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入院で容態が悪化し死にそうになった、だから脱出した
2015年07月09日(木)
毎日のように病院から退院する人がいて外来や在宅に戻ってくる。
若い人や元気な高齢者は、病院で病気を治してもらえる。
しかし要介護老人の一部は入院で弱り、死んでしまう人もいる。
若い人や元気な高齢者は、病院で病気を治してもらえる。
しかし要介護老人の一部は入院で弱り、死んでしまう人もいる。
要介護者においては、入院が病気を作る場合が多い。
そして我々は、在宅で入院で作られた病気を治している。
親が入院先で死にそうになってるけど、どうしたらいいのか?
という相談がよく舞い込む。
「今すぐ脱北してください」
「脱北?」
「そう、脱出です」
このようなキツイ言葉だと、家族は10秒ほどでピンとくる。
その日のうちに脱出して、その日のうちに我々が訪問する。
2~3日後には、みんな元気になる。
1ケ月後にはまったくの別人になる。
入院中の認定調査で要介護4や5と判定された人が
脱出後1ケ月後には、自立に戻った人も何人もいる。
これが私たちの日常。
世間ではほとんど知られていないだろうが。
今週は急性期病院を辞し当院に就職した看護師と一緒に回っているが、訪問する先々で
「入院で容態が悪化し死にそうになったが脱出したら元気になった」という生の声を聞く。
そんな患者さんが、当院の在宅には山ほどいる。
同行した新人看護師は、「私たちは病院で何をしていたのだろう」と頭を抱える。
退院支援なんて要らない。
そんな暇があったら、タクシーに同乗して1分でもいいので家での生活を見て欲しい。
高齢の患者さんや家族は、命さながら脱出してきた、と
我々に延々と入院医療への文句を言うが、言うのならば病院に向かって言って欲しい。
ただし、日本慢性期医療協会の病院には「生活観を大切にした病院」もある。
たとえば、福岡の有吉病院のような、この記述とは無縁の病院もあることは付記したい。
たとえ一流病院であっても、太いベルトで体を縛りつける身体拘束を平気でやっている。
表向きは無いことになっているのあろうが、現実は常態化しているのではないだろうか。
閉じ込めれば脱出しようとするのが人間の本能で、縛るのは自然の経過かも。
肝腎なのは、「閉じ込めることが抑制の原因」と認識すること。
しかし多くの家族は、安易に閉じ込めることを選択し、
閉じ込め先では抑制同意書に、何も考えずサインをする。
家族と病(やまい)の院の共同作業の結果が抑制であり、本質を見ないといけない。
その背景には院内の転倒事故で病院管理者が責任を問われるという現状がある。
しかし転倒するときは転倒するのが、人間の宿命。
転倒の責任を追及すればするほど、抑制が増えるだけ。
だから私は、「勝手に救急車を呼んで入院した貴方の方にも責任がある」と諭す。
「発熱したので119番」という市民感覚こそが、運命の分かれ道なのだ。
「病院が病気を作る場合が、高齢者ではよくあること」を銘記しておきたい。
だから患者も家族もよく考えてから入院を選ぶべき。
かならず「かかりつけ医」に相談してから決めて欲しい。
「大病院信仰、いつまで続けますか」という本を書いているが参考にして欲しい。
そしてなんと以上のことを研究した論文が出ていたので、紹介しておく。
【 晩年に生じる身体機能障害の軌跡に入院が及ぼす影響:高齢者における前向きコホート研究 】
そして我々は、在宅で入院で作られた病気を治している。
親が入院先で死にそうになってるけど、どうしたらいいのか?
