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名古屋の認知症裁判へのその後の議論
2014年05月20日(火)
名古屋高裁が、認知症の徘徊に対して、配偶者に360万円の損害賠償を求めた件。
家族は最高裁に上告するとの報道を目にしたがこれは極めて本質的な問題だと思う。
その後の、厚生労働大臣や有識者の発言をネットから拾ってみたい。
家族は最高裁に上告するとの報道を目にしたがこれは極めて本質的な問題だと思う。
その後の、厚生労働大臣や有識者の発言をネットから拾ってみたい。
田村憲久厚生労働相はこの日の記者会見で、徘徊(はいかい)症状がある認
知症高齢者が列車にはねられ死亡した事故で、家族の監督責任を認めた名古屋
高裁判決について「今回のような事故が起こり得ること自体が大きな課題。ど
う防ぐかを念頭に置き、政策をつくりたい」と述べた。
徘徊中の事故「妻に責任」 名古屋高裁判決、列車遅れ賠償命令
一審からは減額 朝日新聞 2014年4月25日(金) 配信
認知症で徘徊(はいかい)中に列車にはねられ、死亡した愛知県大府市の男
性(当時91)の遺族に、JR東海が損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が2
4日、名古屋高裁であった。長門栄吉裁判長は、介護に携わった妻と長男に請
求通り約720万円の支払いを命じた一審・名古屋地裁の判決を変更し、妻の
監督責任を認め、約359万円に減額して支払いを命じた。長男には見守る義
務はなかったとして、JR東海の請求を棄却した。
JR東海は、列車の遅れに伴う振り替え輸送費などとして損害賠償を求めて
いた。昨年8月の地裁判決は、横浜市に住み、男性の介護方針を決めていた長
男に事故を防ぐ責任があったと認定。徘徊し事故に遭う可能性を予測できたの
に、見守りを強める責任を果たさなかったと判断した。事故当時85歳だった
妻については、長男が決めた介護方針で、男性と2人きりの時に目を離さずに
いる義務を負っていたのに怠ったと結論づけた。ほかの親族3人は介護への関
わりが乏しいとして責任を認めなかった。
これに対し、高裁判決は相当前から長男は男性と別々に暮らしていて、経済
的な扶養義務があったに過ぎず、介護の責任を負う立場になかったとして、男
性への請求を退けた。一方、妻については配偶者として男性を見守る民法上の
監督義務があったと判断。高齢だったものの、家族の助けを受けていて、男性
を介護する義務を果たせないとは認められないと判断した。
その上で、徘徊防止のため設置していた出入り口のセンサーを切っていたと
して、「監督義務者として、十分ではなかった点がある」とし、事故に対する
責任があると結論づけた。
ただ、長門裁判長は、妻の日常の見守りについて「充実した介護態勢を築き、
義務を尽くそうと努力していた」と評価。さらにJRの安全管理態勢について
は「安全性に欠ける点があったとは認められない」としたうえで、「社会的弱
者も安全に鉄道を利用できるようにするのが責務だ」と言及。フェンスに施錠
したり、駅員が乗客を注意深く監視したりしていれば事故を防ぐことができた
として、「賠償金額は一審の5割が相当」とした。
(久保田一道)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
■認知症介護「閉じ込めるしかないのか」
65歳以上の約7人に1人。認知症の人の数は急増し、2012年時点の推
計で約462万人に達する。認知症の介護は誰にとってもひとごととは言えな
い。「閉じ込めるしかないのか」。判決を受け、家族からは切実な声があがる。
「とても承服できない判決だ。『家族に責任がある』とだめ押しされた」
この日、最前列で裁判を傍聴していた「認知症の人と家族の会」(本部・京
都市)の高見国生代表理事は強い口調で語った。賠償責任を問われたのが妻だ
けになったが、「本質ではない。介護者に責任を負わせる内容は、何ら変わっ
ていない」と批判した。
この判決が前例となって、裁判で責任を問われる介護家族が増えるのではな
いか。高見さんは危機感を募らせる。「24時間、一瞬の隙もなく家族が見守
