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医療タイムス9月号

2013年09月12日(木)

医療タイムスにも連載させていただき、3年が経過した。
今月号は、「医療否定本をどう思いますか?」と問うてみた。
「忙しくてそんなもん知らん」というお医者さんが多いと思うのだが。
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医療者からの意見を頂戴したら、おりにふれご紹介したい。

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医療タイムス9月号  医療否定本をどう思いますか?  長尾和宏

 

 書店の店頭には、医療費定本が並んでいます。「がんを手術してはいけない」から始まり、「血圧も血糖も高いほどいい」と続いています。ついにここまで来たのか、と思いました。そうしたら患者さんがこの本を診察室に持ってきました。「先生、私は糖尿病で薬を飲んでいますが、飲んではいけないと偉い先生が言っています」と。その方の血糖値は500を超え、HbA1cは10%を超えています。根気良く説明しましたが、結局偉い先生の本が勝ち、服薬中断となりました。また先日こんな患者さんがいました。頭痛とめまいで歩けないというその方は、血圧が250/130でした。以前は血圧の薬を飲んでいたが、「血圧は高いほど長生きする」というベストセラーを読んでから通院をやめていた、とのこと。


 またこんな患者さんが来られました。乳がんで効が剤治療中であるが、著者の先生のセカンドオピニオン外来を受診されたそうです。すると「抗がん剤はすぐにやめて、ホスピスに行きなさい」と言われ、宛先の無い紹介状を渡されたということです。まだまだ元気で、ホスピスに入るほどには到底見えません。泣きじゃくるその患者さんにかける言葉が見つかりませんでした。たった1回の面談でその患者さんの運命を180度変えていいのだろうか。高価なお金をとりながら、あとは野となれ山となれといったフォローの無い医療が、本当に医療と言えるのだろうか、という素朴な疑問が浮かびました。


 がんセンターに勤務する知り合いに聞くと、放置療法を大きく取りあげた週刊誌を持ってくる患者さんがおられて、肝心の説明の前に、放置療法の説明のほうに時間がかかってしょうがないとの話でした。書籍やメデイアの影響力は凄いものです。もちろんがん医療や、生活習慣病医療には多くの課題があるのは自明で、早急な是正が必要だと私も思います。しかし私は医療を全否定することはあり得ません。それは、自分も医療人の一人であると小さな誇りを持っているからです。たとえ町医者であろうが、大病院の偉いポジションにいようが、この志だけは普遍的なものであると信じています。私は終末期においては、無用な延命治療はなるべく避けて緩和医療を中心に考えることを啓発しています。終末期においては、緩和医療という名の医療の恩恵に預かれることを願っています。


 高齢者やプアリスクの人にはがん放置療は昔から普通にあります。またがんもどきという言葉は、悪性度という言葉として昔からあります。目新しそうな言葉で素人を魅了するのは自由ですが、既に順当な成果をあげているがん医療を全否定するだけでなく、生活習慣病全般にまで拡大するのは、いかがなものか。あまりの極論が、知らぬ間に正論になりつつあります。ともあれ、既に少なからず実害が出ています。


 私は、おかしいものはおかしい、と声をあげてみました。8月20日に「医療費定本に殺されないための48の真実」(扶桑社)という本が出ました。案の定、発売直後から、否定本の信者さんから猛烈な批判を浴びています。「反論のエヴィデンスを示せ」とのことです。患者さんがエビデンスという言葉を使う時代です。私は、ただ「王様は裸だ」と言っただけです。本紙の読者のみなさまのご意見、ご批判をお待ちしています。

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この記事へのコメント

私は、「医療否定本のドクター」の宣伝をしたいわけではないので、これを最後のメールにします。(診療費など、この前、違ったことを書いてしまったかもしれないので、その訂正もしたいのです。) 
「医療否定本のドクター」は、「本物のがんは治らない」という前提があります。
 『がん治療で殺されない七つの秘訣』を読むと、長尾先生の疑問のほとんどは解けると思います。「医療否定本」は、素人のために読みやすくして、データーは省いてありますが、科学的根拠はきちんとあるそうです。他の著書には全て、データーが示されています。
 ホスピスは、予約しておかないと入れないそうです。元気な患者さんにホスピスを勧められるのは、ドクターもとてもつらいけど、患者さんのためを思って、言ってくださっているのです。
 在宅医療のことも書いてあります。長尾先生の在宅医療なら、推薦してくださると思いますが、在宅医もいいドクターもいると思うが、急に増えたから付け焼刃では?ということです。長尾先生も、以前、おっしゃっていたことです。「否定本のドクター」は、ホスピスも、もちろんいろいろだから…、と、選択の仕方まで書いてくださっています。
 別な話ですが、亡くなられたテレビレポーターの金子哲雄さんは、在宅医療で、本当に良かったと、著書に書かれていました。
 また、「セカンドオピニオン外来」の診療費ですが、「医療否定本のドクター」は大学病院の普通の診療費(高くありません)で、セカンドオピニオンをしてくださっていたそうです。
「セカンドオピニオン外来」は、診療ではなく、セカンドオピニオンだから、診療費とは違います。セカンドオピニオンとしては、普通の料金です。また、診療の場合は本人がいないと相談できませんでしたが、セカンドオピニオン外来は、ご家族でも相談できるという違いがあります。
米原万里さんというロシア語の通訳の方が癌でなくなられていますが、「打ちのめされるようなすごい本」だったか?がんの話を残されています。昔ですが、「医療否定本のドクター」のもとも訪ねて、「何もしない方がいい」と言われていたと思います。米原さんは、全てを理性的に受け止めていらっしゃいました。
「医療否定本のドクターの主張は、ずっと、ぶれてません。」ご参考にしてください。
 病気になってしまった人間は、治療法がないという現実には、耐えられない人もいます。死を受け入れて、準備をする人もいます。
ブログ「癌と闘わずに。。。」も読んでください。精神が強い方だと思います。吉野実香さん、著書もあります。
患者は、どのドクターが、本当に自分のことを思っているか、自分で考えるしかありません。最後は、自分の責任で、悔いのない選択をするしかないのではないでしょうか。
医療否定本のドクターは、愛のある、いいドクターだと思います。
長尾先生も患者さんのことを考えていらっしゃるいいドクターだと思います。

