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エボラ出血熱に備える

2014年10月28日(火)

昨夜から日本初のエボラ騒ぎが続いていたが早朝に陰性と判明したばかり。
しかし水際作戦だけでは不十分で、国内に入るものとしての国内対策が急務。
とにかく政府はエボラ出血熱に関する国民への正しい情報提供を急ぐべきだ。
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・平成26年10月24日付大臣会見概要
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=204481
大臣)
 
 おはようございます。今日は閣議がございました。冒頭、私の方から、エボ
ラ出血熱関係につきましてお話をいたしたいと思います。エボラ出血熱が西ア
フリカで蔓延しておりまして、スペインやアメリカではこの地域からの帰国者
が感染していることが確認され、限定的ではありますけれども、二次感染の事
例も見られているということでございます。我が国にとっても、国民の命と健
康を守る上で極めて重要な関心事であるというふうに認識しております。エボ
ラ出血熱の対応は、まずこの感染症が国内に入り込むことをできる限り防止す
るということが第一、国内に入り込んでこないようにするということ、これが
第一でありまして、このためにできる限りの対策を講じ、そのリスクを減らし
てまいりたいというふうに思います。一方、どのような対策によってもそのリ
スクをゼロにすることはできないわけでございまして、このため万が一国内で
感染事例が発生した場合の対応にも万全を期していかなければならないと思い
ます。その対策を進める上では、行政による対応の強化、医療機関による適切
な対応、国民の皆様方の御協力、この3つの取組を三位一体で行って、オール
ジャパンの体制で取組むことが極めて重要だというふうに思っております。
 
 本日は、国内におけますエボラ出血熱の発生蔓延の防止に万全を期すために、
以下のようなことを私の方から申し上げたいと思います。
 
 第一に、行政による適切な対応といたしまして、WHOから終息宣言が出ま
したナイジェリアを検疫強化の対象から外すとともに、その一方で、全ての入
国者に対して、つまり、その3カ国や4カ国に行った行かないに関係なく、全
ての入国者、国籍を問わず、可能な限り過去21日間の流行国の滞在歴を確認す
ることができるよう、検疫体制の一層の強化を図って、各空港における検疫所
と入国管理局の連携の強化も図ってまいります。お手元にコピーが行っている
と思いますけれども、当然のことながら検疫所でポスターが貼ってあって、ア
ナウンスもして、サーモグラフィーも回しながら、この4カ国に行った方につ
いては申し出てくれと、こういふうに言うわけでありますが、そこで申し出な
かった方も、もう一回今度はパスポートコントロール、つまり入管を通るわけ
であります。ここは全員一人一人、入管(入国管理局)の職員が(入管業務と
して)パスポートをチェックするわけでありますので、そこでこういうもの(「過
去21日以内に発生国に滞在していた方は検疫所への申告が必要です。申告をし
ていない方は申し出てください。」と書かれたボード)を一人一人の入管の方
に持っていただいて、「ここに行ったか」ということを聞いてもらいます。こ
れは日本人用ですから日本語で書いてありますけれども、こっち側に中国語が
二つありますけれども、9か国語で書いたものがあって、過去21日以内に発生
国に滞在した方は、検疫所への申告が必要です。申告していない方は申し出て
くださいということを、入管の職員の方に行っていただくと。ですから、パス
ポートを頂きながら、これを見せて、21日間にここの4カ国に行きましたか、
行っておられるならばもう一回検疫所に帰ってくださいということを申し上げ
るということで、入国する方全員、空港でこのようなことを全国でチェックす
るということにいたしますので、コピーをお手元にお配りしました。これが第
一の水際作戦の強化であります。
 