ることは不可能。それでも徘徊(はいかい)を防げ、と言われたら、鍵つきの
部屋に閉じ込めるしかなくなってしまう」
少人数の家庭的なケアを目指し、認知症ケアの切り札と呼ばれるグループホー
ム。全国に約1万2千カ所ある。
福島県認知症グループホーム協議会会長の森重勝さんは、施設などに預けた
いという家族の要望が強まるのではないか、と心配する。「『いざという時に
責任を問われるなら、やはり入居してもらっていた方が安心』となる」
判決は家族の監督責任を問題にしたが、同じように介護事業者が責任を問わ
れるのでは――。そんな懸念もある。自由に出入りできるような家庭的な環境
で支えるのか、見守りや安全を重視して鍵をかけるのか。埼玉県にあるグルー
プホームの責任者は、「『本人の気持ち』と、『事業者としての責任』との間
で、どうしたらいいのか悩む」と打ち明ける。介護事業者が見守り責任に過敏
になれば、認知症の人がさらに行き場を失ってしまいかねない。神奈川県内の
施設関係者は、そう警鐘を鳴らす。「徘徊が激しい人を受け入れたときのリス
クが高まるなら、この先、受け入れを断るところが出てくるだろう」
■徘徊事故の賠償「認知症保険」を
二宮周平・立命館大学教授(家族法)の話 徘徊による損害賠償については、
裁判などで個々に請求するのではなく、「認知症保険」のような公的な仕組み
を作るのも一案だ。例えば鉄道事故対策ならば、保険料は社会的コストとして
運賃に加算し、事故があれば保険から支払うなど、社会全体で認知症のリスク
を分散する仕組みを検討していくべきではないか。
◆キーワード
<認知症男性の死亡事故> 愛知県大府市で2007年12月、認知症の男
性が徘徊中、JR東海道線共和駅の構内で列車にはねられた。男性は「要介護
4」と認定されていた。日常的な介護は、自らも「要介護1」と認定された同
居する当時85歳の妻と、介護のために近くに転居してきた長男の妻があたっ
ていた。事故当日、男性は部屋で2人きりだった妻がまどろむ間に外出してい
た。○×君 徘徊事故で家族に賠償命令 投票受付中!
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
鉄道各社は賠償請求 多くは和解、提訴は異例
共同通信社 2014年4月25日(金) 配信
認知症高齢者らの電車事故が起きた場合、鉄道各社は通常、振り替え輸送の
費用や人件費などを合わせた損害額を本人や家族側に請求している。ただ家族
らが支払いに応じるなどして和解する事例が多く、鉄道関係者は「訴訟に至る
ケースは珍しい」と話す。
国土交通省によると、2012年度に全国で発生した鉄道事故は811件で、
死者は295人に上る。認知症患者の事故件数に関する統計はないが、高齢者
の事故もたびたび起きている。
近畿日本鉄道(大阪)と名古屋鉄道(名古屋)は、線路や駅ホームへの立ち
入りによる死亡事故について、認知症などの病気に起因しているかどうかにか
かわらず損害額の賠償を遺族らに請求。JR東日本(東京)や小田急電鉄(東
京)も「事故の原因や状況などを総合的に判断し、必要であれば損害賠償を請
求する」と説明する。
名鉄では通常、人身事故発生後は警察を通じて家族に連絡し、損害賠償額に
ついて協議。JR東日本などによると、賠償額には振り替え輸送の費用や人件
費だけでなく、列車の運休による機会損失費、設備の修理費などが含まれるこ
ともあるという。
ただ近鉄の担当者は「遺族が相続放棄している場合などは、例外的に請求を
取りやめることもある」としている。
徘徊事故訴訟の判決骨子共同通信社 2014年4月25日(金) 配信
一、妻は男性の監督義務者の地位にあり、行動把握の必要があった
一、妻は事務所出入り口のセンサーを作動させるという容易な措置をとらず
監督不十分
一、長男の扶養義務は経済的なものが中心で、監督義務者ではない
一、駅員が線路立ち入りを阻止できなかったことは過失とは言えない
一、ただJR側の駅利用客への監視が十分で、ホームのフェンス扉が施錠さ
れていれば事故を防げたと推認される事情もある
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