Posted by きらきら星 at 2013年09月12日 07:59 | 返信

長尾先生もおっしゃっていることですが、私も、恐らく多くの人も、近藤先生の論を全否定はしていません。ただ、センセーショナルに煽りたがるメディアの特性を恨むべきでしょうか、残念ながら「極論」が一人歩きしてしまって、実害が生じていることは否めません。それは長尾先生の患者さんの例や、江田証先生の患者さんの例(「医者が患者に教えない病気の事実」の206頁に書いてあります)からもわかるとおり現実に起きていることです。そしてそれが問題なのです。

「極論」とは、「年齢」をはじめとした患者個々の背景に一切ふれずに「血圧は高いほうがいい」とか、「がんは放置がいちばん」などと表現してしまうことです。
一般読者にとっては、とてもインパクトのあるわかいやすい表現です。でも、長尾先生が説明されているように、たとえば20歳の若者の血圧200と、90歳の高齢者の血圧200をいっしょこたんに扱うことはできません。癌についても、勘三郎さんや逸見さんのようなケースばかりが取り上げられ、サザンの桑田さんが元気にライブをやっていることには触れません。近藤論によればそれは、「放置しておいても問題なかったのに桑田さんは無駄な手術をしただけ損をした」ということになるわけですが、そんな馬鹿なと思うのは私だけでしょうか?
繰り返しになりますが、私は、近藤先生の論のすべてを否定しているのではありません。
どの先生が正しい、どの先生は間違っている、と言いたいわけでもありません。
ただ、近藤先生ご自身が、ある週刊誌のインタビューで、「本では誇張して書いている(笑)」と答えているのを、多くの方に知ってもらいたいと思っています。
著者ご本人が、「誇張して書いている」、とはっきりおっしゃっているのですから、読者はその前提で、読まなければいけないのです。勿論、出版の自由、言論の自由は認められていますから、著者の責任を問うものでもありません。そして読み手側がどう判断するかは、自己責任のもと個々の自由です。

せっかく近藤先生は乳癌温存法のパイオニアでいらっしゃり、抗がん剤をはじめとする医療の問題を明るみに出された功績をお持ちなのに、「本」や「週刊誌」をはじめとしたメディアの特性によって、「極論」という形で論が暴走し、一般読者に影響を与えてしまっている側面を残念に思います。
一方で、出版社も著者も大儲け。
長尾先生がおっしゃるように、私たち患者は、賢くならなければいけないと思います。

Posted by 匿名 at 2013年09月13日 08:38 | 返信

匿名さま、呼び捨てで返信ありがとうございます。
「放置療法」放置すれば助かるとは言ってないですよね。放置して、ある程度腫瘍が大きくなれば小さな手術をしたり、補助手術をしたり、または、あきらめた方が安らかに死ねる(腫瘍の部位によって、例外はある)ということだと思います。
また、血圧の話も、症状のない人が前提です。それを読み逃している方たちが多いようです。
桑田さんと堪三郎さんの手術。手術は、誰もが、桑田さんのように成功するとは限らないということです。手術が成功して、身体が不自由にもならなかった方は、運のいい方です。桑田さんは後遺症もなく、本当に良かったです。素直に喜びます。ただ、桑田さんと堪三郎さんとは、性質の違う腫瘍だったようです。
食道がんは、手術より放射線の方が副作用が少なく、効果も同じな研究結果があるのに、日本では、医師が「放射線は再発が多い」と迷言され、ほとんど手術されてしまうのが問題だと思います。
患者は、もっと、わがままになっていいのではないでしょうか。
手術でどこか不自由を感じた人は、建設的な苦情を言いましょう。患者モンスターになってはいけません。それで治療が変わり、これから、病気になる人を助けることになることを望みます。実際、医師は、手術をしてからの後遺症には知らんぷりが多いと思います。
癌になったのだけど、「入院したくない」と言い張り、放射線治療で長生きしている人を知っています。
「医療の不確実性は1%必ず、ある」ご家族はそれを理解されていたとしても、手術後、その1%が現実になったら、素直に納得できるのでしょうか。
近藤先生の方法は、その1%の死を回避できる方法なのだと思います。手術か、まず放置して様子を見るか、近藤先生は、その知識を週刊誌にも、惜しみなく伝えてくれているのだと思っています。
堪三郎さんのご家族のことは、近藤先生も、そっとしておいてあげたいでしょう。でも、これから、同じような悔いの残る死をなくしたいという思いで本を書かれたのだと思います。
近藤先生も堪三郎さんの治療への疑問という文の出だしには「華があって洒脱な芸と人柄に惹かれたものとして」と書かれていたし、私も堪三郎さんのファンだったので、彼の死は本当に残念でたまりませんでした。たくさん泣きました。お葬式にも行きました。
匿名さま、わたしたちが、素人論争しても意味がないと思いますので、もう本当に、やめます。誤字、脱字、迷文、乱文の失礼をお許しください。

Posted by きらきら星 at 2013年09月13日 09:58 | 返信

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