 第2に医療機関におけます適切な対応でございますが、エボラ出血熱への感
染が疑われる方への対応は、専門の医療機関として整備されました感染症指定
医療機関で行われるべきであることを改めて強調したいというふうに思います。
また感染症指定医療機関に対する個人防護具の着脱等についての研修に、一層
取り組んでいきたいと思います。このあいだ、(国立)国際医療(研究)セン
ターに参ったときに、これから14か所で出向いて研修するということでありま
したけれども、一回全部、一同に集めまして、(国立国際医療研究)センター
以外の44のところについて、医師ないし看護師、両方が防護具の着脱の手順に
ついて、11月のなるべく早い時期に一同に介した研修をまずやってもらって、
そして、あと14か所に行って、現地にあった研修をセンターの方から出向いて
やっていただくということにする予定でございます。さらに本日、一類感染症
の治療に関する専門家会議というのを開催いたしまして、医薬品、例えばアビ
ガン錠とか、こういうものの扱いなどについて専門的な議論と打ち合わせをす
るということでございます。しかしながら、エボラ出血熱への感染が疑われる
方が一般の医療機関に来られてしまう、受診をされるということもやはり排除
できないわけであって、このため医療機関においては、発熱等の症状を訴え、
受診された方に対して、過去1か月間にエボラ出血熱の流行国への渡航歴があ
るかを確認いただいていきたいと思っております。仮に渡航歴があった場合に
はただちに地域の保健所に一報していただくとともに、感染症指定医療機関へ
の速やかな受診につなげていくようにしていただきたいと思っております。本
日、日本医師会の横倉会長にお出でをいただきまして、これらの点について医
師会の参加医療機関に周知をいただけるように協力をお願いいたしました。
 
 第3に、国民の皆様へのお願いでございます。お手元にお配りしております
が、まずエボラ出血熱はインフルエンザのように容易に飛沫感染する可能性は
非常に低くて、患者の体液に直接接触することによって感染するとされていま
す。今日、横倉会長も私のところで冒頭そういうことをおっしゃってました。
このため、まず国民の皆様方には冷静な対応をお願いしたいというふうに思い
ます。もう1点のお願いは、もし流行国に渡航して御帰国されたのちに、1か
月程度の間に発熱した場合には、万一の場合を疑って、地域の医療機関を受診
することは控えていただきたいというふうに思います。まず、保健所にそのよ
うなときには連絡していただいて、その指示に従っていただきたいと思います。
保健所にまず発熱など渡航歴のある方が症状を表したときには、御自分で御連
絡いただいて、指示を仰いでいただきたい。そして、感染症指定医療機関への
受診、そこでの適切な医療を受けてもらいたいというふうに思います。このよ
うなお願いを本日厚生労働省のホームページにも掲載させていただきます。ま
た、合わせて、厚生労働省トップページにエボラ出血熱に関するリンクを新た
に設けます。今後とも正確で、迅速な情報提供に努めてまりますので、報道機
関の皆様方におかれましても、国民の皆様への周知に格別の御協力をたまわり
ますように、お願いしたいというふうに思います。以上が本日私が申し上げた
いということでございます。エボラ出血熱が、万が一国内で発生しても我が国
の関係者が一丸となって対応すれば、必ず封じ込めることができるというふう
に考えております。皆様方の御協力を心からお願い申し上げたいと思います。
以上、冒頭私の方から発表でございます。《質疑》
 
(記者)
 
 エボラの関係なんですけれども、今日は専門会議もあって、アビガン錠など
未承認薬の取扱について議論されるということでしたけれども、大臣としてこ
の運用についてどのようにお考えでしょうか。
 
(大臣)
 
 それは当然のことながら、まず第一に大事なことは備えをするということで
あって、今日はその備えについてお話し合いをすると思いますし、すでに備え
はできています。約2万人分のストックは準備ができておりまして、その扱い
については当然医師の適切な判断によって行われるものだというふうに思って
おります。
 
(記者)
 
 水際対策についてうかがいます。すべての入国者に対して渡航歴を確認する
ということでしたけれども、それはいつから行うんでしょうか。また、全国の
対象となる空港、港も含めてですけれども、対象人数というのはどのくらいに
膨らむ見込みなんでしょうか。
 
(大臣)
 
 できるだけ早くということで、今日明日にもですね、何とかできるようにと
いうことで、このパウチは一人一人、入管の職員の皆様方に持っていただくと
いうでありますから、お届けをするということにしますが、人数につきまして
はですね、人数わかってる。
 
(事務方)
 
全体の数字はないですけれども、成田空港で一日入って4万人で、外国人が1.
6(万人)ぐらいで、かなりの数です。
 
(大臣)
 