・平成26年4月22日付大臣会見概要
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=198713
(記者)
認知症やその疑いあって行方不明となって、無事保護されたんですけれども、
身元が分からないと。自宅に戻れずに自治体の保護という形で、今も介護施設
なんかで暮らしているという方が取材できただけでも4人いたということです。
認知症の人については地域包括ケアという形で進めていらっしゃって、特に行
政の各機関が連携して支えるというものが基本だと思うんですけれども、今後
高齢化、単身化、それに認知症の人が増えていくということが予想される中で、
今回の事例をどのように御覧になっているのかということをまずお聞かせいた
だければと思います。
(大臣)
社会的に超高齢社会に入ってきまして、特に日本の国は平均寿命が非常に長
くなってきている国でありますので、当然のごとく認知症の方々も増えてこら
れるわけであります。そういう意味では厚生労働省としても5か年計画を立て
て、早期のうちから対応するということで初期集中支援チームというものを作
りながら、各地域で早いうちから対応をいただきたいというようなことでお願
いをさせてきていただいておるわけであります。取組はそれぞれ地域、行政や
自治会でありますとか、いろんな形の中で対応をいただいておりまして、例え
ば認知症SOSネットワークとうようなものを作っていただきながら対応して
おられる自治体もありますが、基本的にはやはり自治体の中でいろいろと工夫
をいただくということが中心になると思います。名簿を作るといっても、全国
のデータベースというのにはなかなかいかない話でありまして、もちろん認知
症で発見された方は名前や住所がわかっておられれば御自宅に戻れるわけであ
りますが、そういうことがなかなか意思表示ができないという方であれば、何
で身元を見つけるかというと、例えば遺伝子でありますとか、そういうような
ものでないとなかなかわからないわけですよね。それをやろうと思うとすごい
データベースを作らないといけない、それは個人情報の問題もありますので、
なかなかそこまでのものを全国的に整備するというのは難しいわけであります
ので、やはりある程度は自治体でそこは御認識をいただきながら、我々もその
ような問題、どのような対応の仕方があるのかということも含めて、いろいろ
と自治体と力を合わせて検討をしてまいりたいというふうに思いますけれども、
なかなか全国一律の名簿みたいなものを作るというわけにはいかないと。認知
症の方々たくさんおられますし、そこら辺のところは難しい課題として自治体
との協力体制の中で対応してまいりたいというふうに思います。
(記者)
自治体の中で徘徊が収まっていればそれほどそんなに難しくないんですけれ
ども、取材をしていますと自治体を越えて行ってしまうと。特に都心なんかで
すと電車に乗ってしまえばすぐ越えていくと、都道府県を越える、県境を越え
るようなこともあるわけです。そういう中で本当に自治体の中だけで済むのか
という、はっきりそこまで取材が行き届いているわけではないんですけれども、
そういう実感もあります。そういう意味で、自治体だけではなくてもう少し広
い形での取組というのが必要なのではないかと思いますが、大臣はどのように。
(大臣)
基本的に認知症の方で重い方という話になると、家族と住んでおられるパター
ンがあるわけでありまして、家のおじいちゃん、おばあちゃんがいなくなれば
普通は家族の方から捜索願が出ると。捜索願が出ればどこかでそういう徘徊さ
れて身元不明の方が見つかればそこで警察情報と併せてということが一つある
と思います。それから、独居で認知症でという形の場合も御近所の方々のコミ
ュニティでそういう方々を把握しておられなければという話で、地域の中でそ
ういうような情報で合わせていく。もしくは家から出られないということにな
ればたぶんよほど介護サービス等々を受けておられる方々が想定されるので、
そうなれば介護サービスの提供者の方が、例えば訪問でこられた方が本人がい
ないということになれば、それに対して一定の情報提供みたいな形で、そこに
