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がんの確定診断がつかない時

2015年12月03日(木)

昨日の産経新聞の連載は、「がんの診断がつかない時」で書いた。→こちら
現代医学をもってしてもがんの診断がつかなかったり、誤診することもある。
「医療の不確実性」の中にあるがん医療を伝えたかった。
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産経新聞がんの基礎知識シリーズ第14話  医療の不確実性
                     がんの確定診断がつかない時
 
 今日は、ちょっと難しいけれど大切な話をします。女優の川島なお美さんは毎年、人間ドックとPET検診を受けられていました。PETとはCTですから毎年受けると放射線被ばくが心配ですが、絶対にがんで死にたくないと思っていたのでしょうか。果たして2013年の7月のPETで肝臓に直径1.7cmの病変が疑われたとのこと。半年後に手術して胆管がんであると確定するのですが、腫瘍発見時にはそれが良性か悪性か確定しなかったのです。がんが強く疑われるも確定しなかったので半年間も迷われたのです。

 がんの確定診断とはがん細胞を証明することです。胃がんであれば、内視鏡で胃の組織を採取(生検と言います)して顕微鏡で見て良悪性を判定します。その所見はグループ1から5で表現され、グループ4はがんを強く疑うでグループ5ががんが確実です。一般的にグループ4か5で初めてがんと診断され、手術なりの治療が行われます。では、内視鏡で見て明らかにがん病変であるのに生検でグループ4や5が出なかった時はどうするのでしょうか。その時は、再度検査します。それでもがん細胞が証明できない時は、内視鏡やCTなどの画像所見などから総合的に「がんが強く疑われる」との判断で治療に進むこともあります。

 肺がん検診で行う喀痰検査では、痰の中に含まれる細胞を観察します。胃の場合は組織検査ですが、痰の場合はバラバラになった細胞だけで判定するので細胞診と言います。甲状腺や乳房のしこりを細い針で刺してその先に付いた細胞を診る場合も細胞疹で、クラス1~5と表現され、クラス4と5ががんとして扱われます。細胞診は組織診より精度が劣ります。いずれも病理の専門の医師が顕微鏡をのぞいて判断しますが、医師によって意見がくい違うこともあります。肺がんの場合、気管支鏡で細胞を取りに行きますが、病変が気管支の奥の方にあって上手く採れない場合もあります。良性か悪性か判定ができない場合は、病変が小さければCTで経過を診て判断する場合もあります。1~3ケ月後に再びCTを撮って比較するのです。がんであれば病巣が大きくなり形が変化します。

 さて、川島さんのような胆管がんの場合は組織診や細胞診が困難なことが多い。肝臓がんも同様ですが造影CTや血管造影のパターンで良性か悪性を判定しています。川島さんは半年後に腫瘍が大きくなったので、やはりがんであろうと覚悟して手術されました。実は、川島さんのように良性か悪性か明確な結論が出ないことは現実のがん診療の場では時々あります。そんな場合、手術は一種の賭けと言ってもいいでしょう。小さな肺病変であれば、切除した組織ではじめて診断がつくこともあり治療的診断と言います。以前、10人以上の肺がん専門医が画像診断で肺がんと診断して外科手術したものの手術標本の病理検査で結核だった例がありました。また膵臓がん疑いで手術しても結局、慢性膵炎だけで良性病変だった例もありました。どんなに検査をしてもがん細胞が証明できず、白黒つかない悩ましいケースも少なからず存在します。そして画像診断のみでがんと診断し治療に進んではじめて病名が確定する場合もあります。がん医療には不確実な部分もあります。
 
 
キーワード 胆管がん
わが国の2013年の胆のう・胆管がん死亡数は男性約8,900人、女性約9,300人で、それぞれがん死亡全体の4%および6%を占める。胆のうがんは女性に多く、胆管がんは男性に多い。罹患率の国際比較では、日本人は他の東アジアの国や欧米人に比べて高い傾向にある。
 

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この記事へのコメント

44歳男性ですが、昨年2つの病院で関門部胆管癌と診断され胆管、胆嚢、肝臓の60%摘出手術をうけましたが、術後の病理検査で癌細胞は見受けられず最終的に胆管炎と診断を受けました。最初の病院の内視鏡検査で一度は良性と診断されたのですが、その後はどちらの病院でも癌と診断されました。関東では有名な肝胆膵外科の教授に執刀してもらったのですが、そんな教授でも判断を誤ることがあるんですね。
退院後は毎月必ず来て1週間程続く40度の発熱に悩まされています。腸の菌が肝内胆管に上がってきてしまうみたいです。
最初の段階でステロイドなど試して貰えたらと残念でなりません。PETもCTも正直あてになりませんね。
一度は死を覚悟して、今後こんな後遺症と付き合っていくのかと思うと気が重くなります。

Posted by 匿名希望 at 2016年04月16日 12:02 | 返信

最終的に「胆管炎」であるから「癌」では無かったのに、色々と手術の後遺症に悩まされて、大変ですね。
そういうこともあるのですね。大変勉強になりましたし、知っている人達にも教えてあげようと思います。
でも「癌では無かった」と言う点で、良かったです。
日にち薬で、何とか養生なさって、お元気になってください。
長尾クリニックで、「大建中湯」とか「補中益気湯」とか出してもらっては如何ですか?

Posted by 匿名 at 2016年04月17日 07:41 | 返信

誤診と思われる経験していますのでご参考になれば。
平成24年8月人間ドック、エコーで肝臓に影見られたので、同年10月に総合病院でCT検査受ける。
医師から即悪性がん(大きさ0.8cm×1ヵ所)との宣告受ける。同時にRFA手術薦められる。
同月末手術受けるも失敗
失敗の理由:生検針を挿入した段階で激痛、RFA手術まで至らず、続行不可能となる。
その病院に信頼おけず転院先探す。
同じ市内の総合病院で再検査(CT、MRI、血液検査)するも悪性か不明。
その後定期的に、CT、MRI受けていますが患部の拡大見られず。平成28年5月現在に至る。
手術時の激痛で耐え切れず、拘束された足の捻挫により現在もしびれ残っています。
現在の担当医は、悪性がんでも長期間拡大しないこともあるといっていますが、本当ですか?
過去肝炎などの病歴無く、血液検査でも異常ありません。飲酒もほどほどです。

Posted by 匿名希望 at 2016年05月07日 11:15 | 返信

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