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健さんと文太さんの最期に学ぶ

2015年01月25日(日)

産経新聞連載・生と死シリーズ第5回は、健さんと文太さんについて書いた。
お二人の晩年、最期は多くの人に大きな示唆を与えたと考える。→こちら
それにしても、お二人の死で昭和が終わった感が否めない。
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産経新聞・生と死シリーズ第6回  日本映画界の大スターの最期に学ぶ
                               健さんと文太さんの生き方、逝き方
 
 昨年末、日本映画界を代表する大スターが2人相次いで旅立たれた。高倉健さんと菅原文太さん。私はどちらも大ファンだがお二人の闘病生活と最期の様子を振り返ってみたい。

 健さんは、まだお元気な時、理想の死のイメージを「カリブ海に潜ったまま上がってこない」と語っておられた。現実には健さんは2009年に前立腺がんで手術を受けられて寛解してものの、その経過観察中に悪性リンパ腫が発見されて療養されていた。亡くなられたのは病院のベッドの上だったが、詳細は明らかにされていない。常に人に心配をかけないためプライベートを明かさない昭和の映画スターの逝き方に最も適した場所が病院であったのだろう。健さんは、誰に対しても非常に謙虚で極めて礼儀正しい人だった。そして撮影現場では、現場を支えてくれているスタッフ達を想い一切座らないという話も有名だ。「俳優は肉体労働」と、筋トレやジョギングも欠かさなかった。ご縁を大切にされる人で、大阿闍梨の酒井雄哉氏との親交も伝えられている。酒井さんから頂いた言葉「往く道は精進にて、忍びて終わり悔いなし」が健さんからの最期のメッセージとして伝えられた。この言葉にこそ、健さんの生き方、逝き方が凝縮されているような気がしてならない。

 一方、菅原文太さんは2009年に俳優を引退されてからは、山梨県で農業を始められた。東日本大震災以降は復興支援にもご尽力された。2007年にステージⅡの膀胱がんが発見。10人の専門医に治療法を聞いて回ったら9人が膀胱全摘を勧めたという。もし全摘しなければ余命半年と。しかし10人目の医者だけが、膀胱を温存して放射線治療のひとつである陽子線治療でいこうと提案され膀胱を温存する選択をされた。その理由とは、膀胱を全摘したら「立ちション」ができなくなるから。最期は膀胱がんが肝臓に転移して肝不全だったという。余命半年と言われてから7年生きたので、文太さんは納得、満足されていた。去る1月18日のフジテレビ「新・報道2001」に生出演した私は、文太さんの選択について質問さ、「文太さんに一番大切なQOL(生活の質)とは立ちションだったが、それで良かった。大正解」と発言した。

 2人の大スターの人生の最終章について考えてみたい。2人とも、がんを患われた。現在、日本人の2人に1人ががんに罹る。がんはまさに国民病だ。長生きすればするほどがんになる確率が高まる。2人ともがん治療に際し自分自身の生き方に寄り添ってくれる医師を探し求め、納得のいくがん治療を受けられた。だから病を宣告されてからも体が許す限り仕事や社会活動を続け、人々に勇気や希望や感動を与え続けることができた。そして健さんは83歳、文太さんは81歳と日本人男性の平寿命を越えて長生きされた。芸能界には不規則な生活やストレスで早逝される方も多いが、お2人の長寿の理由は自己管理が徹底していたからではないか。

 私は今年57歳。仮に80歳位まで生きるとして、残された時間はあと20年。人生の最終章を迎えた時、果たして「往く道は精進にて、忍びて終わり悔いなし」と言えるだろうか。大スターの訃報に接して、自分自身の生き方、逝き方をイメージして始めている。
 
 
キーワード 酒井雄哉・大阿闍梨
比叡山延暦寺の天台宗の僧侶。壮絶な修行を千日続ける千日回峰業を1980年よ1987年と、2度満行、大阿闍梨となられた。大阿闍梨は千年の歴史の中で酒井さんを含めて3人しかいない。