という相談がよく舞い込む。
「今すぐ脱北してください」
「脱北?」
「そう、脱出です」
このようなキツイ言葉だと、家族は10秒ほどでピンとくる。
その日のうちに脱出して、その日のうちに我々が訪問する。
2~3日後には、みんな元気になる。
1ケ月後にはまったくの別人になる。
入院中の認定調査で要介護4や5と判定された人が
脱出後1ケ月後には、自立に戻った人も何人もいる。
これが私たちの日常。
世間ではほとんど知られていないだろうが。
今週は急性期病院を辞し当院に就職した看護師と一緒に回っているが、訪問する先々で
「入院で容態が悪化し死にそうになったが脱出したら元気になった」という生の声を聞く。
そんな患者さんが、当院の在宅には山ほどいる。
同行した新人看護師は、「私たちは病院で何をしていたのだろう」と頭を抱える。
退院支援なんて要らない。
そんな暇があったら、タクシーに同乗して1分でもいいので家での生活を見て欲しい。
高齢の患者さんや家族は、命さながら脱出してきた、と
我々に延々と入院医療への文句を言うが、言うのならば病院に向かって言って欲しい。
ただし、日本慢性期医療協会の病院には「生活観を大切にした病院」もある。
たとえば、福岡の有吉病院のような、この記述とは無縁の病院もあることは付記したい。
たとえ一流病院であっても、太いベルトで体を縛りつける身体拘束を平気でやっている。
表向きは無いことになっているのあろうが、現実は常態化しているのではないだろうか。
閉じ込めれば脱出しようとするのが人間の本能で、縛るのは自然の経過かも。
肝腎なのは、「閉じ込めることが抑制の原因」と認識すること。
しかし多くの家族は、安易に閉じ込めることを選択し、
閉じ込め先では抑制同意書に、何も考えずサインをする。
家族と病(やまい)の院の共同作業の結果が抑制であり、本質を見ないといけない。
その背景には院内の転倒事故で病院管理者が責任を問われるという現状がある。
しかし転倒するときは転倒するのが、人間の宿命。
転倒の責任を追及すればするほど、抑制が増えるだけ。
だから私は、「勝手に救急車を呼んで入院した貴方の方にも責任がある」と諭す。
「発熱したので119番」という市民感覚こそが、運命の分かれ道なのだ。
「病院が病気を作る場合が、高齢者ではよくあること」を銘記しておきたい。
だから患者も家族もよく考えてから入院を選ぶべき。
かならず「かかりつけ医」に相談してから決めて欲しい。
「大病院信仰、いつまで続けますか」という本を書いているが参考にして欲しい。
そしてなんと以上のことを研究した論文が出ていたので、紹介しておく。
【 晩年に生じる身体機能障害の軌跡に入院が及ぼす影響:高齢者における前向きコホート研究 】
Gill TM, Gahbauer EA, Han L, Allore HG. The role of intervening hospital admissions on trajectories of disability in the last year of life: prospective cohort study of older people. BMJ 2015;350:h2361.
★Gill TM: Yale School of Medicine, Department of Internal Medicine, New Haven, CT, USA, Adler Geriatric Center, New Haven, CT 06510, USA
【目的】晩年に生じる身体機能障害の軌跡に入院が及ぼす影響について検討した
【研究デザイン】前向きコホート調査
【セッティング】Greater New Haven, Connecticut, USAにおける1998年3月〜2013年までの検討
【対象者】研究開始時にADLの4領域(入浴、更衣、歩行、移動)が自立していた70歳以上の地域在住高齢者754名のうち調査期間中に死亡した高齢者552名
【主なアウトカム指標】入院、身体機能障害の程度(0-4)、15年以上の期間、毎月電話で調査した結果
【結果】身体機能障害がない者から最も顕著であった者まで、晩年に6つのタイプの身体機能障害の軌跡を捉えることができた。95名(17.2%)は身体機能障害を認めなかった。61名(11.1%)はcatastrophic disability、53名(9.6%)はaccelerated disability、61名(11.1%)はprogressively mild disability、127名(23.0%)はprogressively severe disability、155名(28.1%)はpersistently severe disabilityを示した。392名(71.0%)は少なくとも1回入院し、248名(44.9%)は複数回入院した。いずれの身体機能障害の軌跡も毎月の入院頻度を追う形を示した。いくつかの交絡因子を含む多変量解析の結果、ある月に入院することは身体機能障害の程度に強い独立した影響を及ぼしていた。最も直接的な効果はcatastrophic disabilityで認められ、入院により身体機能障害のスコアは1.9(95%信頼区間1.5-2.4)増加し、率比(相対的効果)は2.0(95%信頼区間1.5-2.7)であった。
【結論】晩年に急性期病院に入院することは身体機能障害の進行に大きく影響する。入院に結びつくイベントが発生する前に身体機能障害の進行について知ることにより、終末期の意思決定が促進される可能性がある。死亡した高齢者の半数以上を占めるprogressiveまたはpersistent severe disabilityのタイプを示して入院する高齢者では、緩和ケアアプローチを考慮し、アドバンスケアプランニングについて議論することを促進し、個別のケアニーズに対応すべきかもしれない。
【コメント】本研究では晩年にみられる身体機能障害の進行に入院が大きく関与することを示しています。
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この記事へのコメント
う~ん!!
