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地域包括診療料

2014年04月03日(木)

この4月から地域包括診療料/加算という新しい診療報酬が登場した。
気持ちは分かるが、どうもしっくり来ない。
せっかくの改定なのに、モッタイナイ、という感じ。
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今週号の「医療タイムス」の連載は、これについて書かせて頂いた。
一方、この制度を作った宇都宮課長のインタビューがm3に流れている。

両者を続けて、転載させていただく。

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医療タイムス3月号  診療報酬改定に思う  長尾和宏

 http://www.drnagao.com/pdf/media/iryotimes/iryotimes20140331.pdf

 先日、診療報酬改定の説明会に出席しました。いつもながらのなんともいえない重い雰囲気の中、淡々と説明が続きました。開業医にとって目玉といえば「地域包括診療料」なのでしょうか。これを発案された方の気持ちはなんと分からないでもないが、不思議だらけです。いくつかの条件がつけられていますが、「常勤医3名以上」で、まずほとんどの診療所は該当しません。次に「院内処方」とあるので二度驚きます。もし仮に常勤医が3人もいるならば、それ相応の患者数があり、多くは院外処方ではないでしょうか。さらに糖尿病、高脂血症、高血圧、認知症のうち2つ以上を有する患者さんを診た時、とのことですが正直、認知症がよく分かりません。どのレベルで診断するのでしょうか。専門医のお墨付きが必要なのでしょうか。ある程度の年齢になれば、認知症は有るか無いかではなく、程度の問題のはず。それを有る無しと一方的に烙印を押して加算を取るという発想には抵抗があります。もっともこの点数には「包括」と「加算」があるようで、届け出をしたうえに選択制で算定するようです。全国でどれだけの診療所がこの点数を選択するのか興味があります。もし選択する診療所が極端に少なければ、まさに絵餅の政策となります。

 
 私が一番興味を持つのは、こうした新点数がいったいどのような経緯で国策となるのか、その過程です。どれだけの内部チェック、そして現場を知る有識者のチェックを受けて世に公表されているのか、その過程を知りたい。もしかしたら医師会なり現場のヒアリングを受けていないので、このような点数がいきなり登場するのではないでしょうか。

 
 高齢者住宅への在宅医療の点数が、おそらく在宅患者紹介ビジネスの影響で、いきなり4分の1になり大騒ぎになりました。一部の不届きもののトバッチリを、善良な在宅医が受けるのはあまりにも理不尽です。懲罰は不届きものが受けるべきで、連帯責任的な点数改正はどう考えても感情的だと思います。もっとも不届きものに対して自浄作用を発揮できなかった医師会や在宅医療界にも、反省が残るとは思います。まるで抜け穴を埋めるような修正案も示されていることに驚きました。訪問日を変えるなどの工夫をすれば点数が変わる?しかしそこまでするならそもそもなぜ、4分の1にしたのかという疑問が残りました。これもどこまで事前検討されてから公表に至ったのでしょうか。正直、よく分からない点数ばかりでした。

 
 いろいろ説明を聞きましたが、開業医にとって大きな変化は少ないようで、病院さんが大変だなあという印象を持ちました。どんどん在宅復帰を目指すのはいいとして、肝心の国民がそうした政策誘導を理解しているのか甚だ疑問です。正確に言うと、とっても不安です。今後、望まざる在宅や在宅難民の増加が予想されます。もはや2000年以前ののどかな在宅風景は遠き“思ひ出”となり果てました。2000年以前は、極めてシンプルであった在宅点数が、改正のたびに複雑怪奇なものに変容し、とてもついて行けないと嘆く開業医も多くおられます。新しい政策自体が目指す政策の足かせにならぬよう、次回の改訂では充分に練られた、そして国民の納得の得られる改訂にして欲しいと今から願います。

 

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24時間対応がかかりつけ医の基本
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宇都宮啓・厚労省保険局医療課長に聞く◆Vol.3

 

地域包括診療料、医薬分業の否定にあらず

 

201442() 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長) 

 

