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一見、相反する命題

2013年12月31日(火)

年末に2つのメッセージをお届けししたい。
それは、尊厳死と白雪姫プロジェクトだ。
両者は決して相反するものではなくて、実は似ているのだ。
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医学界の大御所である本庶佑先生が日本医事新報11月2日号に
国民皆保険制度の崩壊の危機について述べられている。
http://www.drnagao.com/pdf/media/related_article/nihniji131102.pdf

その中で意外にも、尊厳死の法制化にもl言及されている。
昨日も書いたように、終末期の問題が来年はさらに議論される。

一方、白雪姫プロジェクトというものがあるが御存知だろうか。
http://www.drnagao.com/img/media/related_article/kiseki131117.pdf

簡単にいえば遷延性意識障害であっても、諦めらたいけないという話かな。
先日のNスペである女優さんがくも膜下出血で植物状態になった番組と似ている。

両者は一見、あまり関係も無いように見える命題かもしれないが
私の中では、この1年間、両者の関係性を求め続けた。

失礼ながら、がんもどきやがん放置療法に関しては結論が出ているので
議論や対談などの余地は無く、近藤誠現象としての検証が必要なだけだ。

私の医療の方向性に関する興味は、がん医療に限らず、もっと広いところにある。

すなわち、治療可能性とそれによる損失の分岐点。

経済に例えるなら損益分岐点というべきか。
自分の言葉で言うならば、「延命と縮命の分水嶺」をどう考えるのかという命題。

すなわち、「終末期とは何か?」という命題をずっと考えている。

もちろん病態別にも語られるべきであろうが、(新・私が決める尊厳死、がそう)
細分化してもよけいに見えにくくなることがある。

すなわち、医療の可能性と限界の境界の問題。
そして、そうした追求と経済性との両立の問題。

もちろん、終末期以降には放置療法+緩和医療でいい。
現状、医療界はそんなことが分からないのは何度も指摘している通り。

肝腎の終末期がよく分からないので、医者は最期まで抗がん剤を打ち、
市民は、100万人も医療否定本を買うという社会現象がおきている。


「尊厳死]というと必ず障害者や難病団体、弁護士会、宗教界はこぞって攻撃するのに、
「尊厳生」というと、誰もが賛成する。

実は両者は同じことなのだが・・・

なぜなら生と死は表裏一体で、決して相反する概念ではないから。

しかし多くの人は、相反すると考えるから、「死」というと、無条件に反対して、
「生」というと無条件で賛成し、関係諸団体はすべて思考停止に陥っている。

もっと言えば、言葉狩りの世界、ないし言葉遊びとなる。

そのあたりのことに気がついている人がほとんどないのは残念。
近藤理論が惜しいのは、治療期と終末期を意識していないから。

もししていたら良かったのに、全否定したのでおかしくなったのがコトの本質。
自己矛盾を正当化するために、陰謀説とか誇大妄想が必要になったのだろう。

医者、製薬企業=巨悪でヤクザよりタチが悪い、だけの理屈では、
常識ある人は、みんな引くだろう。

デイオバン問題はじめ、医療ムラの存在は事実。
しかしだからと言って医療は全て悪で、全て不要なんで言うのは医者の仕事ではない。

すなわち分水嶺の存在を意識できなかったので、
最後は極論化、そしてカルト宗教化してしまった。

医療や生命倫理は、もっと丁寧に論じないといけない。

もちろん、近代化社会におけるがん医療や終末期医療は難問なのだが、
分水嶺というコトの本質に気がついている人がほとんどいないのが不思議でならない。


実は、今後の医療の課題とは、
冒頭の2つの意見、相反する命題を、どう両立させるかということ以外にもうひとつある。

それは遺伝子医療革命に対する我が国の臨床倫理学が立ち遅れていることだ。

アンジェリーナッジョリーさんではないが、遺伝子検査は、すでに始まっている。

癌治療のみならず、健康な人にも予防医療という名の下に
そして子供たちにも、「知る」という権利のもとにすでに始まっているという事実。

その人の設計図である遺伝子という個人情報を誰がどのように管理、
運営するのかが実は今後の医療界の最大の課題なのだ。

だから、がんもどきのような幼稚な妄想に浸っている時ではない。

人間の尊厳の確保と、遺伝子情報の運用が来年以降の重要課題であると思っている。

以上、言葉足らずに書きなぐっただけだが、
なんとなくでも分かって頂いたら嬉しい。

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※本ブログは転載・引用を固くお断りいたします。

この記事へのコメント

父が「上行結腸癌」と言われた時も、「耳下腺腫瘍」と言われた時も、近藤誠先生の「がんと、戦うな」という本は読んでいましたけど、いつも、実際に診療して下さる、先生方が誠実で真面目で力強く手術を説明して下さったので、「癌放置療法」は思い浮かびませんでした。
勿論抗がん剤を勧められたら、ちょっと拒否反応はあったかもしれません。でも一応は試してみるでしょう。
抗がん剤を試してみても、効き目が無ければ、そこで近藤誠理論を思いだして、「ここらで、休もうか」というのが人情です。
効き目が無くても、最後の死ぬまで抗がん剤を飲まされるのと、患者さんも家族も疲労困憊するでしょう。
途中で「抗がん剤は、もうやめとこうか?」と言って下さるお医者さんがいれば、初めから「放置療法」は誰も選択しないだろうと思います。
そこまでは、理解できます。

Posted by 大谷佳子 at 2013年12月31日 03:50 | 返信

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