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どうする、子宮頚がんワクチン

2013年06月28日(金)

公費助成がついて、軌道に乗ったかと思った子宮頚がんワクチン接種。
現在、積極的な接種推奨は控えるよう指示が出て、行政の新たな指示を待っている。
週刊誌の癒着報道もあり疑惑が深まる一方、こんな意見もある。

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中学生の女の子をもつ親御さんは、悩ましいだろう。
まして、1回目、2回目を終了した子供は、3回目をどうするか悩むだろう。
当院でも同様だ。

様々な意見が交錯し、何が真実か分かりにくい状況にある。
というか、ワクチン行政とはそのようなもので、不確実性から逃れられないと思っている。
あと、メデイア報道関係者にはできるだけ冷静にやって欲しいとお願いしたい。

いつも正論を吐いてらしゃる坂根先生の文章がMRICから流れてきたので
以下、転載させていただく。

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子宮頸がん予防ワクチン接種の歩みを止めてはいけない
-正確な情報を得ることから始めよう-

 

つくば市 坂根Mクリニック 

坂根  みち子

 

2013628日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

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子宮頸がん予防ワクチンが4月から定期接種になったものの今度は「接種は積極的にお勧めしない」ワクチンとされた。厚労省発表当日のNHKの報道では持続する四肢の痛みとけいれんを起こしている女子の映像が流れ、ワクチンの接種をためらうには十分なインパクトがあった。

だが、私たちは子宮頸がん予防ワクチン接種の歩みを止めてはいけない。

 

現在のところ日本ではほぼ800万回の接種で数人の(重症)慢性疼痛患者が出ている。これについてはCRPS(複合性局所疼痛症候群)と言って、子宮頸がん予防ワクチンに由来するものではなく、針で刺されるという医療行為に伴って起こりうるものだと推測されている。一方日本では毎年およそ15000人の女性が子宮頸がんを発症し、3500人の人が亡くなっている。もちろん副作用の頻度が少ないから無視していいということではない。子宮頸がんが、性行為によりパートナーからウイルスをうつされて発症するものであり、ほかの多くのがんと違ってワクチンで防ぐことのできる病気(VPD: Vaccine Preventable Diseases)だからである。

 

子宮頸がんは若くして発症する人が多く、2030代のがんの第一位である。これは大きい。毎年3500人のご家庭で、母親を亡くして残される子供が出、娘を失ってしまう両親がいるということである。また、治療がうまくいっても出産できなくなる場合もある。つまりワクチンを接種しないで受ける国民の不利益のほうがはるかに大きいと考えられているからこそ、副作用に注意しつつ歩みを止めてはいけないのである。

今回の決定は厚労省でたった5人の委員が決め、しかも32の僅差だったという。これに対して、本年4月には日本対がん協会、日本婦人科学会、医会、日本小児科学会、医会等多くの専門家たちが接種を奨励するという声明12)を出している。

 

また613日にWHOも声明3)を出しているが、子宮頸がん予防ワクチンは、全世界で17千万回接種され、非常にまれな頻度でCRPSを含めいくつかの重篤な報告が上がっているが、真にワクチンに起因する副作用である可能性は低く、引き続き注意していくが「極めて安全」と判断しており、日本からの報告もレポートに挙げたうえで接種を推奨している。

これだけ多くの専門家集団が、医学的根拠に基づいて接種を奨励しているのである。ここは冷静になって耳を傾けなくてはいけない。

 

今回、多くの医療者が厚労省の発表、マスコミの報道に接して「またか」という思いにとらわれた。

日本は諸外国から麻疹、結核の輸出国と揶揄され、今度は風疹流行のために米国から渡航注意国に指定されてしまった。根は一緒である。専門家不在のまま医学的根拠や妥当性を欠く決定をする厚労省、ワクチン行政に対してビジョンを示さない素人政治家が国民の未来を暗くしている。そして正確な情報を伝えないメディアの責任は大きい。

 