――外来の改定では、主治医機能を評価する「地域包括診療料」の新設がポイントです。改めてお聞きしますが、どんな機能を主治医には期待されているのでしょうか。写真宇都宮啓氏は「患者さんに24時間対応する役割を果たすのが、本来のかかりつけ医」との考えを示す。

 

 「今の医師は、臓器や病気しか診ず、患者さんを診ない」と言われることもあります。中には自分の専門しか診ない医師もいるため、患者さんは「最からさまざまな診療科の医師がいる大病院に行った方が安心」と考えてしまう。しかし、それは違うと思います。患者さんと人間関係を築き、「この患者さんの健康問題は、基本的に全て分かります」という、主治医(かかりつけ医)が必要でしょう。

 

 「この患者さんは、腰が痛いから○○整形外科に、白内障については△△眼科」などと、状況を全て把握して、適切なところに紹介する。服用している薬についても全てを把握し、相互作用や重複投薬などをチェックする。治療だけでなく、健康の心配事があった時に、気軽に相談に乗る。高齢者については「もう少し状況が悪くなったら、介護も必要だね」と経過を見つつ、見守る。そうした、あるべき「町医者」の姿とも言うべき医師、医療機関の機能を今回、評価しました。

 

――結果的に、重複受診の防止、ゲートキーパー的な役割を果たすようになってくると見る向きも多い。

 

 患者さんがその主治医を選んで、その主治医が結果的にゲートキーパー的に

なる可能性はあり得るかもしれません。しかし、私は、「この先生を必ず受診

しなさい」と制限する制度を作っても、あまりうまくいかないと思っています。

 

――「うまくいかない」という意味は。

 

 強制されても、やはり患者さんは、その医師から安心が得られなければ、他の医師を受診しようとするでしょう。また、主治医との相性もあります。「あなたはこの先生」と指定されて、最初はうまくいったように見えても、指定された主治医から安心が得られなければ、「やはりダメだな。こちらの医師に変えよう」とか「やっぱり大病院の方が良い」といったことはどうしても起こってきてしまうのではないでしょうか。

 

――安心が得られる医師は、どの程度いるのでしょうか。

 

 もちろん医師の側もきちんと患者のニーズに応えなければいけません。地域包括診療料の届出は、関係団体主催の研修修了が要件で、各団体とも研修を行うと言っています。平成16年から始まった新医師臨床研修制度の中でも、「全人的に診る」能力を身に付けることが目標となっており、それ以後に臨床研修を受けた医師については、能力は向上しているのではないかと思います。

 

――専門医制度で議論されている「総合診療医」とも関係してくる話かとも思

います。

 

 今回の主治医機能は、必ずしも「総合診療医」を求めているわけではありません。きちんと患者さんの全体を把握して、適切な診療科に紹介できればいい。それができれば、例えば眼科医の先生が主治医機能を担ってもいいと思うのです。

 

――月1503点という診療報酬は、比較的高いと思います。例えば、内科診療所のレセプト1件当たりの点数は、1000点程度。現在、幾つの医療機関を受診しているかによると思いますが、患者負担もそれに伴い、上がる。

 

 月に何回受診するかにもよると思うのです。自己負担は、3割の場合は4500円。もし毎週受診するのであれば、1回当たり約1000円。それほど高いと言えないのではないでしょうか。月1回しか受診しないならば、1回で4500円なので、高いと思うかもしれません。

 

 ただ、地域包括診療料は、単に受診して診てもらうだけではなく、いつでも困ったら相談に乗ることにも対応した点数なので、この辺りも含めて評価していただきたい。

 

――包括の「地域包括診療料」と、再診料への加算である「地域包括診療加算」の二つが設定されました。どちらの評価が妥当かは、今後の状況次第。

 

 「地域包括診療料」の算定は、診療所の場合は常勤医3人以上在籍していることが要件です。個人的には、診療所は、1人開業の時代から、少しずつ変わる必要があるのでは、と考えています。ただし、1人開業を否定するものではないので、「地域包括診療加算」を新設しました。この加算なら、1人開業でも算定できるでしょう。包括点数と加算のどちらが妥当かという点については、今後の算定状況や診療状況等をよく見た上で検討すべきかと思います。

