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院内事故調と第三者機関

2013年04月21日(日)

医療訴訟の恐怖が過剰医療や延命治療を招いていることはあまり知られていない。
医療事故には、明らかなミスと、医療の不確実性に二分されるのであろうが、
どちらとも言えない場合も多く、最悪、裁判になるが、できることなら避けたいものだ。
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裁判以外で解決できる道は無いのか?
それが院内事故調だ。
医療者と当事者や家族が話し合う場だ。

そこに外部の第三者機関を入るのか入らないのかで、
長年、議論が紛糾している。
私はできるだけ入らないほうがいいとずっと思っている。

中澤先生や有賀先生のご意見に賛成だ。

中澤・有賀 VS 加藤・山口といった対立構図以外に、
そもそもその話し合いのお金はどっから出るの?という素朴な疑問に、
厚労省の吉岡課長が加わり、大変、難しい議論になている。

難しいがこれをちゃんとやらないと、医療の将来は無い。
なんとこっちゃらさっぱりわからん?という市民も多いだろう。
しかし、これが医療崩壊への大きな処方箋であることは間違いない。

何はともあれ、このような議論が公開されている意義は大きい。
興味のある市民にこそ考えていただける。
医療は、市民のものだから。

しかし、私の結論は、中澤・有賀論でまったく揺るがない。
えええ???と思われる方が多いだろう。
しかし難しい話なので、私はとりあえず結論だけを書いている。

医療事故調に関する最新の議事録を、一般の方に是非紹介したい。

以下、m3から転載させていただく。


院内調査先行、遺族の第三者機関への依頼も可

 

2013419日 橋本佳子(m3.com編集長) 

 

 厚生労働省の「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」(座長:山本和彦・一橋大学大学院法学研究科教授)の第12回会議が418に開催され、会議後、厚労省医政局総務課長の吉岡てつを氏は、医療事故調査を行う第三者機関の創設を盛り込んだ医療法改正法案について、「今秋に臨時国会が開催されれば、提出したい」と語り、数回の会議を経て、今夏前に検討を終える方針を明らかにした(資料は、厚労省のホームページに掲載)。第三者機関への届出や院内調査の手順など、制度の詳細は、厚労省が今後、法律とは別にガイドラインを策定する予定。

 

 18日の議論でおおむね了承が得られた制度骨子は、(1)調査の目的は、原因究明と再発防止とする、(2)調査の対象は、診療行為に関連した予期しない死亡事例、(3)該当する事例は、まず第三者機関に届け出た上で院内調査を行い、結果についても報告する、(4)院内調査の結果や状況に納得が得られなかった場合など、遺族または医療機関から申請があったものについては、第三者機関が調査を行う――などだ。

 

 “医療事故調”の議論の発端の一つに、異状死体の警察への届出を定めた医師法21条の改正を求める声があったが、同条は改正しない。また、今回の議論は、無過失補償制度の検討からスタートしたが(『無過失補償、“事故調”とセットで議論開始』を参照)、今回の法改正には盛り込まない。

 

 医療法で特定機能病院などに義務付けられている「医療事故情報やヒヤリ・ハット事例」の報告事業(日本医療機能評価機構が行う医療事故情報収集等事業)についても、継続する。同事業が死亡事例以外も含むのに対し、第三者機関の調査対象が死亡事例に限られるためだ。

 

 第三者機関は、中立性・公正性・専門性などを有する「民間組織」を想定しているため、日本医療機能評価機構と、「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」(以下、モデル事業)を実施している日本医療安全調査機構のどちらが担うか、あるいは新組織が設立されるかは未定だが、少なくても「機能については統合を予定している」(医政局総務課)。

 

検討部会の冒頭、厚生労働大臣政務官の渡嘉敷奈緒美氏が挨拶。

 

 前回会議では、前述の(3)について、A案とB案の二つの案が出ていた(『“事故調”は民間で、院内調査が基本』を参照)。A案は、どこが調査をするかを第三者機関が決定する案だったが、今回採用されたのは、まず院内調査を先行して行うB案。多くの医療関係団体の意見が採用されたことになる。「警察への通報や行政への報告と、第三者機関を切り離すことで、全例届出についてはおおむね理解が得られたと思う」(山本座長)。日本医師会常任理事の高杉敬久氏は、「私は院内調査を重視すべきだと主張してきた。あくまで院内調査を先行して行うことをより明確にしてもらいたい」と求めた。

 