 かなりの数でありまして、今回、異例なこととして、法務省に私の方からお
願いをして、入管の職員の方に、検疫所に行ったかということをこの対象国に
行った方については聞いていただくということで、5秒か10秒で済むことだろ
うと思うので、大変お手数ですけれども、検疫所で申告されなかった方にもう
一回ダブルチェックでこれをお願いするということでございまして、すべての
空港でもってこれは行うということでありますから、例えば中国から入ってく
る、東南アジアから入ってくる、そういう人たちを含めてすべての、ダイレク
ト便が韓国からとかいろいろありますから、地方空港でも全員にお尋ねをする
ということになります。船についてはもうすでに入港の度に上陸をする際には、
行ったかどうかというようなことについては調べて報告を受けるという体制で
臨んでいるところでございます。
 
(事務方)
 
 船長とか、船舶代理店というところから書類をもらうという仕組みですから、
これとは別の仕組みになっています。今回は空港の話です。
 
(記者)
 
 塩崎さんは大臣としてもかなり危機感を持たれて、こういう対応をされてい
ると思うんですけれども、これは何か安倍総理から、こういう迅速な対応をす
るように何か指示があったということはあるんでしょうか。
 
(大臣)
 
 当然のことながら、総理も万全の体制を組んでほしいということは、呼ばれ
て行ったとかということではございませんが、そういうことは私との会話の中
でも出ております。
 
(記者)
 
 確認なんですけれども、法務省の方にお願いして、法務省の方ではこの入管
の方でこれをチェックするかなどを通知か何かで、今日、今日といいますか、
出されるということでしょうか。
 
(大臣)
 
 まず第一にですね、こちらから法務省の入管にお願いを通知で出すという格
好で、法務省の方からは適切にしかるべき入管のところに内部の連絡は行くん
だろうというふうに思っております。
 
(記者)
 
 あと、入管の方でパスポートチェックで、感染国への滞在が、流行している
国への滞在がわかった場合にですね、お願いベースだけじゃなくて検疫所の方
に入管の職員自体が通報とか、連絡するというふうな体制でもあるということ
でしょうか。
 
(大臣)
 
 検疫所にもう一回戻って欲しいということで、そのパスポートコントロール
を通れないという格好になるわけです。
 
(記者)
 
 最近、アメリカとスペインで患者さんが出たということを踏まえて、何か海
外と協力していることや情報交換とか、そういうことも。
 
(大臣)
 
 それは当然、事務方が緊密にやっているところでございます。
 
(記者)
 
 関連してなんですけれども、国内で感染疑いの患者が発生した場合の患者の
移送方法についてですけれども、厚労省でも様々なシミュレーションを今検討
していると思うんですが、移送に関する対策や手段というのは、今、決まって
いることがあれば教えてください。また、例えば、指定病院へ行く際に、例え
ばタクシーで行ってはいけないとか、そういう国民への呼びかけがあれば教え
てください。
 
(大臣)
 
 まず第一に、先ほど申し上げたように、渡航歴があって発熱をしている方は、
まず、保健所に問い合わせてほしいということを言っているわけで、万が一、
医療機関に先に行ってしまった場合には、同じことで、そこの医師が保健所に
も連絡をし、そして当然そこで、しかるべき対応ということで、感染症指定医
療機関に受診できるように段取りをするわけです。そこで、搬送という問題が
起きてくるわけでありまして、これにつきましては全国の地方自治体に、もう
すでに8月に、エボラ出血熱の疑い患者が発生した場合の標準的な対応のフロー
チャートを周知しておりまして、具体的には、患者が発生した場合の保健所、
または検疫所が特定感染症指定医療機関又は第一種感染症指定医療機関、合計
45あるわけですけれども、ここに搬送するということになっていますが、今、
45の指定医療機関がない県が9県ございます。そこにおいては、近隣県の第一
種感染症指定医療機関に搬送する、あるいは例えば県立中央病院にとりあえず
収容して、そこに必要な防護服とか、そういう必要なキットをですね、これは
国の方が責任を持って供給するというようなことをやらなければいけないと考
えていまして、エボラ出血熱の患者について、一般の医療機関から感染症指定
医療機関への移送を行う場合などの留意事項については、厚生労働省から都道
府県等に手引きとしてお示しをしておりまして、これに基づいて行われるとい
うふうになっております。これについては、11月10日の週に、再度、会議をも
って全国から、都道府県から来ていただいて、周知徹底を図るということにし
ています。さらに、実際に患者が発生した場合の対応に万全を期すために、一
応、自治体に対しましては具体的な対応の流れの整理状況の確認を進めていく
など、各都道府県において準備が迅速に行えるよう、引き続き、支援をしなけ
ればならないと思っておりますので、都道府県とは絶えず緊密な連絡を取りな
がら、厚労省の事務方から情報提供をしているということであります。
 
