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本気で地域包括ケアを進めるには

2016年02月28日(日)

「月刊公論」3月号に、介護離職は無くなるのか
本気で地域包括ケアを進めるには、について書いた。→こちら
介護離職より、介護職離職のほうが優先するのではないか。
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公論3月号  介護離職は本当に無くなるのか
         本気で地域包括ケアを進めるには

 
3年毎の医療・介護同時改訂に

診療報酬改訂の時期が来た。マイナス改訂に頭を抱えている経営者もいる。ただ「治す医療から支える医療への転換」という意味が理解できる経営者と理解できない経営者では、今後の明暗は大きく分れる。その流れに乗れば生き残ることができる。一方、医療報酬の改訂は2年毎で介護報酬の改訂は3年毎なので、同時改訂は6年毎である。しかし超高齢多死社会を前に医療も3年前にして3年毎の同時改訂にしたほうが効率的ではないか。

一方、保留されていた療養病床問題であるが14万床が廃止され施設に転換されるという。同時に7:1の急性期病院の縛りも厳しくなり、13:1の地域包括ケア病棟や病院内施設への転換が余儀なくされるだろう。そうなると、医療と介護の境界もかなり曖昧になってくる。訪問看護では「ハイ今日までは医療保険、明日からは介護保険で」という場面は日常である。もはや医療と介護は連携どころか、混在・融合しているのが現場の姿である。次回の同時改訂では医療と介護の思い切った「統合」を期待している。
 

介護者殺人の背景にある不眠 

 「介護離職ゼロ」というスローガンが掲げられた。しかし人出不足に泣く介護現場では、それを「介護士が3Kで辞めていくことを無くす政策」であると誤解している人が少なくない。日々、在宅医療の現場で様々な生活に寄り添っているものから見ると、介護離職ゼロというより、介護虐待ゼロや介護殺人ゼロのほうが優先する気がする。仕事と介護の両立に悩む人は少なくない。特に認知症の在宅療養の現場にはネグレクトや虐待は稀ではない。

 我が国では毎年、40~50件の介護殺人が起きている。介護殺人は決して特異な事件ではなく、検証すれば起こるべくして起こった、つまり必然というケースが多い。在宅での介護者の半数以上が不眠を自覚しているという現実がある。不眠が続くと誰でも「うつ状態」に陥るので正常な判断ができなくなる。だから介護者を休ませるためのレスパイト施設が地域に必要である。この4月から産業保険の分野には「ストレスチェック」が導入される。筆者は数社の産業医もしているが大騒ぎである。しかし「ストレスチェック」は、まさに在宅介護者にこそ必要なシステムであはないか。いずれにせよ、在宅療養を支えるための機能の充実こそが介護離職ゼロの土台であるべきで、決して特養というハコモノの増設ではないと思う。
 


夜間対応が問題の本質

 在宅医療にせよ、地域包括ケにせよ、最大の課題は夜間の対応にある。病院もコンビニもホテルも24時間対応型であるが、2~3交代制である。しかし在宅介護も在宅医も訪問看護も24時間体制である。しかも休みゼロの365日勤務である。家族だけでなく医療職にも相当な超過重労働を強いているのが在宅療養の現実である。これでおかしくならないほうが「異常」かもしれない。私自身は上手にサボる怠けものなので20年も24時間365日勤務を続けて来られたが、あくまで例外と考えるべきだ。

 国が在宅医療推進政策を掲げても、在宅医療の受け手も担い手も思うほど増えない理由の大半は、夜間対応の煩わしさにあると思う。訪問看護師は深夜に呼び出されると夫から「そんな仕事は辞めなさい!」と言われることが多い。ぜっかく看護職の2.8%である訪問看護の世界に飛び込んできてくれても、2~3年でバーンアウトして病院勤務に戻っていく看護師が少なくない。この10年、7:1病院が激増したため街(診療所や訪問)から看護師が消えた時代が続いていた。しかし7:1病院が減少する時代になると余った看護師は、地域に戻ってくる可能性がある。実際、交代制である施設の看護師募集は増えているという。しかし24時間365日対応を強いられる訪問看護の分野にどれくらいの看護師が来てくれるかは疑問だ。早めに交代制を固めたいところだが、いかんせん多数の訪問看護ステーションは5人以下の零細企業なのですぐには難しい。
 

地域包括ケアの具体的戦略を

国は住み慣れた地域で最期まで生活する街づくりを掲げている。それを「地域包括ケアシステムの構築」という。「システム」というからには、特殊な一人の頑張りではなく、誰がやっても大丈夫な仕組み造りであると理解している。

そんな中、都内の医療法人・飛翔会では、1万人単位の在宅患者さんの夜間対応の一元化に挑戦している。法人が主治医である在宅患者さんだけでなく、提携している10数軒の在宅医療機関の患者さんの夜間対応をも複数の当直医が請け負うという。しかも学研と介護面でも協働するという。様々な意見があるだろうが、まさに医療と介護の近未来像ではないかと注目している。

