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看護師が真剣に考えるリビングウイルの法的担保

2014年01月29日(水)

日本医師会や日本医学会も、死やリビングウイルをなぜかタブー視して、
オープンで具体的、根本的な議論を避けてきた。
差し障りの無い綺麗ごとだけを言って、誤魔化してきたのが現状なのだ。
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そんな医師たちをあざ笑うかのように、終末期における患者さんの権利を
護ることに体を張っている看護師さんがおられる。

咋年秋に開催された、日本看護学会での千葉大学からの発表をご覧頂きたい。
なんと20年という歳月をかけて終末期の問題に取り組んでいるのだ。

しかも綺麗ごとだけでなく、法制化への道についても考察している。
聖路加看護大学学長の井部俊子氏もたいへん感銘を受けたようだ。

日本医師会も少しは見習ってほしいな。
リビングウイルや法的担保についてちゃんと議論してほしい。

なんて言うと必ず「じゃあお前がやればいいじゃないか」と言われる。
私自身がいくら日本医師会でいい仕事をしたいと願っても絶対に叶わない。

市の理事を最低二期4年、県の理事を最低二期四年はしてからでないと
日本医師会の代議員に立候補できる立場に辿りつけない仕組みなのだ。

白い虚塔も面白いが、医師会はもっと摩訶不思議な世界。

品行方正で円満な前期高齢者か後期高齢者でないと
日本医師会で発言することができないのが、医療界だ。

http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03061_05

 

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井部俊子

聖路加看護大学学長

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こういう研究発表を聞けると学会に参加して少し得をした気分になる。それは,台湾「安寧緩和醫療條例(ホスピスケア法)」制定過程における看護職の貢献に関する研究(和住淑子・錢淑君,千葉大学大学院看護学研究科附属看護実践研究指導センター)である。

 

 私が第33回日本看護科学学会の一般口演32群の座長をするため早めに発表会場を訪れたために出会った31群の発表であった。まさに意図していなかった出会いであったので,「少し得をした気分」になったわけである。そういうわけで,本稿では講演集の抄録とプレゼンテーションの内容をもとに再構成して読者に伝えたい。

 

 この研究は,台湾の「安寧緩和醫療條例(ホスピスケア法)」の制定に中心的役割を果たした看護職である趙可式氏の活動に関するインタビュー調査データと関連資料に基づいており,看護職の視点からその政策活動の特徴を明らかにし,保健医療政策の策定・実現過程における看護職の貢献について考察することを目的としている(発表者の和住さんは「ホスピスケア法」という言葉を用いていたが,本稿では「安寧緩和醫療條例」が持つ響きを尊重して漢字を用いたい)。

 

 分析はこのように行われた。(1)同法の制定(2000年)および改正(200212年)にかかわる局面を特定する。(2)局面ごとに「着目した事象」「着目した事象に対する認識」「実際の行動」を整理し,趙の問題の構造把握およびその解決に向けた活動の特徴を導き出す。そして,(3)保健医療政策の策定・実現過程における看護職の貢献について考察する。個人は特定可能であるため,個人情報を含め公表を前提としていることを説明し承諾を得ている。

 

直接的体験から学術的探究,理念の明確化から行動へ

 台湾では,これまで患者の救命のために最大限の医療を行う義務が「醫師法」に明記されていた。そのため末期がん患者にも救命目的の医療が行われていた。趙さんの実父の入院においても積極的な治療が施され,いわゆる「スパゲティ症候群」状態となった。延命治療を望まない父の医療処置の中止を趙さんは求めたが,醫師法を理由に拒まれた。趙さんは看護師であることから自己責任でチューブ類の抜去を認められ,病院に対して「訴えない」という書状を書いた,と和住さんは口演発表で言及した。趙さんと父親は,穏やかな別れができた。趙さんはこの体験から「醫師法」は問題があることに気付いた。看護師である自分以外の人はチューブを抜去することはできない。

 

 その後,趙さんは専門的な判断力を習得するために米国・英国にてホスピスケアを学び,学位を取得する。そして,終末期専門の訪問看護師として活動し,終末期を安寧に過ごす支援が可能であるという手応えをつかむ。

 

 しかし,家族が救急車を呼んだために望まない延命治療を受けながら亡くなるという事例を経験することになる。専門的ケアがあっても法的な根拠がなければ理念を実現できないと認識した趙さんは,立法権を持つ国会議員の支援が不可欠であると判断した。趙さんの看護実践の講演を聞いた国会議員が心を動かす。趙さんはその人脈を最大限に活用して政治活動を展開する。さらに,医師を対象に終末期患者への医療に関する質問紙調査を行い,法制定の必要性を強く社会にアピールする。こうして「安寧緩和醫療條例」の制定を成し遂げた。

 

3つの流れが合流したとき,「政策の窓」が開く

 研究者は,趙さんの政策活動の特徴を以下の3点にまとめた。

 

1)直接的な看護体験から患者・家族にとって何が最善であるかを考え,それを学術的に探究し理念を明確にする。

2)理念を社会一般へ普及するには法的整備が不可欠であると判断する。

3)終末期看護実践の特殊性を明確にし,有力者とのネットワークを積極的に活用しながら,理念の実現をめざす。

 

 政策には「問題が注意を引きつけること(problems)」「政策案が形成され生成されていくこと(policies)」,そして「国民のムードを含めて政治的な力が作用すること(politics)の3つの流れがあり,それらの流れが合流して,初めて政策課題として取り上げられる。したがって,流れが合流するための「政策の窓」が開く時期を待たねばならないと,政治学者のジョン・W・キングダンは「政策の窓モデル」で説明している。

 

 看護職は,直接的な看護体験とその特殊性を根拠に,具体的な政策を提言し,保健医療政策の策定・実現過程に貢献できることを示している。

 

* 演題発表後,私は手を挙げて,大変感銘を受けたこと,プレゼンテーションの内容がよく整理されわかりやすかったことを発表者に告げたあと,趙さんの年齢とこの政策過程の実現に費した時間を質問した。趙さんはこの課題に40代から取り組み,実現したのは60代であったから,20年の歳月を費したということであった。つまり,20年の執着があればたいていのことは実現できるという偉大な教訓を,私は得た。

 

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この記事へのコメント

認知行動療法が看護実践における考え方の基盤となります。基本的な看護に不可欠な知識・技術を身につけ、正しく安全にチェックリストを使って、ナーシングが実践できること。管理的な分野について正しく理解し、配属前に個別研修を行ない夜勤勤務が安全に実践できるようにします。チーム看護を理解し、メンバーとして責任を持って行動でき、チームリーダーとして受け持ち患者の看護に責任を持つことができること。根拠のあるナーシングを行ない、適切な指示受け・看護判断をします。他職種の役割、配属部署との関わりを理解し、患者の欲求を理解、ひとりひとりに適合した看護計画・実践・評価を実施し、カンファレンスの必要性を理解し、看護実践に活かして配属において、専門的看護を実践していきます。

Posted by 看護実践 at 2016年04月25日 12:24 | 返信

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