(記者)
 
 この会見の前に、横倉会長とお会いされて、先ほども対応について少しお話
ししていただきましたけれども、具体的にですね、何点ほど何か要請があった
とか、具体的に何点こういうことを要請したというのはあるんでしょうか。
 
(大臣)
 
 これはさっき申し上げたように、三位一体の対応が必要だということで、行
政による我々の体制の強化、対応の強化と、それからこれが横倉会長へのメイ
ンのお願いですけれども、医療機関における適切な対応、保健所との連携とか、
それから国民の御理解、御協力ということをやりますので、是非、医療機関の
方への周知徹底をお願いしたいということを申し上げたわけで、すでにいろい
ろ内部的にはおやりになっているようですけれども、新しいアメリカでの事態
とか、いろんなことを受けて、さらに周知徹底をレベルアップし、強化もして
いくということをお願いをしたところでございます。
 
(記者)
 
 エボラ出血熱に戻って申し訳ないんですけれども、今日、横倉会長とお会い
になった後、日本医師会の方が本日付けで各一般の医療機関に対して、保健所
にそういう滞在歴のある方は直ちに連絡するようにというようなことを通知す
るというふうにおっしゃったんですけれども、厚労省としてはそういう都道府
県を通じてでも、一般の医療機関に対する通知みたいなものは考えておられる
んでしょうか。そういう対処に対して。
 
(大臣)
 
 はい、やります。今日の横倉会長がぶら下がりでおっしゃったのは、今日お
いでをいただいて、私どもからお願いしたことを受けてやっていただけるとい
うことでありまして、我々は行政の責任において、この地方行政に対しても、
当然、お願いをするということになると思います。
 
(記者)
 
 エボラ出血熱に関して、二点なんですが、この流行国4か国に渡航、ないし
トランジットした方で日本に入国される方に対して、特定医療機関3か所と一
種指定期間の44か所の、第80床ぐらいあると思うんですが、これが見合うのか
どうかと。つまり、入国される、感染のおそれのある方に対して、いざ起きた
場合に、全国の約80床ぐらいのインフラが見合っているのかどうかという点は
いかがですか。
 
(大臣)
 
 さっき申し上げたように、感染は飛沫感染ではなくて接触を実際に検体や本
人との接触とか、そういうもので行われた時に広がるということでありますの
で、感染は飛沫感染をするようなものとは、広がりがだいぶちがうということ
で、今何か直ちに問題があるということはないというふうに認識しております。

@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
◆エボラ出血熱に関する情報
 ◇エボラ出血熱の国内発生を想定した医療機関の基本的な対応について
  (H.26.10.24)
  を掲載しました。
  ⇒ http://www.med.or.jp/jma/kansen/ebola/003341.html 
 
エボラ出血熱 全入国者調査へ 流行4カ国滞在の有無 全国30空港
毎日新聞社  2014年10月24日(金) 配信
 
 
エボラ出血熱:全入国者調査へ 流行4カ国滞在の有無--全国30空港
 
 アフリカで感染拡大が続くエボラ出血熱への検疫を強化するため、厚生労働
省と法務省は24日、国際線のある全国30空港のすべての入国者に対し、流
行4カ国に滞在歴がないか確認することを決めた。入国管理局の職員が入国手
続きでパスポートの記録を調べる際に確認し、滞在歴があれば検疫所に申告す
るよう求める。24日から各空港で順次運用を始める。
 
