がん放置療法を、「がんは放置したら自然治癒する」と勝手に誤解していたようだ。
一般の人には、あの本の内容が、そのように伝わることも現実にあるのだ。

ひとに伝えることは、実に難しい。
私自身も自分の意と反対に伝わることを時々経験する。

お姉さんは、亡くなられた弟さんを見ていて怖くなり受診された。
がん家系で心配なので、自分は胃の検査をしてほしいといった。

１年後に亡くなったのだから、もし治療しても結果は一緒だった可能性がある。
しかし仮に結果が同じであったとしても、そのプロセスこそが重要だと私は思う。

毎日、泣いている人がいる。
そうした人が来るたびに、否定本を否定する本を見せて慰めている。

「私は、あの本はちょっとおかしいと思います。だからこんな本を書きました」
なんていうと、みなさんなぜか安心される。
喜んで泣かれるひともいる。

医学は完全ではない。
自然の摂理の、０．１％も解明できていないと思う。

しかしそのわずかな人類の叡智で命が救われたひともいるのも事実だ。
医療という科学を否定してばかりいては、救える人も救えない。

現代医療には、反省すべき点や改善すべき点が、多々ある。
しかし、いい点もいっぱいあるのも事実、真実である。

だから目指すは、賢い患者になり、医療のいいとこ取りをすること。
医療を利用したほうがいい時は、上手に利用したほうがいい、としか言えない。

そのためには、普段から医療というものをよく勉強しておかないといけない。
たとえば、このブログを読むとか。


低レベルの医者の戯言かもしれない。
しかしそれも現場の一町医者の本音なのだ。

「医療否定本に殺されないための４８の真実」(扶桑社）が、世に出て１週間が経過した。
http://www.amazon.co.jp/%E3%80%8C%E5%8C%BB%E7%99%82%E5%90%A6%E5%AE%9A%E6%9C%AC%E3%80%8D%E3%81%AB%E6%AE%BA%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE48%E3%81%AE%E7%9C%9F%E5%AE%9F-%E9%95%B7%E5%B0%BE-%E5%92%8C%E5%AE%8F/dp/4594068685/ref=sr_1_3?s=books&ie=UTF8&qid=1375199715&sr=1-3

否定本を支持する多くの方から、いろんなご批判があるだろう。
しかしこんな町医者が、ひとりくらいいてもいいんじゃないかな。

王様は裸だ、という子供程度でしかない我が貧しい才覚。
しかし間違っていることは間違っているとだけは、ちゃんと言っておきたい。

もし放置療法と聞いて、迷っている人は是非、読んでみてください。
でも否定本を信じている人は、絶対に読まないでください。