おられた方がおられないという形の中で、うまく情報が合わさればそこの方だ
ということがわかるということで、そういうことも含めて、やはり徘徊をされ
てどこかで身元不明で発見された認知症の方に対応をしていくというのも一つ
であろうというふうに思いますから、そういうことを上手く工夫しながら、言
われたような課題に対応していくというのが、今一番現実的な対応なんだろう
なというふうに思います。
(記者)
新型出生前診断についてなんですけれども、19日に日本産婦人科学会が1年
間で7,775人が受診して141人が陽性だったと発表しました。今後、陽性と判断
された人の中絶の問題について法律でルールを定める必要があると考えてらっ
しゃいますか。
(大臣)
これは非常に難しい問題でもあります。その倫理観だとか、生命観だとかい
ろんな問題、日本の国の中においてもそれぞれ違うわけでありまして、そうい
う中において臨床研究という形で今、学会の方々にお願いをさせていただきな
がら進めていただいておるわけでありまして、学会の指針に則って臨床研究を
進めておられると。その1年経って結果を御発表いただいたということであり
ます。まだ研究は続いて継続されておるわけでありますが、今回の結果から見
ても6割の方々が十分にこの基礎知識というものを持っておられたわけでもな
いというようなお話でございまして、これは引き続きこの研究を続けていただ
きながら、いろんな問題点、課題等々も抽出をいただくものであろうというふ
うに思います。今すぐに国がどう対応するかというようなところは我々はまだ
考えておりません。それよりかはこの非常に難しい問題である点に関して、こ
の臨床研究がどのような問題点というものを我々に提起をいただけるかという
ことも含めて注視をさせていただきたいというふうに思ってます。
(記者)
先ほどの質問に関連するんですけれども、認知症で身元不明のまま自治体に
保護されている方が弊紙の調査でも5人ほど仮名のまま生きられているという
状況がわかって、それに至るまでに警察で保護された後、自治体に引き継がれ
て年間100人を超えるぐらいの方が自治体の提携している介護施設などで保護
されているようなんですが、そういう実際身元不明の状態が続いている人であ
るとか、そこまでは至らないけれども、数日間ないし数か月にわたって身元不
明の状態のまま自治体が保護せざるを得ないような人、そういうのが全国的に
どれぐらい発生していて、今後厚労省としてはどういう体制を築いていきたい
と、そのような考えはございますか。
(大臣)
厚生労働省が国としてたぶんすべて管理するというのはなかなか難しいんだ
ろうと思います。認知症の方、その症状の重い軽いは別にして、何百万人とい
うような数字になってくるわけでありますので、それも含めてやはり自治体が
ある程度それぞれのコミュニティ等々を介して御把握をいただく、協力体制を
組んでいただくということが重要なんだと思います。本当を言うとそういう例
があるのは事実なので、全く以てそれに対して我々として無策でいるというわ
けにはいかないという認識はあるわけでありますが、ただ、本来日本のこの社
会生活の中においてのコミュニティといいますか、そういうことからすれば身
元が不明ならば何らかの形でどこどこに不明者がおられるということを把握す
る、また、できるそれだけの力を本来持っているんだと思うんですが、それは
地域の状況にもよって違うので、そういうような例えば都市部で独居で多いと
いわれるような、そういう地域があるならばそこに対してどういうような対策
を組んでいくべきであるかというのはちょっと我々もいろいろと検討してみた
いと思いますが、先ほど申し上げたとおり、国が一律に全ての方々を把握して
何かあった時みたいなデータベースを作ってというのは、これはもう事実上不
可能に近い話であろうと思いますので、そこは自治体と協力してそれぞれそう
いう課題を抱えている自治体に対してはどのような解決策があるか、いろいろ
と相談をさせていただきながら、アドバイス等々も含めて対応してまいりたい
というふうに思います。