 エボラ出血熱の潜伏期間は最長21日とされる。厚労省は8月以降、到着前
21日以内に流行国に滞在した人は検疫所に申告するよう要請。流行国の国籍
のパスポートを所持する人は入管と協力して検疫してきた。さらに流行国以外
の国籍の入国者にも検疫を徹底する必要があると判断し法務省に協力を要請し
た。
 
 厚労省によると、30空港の入国者は2013年で計約2800万人。入国
管理局の職員は入国手続きの際、ギニア、リベリア、シエラレオネ、コンゴ民
主共和国の4カ国に過去21日以内に滞在歴がないか日本語や英語、フランス
語、中国語、アラビア語などで質問を書いた用紙を見せて確認する。ナイジェ
リアはエボラ熱の感染が終息したため検疫対象から外した。
 
 また、厚労省は24日、エボラ熱など「1類感染症」の受け入れ態勢のない
医療機関に対し、発熱で受診した患者は流行国に滞在歴がないか確認し、滞在
歴があれば直ちに保健所に連絡するよう通知することを決めた。日本医師会も
24日に同様の通知を出し、滞在歴があれば2次感染の恐れがあるため採血な
どは行わないよう求める。【桐野耕一】
 
社会は冷静な対応を 病む人助けるのが医療 東京都保健医療公社豊島病院医
長 足立拓也 識者評論「エボラ出血熱」共同通信社  2014年10月27日(月)
配信
 
 
 今年7月、世界保健機関の短期専門家としてシエラレオネの病院で多数のエ
ボラ出血熱患者を診療した。一家が全滅して1人だけ生き残った子ども、姉と
兄の目前で息を引き取った3人きょうだいの幼い弟、患者のケア中に感染して
痛みに耐えながら自分の病院で亡くなった看護師など、現地の人々の痛みと苦
しみは筆舌に尽くしがたい。
 
 エボラ出血熱に関し、あまり報道されない点を指摘しておきたい。
 
 第一に、この病気は親切な人がかかりやすい病気である。エボラウイルスは、
重症化した患者の嘔吐(おうと)物、下痢便、血液を介して伝播(でんぱ)す
る。無症状の人や会ったかどうかも思い出せない人からの感染を恐れる必要は
ない。
 
 感染を避ける方法はそれほど難しくない。見るからに具合の悪そうな人から
距離を置き、関わらないことである。ただしこれは「困ったときには助け合う」
という人間らしい根源的な価値観と相反する行為でもある。
 
 体調を崩した家族を見捨てることなどできないし、重症患者が病院に運び込
まれたとき、それなりの倫理観を持った医師や看護師は、患者を放置すること
はしない。西アフリカ3カ国(ギニア、リベリア、シエラレオネ)で感染の連
鎖が止まらない根本的な理由はここにある。
 
 第二に、開発中の新薬は、患者の救命に役立つ潜在的可能性はあるものの、
それによって新たな感染を防げるわけではない。
 
 エボラ出血熱対策の柱は接触者追跡である。新たな発病者が分かったとき、
接触者を洗い出して最大潜伏期間の21日間、健康観察を行い、もし接触者が
発病したら早期に隔離する。これは感染連鎖を遮断し流行を封じ込めるための、
地道ではあるが最も効果的な手法である。
 
 第三に、西アフリカで流行が続く限り、日本国内に感染者が入国する可能性
も続く。従って、日本のエボラ対策支援は、流行国の最前線に集中させるべき
である。国内の対策も急務ではあるが、グローバル化時代の感染症対策は、国
内では完結しない。
 
 仮に国内で疑わしい患者が出た場合、エボラ出血熱と一見似た症状の病気は
幾つかあり、診断確定まで数日かかるかもしれないし、当初は疑われたが実は
違ったということが繰り返されるかもしれない。
 
 この病気の二次感染の恐れがあるのは家族や医療従事者など少数に限られる
ため、一般市民は普段の生活を続けて問題はない。医療機関は治療に専念し、
保健所は接触者追跡を進める一方で、社会は浮足立つ必要はない。
 
