノートPCと薬剤、検温その他のお測定器を積んで
ベッドからベッドへと移動。その間も画面と睨めっこでした。
会社でも殆どの社員が画面に向かっています。
お客様を周り、ご要望やクレームを聞いてまわる営業マンも
同じ状態に陥ってます。
マイクロソフトのビルゲイツが仕掛けた作戦にすっかり、はまっています。

Posted by 匿名 at 2013年03月27日 12:55 | 返信

不謹慎とは思いつつ「ピコピコナース」に、つい笑い出してしまいました。

老親が生活している特養で、延命治療を希望するか否か、施設での看取りを希望するか入院を希望するか、などの調査がようやく始まりました。私宅は、しびれを切らしてすでに、一連の延命作業拒否、身体に穴を開ける外科処置拒否等、文書で提出しましたが、理事長は受理してくれても新任の施設長はどう受け取っているのか、まだまだ予断を許さない状況です。
特に、「緊急の場合にご家族にすぐに連絡がつかなかった場合、医師の指示により救急搬送する場合もありえることをご了承ください」という文面にひっかかっています。救急搬送してほしくなければ、家族はいつ電話が鳴っても常にすぐに電話に出なければならない、ということになります。風呂で髪を洗っていれば携帯の呼び出しが聞こえない場合もあるし試験等受験中は携帯の電源が切れていることをチェックされます。私には代わりをする兄弟も親戚もいません。あと5年も、もしかしたら10年も、いつもいつも親を気にしながら生活しなければならない。
延命拒否の文面を差し出していても、本人が急変したその時その場で、もう一度家族に再確認できなければ救急搬送するつもりみたいです。証拠となる署名捺印入りの文書をとっておきながら、一体何を恐れているのか理解に苦しみます。
私は、「いかなる場合でも救急搬送しないでください」と書き込みを入れて署名捺印しましたが、実際にその時にならなければ何が起こるのかわからない状況です。

救急搬送されてしまった場合、最終的には自分で搬送先の病院へ行って、殺人行為だと言われようが何がなんでも本人を連れて帰るしか、医療の餌食にさせない方法は無いのだろうと思います。その場合、連れて帰る先は、自宅しか無いのかもしれません。
私は、親を直接介護する意思は全く無いので、特養を出して自宅へ戻して私が世話をすることを全く考えていません。(直接介護しないことへの批判はご自由ですが、直接介護は家族の義務ではありません。直接介護するか否かは、当事者が選択する問題です。強制して直接介護させることは不可能です。)

しかし、もし自宅で生活していたとしても、では、医者をどうするのか、というと、80歳前後まで医者知らず医者嫌いで医療のお世話にならずに生活してきた親なので、「かかりつけ医」なんて、いないのです。両親とも自宅に居た5年前のころ、母が便秘薬をもらっていた近所の医者に「かかりつけ医」になってくれ、と言ったことはありますが断られました。「それほどいつも診ているわけではないから」「他によくかかっている方にお願いしてください」と、要するに「関わりたくない」ということでした。ウチには「よくかかっている医者」なんかいません。
なぜ、お医者様って、こんなにお偉い方々ばかりなのでしょうか。
特に必要もないのにいつもいつも医者に通って不要な薬を処方されて(飲まずに捨てて)、盆暮れには必ず贈り物をして、ご機嫌をとっていれば「かかりつけ医」になってくれるのでしょうか。
まあ、「かかりつけ医」になるのを断ったその医者は、パーキンソン氏病ではない私の母を、「パーキンソン氏病かもしれないのに精密検査を受けさせないのはアナタが悪い」と言い張っていた愚医なので、関わらなくて良かったですけど。パーキンソン氏病の精密検査なんて泥沼です。80歳過ぎた婆さんに受けさせなければならない精密検査なんてナイと思ってます。精密検査で病気になってしまいます。

病院は狂ってる、でも開業医も下手に関わると災難を被るだけだと思います。

私はもう疲れました。私自身が体調不良です。
とにかく現在、両親ともようやく特養に入所できて、とりたてて不平不満なく生活しているので、しかも一応は、希望に応じて延命治療せずに施設内で看取ります、と言っている施設なので、そのまま動かさずに生活させてもらって、万一、救急搬送されて不本意な治療をされたなら、もぎ取って自宅へ連れてくるしかないと思っています。
今年の6月で丸4年、犬だけが住んでいる自宅です。その犬も今年13歳、ほとんど寝ています。石油ストーブの石油は危ないから抜きましたが、何もかも4年前のままの状態にしてあります。

医師の反対を押し切って病院から自宅へ連れて帰って死亡すると、私が犯罪者になるのでしょうか。
その前に、日本尊厳死協会へご相談しますので良い知恵をお授けください。

Posted by komachi at 2013年03月27日 08:28 | 返信

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