 

――「地域包括診療加算」に対しては、「24時間拘束するのか」との指摘もあります。

 

 なぜそのように捉えるのでしょうか。患者さんに24時間対応する役割を果たすのが、本来のかかりつけ医。信頼関係がまだ薄く、心配事が多い時には結構、夜間でも電話がかかってくるが、信頼関係が次第に構築でき、患者さんに心感が生まれてくれば、ほとんど電話はかかってこないというお話をよく聞きます。そもそもこれは加算ですので、在宅療養支援診療所等と同様、できる医療機関が行えば良いのです。

 

――この点数設定に当たって、モデルにした地域などはあるのでしょうか。

 

 それはありません。

 

――どのくらいの病医院が算定すると見ておられますか。

 

 まだ分かりませんが、診療所や中小病院の2割くらいが算定すれば、いい方かと思っています。今回は、確実に主治医機能を果たしている病医院が少しでも算定してくれれば、数が少なくてもいいと考えています。

 

――そうした施設で、モデル的な取り組みが出てくればいい。

 

 そうです。その状況を見て、次の改定で、必要があれば、要件を変えればいいでしょう。

 

――地域包括診療料の対象は、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、認知症の4患ですが、対象疾患を今後、拡大する予定は。

 

 可能性はあるとは思いますが、まずは今回の新点数でどんな状況になるかを見た上でのことでしょう。いきなり対象疾患を広げて、訳が分からなくなることは避けたい。

 

――地域包括診療料については、「院内処方を原則」としたのはなぜでしょうか。24時間対応できる薬局との連携も可能ですが、そう24時間対応薬局は多くはありません。

 

 中小病院など、薬剤師がいる医療機関では、「自院の薬剤師を活用してください」ということです。他院を受診した場合も含めて、服薬管理を全てやってほしいからです。自院の薬剤師が知らないのに、外の薬局にいる薬剤師が、患者の服薬情報を知っている状況には、違和感を覚えます。しかも、普段は外来に通ってもらうけれども、具合が悪くなったら、入院するかもしれません。その時に、「この患者さんがどんな薬を飲んでいるかは、外の○○薬局に聞かないと分からない」という状況はおかしいでしょう。

 

――そうであれば、病院として外来も院内処方に切り替えた方が合理的かもしれません。

 

 いえ、これは地域包括診療料を算定する患者さんに限ったことで、病院全体を対象とした話ではありません。同診療料の算定対象の患者さんは、数も絞られます。

 

 もし院外の薬局と連携するのであれば、当然その薬局も、かかりつけ機能をきちんと持ってもらう必要があります。患者さんが例えば3つの医療機関を受診する場合、その全ての処方を把握している薬局があれば、その薬局と連携することが可能です。そうではなく、別々の薬局が処方を管理している状況はやはりおかしいし、それでは服薬管理などできません。しかし、「地域によっては、かかりつけ薬局が整備されている」という程度で、全国的に見れば少ないのが現状です。

 

――医薬分業の本来の目的を徹底してほしい、という思いも込めている。

 

 そうです。かかりつけ薬局にしっかりしてもらいたいのです。特に、無床診療所には薬剤師がいるケースはほとんどない。これから院内処方に戻すのは無理です。薬局がかかりつけ機能を持ち、その薬局と医療機関がきちんとした連携してもらいたいということです。

 

――保険薬局については、門前薬局に対する締め付けが厳しくなっており、そうしないと経営が厳しくなる。

 

 そうです。今こそ、門前ではなく、街の薬局にがんばってもらいたいと考えています。

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もっと知りたい方は、日本医事新報の連載に寄せた小文を
参考にしてください。
http://www.drnagao.com/pdf/media/jmedj/nihniji20140301.pdf

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この記事へのコメント

現場を知らない人か、頭の悪い人が、考えたのでしょうか?

Posted by 匿名 at 2014年04月04日 12:48 | 返信

制度改正のたびに思います。主人公は誰?誰のための改正?
ソーシャルワークは現場第一ですが、医療は?

Posted by 社会福祉士河本健二 at 2014年04月05日 10:12 | 返信

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