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知症高齢者が列車にはねられ死亡した事故で、家族の監督責任を認めた名古屋
高裁判決について「今回のような事故が起こり得ること自体が大きな課題。ど
う防ぐかを念頭に置き、政策をつくりたい」と述べた。
徘徊中の事故「妻に責任」 名古屋高裁判決、列車遅れ賠償命令
一審からは減額 朝日新聞 2014年4月25日(金) 配信
認知症で徘徊(はいかい)中に列車にはねられ、死亡した愛知県大府市の男
性(当時91)の遺族に、JR東海が損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が2
4日、名古屋高裁であった。長門栄吉裁判長は、介護に携わった妻と長男に請
求通り約720万円の支払いを命じた一審・名古屋地裁の判決を変更し、妻の
監督責任を認め、約359万円に減額して支払いを命じた。長男には見守る義
務はなかったとして、JR東海の請求を棄却した。
JR東海は、列車の遅れに伴う振り替え輸送費などとして損害賠償を求めて
いた。昨年8月の地裁判決は、横浜市に住み、男性の介護方針を決めていた長
男に事故を防ぐ責任があったと認定。徘徊し事故に遭う可能性を予測できたの
に、見守りを強める責任を果たさなかったと判断した。事故当時85歳だった
妻については、長男が決めた介護方針で、男性と2人きりの時に目を離さずに
いる義務を負っていたのに怠ったと結論づけた。ほかの親族3人は介護への関
わりが乏しいとして責任を認めなかった。
これに対し、高裁判決は相当前から長男は男性と別々に暮らしていて、経済
的な扶養義務があったに過ぎず、介護の責任を負う立場になかったとして、男
性への請求を退けた。一方、妻については配偶者として男性を見守る民法上の
監督義務があったと判断。高齢だったものの、家族の助けを受けていて、男性
を介護する義務を果たせないとは認められないと判断した。
その上で、徘徊防止のため設置していた出入り口のセンサーを切っていたと
して、「監督義務者として、十分ではなかった点がある」とし、事故に対する
責任があると結論づけた。
ただ、長門裁判長は、妻の日常の見守りについて「充実した介護態勢を築き、
義務を尽くそうと努力していた」と評価。さらにJRの安全管理態勢について
は「安全性に欠ける点があったとは認められない」としたうえで、「社会的弱
者も安全に鉄道を利用できるようにするのが責務だ」と言及。フェンスに施錠
したり、駅員が乗客を注意深く監視したりしていれば事故を防ぐことができた
として、「賠償金額は一審の5割が相当」とした。
(久保田一道)
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■認知症介護「閉じ込めるしかないのか」
65歳以上の約7人に1人。認知症の人の数は急増し、2012年時点の推
計で約462万人に達する。認知症の介護は誰にとってもひとごととは言えな
い。「閉じ込めるしかないのか」。判決を受け、家族からは切実な声があがる。
「とても承服できない判決だ。『家族に責任がある』とだめ押しされた」
この日、最前列で裁判を傍聴していた「認知症の人と家族の会」(本部・京
都市)の高見国生代表理事は強い口調で語った。賠償責任を問われたのが妻だ
けになったが、「本質ではない。介護者に責任を負わせる内容は、何ら変わっ
ていない」と批判した。
この判決が前例となって、裁判で責任を問われる介護家族が増えるのではな
いか。高見さんは危機感を募らせる。「24時間、一瞬の隙もなく家族が見守
ることは不可能。それでも徘徊(はいかい)を防げ、と言われたら、鍵つきの
部屋に閉じ込めるしかなくなってしまう」
少人数の家庭的なケアを目指し、認知症ケアの切り札と呼ばれるグループホー
ム。全国に約1万2千カ所ある。
福島県認知症グループホーム協議会会長の森重勝さんは、施設などに預けた
いという家族の要望が強まるのではないか、と心配する。「『いざという時に
責任を問われるなら、やはり入居してもらっていた方が安心』となる」
判決は家族の監督責任を問題にしたが、同じように介護事業者が責任を問わ