 第三者機関の役割としては、院内調査報告書の確認・分析、遺族・医療機関からの求めによる医療事故の調査、再発防止策の普及・啓発、事故調査の従事者の研修――だ。

 

 18日の会議で一番の議論になったのが、(4)のうち、遺族から第三者機関への直接的な調査申請を認めるかどうかだ。賛否両論が出たものの、遺族からの調査申請も認める方向で落ち着いた。

 

 今後の論点は、院内調査に外部委員を入れることを必須とするか、第三者機関に調査申請があった場合には、全て調査するのか、スクリーニングを行うのか、第三者機関の調査に関する費用は誰が負担するか――などだ。18日の会議ではあまり議論にならなかったが、第三者機関の在り方も焦点だ。

 

山本和彦座長は、「これまでは自由に議論してもらったが、今後は取りまとめに向けて議論していく」と強調。

 

 遺族の第三者機関への調査申請は可

 

 吉岡課長は、厚労省案で、遺族から第三者機関への直接的な調査申請を入れた理由について、「遺族の中には、医療機関による調査を望まない場合がある。それを受け止めるため」と説明。

 

 本検討部会の親会に当たる「医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会」の座長、東北大学総長の里見進氏は、18日の会議を欠席した東京大学法学部教授の樋口範雄氏が、「院内調査と同じ位置付けで、最初から第三者機関に行ける仕組みを作ってほしい、と発言していた」とコメント。

 

 NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子氏は、「まず院内でしっかり調査をしてもらう仕組みで、その後に第三者機関という流れが基本だが、それを遺族が望まない場合のルートを残してほしい」と述べ、遺族の調査申請を認めるよう求めた。

 

 これに対し、医療者側からは反対意見が相次いだ。秋田労災病院第二内科部長の中澤堅次氏は、「院内調査を主体に考えてほしいと言ってきた。インフォームド・コンセントの上に、医療行為を行っている。(患者の死亡後も同で)まず遺族に説明したい。遺族が第三者機関に直接申請するルートは作らない方がいい」と主張。

 

 昭和大学病院院長の有賀徹氏も、「医療者が、医療を展開する流れで、遺族に説明する。そのことがまずあるのが当然。最初から第三者機関が出て調査すると、医療者のパフォーマンスとは違うところに行ってしまう」と述べ、「医療の埒内」で医療機関が行う調査と、患者・遺族が納得しない場合に「医療の埒外」として第三者機関が行う調査は、価値規範が異なる話だとした。

 

 そのほか、幾つかの意見が出たが、山本座長は、「(第三者機関による調査は)医療の中であることは、大前提。また医療機関が自分の責任で説明するのは望ましい。ただし、今の議論は、信頼関係がかなり崩れている場合に、第三者的な目による原因究明の道を残しておく、という話ではないか」と総括。「例外的な道とはどんな場合かは、もう少し詰める必要がある」としたものの、遺族から第三者機関への調査申請は認める方針でまとめた。 

次回529日の会議で、制度の骨子を議論する予定。

 

 
「院内調査委員会の委員長は外部委員」、加藤氏

 

 院内調査について、外部委員を入れることを必須条件にするよう主張したのが、南山大学大学院法務研究科教授で弁護士の加藤良夫氏と、弁護士の宮澤潤氏。一方、中小規模の病院など、自院のみでは調査が難しい場合には外部委員が支援する場合もあるが、「必須」とすることを問題視したのは、中澤氏や有賀氏など。

 

 加藤氏は、院内調査を院内の職員のみで実施するのは、「状況によっては利益相反的な構造に近いものが生じてくる」と指摘し、院内調査委員会の委員長は外部委員とし、委員の約半数を外部委員にすべきだとした。「外部委員を入れると、従来のやり方を外部の目で見直すことができる。専門性と客観性は非常に大事な要素であり、医療機関の規模によっては専門的な評価がきちんとできるスタッフがいないことも考えられる。また、院内のスタッフだけで調査すると、日ごろ仕事をしている仲間であり、なかなか厳しいことを言いにくい。病院やスタッフを守るという意識を超えて再発防止のための調査をするには、外部委員の参加を求めるのは必須ではないか」(加藤氏)。

 

 加藤氏は、「医療の世界に身を置いていない人を入れることも大切な要素ではないか。モデル事業や産科医療補償制度では、弁護士が参加している。弁護士であればいいわけではないが、事故調査の手法についてトレーニングを受けている人に関与してもらうことが必要」とも述べ、院内調査の信頼性担保のためにも、外部委員を入れる必要性を強調。宮澤氏も、外部委員を入れることを原則にすべきだとした。

