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延命と縮命の分水嶺
いつやめるの?今でしょー!
2014年01月12日(日)
医療タイムス正月号には、延命と縮命の分水嶺について書いた。
正月1番の講演も、同じ演題だった。
やるやらない、ではなく分水嶺を意識することの大切さを訴えていきた。
http://www.drnagao.com/pdf/media/iryotimes/iryotimes140106.pdf
医療タイムス1月号 延命と縮命の分水嶺
―やるやらないではなく「やめどき!」ー
長尾和宏
1年半前に出版された私にとって19作目となる「平穏死・10の条件」(ブックマン社)という本は13万部を超える大きな御支持を頂いきました。韓国や台湾でも翻訳本が出版され多くのアジアの人にも読んで頂いたことは想定外でした。アジアは終末期医療においても常に日本の動向を注視しています。その後に出た書籍「胃ろうという選択しない選択」(セブン&アイ出版)では、胃ろうの否定ではなく、最も優れた人工栄養の道具であるので胃ろうを上手に使おう、もしそれを造設するならば再び食べられる「ハッピーな胃ろうにしよう」と呼びかけました。
一方、最近のエンデイングノートや終活ブームは結構なことです。しかし本人の意思よりも家族の意思が優先せざるを得ない医療現場を憂い、「平穏死という親孝行」(泰文堂)、「家族が選んだ平穏死」(祥伝社)、「がんの花道」(小学館)など家族に向けた本を3冊書きました。そして直近は、「抗がん剤・10のやめどき」(ブックマン社)という本が出ました。鈴木信夫さん(57歳、仮名)が胃の不調でかかり医を受診。胃がんが見つかり外科手術。その後、再発予防のために抗がん剤治療を行っていましたが、腹膜再発。セカンドライン、サードラインの抗がん剤治療と進むうちに在宅療養になるというストーリーです。消化器の勤務医として、また在宅医としてのこれまでの経験をハーフフィクション、ハーフノンフィクションという形ですべて織り込んだ町医者版"がん小説"です。一連の経過の中に、抗がん剤のやめどきが10ケ所あることを提案しました。抗がん剤はいうまでもなく延命治療。いや抗がん剤に限らずほぼすべての医療は延命のために存在します。しかし延命治療は最期まで延命足り得ません。ある時期からはかえって命を縮めてしまうどころか、苦痛を増大させQOLを落とします。すなわち「延命と宿命の分水嶺」は一体どこなのか?という問題提起をした本でもあります。実はその分水嶺こそが「終末期」なのです。終末期の定義は病態によってももちろん異なり、定義は困難です。しかし終末期なんて無いのか?と聞かれたら答えはNO.イヌやネコに終末期があるように人間にも必ずあります。数字では定義できない終末期は、みんなで感じて何度も話合うことが大切だと思っています。
書店には医者が書いた「医者に殺される」「病院に殺される」という本が並び、飛ぶように売れています。強烈な医療不信の風を感じます。患者の恨みは医療者の想像以上に深刻です。しかしだからといって医療を全否定しても不毛で極論からは何も生まれません。もちろん私は医療否定論者ではありません。がんの予防や早期発見を啓発する立場です。助けられる命は医療という道具を上手に使いしっかり助けたい。しかし分水嶺以降(終末期)は、過剰な医療をしないほうが長生きできて平穏な最期を迎えられると主張しています。
というわけで今年の私のキーワードは「やめどき」です。分水嶺もやめどきも患者さん自身、ご家族がよく感じて、医療者と何度も相談するプロセスが大切です。「いつやるの?今でしょー?」が流行語になりましたが、私は「いつやめるの?」と、問いかけていきます。今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
今日、拙書「抗がん剤10のやめどき」を読みなおした。
http://www.amazon.co.jp/%E6%8A%97%E3%81%8C%E3%82%93%E5%89%A4-10%E3%81%AE%E3%80%8C%E3%82%84%E3%82%81%E3%81%A9%E3%81%8D%E3%80%8D-%E9%95%B7%E5%B0%BE-%E5%92%8C%E5%AE%8F/dp/4893088076/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1378141318&sr=1-1
書いた本人が言うのもなんだが、実にいい本であると思った。
この本は、これまで書いてきた20数冊の本の集大成。
どれか1冊を、と聞かれたら、この本をと答えている。
それくらい自信を持って、いい本だと言える。
「やめどき」に興味のある方は是非読んでください。
後悔はさせません。
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この記事へのコメント
『抗がん剤10のやめどき。』読ませていただきました!!!!聞きなれないタイトルにひかれてガン闘病中の父にわたしました。父も私も感動し、去年読んだ本の中でナンバーワンとしました。それ以来長尾先生のブログを読んでいます。押し付けがましくなくて、優しいのに冷静に抗がん剤治療と、家族の心を丁寧に描写していたので、一気に読めました。父も私も考え方が変わりました。ありがとうございました。
Posted by 匿名 at 2014年01月13日 02:58 | 返信
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