子宮頸がん予防ワクチンについては、接種開始当初、失神する人が多数出たために、これを副作用として報道した。副作用というのは本来そのワクチンと因果関係のあるものを指すが、失神は子宮頸がん予防ワクチンの真の副作用ではなく、注射という医療行為に伴うものである。今回は子宮頸がん予防ワクチン接種により、持続的な痛みを訴える重篤な副作用が報告されたための措置とのことである。これもワクチンそのものの副作用ではなくCRPS(複合性局所疼痛症候群)によるものと考えられ、注射だけではなく採血や外傷、外科的な処置などでも報告されている。実は今回の報道まで医療者側もCRPSについてはよく知らなかった人がほとんどであった。したがって、当初は子宮頸がん予防ワクチンによる「真の」副作用かと思われた。しかしながらCRPSについての情報を得ることで、医療者側は子宮頸がん予防ワクチン接種は継続すべきと判断する人が増えている。

CRPS自体は病態が解明されていないため症状が治りにくいことがあり、これが出てしまった人に対する十分なケアが必要なことは言うまでもない。

 

今回なぜ、失神やCRPSが多いのか。

まず、対象が、血管迷走神経反射や起立性低血圧を起こしやすい女子中高生であること。痛いという前評判があり、接種前から通常より緊張していること、そして何より肩への筋肉注射であることが影響していると思われる。日本ではほとんどの予防接種は伝統的に上腕への皮下注であるが、諸外国では予防接種は(子供の頃は大腿への)筋肉注射が多い。

これが、他の予防接種との違いであり、他国に比べて日本で疼痛症例が多く報告されている原因ではないかと推測している。医療者側もむやみに怖がらないよう話し、場合によってはベットに寝かせて注射をし、また時間をかけてワクチンを注入することで筋の損傷を少しでも防いでみる等の試行錯誤をしているところである。

 

現在、子宮頸がん予防ワクチンを提供している企業は、「子宮頸がん予防ワクチンの接種を積極的にはお勧めしていません。接種に当たっては、有効性とリスクを理解したうえで、受けてください。」と赤字で大書き線引きした厚労省作成のチラシを各医療機関に配って歩いている。公費負担になってすぐはワクチンが足りなくなり、接種制限、お詫びの行脚をしていた企業である。ようやく十分な供給体制を作れば、今度は積極的には打つなというチラシを自ら配り大量の在庫を抱えるリスクに晒されている。 

 

国がぶれる度にそのしわ寄せは現場にくる。そうでなくても疲弊している医療現場は大混乱である。「積極的にお勧めしない」定期接種ワクチンとはいったいなんであろう。ワクチン行政の責任を放棄しているとしか思えない。国民の得られる情報に格差がある状態でこれを聞いて打とうとする人がいるだろうか。筆者の市でも実質ワクチン接種は停止した。

 

メディアはどう報道したか。NHKCPRSを発症した子の映像と厚労省の発表のみ流し、頸がんの現状には一切触れなかったが、がんの最前線で戦う専門家たちの意見や世界の趨勢についてきちんと伝えたところはあったのだろうか。例えば英国や米国でも同様に数名のCRPSが報告されているが、世界中で接種が中止になったところはないこと。頸がんの原因であるHPV感染が10代で増えており、早めに打ったほうがより効果的というデータも出始めており、他国では子宮頸がん予防ワクチンの接種を積極的に奨励しているという事実も併せて報道したということを、筆者は寡聞にして知らない。

あまりに偏った報道。また後戻りしていくワクチン後進国の日本。

 

もともと子宮頸がん予防ワクチンは高額であり(3回接種で約5万円)公費負担の対象以外の適齢期の女性たちは切り捨てられている。もっとデータが蓄積されるまで待ったほうがいいという医療関係者もいるが、他国のデータから子宮頸がんの発症率が下がるのを確認するまでこの先何年間、自国の女性を危険にさらすというのだろうか。それでは風疹の二の舞である。確かに今のワクチンは頸がんを起こすといわれているHPウイルスのうち、中心となる2種類をターゲットにしたものであり完全ではない。先天性風疹症候群のように、接種しておけば100%防げるということころまではいっていない。(100%防げたはずの予防接種でさえ放置されたが。)それでも全世界で17千万回分の接種の蓄積があればデータは十分ではないか。

歴史を繰り返してはいけない。

正確な情報を伝え、きちんと判断して私たちの子供を守ろう。

 

各団体の声明

1http://www.jsog.or.jp/news/pdf/20130404_kyodo_msg.pdf

2http://www.jaog.or.jp/news/img/cancer_20130409.pdf

3http://www.who.int/vaccine_safety/committee/topics/hpv/en/index.html

 



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