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生きるとは食べること

2015年02月01日(日)

昨日の産経新聞・生と死シリーズ第7回目は、金子哲雄さんを書いた。→こちら
哲雄さんは最期まで食べて、死後のプロデユース(10年後でも)もされた。
今週は、奥さまの稚子さんが当院に来られる。
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産経新聞・生と死シリーズ第7話 生きるとは、食べること
                      金子哲雄さんの“死後のプロデユース”
 
 金子哲雄さんという芸能人を覚えているでしょうか。いつもテレビで「上手な値切り方」など楽しいお喋りで和ませてくれていた方です。哲雄さんは2012年10月2日、41歳の若さで肺カルチノイド(肺がんと似た肺の悪性の病気)という病気のため自宅で旅立たれました。その報道に接した時、「41歳という若い芸能人が、なぜ自宅で亡くなったんだろう?普通は病院なのに」と思いました。しかしその1年後に自宅を選んだ理由が分りました。

 ある日、哲雄さんの奥さまの金子稚子さんと会いました。哲雄さんも稚子さんも一面識も無かった方です。稚子さんは「お願いがある」とのこと。「主人の一周忌に、長尾先生の本にサインして欲しい」と。よく聞くと、哲雄さんは当時、ベストセラーになっていた拙書「平穏死・10の条件」(ブックマン社)を愛読して頂き、そのとおり実行されたとのこと。特に私が繰り返し書いた「生きるとは食べること」というフレーズを気に入って頂き、病気が進行して徐々に食が細っても、友人たちを度々自宅に招きホームパーテイを開いていたそうです。焼き肉パーテイ、餃子パーテイ、そして最期の夜は日本一美味しいとされる京都のラーメンをみんなで食べたと。衰弱した哲雄さんは、さすがに2~3本しか食べられなかったそうですが、末期がんでも在宅なら最期まで食べられることを証明されました。

 寝る前に私の本を繰り返し読んで頂いたそうです。それで、がん治療を上手に切り上げて在宅医を探し、優しい訪問看護師さんに緩和ケアを受けながら穏やかに旅立たれたと。亡くなられた翌月には彼が死の直前に書きあげた「僕の死に方 エンデイングダイアリー500日」という本が、私の本と入れ替わりベストセラーになりました。私は生きていますが、金子さは本当に亡くなられた訳ですから本の説得力が全く違う。

 金子さんが旅立たれた1年後の10月3日、東京で「2013・金子哲雄を語る会」という催しが開催され私も招いて頂きました。「偲ぶ会」ではなくあくまで「語る会」だと聞かされましたが会場に入ってビックリ。そこはデイスコならぬ賑やかな宴会場でした。沢山のテレビ画面から哲雄さんの爆笑映像が流れている。どうやらこの会は哲雄さんがまだ生きているものとして開かれているとのこと。だから友人知人は「哲ちゃんはなー・・・」と、まるで哲雄さんが今も生きているかのように話されました。会の終わりに奥さまは「主人は今も皆さまにご迷惑をおかけして」と御礼を述べ、参加者は「ご主人さまに宜しくお伝えください」と挨拶して帰られました。なるほど哲雄さんは社会的にはまだ生きておられました。

 哲雄さんが凄いのは死の周辺、すなわち終末期医療や葬儀やお墓や財産の整理などのいわゆる「終活」だけではなかったこと。自分の死後1年目のこのイベント、そして5年後、10年後の仕事までもちゃんと計画して奥さまに託されていた。つまりやろうと思えば自分の死後のプロデユースもできることを身をもって示しているのです。1年後に稚子さんは「死後のプロデユース」という本を書かれました。死は決して終わりでななく、通過点にすぎないと。哲雄さんは人としての生き方、逝き方について今も多くのメッセージを発しておられます。寒い夜、お二人の書籍を何度も読み返しては、自分自身に置き換えています。
 
 
キーワード 金子哲雄さん
流通ジャーナリスト。2011年に肺カルチノイドが発覚した後も、病気を隠しながらメデイアの仕事を続けた。ある時点からがん治療を止めて在宅医療に切り替え、在宅緩和ケアを受けながら2012年10月に旅立たれた。享年41歳。
 

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Posted by おこらんど at 2015年02月01日 03:35 | 返信

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