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前立腺がんとPSA

2013年12月08日(日)

昨日の産経新聞兵庫版には前立腺がんとPSAについて書かせて頂いた。
男性医療シリーズの最終回でもある。
本当はこのテーマでもっと書きたいのだが、来週からは別のテーマで書くことに決めた。
 

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産経新聞第8話  前立腺がんと上手に付き合う

         検査や治療の評価にPSAは有用

 

増加している前立腺がんを早期発見するにはどうしたらいいのでしょうか。前立腺がんは基本的に無症状です。骨に転移して痛みが出てはじめてがんが発見される場合があります。PSAを用いた前立腺がん検診に関しては、賛否両論です。PSA検診を行った場合、治療の必要のない前立腺がんが沢山見つかってしまうという問題点が指摘されています。またPSA値がいわゆるグレーゾーンの場合には、定期的に検査を続けることになり、がんの不安が持続するという悩ましい問題が生じています。だからといって、PSA検査なんてやらないほうがいい、ともなりません。PSA検査の長所と短所をよく知ったうえで、上手に使うことが大切だと思います。


 PSAが高いからといって前立腺がんと決まったわけではありません。がん以外でも上がる場合はいくらでもあります。前立腺がんの早期発見や治療効果の評価には血液中のPSA測定は欠かせません。PSAが高い場合は、泌尿器科の専門医に紹介します。直腸診とMRI、そして前立腺の組織検査が行われます。細い針で前立腺の10~16ケ所から組織を採取して顕微鏡で調べます。そしてグリソンスコアという指標を用いて、5~10の5段階で評価されます。5~6であればタチがいいがん、7~8だとやや悪いがん、9~10の場合はタチの悪いがんで高い確率で遠隔転移しますから早急に治療が必要です。高齢男性の剖検例では、多くの前立腺がんが見つかる話は有名です。そのようながんは、それで命を失うことは無いので、天寿がんとも呼ばれます。大切なことは、がんの有無ではなくて、がんの悪性度です。がんはがんでも、タチの悪さが問題。悪性度の低い前立腺がんは急いで治療をせず、経過観察をする場合があります。反対にタチの悪い前立腺がんであれば治療を急ぐことになります。親族(親、兄弟)に前立腺がんの人がいる場合は、40歳代でPSA検査をしたほうがいいでしょう。またテストステロン値が低い人も、そうでない人よりタチの悪い前立腺がんになりやすいことが分かっていますので、それを考慮してPSAを測定したほうがいいでしょう。


 前立腺がんの治療には、手術、放射線、ホルモン治療という3つの選択肢があります。従来、前立腺がんで手術するのは、65歳以下で15年以上の生存が見込まれる人という暗黙の基準がありました。一方、先に放射線治療を行った場合は、組織が硬くなり後で手術がしにくくなりがちでした。しかし最近、手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」の登場で前立腺がんの手術は大きく変わりつつあります。勃起障害や射精障害という従来の手術の後遺症が少なくなり、80歳台でも手術を受けるケースが増えています。ただ心臓疾患と緑内障の患者さんはダ・ヴィンチ手術の適応外です。またすでに骨などにがんが転移している人が最初に行う治療法は、LH―RHという脳からのテストステロン産生刺激をストップさせるお薬です。テストステロンは前立腺がんの発生には関係ないですが、一旦できた前立腺がんを大きくする作用があるからです。専門医とよく話し合って、増加する前立腺がんと上手に付き合ってください。(男性医療シリーズ終了)

 

キーワード   ダ・ヴィンチ手術

手術台から離れてモニターの映像を見ながら両手と両足を使って遠隔操作でする手術。従来の腹腔鏡手術よりも精密かつ繊細な動きが可能で、患者さんへの肉体的負担も最小限で済む。現在130台以上が導入されている。

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この記事へのコメント

私の伯父は、県立病院で、前立腺肥大と診断されて、全摘手術を受けました。
数年経って、膀胱がんと診断されたと言っていました。
NHKの今日の健康によると、膀胱がんの生存率は高いから安心してとコピーを送ると「ありがたい」と言って喜んでくれました。
しかし、膀胱がんの摘出手術のしたのに、経過が思わしくなく、徐々に悪化して、暫く在宅療養をしていたのに、どうしても県立病院に再入院したいと言って頑張ったので、伯母も、長男夫婦も介護にへとへとになって、ようやく県立病院に入院したけど、死の転機をとりました。
それが、お葬式の時に、宮司さんの祈祷で、「故人は前立腺がんにて亡くなった」と仰ったので、驚きました。
暫く経ってから、従兄に「伯父さんは前立腺がんで死んだの?」と聞くと、「ウン」と小さく頷いて、そのことは何も言いたくないようでした。
伯父の家は(何事も大ごとにしたくない家)なんでそれ以上の事は分かりません。
前立腺肥大と思ったけど、前立腺癌であった。
全摘手術をしたつもりが、取り残しがあったのか、既に転移癌があった。
膀胱がんと診断されたが、本当は前立腺がんが原発で、既に手遅れだったと言うのが真相だったようです。

Posted by 匿名 at 2013年12月09日 02:42 | 返信

膀胱がんを疑われ、前立腺まで病巣が行っているという医者の話を信じ手術したら、細胞から癌は見付からず誤診だった。知人に起きた3ヶ月前の本当の話です。

Posted by 月光仮面 at 2013年12月09日 06:53 | 返信

!。『男性医療シリーズ』が長尾先生のご執筆とは知らず、大変失礼しました。ブログを拝見するようになってまだ半年です。もっと早く知っていたらと思います。
2.NHKスペシャル本が言うように、ホルモン補充が乳がんや前立腺がんを促進するとは一概に言えないわけですね。先生が言われるように、テストステロンは前立腺がんの発生には関係ないが、一旦できた前立腺がんを大きくする作用があるのですね。Aを因としてBの果ありという単純な図式は、自然にもヒトの心身にも通用しないわけですね。
3.近隣の85歳現役開業中の先生が、80歳になってもPSA検査を受けたがる人がいるとぼやいておられましたが、長尾先生の言われるとおり、老衰自然死で初めて分かる天寿がんとしての前立腺も多いわけで、私どものような年寄りは、日々の生を淡々とこなしていくということでいいのですね。
4.がんをはじめとする様々な異常細胞の産生が、多細胞動物の進化の宿命であるとしても、細胞分裂が終わってしまった心臓や、日々猛烈に細胞分裂を繰り返している小腸が、がん塊を形成せず、また他臓器がんの転移も受けいれないというのも不思議ですね。医学の全否定か、医学への絶対的信頼か? 降圧剤ディオバンをめぐる不正疑惑に、学会が沈黙したままという医療状況で、長尾先生言われる〈賢い患者〉になりたいと思います。

Posted by 鍵山いさお at 2013年12月10日 01:28 | 返信

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