 医療の目的は、病める人を助けることにあり、エボラ出血熱の診療において
もそれは変わることはない。
 
   ×   ×
 
 あだち・たくや 70年東京生まれ、東京大医学部卒。横浜市立市民病院勤
務などを経て12年から豊島病院感染症内科医長(現職)。専門は熱帯病、感
染症全般。
 
 
エボラ出血熱 日本も未承認薬許容毎日新聞社  2014年10月25日(土) 配信
 
 
エボラ出血熱:日本も未承認薬許容
 
 エボラ出血熱の感染が拡大しているのを受け、厚生労働省は24日、患者を
国内で治療する際の医療態勢や治療方法を検討する専門家会議を初めて開催し
た。エボラ熱の治療法が確立していない現状では未承認薬の使用も許容される
との見解をまとめ、富山化学工業(東京都新宿区)の「ファビピラビル」(商
品名「アビガン」)の使用を認めることで合意した。
 
 アビガンは新型インフルエンザの治療薬として今年3月に承認されている。
重い副作用が出る危険性もあるが、エボラ熱に対してマウスの実験で有効性を
示すデータがあるという。海外で4人の患者に投与され、他の未承認薬とあわ
せて投与された2人の症状が改善している。未承認薬には他にもエボラ熱の治
療に使用されたものが複数あるが、現在、国内で入手可能な薬はアビガンだけ
という。アビガンは、国内に2万人分の備蓄がある。
 
 この日の会議では、未承認薬の使用は患者や家族への同意が必要との指摘や、
流行国で実施されている血清療法は日本では困難との見解も示された。【桐野耕一】
 

エボラ出血熱、未承認薬の使用を許容
 
厚労省が国内感染に備え専門家会議
 
2014年10月25日(土) 橋本佳子(m3.com編集長) 
 
 厚生労働省は10月24日開催した「一類感染症の治療に関する専門家会議」(座
長:大曲貴夫・国立国際医療研究センター病院国際感染症センター長)で、国
内でエボラ出血熱患者が発生した場合に、有効性と安全性が未確立でも、適応
外・未承認薬の使用が倫理的に許容されることを確認した。写真「一類感染症
の治療に関する専門家会議」の座長を務める、大曲貴夫・国立国際医療研究セ
ンター病院国際感染症センター長。
 
 エボラ出血熱への使用が検討されているのは、抗インフルエンザ薬として承
認されているアビガン(一般名ファビピラビル)。海外で少なくとも4例に投
与された。そのほか、候補としては治療薬2種、ワクチン2種があるが、いずれ
も海外のメーカーが開発中のもの。「有効性と安全性が未確立の治療の提供は、
WHOの倫理委員会の結果も踏まえると、日本においても倫理的に許容されると
の結論になった。アビガンだけを認める話ではないが、現実的に日本で入手可
能なのは、アビガンくらいだろう。有効性と安全性が確立していないことなど
について、十分にインフォームド・コンセントを取った上での使用を想定して
いる」(厚労省健康局結核感染症課)。製造販売元の富山化学工業に無償提供
を求めることを想定している。
 
 専門家会議は、座長の大曲氏を含め、計6人の委員で構成。24日の会議には、
2人の参考人も出席した。アビガンの使用のほか、(1)国内(海外の邦人も含
む)で患者が発生した際、その治療について専門家会議が助言する役割を果た
す、(2)血液透析などの侵襲的な治療を行う場合には、エボラ出血熱の致命
率と感染リスクとの比較考量を十分に行った上で判断する、(4)今後、緊急
時も含め、必要に応じて、専門家会議を開催する――の計4点を確認した。
 
 会議は、非公開で行われた。会議後のブリーフィングで、厚労省結核感染症
課は、専門家会議を設置した理由について、「感染症指定医療機関の人と話を
していて、『承認された薬がなく、診療経験もない中で、不安』という声があ
り、複数の専門家の意見を聞く場として発足させた」と説明。今後、定期的に
開催するわけではなく、国内感染が確認された場合など、何らかの新しい動き
があった場合に開催する方針。
 