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この記事へのコメント

たちしょんべんができなくなるのは嫌ですというのは  QOL quality of life 生活の質を下げたくないと言うことですね。

Posted by 薬剤師  井澤康夫 at 2015年01月29日 07:25 | 返信

高倉健さん 菅原文太さん も
その死 めぐり 有名税
あれこれ
マスこミ
の ネタに
なる
1周忌
あたり
まで
待つ
ことします、、、
おこらんど

おぎようこ

Posted by おこらんど at 2015年02月01日 03:43 | 返信

 健さんへの思いを書きたいと思いつつ、遅くなりました。
 健さんのエッセー『あなたに褒められたくて』1993年初版:は、健さん御自身が思いを深く心寄せる人々、健さんが愛する人々とのエピソードを記したエッセーです。
 この中で印象深く、紹介したい章『善光寺参り』があります。健さんのお仕事として舞い込んだ
”善光寺節分会参り”を後に31年間欠かさずに、豆まきとお参りをなさったという、エッセーには詳しく書かれていますが、簡単に要約すると、そこで健さんはシンクロニシティを経験なさっているのです。
健さんの御先祖様ゆかりの寺である宝戒寺と善光寺は、比叡山の阿闍梨さんがいらっしゃる同じ天台宗であり、『東路日記』を記した小田宅子さんという健さんの御先祖様の存在を、善光寺参りによって知る事となり、偶然舞い込んだお仕事による、御自分のルーツとの巡りあわせに感じ入っておられるのです。
 私は別段、信心深い人間ではありませんが、最近になって(長尾先生の影響かも知れませんが)仏教が
もたらす"無意識の力"があると意識するようになりました。五木寛之『孤独の力』を読むと、仏教とは昔昔の日本人のルーツであるお方=僧侶が教える『心』の世界なのだと、改めて認識できたためでもあるかも知れません。
 
 ブログ『1.20を国民全員で考えよう』からの引用
>個人的には、今回の交渉には、仏教界にひと役買って欲しいのだが。
>世界三大宗教とは、キリスト教、イスラム教、そして仏教、ではないのか。

>政治家外交ルートが限られているのであれば、民間ルートを活かすべき。
>それにはかなり唐突に思えるかもしれないが仏教界の出番ではないのか。

 私はあながち唐突な印象は持ちませんでした。仏教界の出番についてを、中東問題に向けてということだけの発想ではなく、子供を始め医師にも "死生観教育を"と望まれる場面でも、そう思いました。また、東京では 僧侶が営む酒処"坊主バー"が流行っているとTVで見ますけれど、世相がそういった法話の世界を求めているのではないか、と思ったりしたのです。

 長尾先生に唐突なお願いですが、機会がありましたら瀬戸内寂聴さんとの対談が企画されないかな、と
内心で、かねてから思っていました。寂聴さんの御病状も心配されるところですが、対談のお相手がお医者様であれば、と期待してみたりして。
 瀬戸内寂聴さんが病に伏せる前に御出演の "金スマ"で、「今の日本は、時の大戦に突入する前の空気と同じものを醸し出している」と発言なさり、とても気にしておられました。後に、東京都知事選、細川氏の応援演説でも然り、今の日本をとても心配しておられました。
 国政や看取り、死に関する話題の対談を期待、というだけではなく、寂聴さんと語る長尾先生を拝見できましたら幸いです。
 健さんの話題から横道に逸れて、長くなりました。最近のMy雑感です。

Posted by もも at 2015年02月09日 11:28 | 返信

宗教には自分の外に絶対的な物(神)を置く教えと、自分の中に絶対的な物(仏界)があるという教えの二通りがあると言います。神の教えを信じ生きる宗教と自分の中の絶対性を開き顕わす(開き顕わす方法の正邪は宗教のレベルで論じるべきですし、自分が絶対であるという事とは意味が違いますが)事を目的とする宗教。互いに相反するとは言え行きつくところは人間の幸福と平和、強いては理想社会実現のためにあるはずだと思います。教義をもって人間を支配することや、教義の正邪優劣をもって戦うような事態(宗教戦争等)があったなら、その時点でどちらの宗教の信仰者達も間違っていると言えると思います。

もも様が言われる、本来人間が持っている「無意識の力」が中東の人たち一人一人の平和を願う心として一つになった時、中東の平和も、世界の平和ももたらせるのだと思います。
国も世界も、変えるのは国民であり日常の中でまず自分が変わる努力の中にしかいない。
その自覚を持って日々の生活に取り組みたいと思います。

Posted by 桜 at 2015年02月10日 09:57 | 返信

 仏教の所作としての『手を合わせて、思うこと』、それでいい、それが大事だと近しい僧侶に教えて頂いた事があります。私も手を合わせて思い、そして祈っていきたいと思います。

>本来人間が持っている「無意識の力」が中東の人たち一人一人の平和を願う心として一つになった時、
>中東の平和も、世界の平和ももたらせるのだと思います。
> 国も世界も、変えるのは国民であり日常の中でまず自分が変わる努力の中にしかいない。
>その自覚を持って日々の生活に取り組みたいと思います。
気付きの場、学びの場を頂戴致しました。ありがとうございました。

Posted by もも at 2015年02月11日 09:22 | 返信

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