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未来は知れるか、変えられるか?

2014年02月06日(木)

遺伝子検査が簡単に出来るようになったのは凄いこと。
しかし設計図だけで、未来は本当に知れるのか?
あるいはそれを知ることで未来は本変えられるのか?
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明日の講演の内容とも重なる命題。

今週号の医療タイムスに書いた記事から転載させていただく。
http://www.drnagao.com/pdf/media/iryotimes/iryotimes140203.pdf

医療タイムス2月号   未来は知れるか、変えられるか? 長尾和宏

 

 開業医への遺伝子検査の売り込みが始まっています。「貴院も遺伝子検査で差別化を」のようなことがパンフレットに書かれています。2003年に人遺伝子がすべて解読されて以来、次世代シークエンサーの進歩で遺伝子解析が比較的安価で行えるようになってきました。がんや認知症や生活習慣病の遺伝子解析が、30~40万円程度で可能になり、限りなく10万円を目指しています。単品メニューですと10万円を切る“商品”もあります。女優のアンジェリーナジョリーさんが乳がんの遺伝子BRCA1/2陽性とのことで両側の乳房を予防的に切除したとの報道が拍車をかけています。日本においてもすでに同様な予防的手術がかなり行われているそうですが、最近、開業医の日常診療でも遺伝子検査についての相談が増えてきました。


「遺伝子医療革命―ゲノム科学が私たちを変える(フランシス・S・コリンズ著)」に書かれているように、遺伝子医療は未来ではなく、もはや現実です。
EGFR遺伝子変異陽性の肺がんへのイレッサ投与やHer2陽性の乳がんにハーセプチン投与など、がんの分子標的治療薬は発展しています。こうした遺伝子検査の対象は、がん治療に留まりません。生活習慣病やアルツハイマー病などさまざまな疾患にも広がっています。がん治療において分子標的治療薬の適応を決めるための遺伝子検査は、一部は健康保険が適応されていますが大半は自費診療です。私は抗がん剤治療のための遺伝子検査と予防医療に関する遺伝子検査は区別して考えるべきだと思います。抗がん剤の選択のための検査は治療の奏功率を上げるのが目的で、患者さんの利益が大きい。一方、予防医療を目的とした検査は患者さんにどれほどの利益があるのでしょうか。がんになるぞ、認知症になるぞと言われて嬉しい人はいません。占いで「早死にします」と言われるようなもので相当なショックを受けるでしょう。「そんな検査受けたい?」と何人かの知人に聞いてみましたが、したいと答えた人はゼロでした。しかし、すでに開業医には遺伝子検査の売り込みが始まっています。遺伝子ですべてが決まるわけでは無く、努力することで未来を変えることができる。遺伝子は設計図にすぎず、その後のライフスタイルや心の持ち方で変えることができると私も思います。一卵性双生児が同じ病気になるとは限りませんから。そうしたメカニズムは、今後のエピジェネテイック医学の発展で説明されることでしょう。


 現在ではまだ「占い」レベルであると言える遺伝子検査ビジネスに対して、町医者は安易に受け入れないほうがいいのではないか。一見科学的な予防医学であるような印象を受けますが、エビデンスは無いに等しい。無用な混乱を避けるためにも、厚労省、経産省、医学界は早急に連携を取り、何らかの規制を設けるべきではないか。もし検査を行う場合は、大学病院などで遺伝子カウンセラーと協働して行わないと、知ってしまったためのストレスの方が大きいのではないかと懸念します。


 欧米や中国の検査会社が遺伝子検査ビジネスを日本の医療機関に売り込んでいます。TPPを待たずしてもはやグローバルビジネスに巻き込まれています。大変興味がある医療分野ではありますが、しばらく静観しておこうと思います。

 

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