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江戸時代のオーラルマネジメント

2015年07月05日(日)

昨日の産経新聞の連載、平成養生訓の第5回は、
江戸時代のオーラルマネジメントという題で書いた。 →こちら
益軒は、83歳で目、鼻、歯に病気が無かったというので驚きだ。
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産経新聞・平成養生訓第5話    83歳でも目と鼻と歯に病気なし
                  江戸時代のオーラルマネジメント
 
 貝原益軒は養生訓のなかで「83歳になっても目の病気が無く夜でも細字の読み書きができる。歯もぐらつかず1本も抜けていない。ワシは目と鼻にも病気は無い」と自慢しています。300年前の83歳ですから凄い話ですね。益軒は朝起きたら、まず熱めの湯で目を洗い温め、鼻の中も清めました。次に、乾いた塩で歯と歯茎をすり磨き、ぬるま湯で20~30回も口をすすぎ、その後、塩を入れたぬるま湯(生理食塩水)で左右15回ずつ目を洗ったそうです。塩の殺菌力を利用しながら目を洗い歯槽膿漏の予防も行っていました。江戸時代には歯ブラシはありませんでした。指先に塩をつけて磨くか、房楊枝といって少し太めの楊枝の先で磨きました。養生訓の中にはお茶で口をすすぐと歯が堅固になるというアドバイスが2ケ所に見られます。お茶に含まれているフッ素の効用でしょうか。当時も歯磨き粉はありましたが、安価ゆえにお茶を推奨したのでしょうか。江戸時代は、歯科医師のことを口中医と呼んでいましたが、兼康祐悦(かねやすゆうえつ)という口中医が販売した歯磨き粉が大ヒットしたそうです。余談ですがその名前をとった「かねやす」という店は、いまでも東京都文京区本郷三丁目で営業しています。

 先日、私は第10回関西オーラルマネジメント研究会で「食支援の臨床倫理」というお題で話す機会がありました。口腔ケアという言葉は知っていましたが、オーラルマネジメント(OM)という言葉は恥ずかしながらその時初めて知りました。OMとは口腔ケアや嚥下リハビリに教育、食べる喜びなどを加えた概念。超高齢社会の日本において今後、重要になる言葉であると確信しました。その研究会には全国から医師、歯科医師、歯科衛生士、保健師、リハビリ師,栄養士さんらが集まり、熱心に議論していました。というのも、歳をとると歯が抜けて食事量が減り、誤嚥性肺炎は増えるからです。しかし若いうちからOMをしっかりやっておけば、人生の最期まで口から食べる喜びを楽しむことができるのです。益軒の養生訓を読むと江戸時代にすでに立派なOM技術が存在し、多くの市民が支持していたことがよく分かります。

 養生訓の中に「医者には上中下がある。上医は病気や薬のことを良く知るが少ない。中医は医術そのものは劣るが診断がつかない時は薬を出すことを控える。下医はわからないまま、みだりに薬を出す」という中国の「漢書」のことわざが引用されています。益軒は自分自身が多病で、その治療にいつも心を悩ましていたようです。40歳頃よりお灸もずいぶんすえたようで、体は灸の痕だらけだったそうです。そうした経験から、医者や薬を過信しないことを繰り返し説いていますが同感です。

 私は風邪をひいて来られた患者さんにいつも「よく養生してくださいね」と言います。すると「養生って何?」と訊き返す若い人がいます。養生とは自分自身で行う予防から治療のこと。身体だけではなく心の状態も含みます。ですからよく使われている「健康法」よりも広い概念です。人間は歳をとると誰でも感覚器が鈍ります。だからこそ「83歳でも目と鼻に病気なし」と胸を張った益軒の経験則に大いに学びたいものです。
 
 
キーワード   オーラルマネジメント(OM)
口から食べることを“CREATE”する技術。C=Cleaning清潔、R=Rehabilitationリハビリ、E=Education教育、A=Assessment評価、T=Treatment治療、E=Eat, ,Enjoy食べる、楽しむ、などの要素を含む新しい概念。
 

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この記事へのコメント

関西OM研究会代表世話人の足立です。先日の研究集会にはご講演ありがとうございました。また、このたびはブログにて「OM」を取り上げていただき感謝申し上げます。今後普及させていきたい概念ですので応援よろしくお願いいたします。私も、病院時代研修医の採用面接で「あなたの養生訓を教えてください」と聞いていたのですが、半数は「養生訓てなんですか?」と聞き返されましたね(笑)

Posted by 足立了平 at 2015年07月06日 06:18 | 返信

小学生時代の同級生に、"歯の健康優良児"を連覇する女子が居ました。自分の努力だけでは
達成できない、その栄誉が羨ましくて「どうしたら?」と聞いた記憶が鮮明にあります。
大人しい彼女は「生まれ持って」か「授かって」というような意味の答えをしていました。
自分はその素質を貰う事ができませんでしたが、真面目な妊婦となった時には"我が子には"と
心して、カルシウムを積極的に摂りましたし、乳児・幼児期のお口のケアには執着していましたが
その子らも残念ながら、虫歯を所持する大人となっています。
近年嬉しかったことの一つには、口の中の歴史がプロには分かるらしく、大人になった我が子が、
歯医者さんで「ママはキチンとやってくれていたのにねエ」と歯科衛生士さんに言われた、と
報告してくれました。
結局、人生は自分次第ですね。

Posted by もも at 2015年07月07日 01:15 | 返信

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