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ウイルスシリーズ第８話　　先天性風疹症候群

　　　　　　　　　　　　　空白世代はワクチン接種で予防

　インフルエンザが依然猛威をふるっています。流行はＡ型からＢ型に移ってきました。今日はこの時期に敢えて風疹について書きます。昨年は風疹が大流行しました。風疹自体は麻疹や水疱瘡に比べて軽く、“３日ばしか”とも呼ばれています。しかし妊娠初期の母親が感染するとウイルスが胎盤から胎児に移行して先天性風疹症候群（ＣＲＳ）を起こします。ＣＲＳとは、先天性心疾患や難聴や白内障などの後遺症のことです。

　２０１３年は約１万４４００人が風疹に感染しました。患者の７割以上は男性で２０～４０代が８割を占めました。そして３１件ものＣＲＳが報告されました。１人のＣＲＳの背景には約６０倍の自然流産があると言われています。また風疹に感染した妊婦さんは人工妊娠中絶が多いとも言われています。つまり風疹は実は多くの命を奪っているのです。２０～４０代の男性と２０～３０代の女性には免疫が無い人が多い。ワクチン未接種の年代層、すなわち空白世代が風疹の流行を生んだ主な原因でした。従ってＣＲＳを減らすためには、妊娠前の女性のみならず社会生活を営む全ての人の流行を抑えることが大切です。

　ＣＲＳを予防するには家族ができるだけやワクチン接種を受けることが大切です。しかし予防接種には谷間の世代があります。谷間とは現在、２６才以上の男性と２６～３４才の女性です。２０１１年に国が行った調査によると２０～４０代の男性の１５％、女性の４％は風疹への抗体を持っておらず、さらに１１％は低い抗体価とのこと。しかし血液検査でこうした風疹抗体価を測ってからではなく、抗体価にかかわらず一斉にワクチン接種したほうがトータルの費用が安く済むということがわかっています。あとワクチンというとなにかと副作用が心配の方も多いでしょう。すべてのワクチンに副作用はつきものですが、風疹ワクチンの安全性は高いことが分かっています。ちなみに接種は女性は妊娠していない時期の生理中ないしその直後が一番いい。またワクチン接種後２ケ月は避妊する必要があります。

ワクチンの接種費用の問題もあります。単独ワクチンでは４０００～８０００円、混合ワクチンで８０００～１万２０００円と、平均約１万円もかかります。もし２０～４０歳の全員に接種すると４８００億円にもなるそうです。一部の企業や一部の自治体では妊娠を希望する夫婦らを対象に接種費用を助成しましたが、いまだ多くの自治体では個人負担のままです。しかし重い後遺症を残した子供の親などから公費助成の拡大と一斉接種を求める声が高まっています。

　
　風疹は７～１０年周期で大流行するので、次の流行は２０年の東京五輪前後ではないかと予想する人がいます。その時までに日本から風疹を根絶するためには、今、ワクチンをやっておくことが大切なのです。ウイルス対策は流行の２年前が重要。そろそろインフルがピークを迎えようとしているこの寒い季節ですが、風疹ワクチンの接種も是非忘れずに、お願いしたいと思います。この時期なら、風疹ワクチンにも余裕があります。風疹ワクチン接種、いつやるの？今でしょう！なんて感じでしょうか。（ウイルスシリーズ終了）

キーワード　先天性風疹症候群（ＣＲＳ）

妊娠４ケ月以前の妊婦が風疹にかかると胎児に先天性心疾患、白内障、難聴、発達障害などがおこる。症状には個人差があるが、妊娠初期の感染であるほど胎児に影響が出る確率が高くなる。