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「ニンチ」にこそ必要な個別化医療
2014年06月10日(火)
今週号の医療タイムスは、「個別化医療」がテーマだ。
私は、「認知症にこそ個別化医療が必要である!」と書いてみた。
みなさまのご批判を仰ぎたい。
私は、「認知症にこそ個別化医療が必要である!」と書いてみた。
みなさまのご批判を仰ぎたい。
医療タイムス6月号 「ニンチ」にこそ必要な個別化医療 長尾和宏
「個別化医療」と聞いてまず頭に浮かぶのは、遺伝子解析技術の進歩です。「遺伝子解析で個別化医療を目指しませんか?」という趣旨の検査の宣伝がよく舞い込みます。やろうと思えば診療所においても、遺伝子解析に基づいた個別化医療(のようなもの)が現実にできる時代になりました。また抗がん剤治療はすでに個別化医療の時代に入っています。近著「抗がん剤が効く人、効かない人」(PHP)には、町医者から見た抗がん剤の近未来像を書かせて頂きました。
一方、細胞内の種々の代謝産物を測定するメタボローム解析技術もめまぐるしい進歩を遂げています。たとえば生活習慣病の薬物療法や食事療法も、メタボローム解析により個別性が格段に高まることでしょう。しかし遺伝子解析やメタボローム解析は、あくまで治療の成功確率を高める指標にすぎず絶対的なものではありません。遺伝子の周辺、すなわちエピジェネテイック医学の発達と相まって、真の意味で患者さんの幸せに寄与するまでには、もうしばらく時間がかかるだろうと思っています。
さて、今日からできる個別化医療は何か?と聞かれたら私は「認知症ケア」であると思います。ご承知のように、認知症は患者さん400万人と予備軍(MCI)460万人、の合計860万人が公式発表の数字です。介護の世界では認知症のことよく「ニンチ、ニンチ」と呼んでいます。しかし「ニンチが進んだ」とはなんとも不思議な言葉です。「認知が進む=改善した」、ではないのですから。
また認知症=アルツハイマー型認知症、ではもちろんありません。レビーもピックも脳血管性も含めての「認知症」のはず、です。しかし面倒くさいので介護意見書にも、ついつい「アルツハイマー型」と書かずに、ただ「認知症」と書いてしまいがちです。考えてみれば、「認知症」という呼び名は実に曖昧な病名です。「首から上の病気」あるいは「脳ミソの病気」と同じ程度です。「胸の病気」と言っても、肺の病気、心臓の病気、乳房の病気などいろいろです。同じく、「お腹の病気」と言っても、胃の病気、大腸の病気、膵臓の病気、肝臓の病気、腎臓の病気など実にいろいろな病気を包含していることを考えれば大雑把さは明らかです。しかしそんな曖昧な病名を、さも分かったかのような烙印として患者さんに押しては抗認知症薬を飲ませるのが認知症医療、ではもちろんあません。しかし知らず知らずのうちにそんな傾向に陥りそうな自分にハタと気がつく時があります。
要介護判定においては調査員によるニンチの程度の評価が重要です。しかしそれは認知症を評価する能力が同じであるという仮定が前提です。そもそも認知症の本質は「関係性の障害」ですから、もし10人の調査員が居れば、10通りの判定能力や感受性があるうえに、10通りの関係性も存在します。すなわち100通りのバラつきがあろうものを、ひとつしかないという仮定のもとに介護判定が行われていることが私は不思議でなりません。実は認知症医療に対しても同じ様な大きな疑問があります。ですから、がんや生活習慣病の前に、認知症ケアにこそ「個別化」という視点が必要な気がしてなりません。しかもこれは難しい機械もお金も一切不要な「個別化医療」だと思うのですが。
「個別化医療」と聞いてまず頭に浮かぶのは、遺伝子解析技術の進歩です。「遺伝子解析で個別化医療を目指しませんか?」という趣旨の検査の宣伝がよく舞い込みます。やろうと思えば診療所においても、遺伝子解析に基づいた個別化医療(のようなもの)が現実にできる時代になりました。また抗がん剤治療はすでに個別化医療の時代に入っています。近著「抗がん剤が効く人、効かない人」(PHP)には、町医者から見た抗がん剤の近未来像を書かせて頂きました。
一方、細胞内の種々の代謝産物を測定するメタボローム解析技術もめまぐるしい進歩を遂げています。たとえば生活習慣病の薬物療法や食事療法も、メタボローム解析により個別性が格段に高まることでしょう。しかし遺伝子解析やメタボローム解析は、あくまで治療の成功確率を高める指標にすぎず絶対的なものではありません。遺伝子の周辺、すなわちエピジェネテイック医学の発達と相まって、真の意味で患者さんの幸せに寄与するまでには、もうしばらく時間がかかるだろうと思っています。
さて、今日からできる個別化医療は何か?と聞かれたら私は「認知症ケア」であると思います。ご承知のように、認知症は患者さん400万人と予備軍(MCI)460万人、の合計860万人が公式発表の数字です。介護の世界では認知症のことよく「ニンチ、ニンチ」と呼んでいます。しかし「ニンチが進んだ」とはなんとも不思議な言葉です。「認知が進む=改善した」、ではないのですから。
また認知症=アルツハイマー型認知症、ではもちろんありません。レビーもピックも脳血管性も含めての「認知症」のはず、です。しかし面倒くさいので介護意見書にも、ついつい「アルツハイマー型」と書かずに、ただ「認知症」と書いてしまいがちです。考えてみれば、「認知症」という呼び名は実に曖昧な病名です。「首から上の病気」あるいは「脳ミソの病気」と同じ程度です。「胸の病気」と言っても、肺の病気、心臓の病気、乳房の病気などいろいろです。同じく、「お腹の病気」と言っても、胃の病気、大腸の病気、膵臓の病気、肝臓の病気、腎臓の病気など実にいろいろな病気を包含していることを考えれば大雑把さは明らかです。しかしそんな曖昧な病名を、さも分かったかのような烙印として患者さんに押しては抗認知症薬を飲ませるのが認知症医療、ではもちろんあません。しかし知らず知らずのうちにそんな傾向に陥りそうな自分にハタと気がつく時があります。
要介護判定においては調査員によるニンチの程度の評価が重要です。しかしそれは認知症を評価する能力が同じであるという仮定が前提です。そもそも認知症の本質は「関係性の障害」ですから、もし10人の調査員が居れば、10通りの判定能力や感受性があるうえに、10通りの関係性も存在します。すなわち100通りのバラつきがあろうものを、ひとつしかないという仮定のもとに介護判定が行われていることが私は不思議でなりません。実は認知症医療に対しても同じ様な大きな疑問があります。ですから、がんや生活習慣病の前に、認知症ケアにこそ「個別化」という視点が必要な気がしてなりません。しかもこれは難しい機械もお金も一切不要な「個別化医療」だと思うのですが。
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この記事へのコメント
母の介護をしていますと、長尾先生の仰るように、人様ざまだなあとも思いますし、母の状態も徐々に変化しているなあと思います。
不安の中で暮らしているのか、私が外出すると機嫌が悪いです。
私も最近、貧乏暇なしで、無くしものばかり作っては、探しています。
脳の検査を私も、してもらう必要有りです。
Posted by 大谷佳子 at 2014年06月10日 04:16 | 返信
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