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お薬手帳

2013年10月05日(土)

産経新聞のお薬シリーズの第8回(最終回)は、お薬手帳について書いた。
http://www.drnagao.com/pdf/media/sankei/sankei130928.pdf
これは健康保険証と同じくらい大切なものだ。
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産経新聞お薬シリーズ第8回  保険証、診察券と共に

               常にお薬手帳を携帯したい

 

 お薬手帳というものを御存知ですか?お薬のことが書かれたあの小さなノート。「ああ、あの面倒くさいやつ?」なんて思うのは間違いです。お薬手帳で患者さんは大いに得をします。時には命拾いするという話をこの「お薬シリーズ」の最終回に書かせて頂きます。

 
 お薬手帳には処方されたお薬と処方した医師の名前が時系列に記されています。見かたによっては、これはカルテとほぼ同等の価値があります。カルテは、医療機関ごとに異なり持ち出せません。紙カルテもあれば電子カルテもある。詳しく所見を書く先生もいれば、ほとんど書かない先生もいて実に様々。一方、お薬手帳は、それらすべての医師の足跡がそこに並んで記されています。まさに貴重な診療情報がそのまま載っているものです。

 
 もしあなたが低血糖をおこして駅のホームで意識もうろうになって倒れたとしましょう。カバンの中にお薬手帳が入っていたらどうか。誰かが「ああ、この人はインスリンによる低血糖発作だ」とか「糖尿のお薬の副作用による低血糖だ」と気がつくはずです。甘いジュースを一口飲んだら、たちまち意識は回復します。このようにお薬手帳が命を救うことも時にはあります。雑踏や飛行機や田舎の道で倒れても、同じことです。

 
 先日、夜の診察の最後に要領の得ない患者さんが初めて来院されました。ボロボロの服を着て臭い匂いをふりまきながら、何を言っているのかサッパリ分かりません。15分くらい話を聞いていましたがそれでも何のためにここに来たのか要領を得ません。ポケットにお薬手帳が入っていたので見させて頂きました。すると3つの医療機関にかかり、それぞれ高血圧と糖尿病、膝と腰、そして精神疾患があることが1分で分かりました。お薬手帳のお陰で適切な対応ができました。もしお薬手帳が無ければ、私もスタッフも大幅残業でした。お薬手帳は「総合医」のような存在なんだ、と、の時に思い知りました。

 
 お薬手帳は薬局で役立つことは誰でも知っています。お薬同志の飲み合わせを薬剤師にチェックしてもらえるから。しかし薬局のみならず医療機関の窓口でも必ずお薬手帳を出してください。お医者さんは、すごく助かるのです。お薬が分かれば、病気もだいたい想像がつきます。薬の重複が無くなるので無駄が省けます。多剤投薬の改善に大いに役立ちます。できれば、健康保険証と診察券とお薬手帳は、外出時に必ず携帯しましょう。高齢者ならこれら3点は必携品なのです。医者に行くときだけでなく、普段からどこに行くにせよ、3点セットを是非持っていてください。


 さてお薬と言えば、抗がん剤もお薬です。先週、「抗がん剤・10のやめどき」(ブックマン社)という本が出ました。世の中には「抗がん剤治療がいつまで続くのだろう?」と思いながらがんの治療を受けている人が多くおられるでしょう。本書は“がん小説”でもあります。58歳の男性がある日、胃がんを宣告されるシーンから物語が始まります。そして手術、抗がん剤治療、在宅医療と、様々な局面が主人公を待ちかまえています。是非、主人公を自分自身に置き換えて読んで頂き、“自己決定”というものを考える参考になれば幸いです。

 

キーワード お薬手帳
薬の名前、分量、飲みかた、処方日数などが印字されたシールが貼ってある小冊子。薬歴が一目して分かる。薬局や医療機関において無料でもらえるが、複数あるときは一冊に一元化する必要がある。


以上は、第8回


第7回 かかりつけ薬局の活用
http://www.drnagao.com/pdf/media/sankei/sankei130921.pdf


第6回 多剤投薬の処方箋
http://www.drnagao.com/pdf/media/sankei/sankei130914.pdf

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