 

 COMLの山口氏は、院内調査に対する外部委員の関与として、(1)独自調査ができない場合、(2)独自調査は可能だが、透明性等を担保するために入ってもらう場合――の二つがあるとした。「全例は無理だとしても、外部委員を入れることが望ましいという方向性を示すべきではないか」(山口氏)。
 

 これに対し、中澤氏は、「かなり突っ込んだ話をしないと、(当事者は)話をしてくれない。現実的には本当のことは院内スタッフでないと分からない」などと述べ、院内調査の報告書を外部委員に見てもらう形はあり得るが、最初から外部委員が入ると院内の事故調査は難しくなるとした。さらに、「院内調査については、病院が全て責任を持つ、という中で話をしている。外部委員が入る場合、再発防止策には責任を持つだろうが、原因究明に対して、結論を出すのであれば、その責任が出てくる。院内調査委員会の委員長も外部委員となると、病院はどのよう責任を取っていいのか分からなくなる」とし、調査の責任論からも外部委員を入れることは難しいとした。

 

 有賀氏は、「『信用ならざる状況』になったのであれば、(外部委員を入れるのは)その通りだろう。しかし、ほとんどの場合は、院内のスタッフできちんと調査する。外部委員をメリットもあるが、全く外部の人を入れるのはにしかない。その意味では、院内調査をやれているという自負がある」と現状を説明し、規模の小さな病院などでは地域の中核病院に支援を依頼するなど、各病院の体制や状況に応じて対応すべきだとした。

 

 
 院内調査、診療報酬の加算等で評価

 

 費用負担の問題は、院内調査と第三者機関による調査の双方がある。

 

 有賀氏は、院内調査について、「『死んだら、医療が終わり』といったい誰が決めたのか。死亡した後も、解剖やAi(死亡時画像診断)をやり、説明する。そうした流れで見ていなかったことが、問題だと考えている」と述べ、医療費の枠組みでの費用負担を求めた。

 

 虎の門病院院長の山口徹氏も、「解剖やAiなど、診療の延長線上にあるものを実施し、その結果を報告して、医療が終わると考えると、診療行為の一環として、費用をしかるべきところに請求できる仕組みがいいのではないか」と提案。

 

 これに対し、吉岡課長は、「解剖費用などを診療報酬として入れるのは難しい。2006年度改定で診療報酬で医療安全対策加算が新設されたが、今後、加算の中でどのようなことができるかを考えていく。Aiについても予算を付けているので、それをいかに充実させるかを検討する」と説明、解剖等について直接的に診療報酬を付けるのは困難だとした。

 

 事故調査の費用推計、厚労省が次回提示

 

 第三者機関による調査費用については、第三者機関に調査申請があった場合に、全例を調査対象とするのか、スクリーニング機能を持たせるのかという問題とも関連する。

 

 「第三者機関の役割として、遺族や医療機関から調査申請があった場合に、それを受けるかどうかを判断するスクリーニング機能も必要ではないか」と提案したのはCOMLの山口氏。「自分の意思で別の組織での調査を依頼する際に、費用を負担するのは社会のルールではないか」と山口氏は述べ、調査申請者には一定の負担を求めるべきだとした。さらに、「始めてみないと見えてこないことが結構ある。不安材料を抱えたままで、動き出せない現状もあるのではないか。見直し規定をあらかじめ設けて動き出す方が現実的ではないか」と指摘し、第三者機関の早期の制度化を求めた。

 

 加藤氏は、第三者機関には調査対象を選別するクリーニング機能を持たせるべきだとしながらも、「調査は、遺族のためではなく、原因究明や再発防止を検討し、医療の質向上に貢献するために実施する。その営みに必要だと判断した事例について調査するので、遺族に費用を負担させることは理念的に間違っているのではないか。費用負担が抑制因子になって、貴重な事例が調査できなくなると困る」との考えを述べた。

 

 両者の議論に対し、吉岡課長は、第三者機関などの運営費用については、「国から補助金を出すことを想定している」と説明。「一定の社会サービスを受けるに当たって、申請者から費用負担に求めないことはあり得ない。ただ、仮に負担してもらうにしても、低所得者の方は減免するなどの対応は必要」と述べた上で、次回会議で調査費用等がどの程度かかるかについて、厚労省が提示す


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