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福島県の首長選に見た光明

2014年01月03日(金)

福島県の首長選の動向を御存知だろうか?
現職の首長が6連敗と、続々と倒れる中、咋年末に行われた
福島県相馬市長選挙から見えてきた光明について考えてみたい。
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震災復興に尽力してきた現職首長が相次いで再選を果たせなかった。
福島市、二本松市、いわき市、双葉・・・

6連敗中の中、注目された相馬市長選挙だが、
現職の立谷秀清氏が再選を果たした、との報道。
https://www.minpo.jp/news/detail/2013122212893


僅差の再選ではあったが、この選挙が福島の未来、ひいては
日本の未来を見通すうえで、とっても重要な選挙であったかと思う。

どうして福島の首長選挙で現職が6連敗したのか?
あるいは実力派で実績抜群の立谷秀清氏がここまで苦戦したのか?

勝手な分析を試みたい。

反発を覚悟しているが、日本の将来を見通すうえで、自分の中で
避けては通れない分析なので、思いきって書いてみる。


福島の浜通りの人たちの心になかに今、何が起きているのか?
あるいは何が首長選挙の争点だったのだろうか?

以下、すべては遠い関西からの想像。

それは一言で言えば、被曝被害の補償問題と関係ているのではないか。

というのも、
一昨年、いわき市を訪問した時、家を流された人が語った言葉が忘れられない。

「私たちは、家も流され、風評被害にもあっている。しかし補償はたった8万円。
 でも浪江町の人など警戒区域の人は、多額の補償金をもらえて羨ましい。
 いわき市には警戒区域の補償金をもらった人たちが家を建てるので地価が上がった。
 自分たちは家もお金も無いので家を建てたくても建てられないので狭いアパート暮らしのまま。
 私たちいわき市民は、二重の意味でのやられ損だ」と。

二重の意味でのやられ損!??

二重とは、原発と津波の両方という意味のようだ。
損とは、隣町の人は補償金を手にしたが周辺には無いということ。

境界線一本の内と外で、たしかに雲泥の差のようなことが起きるのが自然災害。
警戒区域とそれ以外などに自治体別、地区別に色分けされた。

阪神大震災の時に、私は神戸市灘区に住んでいたが同様な経験をした。
災害ではなく、水俣病などの公害認定にもグレーゾーンの問題が必ず起きる。

どこかで線を引かなくてはならないのだが、
どこかで大きな段差、格差が生じてしまうということ。

線の少し外になった人は気の毒としか言いようが無い。
水俣病は裁判所による逆転認定を経るまで四半世紀を要している。

いわき市の人も、補償金ないし賠償金を願うのは当然だろう。
できれば補償金を沢山取ってくれる首長さんであって欲しいと望むのは当然だ。

19年前の阪神大震災の義えん金の配分も相当に揉めていた。
自然災害と原子力災害の両方にあったら誰だってそう思うだろう。

ところが、そんな住民感情を敢えてあまり代弁しなかった首長がいる。

「被曝なんてたいしたことない。逃げたい人は逃げればいい。
 しかし俺は最後までここに残る。」と爆発直後に宣言した首長さん。

しかし震災数分後には災害対策本部を立ち上げて、今日まで世界中を
巻き込んで様々な自助政策を貫いている。

天皇陛下、ブータン国王をはじめ世界中からもその手腕が称賛された首長さん。
彼は補償金ではなく、自力復興に拘って被災自治体の首長として闘っている。

拙書「平穏死・10の条件」は、平成23年の元旦の施設での看取りから話が
始まるが、実際その2日後の1月3日には、相馬市長の立谷さんと市長室で会った。

彼は、その時、こう言った。
「今日は、さっきまで相馬市と飯舘村の境界にある牧畜家に説明に行っていた。
 境界の外なので補償金は無いが、補償金に関してはどうか我慢してほしいと」

私は彼の口からそう聞いた時、とっさに
「こんな首長がいるのだろうか?普通、首長であれば、
ようし任しておけ、沢山補償金を取るからなと言うだろうに」と。

実際、彼は、
「ガタガタ文句を言わずに普通に頑張ろうぜ」
「補償金などあてにせず、自力で頑張ろう」
「放射能被害なんてたいしたことない。気にせず頑張ろう」(注、長尾の勝手な印象です)
みたいな発信を、終始一貫、続けて来た。