 アビガン、備蓄は2万人分
 
 会議の冒頭、厚労省健康局長の新村和哉氏は、日本のエボラ出血熱に対する
対策として、検疫体制の強化、国内発生の場合の迅速検査・治療体制の整備、
院内感染防止対策など感染拡大の防止の3つを挙げた。その上で、「現場の医
師のほとんどは、一類感染症の患者を実際に経験したことがない。エボラ出血
熱に万全な対応を取る上で、専門家のアドバイスを聞くことは、治療体制の改
善だけでなく、現場の医師の不安払しょくにもつながる」とあいさつし、活発
な意見交換を促した。
 
 厚労省が専門家会議に提出した資料によると、エボラ出血熱患者数は9938人、
死亡者数4877人(WHOの10月19日時点のデータ、疑い例等も含む。米国は10月2
3日時点のCDCデータ)。エボラ出血熱の治療方法や未承認薬使用の妥当性など
が議題で、検疫体制や院内感染対策などは議論されなかった。
 
 アビガンは、新型または再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、他
の抗インフルエンザ薬が無効または効果不十分な場合に使用するという条件付
きで、2014年3月に製造販売承認を取得した。富山化学工業が、抗インフルエ
ンザ薬として備蓄しているものを、エボラ出血熱用の投与量で換算すると、約
2万人分になる。原薬としてさらに30万人分程度の在庫を保有。アビガンのほ
か、未承認薬等の使用については、専門家会議の中で異論は出なかったという。
「インフォームド・コンセントは、非常に重要であり、(投与した場合には)
データもしっかりと取り、世界で共有していくことが重要との話も出た」(厚
労省結核感染症課)。
 
 厚労省は10月24日付で、自治体と医療機関向けのエボラ出血熱に関する通知
を出している(資料は、厚労省のホームページに掲載)。「エボラ出血熱が疑
われる患者が、感染症指定医療機関以外の医療機関を直接来院する可能性がな
いとは言い切れない」とし、発熱を有する患者には渡航歴を確認するとともに、
ギニア、リベリア、シエラレオネの過去1カ月の渡航歴がある場合などは、直
ちに最寄りの保健所長経由で、都道府県に届け出ることを求めている。
 
 エボラ出血熱の確定診断は、検体を国立感染症研究所に運び、PCRで行う。
感染症指定医療機関での治療に対しては、専門家会議のメンバーが、電話や場
合によっては当該医療機関に行ってアドバイスする。ただし、このアドバイス
は、強制力を持つものではない。

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現地レポート(2): 拡大した米国でのエボラウイルス感染
 
 
ベイラー大学病院ベイラー研究所
膵島移植部門 (テキサス州ダラス・フォートワース)
滝田盛仁
 
 
2014年10月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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1) 米国初のエボラ出血熱での死亡から1週間-新たに2人の看護師がエボラウイルスに感染
テキサス州ダラスのプレスビテリアン病院で、米国初のエボラ出血熱での死者(トーマス・エリック・ダンカンさん)が出てから1週間経過したが、その間に新たに2人の看護師 (ニーナ・ファムさんとアンバー・ビンソンさん) がエボラウイルスに感染したことが明らかになった。2人の看護師はどちらも死亡したトーマスさんの看護に直接、従事しており、トーマスさんからの2次感染である。更なる感染の連鎖を断ち切るため、CDC(米国疾病対策センター)が中心となって様々な努力がなされているが、事態は混迷している。
 
2) なぜ、病院で2次感染?
具体的にどのような作業が原因で、2人の看護師がエボラウイルスに感染したか未だ不明である。病院の説明(脚注1)では、2回目(脚注2)にトーマスさんが救急搬送されて以降、医療スタッフは全員、CDCのガイドラインに沿って、ガウンや手袋、マスクなどの血液・体液感染を想定した感染防御対策をしていたという。エボラウイルスに感染した2人の看護師は、1回目にトーマスさんが救急外来を受診した際に診療に携わっておらず、感染防御対策を開始した2回目の来院からトーマスさんの治療に当たっている。
これに対し、全米看護師連合 (National Nurses United)の調査によれば、(1)トーマスさんは救急搬送後、数時間、個室に隔離されていなかった, (2)手首や首が完全に締まらない簡易タイプのガウンが看護師に支給された, (3) 看護師を対象とした実地訓練は実施されていなかったなど、病院の受け入れ体制に不備があったと言う (脚注3)。病院長はトーマスさんの1度目の救急外来受診について対応のミスを認め、公式に謝罪した。現在、CDCが真相を究明中だ。
 