れるのでは――。そんな懸念もある。自由に出入りできるような家庭的な環境
で支えるのか、見守りや安全を重視して鍵をかけるのか。埼玉県にあるグルー
プホームの責任者は、「『本人の気持ち』と、『事業者としての責任』との間
で、どうしたらいいのか悩む」と打ち明ける。介護事業者が見守り責任に過敏
になれば、認知症の人がさらに行き場を失ってしまいかねない。神奈川県内の
施設関係者は、そう警鐘を鳴らす。「徘徊が激しい人を受け入れたときのリス
クが高まるなら、この先、受け入れを断るところが出てくるだろう」
■徘徊事故の賠償「認知症保険」を
二宮周平・立命館大学教授(家族法)の話 徘徊による損害賠償については、
裁判などで個々に請求するのではなく、「認知症保険」のような公的な仕組み
を作るのも一案だ。例えば鉄道事故対策ならば、保険料は社会的コストとして
運賃に加算し、事故があれば保険から支払うなど、社会全体で認知症のリスク
を分散する仕組みを検討していくべきではないか。
◆キーワード
<認知症男性の死亡事故> 愛知県大府市で2007年12月、認知症の男
性が徘徊中、JR東海道線共和駅の構内で列車にはねられた。男性は「要介護
4」と認定されていた。日常的な介護は、自らも「要介護1」と認定された同
居する当時85歳の妻と、介護のために近くに転居してきた長男の妻があたっ
ていた。事故当日、男性は部屋で2人きりだった妻がまどろむ間に外出してい
た。○×君 徘徊事故で家族に賠償命令 投票受付中!
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鉄道各社は賠償請求 多くは和解、提訴は異例
共同通信社 2014年4月25日(金) 配信
認知症高齢者らの電車事故が起きた場合、鉄道各社は通常、振り替え輸送の
費用や人件費などを合わせた損害額を本人や家族側に請求している。ただ家族
らが支払いに応じるなどして和解する事例が多く、鉄道関係者は「訴訟に至る
ケースは珍しい」と話す。
国土交通省によると、2012年度に全国で発生した鉄道事故は811件で、
死者は295人に上る。認知症患者の事故件数に関する統計はないが、高齢者
の事故もたびたび起きている。
近畿日本鉄道(大阪)と名古屋鉄道(名古屋)は、線路や駅ホームへの立ち
入りによる死亡事故について、認知症などの病気に起因しているかどうかにか
かわらず損害額の賠償を遺族らに請求。JR東日本(東京)や小田急電鉄(東
京)も「事故の原因や状況などを総合的に判断し、必要であれば損害賠償を請
求する」と説明する。
名鉄では通常、人身事故発生後は警察を通じて家族に連絡し、損害賠償額に
ついて協議。JR東日本などによると、賠償額には振り替え輸送の費用や人件
費だけでなく、列車の運休による機会損失費、設備の修理費などが含まれるこ
ともあるという。
ただ近鉄の担当者は「遺族が相続放棄している場合などは、例外的に請求を
取りやめることもある」としている。
徘徊事故訴訟の判決骨子共同通信社 2014年4月25日(金) 配信
一、妻は男性の監督義務者の地位にあり、行動把握の必要があった
一、妻は事務所出入り口のセンサーを作動させるという容易な措置をとらず
監督不十分
一、長男の扶養義務は経済的なものが中心で、監督義務者ではない
一、駅員が線路立ち入りを阻止できなかったことは過失とは言えない
一、ただJR側の駅利用客への監視が十分で、ホームのフェンス扉が施錠さ
れていれば事故を防げたと推認される事情もある
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・平成26年4月22日付大臣会見概要
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=198713
(記者)
認知症やその疑いあって行方不明となって、無事保護されたんですけれども、
身元が分からないと。自宅に戻れずに自治体の保護という形で、今も介護施設
なんかで暮らしているという方が取材できただけでも4人いたということです。
認知症の人については地域包括ケアという形で進めていらっしゃって、特に行
政の各機関が連携して支えるというものが基本だと思うんですけれども、今後