事実、震災2ケ月後の原釜朝市では、家を流されたひとたちが何の援助も受けず、
自力で朝市をたてて、自力復興ののろしを上げているのを目のあたりにして驚いた。

もちろん、同時並行で、震災直後から自力で立ち上がれないひとのために
「無料弁護士相談」を、どの自治体より早く、4月から立ちあげて実施してもいた。

立谷氏と初めて会って、最初に言われた言葉は、
たしか「弁護士費用の負担が大変なんだ」だった。

次々と市長室に来る大物政治家にも、復興費用や補償筋などひとことも言わずに
「困っている人たち、二重ローンになりそうな人の相談費用を国費でお願いしたい」だった。

つまり、あの大混乱の最中に
「自力で立ちあげれる奴は自力で頑張ろう。 
 立ちあがれなさそうな奴は、俺が国から相談費用は持ってくるから
 遠慮なく弁護士と相談してくれ」みたいなことを言われていたのだ。

私はこの時から、この人は普通の人ではないと感じた。

どんな災害であっても被災地の首長の言動として、
常識ではでは考えられない言動と思った。

言葉は適当ではないが、保障誘導型か自立支援型首長に分ければ
完全に後者になる。


果たしてそんな首長が、どこまで住民に受け入れられるのだろうか?

首長はもちろん、選挙という洗礼を受ける。
今回がそうだ。

日本の愚衆政治の歴史から考えれば、当然、
「俺が、国から沢山の補償金、補助金をひぱってきてやるかならな」
という言葉を囁いてくれる政治家のほうが、歩がいいに決まっている。

しかし果たして結果は、立谷氏が僅差で勝ったのだ。

現職6連敗をストップした形だが、
その結果に、大きな意味が隠されていると思う。

それは、立谷氏の言動は、被災地に限らず今後の日本全体の
地方政治の大きなモデルになり得るからだ。

地域包括ケアシステムでしか今後の日本の社会保障システムを維持
できなことが明白となった現在、自助、公助、共助、互助が求められている。

公助は国家の基本骨格ではあるがそれだけでは日本は衰退する。
要するに、みんなが生活保護を望んだらどうなるのか、という話だ。

立谷氏は、「公助より、共助、互助、自助だよ!」と呼びかけて再選を果たした
日本の政治史上でも稀有な政治家ではないか。

相馬井戸端長屋政策は、現在、成功している。
地域包括ケアで首長選挙に勝つなんて信じられない!

彼が再選されたことの意味は、福島県全体の将来にも大きな影響があるということだ。
新しく首長になられた6氏に対しても先輩首長として大きな影響力を発揮するであろう。

そして福島県に限らず、東北全体にも大きな影響があると予想している。
たとえば、東北に新たな医学部新設に向けての動きが加速するはずだ。

医学部は西高東低。

医師の偏在以前に、医学部の偏在が歴然としてある。
薩長土肥の影響が現代にも及んでいるといわれている。

東京に医学部はさすがに多いが、埼玉県には医学部は1ケ所。
東北は医学部も少なく、慢性的な医師不足に震災で拍車がかかっている。


仙台厚生病院を核とする医学部新設の機運は、中央でも高まっている。
仙台には東北大学があるが、被災地全体をカバーすることができない。

仙台厚生や東北福祉大学が核になって被災3県の医療をカバーできればいい。
復興のシンボルになる。

被曝医療の研究も医学部としてやるべきだ。
新しい形での医局機能の拠点でもある。

大切なことは、ただでさせ医師不足の東北の医師を
仙台の新設医大に吸収しないこと。

医師数にまだ余裕がある東京や大阪方面から仙台の新設医大に入学してらえればいい。
ただし、たとえば卒業後10年程度は東北の地域医療に従事すること等を条件にべきだろう。

