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認知症は関係性の障害

2013年08月03日(土)

産経新聞兵庫版の土曜日に約半年にわたって書いてきた認知症ケアシリーズ。
最終回の今日は、認知症という病気に想うところを直球で書かせていただいた。
こうした考えに反対の医師が多いのは知っているが、私はお薬より先に正しいケアだと思う。
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産経新聞認知症ケアシリーズ第16話(最終回) 
                   認知症は関係性の障害

                   まず正しい理解、その上でお薬を

 

私が夜に訪問して診ている認知症の方の中に、どう見ても認知症とは思えない人がおられます。私が訪問する時間にはまだ子供さんは仕事から帰っておらず一人です。90歳をとっくに過ぎた彼女はいつも若い声と素敵な笑顔で私を出迎え、お茶を入れてくれます。彼女とにこやかに世間話に談笑していると、その人がとても認知症とは思えません。しかし彼女は毎回、その日の昼間にデイサービスに行っていたことをすっかり忘れています。それ以外は全て正常なのに、数時間前の記憶だけが全く失われているのです。これが認知症。ですからその足りない部分だけを、誰かがカバーすれば普通に生きられるのが認知症です。問題は、誰がどうやってカバーするのか。


 認知症の人は理性を感性でカバーしています。感性が普通の人より敏感となっています。
となると、感性は感性で対応するかありません。薬剤で感性を変えることはできません。認知症ケア、介護教育で周辺症状は変えることはできるのです。すなわち、認知症は関係性の障害だとも言われています。関わり方が悪いと、暴言、暴力、被害妄想などの周辺症状が出ます。

 
 現在、認知症には4種類のお薬が使われています。いずれも認知症の中核症状の進行を遅らせるお薬ですが、周辺症状も少し改善する効果もあります。正確に言うと、お薬で1年間程度、記憶障害の低下をとどめておく薬もあります。私の経験では、お薬が合う人と合わない人がいます。合う人は別人のように改善しますので、お薬に感謝します。お薬が合わないという人にはお薬が多すぎる場合があります。少し減らせばいい感じ、という人も多くいますので、いわゆるサジ加減が大切です。代表的なお薬であるアリセプトは、3mgを2週間服用してから5mgへ、高度認知症なら10mgへ増量します。しかし3mgのままが一番調子がいいという人がいます。あるいは、お医者さんによっては、1mgから、1mg単位で増量される方もいます。他の3剤も、階段を上がるように増量することになっていますが、その人その人で合う量があるように思います。お薬は上手に使うもの。

 
 認知症ケアにおいては、関係性の理解が基本だと思います。その基本が無いのに、いくらお薬を使っても、増量しても逆効果です。どうか本シリーズを読み返して頂き、正しい認知症ケアを家庭でも施設でも病院でも実践してください。あとは、介護者が賢くなることです。家族の接し方ひとつで認知症の方の運命が決まります。私は、先週「家族が選んだ平穏死」(祥伝社)を、今週は「がんの花道―患者の平穏生を支える家族の力―」(小学館)という本が出ました。いずれもキーワードは、“家族”です。家族が認知症を深く理解することで、愛する人の運命は大きく変わることを強調したいと思います。


 認知症ケアシリーズの最終回の最後は、歌手の樋口了一さんの「手紙―親愛なる子供たちへ」というサイトのご紹介で閉めたいと思います。彼の名前をネットに入れてご覧ください。
Youtubeでみられる。紅白あと一歩でパーキンソン病になり、両親も認知症になってしまうそうです。あなたの人生の終わりに私の人生の終わりに少しだけ付き合って欲しい。

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この記事へのコメント

「その人その人で合う量がある」
「お薬は上手に使うもの」

先生のこの、考え方が好きです。
製薬会社のエビデンスも必要かもしれませんが、やはりお医者様が一人一人の病人を診る医療を私は望みます。

そして、それは、町の頼れるお医者さんにしかできないことだと思います。

Posted by よしみ at 2013年08月05日 02:43 | 返信

認知症は確かに、世の中では大変なったらどうしようとおもれている方が多いです。特にご自身の身内の方発症すると受け入れができないのが現実です。ただ言えるのはいい専門医に診ていただき、早期発見してもらうことで、薬はいらないし、家族も本人も受け止めができることで薬に頼らなくても済むこともあります。私の父も認知症でしたが、自分の無知が父の病気をエスカレートさせてことがあります。今は介護の世界で認知症について伝えさせていただいております。認知症になった本人の気持ちに寄り添うことが一番だと私は思っています。一番に気づいて悩んでいる状況を知っていただきたいと思います。ただたんに、主治医の先生が診て家族だけの意見だけでむやみに薬は出してほしくないです。副作用のことも考え専門医と連携してもらうともっと認知症に対する治療法が出てくるのではと思います。

Posted by 藪本 眞理子 at 2013年08月13日 08:48 | 返信

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