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多死社会なのに死を見たことがない!?

2015年03月22日(日)

昨日の産経新聞・兵庫版連載、生と死シリーズ第12回目は
「多死社会なのに、死を見たことがない!?」で書いた。→こちら
高齢者が超高齢者を看とる時代だが、初体験だという人が多い。
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産経新聞・生と死シリーズ第12回  なぜ「長尾和宏の死の授業」なのか
                       多死社会なのに、死を見たことがない!? 
 
  先日、東大救急救命部の矢作直樹先生が書かれた「人は死なない」という本を読みました。もちろん人は肉体的には必ず死にます。しかし高齢者でも「一度も死を見たことがない」という人が時々おられます。病院死が在宅死を上回ったのが約40年前。現在60歳代以下の世代は、「病院の時代」を生きてきたので、「死」を見ずにきたのです。特別養護老人ホームでさえ一度も看取りを経験したことがない所もあります。最期は全員、救急車で病院送りだから。年々「死」が地域から病院に隔離されるようになり、 多死社会なのに死を見たことがない人が増えています。

 在宅看取りが増えない理由のひとつに日本では「死」がタブー視されていることが挙げられます。テレビにおいても「死」はタブー。縁起が悪いからできるだけ避けて通りたい話題なのです。しかし年間の死亡者数が現在120万人から2025年には160~170万人にまで増加する多死社会のなか、増加する40~50万人の死に場所がどうなるのかが国家的課題となっています。そこで私は「平穏死」と題した本を数冊書きましたが、まだまだ死には関心が薄い人が多いのが現実です。

 一方、欧米では安楽死議論が活発化しています。米国の29歳女性の安楽死は記憶に新しいでしょう。脳腫瘍で余命半年と宣告されて半年経過したがまだ元気で旅行を楽しんでいました。しかし「恋人の名前が言えなくなる前に死にたい」と、医師から処方された自殺薬を予告通りに飲んで亡くなりました。オレゴン州などいくつかの州では安楽死が法的に認められています。しかし多くのメデイアは、彼女の「安楽死(ないし自殺)」を「尊厳死」と誤報しました。書いた記者は「今まで死について真剣に考えたことがないのでどう書けばいいのか分らなかった」と告白されました。「死」のタブー視は国会においても同様です。たとえばリビングウイル(LW)の法的担保に関する議論は10年間、停滞したままです。ちなみにLWの法的担保が無い国は、先進国では日本だけです。

 米国の29歳女性の報道で意外だったのは、多くの若者が反応したこと。ある調査によるとなんと9割が尊厳死に賛成ですが、なんと7割が安楽死にも賛成、と答えました。さらに「僕も安楽死したい」、「なぜ日本では安楽死できないのか」というネットの書き込みには驚きました。日本では安楽死は殺人罪で、尊厳死さえ本人のリビングウイルがあっても法的にはグレーです。いずれにせよこれまで「死」といえば、終活に代表される高齢者の話題でしたが、今回は若い世代が反応したのです。そこで昨年末に若者たちを対象に都内で「死の授業」を行いました。尊厳死、安楽死、平穏死の違いについて語りあいました。その様子は「長尾和宏の死の授業」(ブックマン社)という本となりました。これまで「いのちの授業」と銘打った本はありましたがズバリ「死の授業」という本は初めてでしょう。そして去る3月5日には、東京大学の医学生に「死の授業」を行いました。「君は死を見たことがあるか?」から始まる議論を楽しみました。「死」に年齢は関係ありません。老いも若きも「死」をタブー視せずに語りあう時代ではないでしょうか。
 
 
キーワード  安楽死
医師が薬剤を使用して寿命を縮める行為。医師が直接注射や点滴する場合と、死に至る薬剤を処方して患者さんが自分で飲む場合がある。いずれも日本においては認められておらず、殺人罪ないし自殺ほう助罪で裁かれる。

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