3) 『エボラウイルスは血液・体液で感染する』
エボラウイルスは血液・体液で感染する。従って、エボラウイルス感染者の血液・分泌物・嘔吐物・排泄物に直接、触れない限り感染することはない。しかし、仮にエボラウイルスに感染した2人の看護師が「完璧に」感染対策を行っていたとしたら、現在、分かっている以上に、インフルエンザのような飛沫感染(患者の咳やくしゃみで健常者が病原体に感染すること)でエボラウイルスに感染するリスクがあるのではないか―地元のニュースではそう指摘する医師もいる (脚注4)。感染したアンバーさんは治療のためダラスからアトランタに、ニーナさんはメリーランドに飛行機で搬送されたが、実際、患者および付き添いのスタッフはともに、厳重に全身を覆ったスーツを着用していた。ただし、アンバーさんの搬送の際、航空会社の社員1人が防御スーツやマスクを着用することなく患者に近付いていたところが報道され、航空会社は釈明に追われた。
 
4) 広がる感染リスク群
2人の看護師へのエボラウイルス感染が判明したことによって、CDCや保健当局は、エボラウイルスに感染している可能性のある人々の把握に難渋している。さらに、アンバーさんは微熱がありつつも週末に飛行機でクリーブランド(オハイオ州: 米国の北東に位置)に旅行していたというからなおさらだ。現在、トーマスさんの治療に携わった病院スタッフへの感染、さらにはその家族への感染が疑われる事態に発展している。この結果、ダラス周辺の複数の小学校・中学校・高校が除染のため臨時休校することになった。
地元当局では、地域社会をパニックに落とし入れるリスクがあり、感染している可能性のある人に対する法的な隔離など強制的な手段について、議論はしているが行使はしていない。現在のところ、市民の良心に委ね、個別の感染症対策を行っている。西アフリカではエボラ出血熱での死亡が顕著に増加しており(脚注5)、一方で、今回のダラスでの事例では、発熱などの症状が現れる前にエボラウイルス感染者が国境の検疫をすり抜け、2次感染を引き起こすことが明らかとなった。ここには書ききれないが、地域や病院の医療体制や感染制御の難しさなど様々な問題を浮き彫りしている。
 
脚注)
1. http://texashealth.org/news-alert.cfm?id=1629&action=detail&ref=1898
2. トーマスさんは9月25日に同病院の救急外来を受診。抗生剤をもらい帰宅。しかし、9月28日、容態が悪化、救急搬送された。
3. http://www.nationalnursesunited.org/press/entry/national-nurses-praise-rn-for-speaking-out-on-hospital-lapses-in-dallas/
4. http://dfw.cbslocal.com/2014/10/15/doctor-ebola-might-be-transmitted-by-air/
5. http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/136508/1/roadmapsitrep15Oct2014.pdf
 

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この記事へのコメント

ほんまに、富士フィルム傘下の富山化学工業のアビ癌ガン錠は、エボラ出血熱に効果があるのでしょうねえと、心配になってきました。
なんで、アフリカのリベリアにいた人達がアメリカや、日本に来るのかと考えましたら、「アメリカや日本に行けば、医学が発達しているから、直してもらえる」と思って来ているのかも知れません。
アビガンがエボラ出血熱に効果があると世界的に言ってしまったから、「自分はエボラ出血熱に感染しているかも知れない」と思った人達が、続々と日本にくるかもしれません。
この人達を、拒否するのではなく、早く検査をして、効果のあるお薬を服用してもらうしかないと思います。
この度の日本人は早くから「自分はアフリカのリベリアから来ました」と自己申告して下さったので、早く検査をして、陰性と分かって良かったです。
後は、アビガンの副作用が、どのくらいで、小さいな子供にも使えるのかが心配です。

Posted by にゃんにゃん at 2014年10月28日 02:06 | 返信

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