古いフレーズですが、
「異議なーーーーし!!」
Posted by 平穏CM at 2015年07月09日 05:17 | 返信
ほんとに…某病院に入院すると 必ず 褥創を作って 退院となります
入院して 初めて 家族が どんな 扱いをされているのかに気づく…
勘弁してくださいって 感じです
Posted by 訪問看護師 宮ちゃん at 2015年07月09日 11:17 | 返信
父は、圧迫骨折で寝たきりになったので、私に迷惑をかけたくないと思ったのか、自分から進んで入院しました。院長先生は物分りの良いいい人なんですけど、内科医長さんが、聞くところによると、防衛医大出身の厳しい方だったので、私は何だか波長が合いませんでした。ケアマネジャーのアドバイスで、退院しました。夏は調子よかったのですけど、お正月明けの一月に入って、突然39度の高熱が出ました。
在宅訪問医療をして下さるお医者さんは「インフルエンザだ」と仰ったのですけど、また別の病院に、入院することになって、検査をしたら「うちではインフルエンザとは出なかった。誤嚥性肺炎かなあ」と言われて、半信半疑で入院して尿道カテーテルが、入れられました。10日して「MRSA」に罹患していると分かって、尿道カテーテルは、抜去されました。二〇日ぐらい苦しんで死にました。
誤嚥性肺炎と言うのは腑に落ちなかったのですけど、最近長尾先生のブログを拝読しまして、死ぬまでタバコを止めなかったことや、歯は私が磨いていたので、歯科衛生士さんの歯科治療のような徹底したものでは無かったので、誤嚥性肺炎だった可能性はあるなあと思いました。
Posted by 匿名 at 2015年07月11日 02:54 | 返信
末期がんの男性 奥さんに思いが強く
せっかく 病院から逃げ出したのに…
一緒に住んでないアホ息子が押し切り 点滴をやることだけに 執着して CV入れるんだろうかって感じです
奥さんは ともかく 家で 苦痛なく過ごしたいとおっしゃるのに 思い届かず 虚しいです
Posted by 訪問看護師 宮ちゃん at 2015年07月13日 11:42 | 返信
↑↑↑ (つづき〜)
主治医から連絡があり 在宅で 輸液ポンプを使って 鼠径部からのCVに決めたようです
介護する奥様の負担を考えると不安になる
点滴が入ってのオムツ交換は大丈夫だろうか
訪問入浴の話もあったのに どうするかなぁ
よく寝返りをされて 動くから大丈夫だろうか
…家に帰ってきてまで 抑制はないよね…と思いながら
なんでCVできるっていうかなぁと主治医に腹を立ててみたり…
決めるのは ご本人であり ご家族ですよね…(ご本人は 意識がない)
しかたがないよね
…と従うしかないです
と思っていたら 意識レベルが下がり お亡くなりになりました
きっと ご本人は CVやりたくなかたんでしょうね〜と勝手に解釈しています
何が正しいのかは わからないです
いい勉強になりなした
Posted by 訪問看護師 宮ちゃん at 2015年07月15日 12:22 | 返信
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