高齢化、単身化、それに認知症の人が増えていくということが予想される中で、
今回の事例をどのように御覧になっているのかということをまずお聞かせいた
だければと思います。
(大臣)
社会的に超高齢社会に入ってきまして、特に日本の国は平均寿命が非常に長
くなってきている国でありますので、当然のごとく認知症の方々も増えてこら
れるわけであります。そういう意味では厚生労働省としても5か年計画を立て
て、早期のうちから対応するということで初期集中支援チームというものを作
りながら、各地域で早いうちから対応をいただきたいというようなことでお願
いをさせてきていただいておるわけであります。取組はそれぞれ地域、行政や
自治会でありますとか、いろんな形の中で対応をいただいておりまして、例え
ば認知症SOSネットワークとうようなものを作っていただきながら対応して
おられる自治体もありますが、基本的にはやはり自治体の中でいろいろと工夫
をいただくということが中心になると思います。名簿を作るといっても、全国
のデータベースというのにはなかなかいかない話でありまして、もちろん認知
症で発見された方は名前や住所がわかっておられれば御自宅に戻れるわけであ
りますが、そういうことがなかなか意思表示ができないという方であれば、何
で身元を見つけるかというと、例えば遺伝子でありますとか、そういうような
ものでないとなかなかわからないわけですよね。それをやろうと思うとすごい
データベースを作らないといけない、それは個人情報の問題もありますので、
なかなかそこまでのものを全国的に整備するというのは難しいわけであります
ので、やはりある程度は自治体でそこは御認識をいただきながら、我々もその
ような問題、どのような対応の仕方があるのかということも含めて、いろいろ
と自治体と力を合わせて検討をしてまいりたいというふうに思いますけれども、
なかなか全国一律の名簿みたいなものを作るというわけにはいかないと。認知
症の方々たくさんおられますし、そこら辺のところは難しい課題として自治体
との協力体制の中で対応してまいりたいというふうに思います。
(記者)
自治体の中で徘徊が収まっていればそれほどそんなに難しくないんですけれ
ども、取材をしていますと自治体を越えて行ってしまうと。特に都心なんかで
すと電車に乗ってしまえばすぐ越えていくと、都道府県を越える、県境を越え
るようなこともあるわけです。そういう中で本当に自治体の中だけで済むのか
という、はっきりそこまで取材が行き届いているわけではないんですけれども、
そういう実感もあります。そういう意味で、自治体だけではなくてもう少し広
い形での取組というのが必要なのではないかと思いますが、大臣はどのように。
(大臣)
基本的に認知症の方で重い方という話になると、家族と住んでおられるパター
ンがあるわけでありまして、家のおじいちゃん、おばあちゃんがいなくなれば
普通は家族の方から捜索願が出ると。捜索願が出ればどこかでそういう徘徊さ
れて身元不明の方が見つかればそこで警察情報と併せてということが一つある
と思います。それから、独居で認知症でという形の場合も御近所の方々のコミ
ュニティでそういう方々を把握しておられなければという話で、地域の中でそ
ういうような情報で合わせていく。もしくは家から出られないということにな
ればたぶんよほど介護サービス等々を受けておられる方々が想定されるので、
そうなれば介護サービスの提供者の方が、例えば訪問でこられた方が本人がい
ないということになれば、それに対して一定の情報提供みたいな形で、そこに
おられた方がおられないという形の中で、うまく情報が合わさればそこの方だ
ということがわかるということで、そういうことも含めて、やはり徘徊をされ
てどこかで身元不明で発見された認知症の方に対応をしていくというのも一つ
であろうというふうに思いますから、そういうことを上手く工夫しながら、言
われたような課題に対応していくというのが、今一番現実的な対応なんだろう
なというふうに思います。
(記者)
新型出生前診断についてなんですけれども、19日に日本産婦人科学会が1年
間で7,775人が受診して141人が陽性だったと発表しました。今後、陽性と判断