すなわち、東北版・自治医大を、今こそ、仙台あたりに新設すべきではないか。
へき地医療解消のために造られた自治医大は、全国各地で高い成果を出している。

同様に、被災3件をカバーするための医学部新設は、最優先課題であろう。
そうした壮大な構想を牽引するのが、医師で首長である立谷氏の役割ではないか。


被災地の現実は、もちろんひとことでは語れない。
まもなく3年近くが経過するが、これからが復興の本番だろう。

しかし、誤解を恐れずにいえば
可哀そう、とか、ああなりたくない、という同情論だけでは、立ちいかないと思う。

週刊誌的には、
似非人道メデイア的には、
あるいは愚衆政治的には、
それでいいのかもしれない。

しかし20年後の東北の復興、発展を本気で祈るのであれば、立谷氏のような
勇気と実行力に情がある首長に永田町の国会議員も学ばないといけない。


ところで、
今の日本人は、無意識のうちに”自分以下”を求めている。
ような気がしてならない。

あいつよりは、まだまし。
そこよりは、上だからちょっと安心。

これは日本人というより、文明国に共通する無意識か。

隣よりひどいから補助金や補償金がもっとあるばきだ、
首長は我々の代表なら、国や東電から金をもっと持って来てほしい、
という声は必然。

しかし行きつく先が、部落差別、障害者差別と同様、被曝差別みなたいなものに
私たち自身も、そしてポスト3.11でも、陥っては復興は不毛にならないだろうか。

それは、私j自身も自戒を込めて敢えて書くが、
「人間の心の闇」との闘いではないのか。

福島は大変、であって欲しい。
福島は可哀そう、であって欲しい。
逆に、福島が楽しくて幸せでとってもいい町だったら、チト困る
というような空気を、メデイア報道に感じるのは私だけだろうか。

もとろん、浪江、富岡、南相馬と相馬ではそれぞれかなり様相が異なる。
原発との地理的関係や首長の個性など、運命としか言えない条件があった。

チリチリになった富岡町のひとたちの声を震災後の5月5日に三春町で聞いた。
故郷を失い仮設住宅で年越しをした人のことを想うと、本当に心が痛む。

しかし相馬の居酒屋で飲んでいると、ここは本当に福島かいな?とも思う。
しかし、そんなことはメデイアやブログには正直、書きにくい。

福島は可哀そうであり続けないといけないのか?
幸せであったらいけないのか?

そんな素朴な疑問が続続、頭を持ち上げてくる。

浪江や富岡は大変だが、相馬は大丈夫、って言ってはいけないのか?
東大の坪倉先生のWBCのデーターは本当だよ!
と言うと誰かにヘンなレッテルを貼られるのか?
相馬はまだ不幸中の幸いと思える点がある、など言ってはいけないのか?
その不幸中の幸いと小泉氏の脱原発依存論は相反しない、と言ってはいけないのか?

様々なタブー(?)が、頭の中に浮かんでは消える。

差別は権利を主張し、いつしか利権となり、持続する。
それに安住する政治か、距離を置く政治を目指すのか。

両者は雲泥の差。
真逆のベクトルだ。

誰もが口に出せない「人間の心の闇」に身を呈して挑戦し続ける立谷秀清氏が
僅差で再選されたとの報道に、私は大げさではなく、日本の光明を見たような気がする。


相馬市民のみなさま、ありがとうございました。
みなさまの審判で東北、そして日本の未来は変わる、と確信しました。

以上、大変偏った、不謹慎な論評だと言わるかもしれない。
しかし自分の中では大切な視点であるので、新年のご挨拶に変えて、書かせて頂いた。










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この記事へのコメント

私も、2011年11月13日に開かれた"阪神から東北を支援する会ー冬が来る前にー"で立谷市長のお話をお聞きしましたが、その時市長が言われた「私には、想定外はありません。」という言葉です。災害発生時の避難誘導訓練にしても、人間が考えて状況を設定すると、『想定外』は発生します。立谷市長は、当時としてはありえないような状況をもコンピューターを使って想定し、対策を検討されていたそうです。
もう一つ思い出されるのは、その時の特別ゲストとして、長尾先生が東京の西新宿で路上ライブをしていた若者に感動し、来てもらっていたことです。その時の歌声は今でも思い出されます。その時の若者上田和寛さんが嵐や倖田來未に楽曲提供している杉山勝彦さんとUSAGIというユニットを組んで、1月29日にメジャーデビュー・シングル「イマジン」を発売されます。こちらも応援したいと思います。

Posted by 国見 at 2014年01月03日 12:15 | 返信

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