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認知症の旅行療法

2013年04月16日(火)

一昨日の産経新聞兵庫版の認知症ケアシリーズ第4回目は、
「認知症の旅行療法」について書いた。私が勝手にそう名付けた。
ヘルパー同伴のプチ贅沢の温泉旅行で、認知症の人は元気になった。
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産経新聞認知症ケアシリーズ第4回  認知症への旅行療法

                  温泉と御馳走でプチ贅沢

 

 徘徊や暴言や暴力など、認知症の人の「いわゆる周辺症状」に困っている家族は多いでしょう。「いわゆる周辺症状」と書いたのは他に言葉が無いからです。認知症は記憶障害などの「中核症状」と、「周辺症状」に分けて考えることに一応なっています。認知症の人の在宅療養が難しいと言われるのは、その周辺症状に周囲が悩まされ、対処法がなかなか分からないからだと思います。今日はそんな方にヒントになればと思い、書いてみます。

 
 80歳代の認知症の男性、Aさんの在宅主治医を依頼されました。最初は暴言、暴力が大変で、大小便も部屋の中でお漏しする始末。大声を出して凶暴なので触ることもさせません。訪問診療に伺っても聴診器を当てることも採血もできません。もちろん周辺症状を鎮める薬を飲ませることもできませんでした。しかしその人は3年の歳月を経て、そうした周辺症状は劇的に改善し、現在、別人のように穏やかに自宅で夫婦で暮らしています。

 
 前回を「放牧系デイサービス」としたら、今回は「旅行療法」です。その人は、月1回、ご夫婦で1泊2日の温泉旅行に行くことにしたのです。その時に、ヘルパーさん2人を自費で雇われました。夫婦は同じ温泉に入れませんから必ず男性のヘルパーさんが必要なのです。一緒に電車に乗り、温泉にはいり、美味しい食事を楽しみます。どんなに機嫌が悪い人でも、温かいお湯と御馳走があれば機嫌が直ります。温泉旅行は効果がありました。体を温めると種々の病気がよくなる話はあまりにも有名。HSPというタンパクが誘導され免疫能も上がります。温泉は、がんや難病など種々の病気に効果があり、温泉療法学会という医学会もあります。私は温泉は認知症にも効果があるのでは、と思っています。Aさんはお薬を使わずに、むしろ以前飲んでいた様々なお薬を中止して、この旅行療法を毎月、粘り強く続けることで、見違えるように元気になりました。今では笑顔いっぱいでデイサービス先でも人気者。旅行から帰って来ると楽しかった写真を見せて解説してくれます。これが本当にあの人なのかな、と思うくらい認知症状は改善しています。この旅行療法はプチ贅沢をすることがコツです。また一般の人と普通に混じることで、少し背伸びをされます。いくら認知症だといってもプライドがあるのです。たとえば電車に乗った時には、荷物を持って奥さんの手を引いています。普段はそんなことは一切しませんので、早い話、外に出るとええ格好をしていることは一目瞭然ですが、そのええ格好が大切なのです。

 
 普通の認知症の人の家のカレンダーには、デイサービスやショートステイの予定が書き込まれています。しかし、Aさん宅のカレンダーには必ず毎月、旅行の日程が書き込まれています。毎回、行き先が違います。介護者も一緒に楽しんでおられます。認知症介護とは、移動すること、楽しむことだ、とAさん夫婦に教えられました。このような家族旅行もいいですが、集団旅行もいいです。毎年、寝たきりの認知症の人と介護者を大勢引き連れて北海道旅行を続けているNPO法人もあります。とにかく、外に出て普通の人と交わることで、認知症の人の中核症状も周辺症状もビックリするくらい改善するのです。

 

キーワード HSP

ヒートショックプロテインの略。体を温めると体内で誘導されるタンパク質。免疫能を高めたり、障害された細胞を修復する作用がある。入浴健康法は、HSPの増加で説明されている。

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この記事へのコメント

とてもいいお話ですね。私の母は昨年亡くなりました。数年前から周辺症状が出始めて、隣家の私たち夫婦は困り、やっとのことで有料老人に入って貰いました。入所は奇跡かと思う位ホッとしました。片道、車でも1時間くらいかかるので、2週に1回位で休日に見舞いに行くが精一杯でした。一度大好きだったお寿司をと思ってタクシーで長次郎と言う回転寿司屋さんに連れ出しました。あいにく夕方の開店までは、まだ30分くらい時間が合ったので、近くのスーパーに連れて行きました。女性なので買い物が大好きなことを知っていたからです。母は興奮して、あれもこれも買いたそうでしたがわたしは、買っても無駄になると考えて(以前に1度あまりいろいろ注文するので、お店の方に購入を断るのに苦労したことがありました)何も買わせず、鮨屋さんの回転の時間まで時間稼ぎをしました。しかしその後は見舞っても体力の低下で一緒に食事や買い物に連れだすことも困難になっていき、訳1年後亡くなりました。最近はそのことを思い出しては、なぜもっと鷹揚な態度で接して、多少困っても嬉しそうに買い物するのを見守ってあげなかったのか、と大変反省しています。そして、もしも認知症の方がしたい事、活き活きできる事を知ったなら、是非可能な限りさせてあげたい。チャンスはとても大切です。そして、それはどんな薬よりも効果があると強く思っています。

Posted by T.fujikawa at 2013年04月18日 12:57 | 返信

認知症の母といま、琵琶湖のホテルに宿泊中です。
デイとヘルパーさんびっしりの毎日から
少しだけ離れて
美しい景色と温泉とディナーを
楽しんでほしくて連れ出しました。

いえ、本当は
毎週末に実家に泊まり、
いらいらを抑えて母の同じ話に付き合い、
無くしたものを延々探し、
お風呂に入らせるという繰り返しに耐えられず
逃れたくて、
どうせなら私自身も気分転換したくて
出掛けたのです。

お洒落した母はご機嫌で
湖面を眺め、
お風呂にゆっくり浸かり、
食事も私と同量をペロリと平らげました。
が、五分おきに、
ここはどこや、と繰り返し、
旅行にきたことを認識できていません。
環境を変えることが、症状を悪化させるのでは、と
不安になり、
ネットで検索したら、
先生のこのページにたどり着いた次第です。

励まされました。
ほっとしました。

私も微かな希望をもって、
あちこちへ、母と出掛けたいとおもいます。
いまが一番症状が軽い、と思えば
やりたいこと、可能性のあることは
いま、しなければ、と思います。

またお訪ねします。
ありがとうございました。

M

Posted by 西宮のM at 2016年02月28日 11:51 | 返信

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