された人の中絶の問題について法律でルールを定める必要があると考えてらっ
しゃいますか。
(大臣)
これは非常に難しい問題でもあります。その倫理観だとか、生命観だとかい
ろんな問題、日本の国の中においてもそれぞれ違うわけでありまして、そうい
う中において臨床研究という形で今、学会の方々にお願いをさせていただきな
がら進めていただいておるわけでありまして、学会の指針に則って臨床研究を
進めておられると。その1年経って結果を御発表いただいたということであり
ます。まだ研究は続いて継続されておるわけでありますが、今回の結果から見
ても6割の方々が十分にこの基礎知識というものを持っておられたわけでもな
いというようなお話でございまして、これは引き続きこの研究を続けていただ
きながら、いろんな問題点、課題等々も抽出をいただくものであろうというふ
うに思います。今すぐに国がどう対応するかというようなところは我々はまだ
考えておりません。それよりかはこの非常に難しい問題である点に関して、こ
の臨床研究がどのような問題点というものを我々に提起をいただけるかという
ことも含めて注視をさせていただきたいというふうに思ってます。
(記者)
先ほどの質問に関連するんですけれども、認知症で身元不明のまま自治体に
保護されている方が弊紙の調査でも5人ほど仮名のまま生きられているという
状況がわかって、それに至るまでに警察で保護された後、自治体に引き継がれ
て年間100人を超えるぐらいの方が自治体の提携している介護施設などで保護
されているようなんですが、そういう実際身元不明の状態が続いている人であ
るとか、そこまでは至らないけれども、数日間ないし数か月にわたって身元不
明の状態のまま自治体が保護せざるを得ないような人、そういうのが全国的に
どれぐらい発生していて、今後厚労省としてはどういう体制を築いていきたい
と、そのような考えはございますか。
(大臣)
厚生労働省が国としてたぶんすべて管理するというのはなかなか難しいんだ
ろうと思います。認知症の方、その症状の重い軽いは別にして、何百万人とい
うような数字になってくるわけでありますので、それも含めてやはり自治体が
ある程度それぞれのコミュニティ等々を介して御把握をいただく、協力体制を
組んでいただくということが重要なんだと思います。本当を言うとそういう例
があるのは事実なので、全く以てそれに対して我々として無策でいるというわ
けにはいかないという認識はあるわけでありますが、ただ、本来日本のこの社
会生活の中においてのコミュニティといいますか、そういうことからすれば身
元が不明ならば何らかの形でどこどこに不明者がおられるということを把握す
る、また、できるそれだけの力を本来持っているんだと思うんですが、それは
地域の状況にもよって違うので、そういうような例えば都市部で独居で多いと
いわれるような、そういう地域があるならばそこに対してどういうような対策
を組んでいくべきであるかというのはちょっと我々もいろいろと検討してみた
いと思いますが、先ほど申し上げたとおり、国が一律に全ての方々を把握して
何かあった時みたいなデータベースを作ってというのは、これはもう事実上不
可能に近い話であろうと思いますので、そこは自治体と協力してそれぞれそう
いう課題を抱えている自治体に対してはどのような解決策があるか、いろいろ
と相談をさせていただきながら、アドバイス等々も含めて対応してまいりたい
というふうに思います。
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この記事へのコメント
数年前までは認知症50万人なんて言ってましたが 今や300万人時代 自分もそろそろ 危なくなる境界年齢にさしかかり 他人事ではなくなりました 尼崎 特にこの辺りは喫煙率 飲酒率の多い地区で 若くて認知症になりそうな方を沢山みます。益々このような事件が増えると思います。
Posted by 薬剤師 井澤康夫 at 2014年05月21日 10:31 | 返信
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