一昨年、台湾の台中にある嘉儀の在宅医療を見学する機会があった。台湾では在宅医療は末期がんにしか認められておらず、政府の許可を得てからの開始となるなどなにかと制約も多い。しかし特記すべきは、在宅患者さんの夜間対応は地域の中核病院の医師や看護師が患者さん宅に往診していたことだ。「在宅医の夜間対応は無い」との言葉に驚いた。考えてみれば、病院でも深夜帯は当直医が対応する。年中無休のサービス業のうち、交替制でないのは在宅医だけである。

そろそろ現実的な夜間対応策を各地で練るべき時期ではないか。その議論には急性期病院、慢性期病院、地域包括ケア病棟や各種施設のみならず救急、消防、警察、そして葬儀社やNPO法人なども加わるべきである。そうした地域の実情に応じた具体的戦略が無い限り、地域包括ケアは念仏だけに終わる可能性がある。「持続可能な社会保障制度」とはまさしく地域包括ケアシステムのことである。

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この記事へのコメント

介護離職になった1人です。
仕事に就きたいのがやまやまですが、いまは困窮しております。

Posted by 尾崎 友宏 at 2016年02月28日 03:48 | 返信

おはようございます。

>介護離職より、介護職離職のほうが優先するのではないか

本当に全くその通りだと思います。
きれいごとを並べても、やはり介護現場は非常に厳しいです。
「事件」があると、行政は一斉にルールや指導を強化し、クレーマー家族の
圧力もあるし、で、現場の職員たちは疲弊していると感じます。
関西のバックグラウンドがしっかりした会社が運営している高額の施設
でさえ介護職が採用できず、空き室が結構あるし入居待機者もいるのに
受け入れができていません(職員待遇は業界内ではいいほうなのに)。

一方で件の有老ホーム事業者の利益率は高い。
公的資金を使いながら、低賃金で労働させ、経営者が儲ける仕組みの
日本の「公的」介護保険はおかしいと思います。
(まじめに頑張っている事業者もいますが!)
保険点数云々でなく、介護業界は結構経営者が利益を上げている
ところが多い。そこにメスを入れて従業員の待遇を考えてほしいなと
感じます。(ちょっと話がずれてすみません・(^_^;))

Posted by 匿名 at 2016年02月28日 08:40 | 返信

本気で地域包括ケアを進めるには ・・・・・ を読んで


長尾先生が “本気で地域包括ケアを推し進める” こと
を提言されたことに勇気づけられています。

本ブログで長尾先生は、“「持続可能な社会保障制度」
とは、まさしく“地域包括ケアシステム”のことである”
とまとめておられますが ・・・・・・、本当にそうなんでし
ょうか ???

介護保険制度が出来、介護は社会化されました。
介護の世界が民間に開放され、従来の“介護は社会保障
(制度)”の考えから、“介護はビジネス!”に大きく舵
が切られたのだと理解していました。

その観点から見ると、“地域包括ケアシステム”がどの
ように構築されるのか、どのようなビジネスモデルにな
るのか? 私は理解していませんが、その根底には商売
(ビジネス)としてやって行けるのか? が一番の眼目と
なっているような気がしています。

国が今進めようとしている“地域包括ケアシステム”は、
従来の“社会保障制度”とは、一味違う枠組み(仕組み)
ではないか? と私は思っています。

長尾先生の言われる、“「持続可能な社会保障制度」とは、
まさしく“地域包括ケアシステム”のこと”・・・・・ という
論理は成立するのでしょうか? 

“地域包括ケアシステム”が、“持続可能な”社会保障制度
として確立してくれるのであれば、そんなに心強く、嬉
しいことはありません。

是非、そうあって欲しいと願っています。

Posted by 小林 文夫 at 2016年02月28日 10:38 | 返信

見出し「地域包括ケアの具体的戦略を」の文中にあります、都内 医療法人 飛翔会 を検索すると
東京都 HP 東京都福祉保健局のサイトに辿り着きました。「医療・介護連携型 サービス付き高齢者
住宅モデル事業」とあり、公募受付も終了しているそうです。実際に具体的なモデル事業が推められて
いることは喜ばしく、心強いことだと思います。
日本のあちらこちらに、高齢化した街、衰退した地域があると思いますが、空き家対策も含め、
また土地・家屋をそのように利用してもらうことにより、なにかしらの利点(恩恵を享受できる)
施策などがあれば、と思いました。
街を新たに作り直すことにより、同時にシステムも生まれ変わることができれば理想ですね。

Posted by もも at 2016年02月28日 10:10 | 返信

本当に難しい問題です

まさに…
先生のおっしゃる通り うちのスタッフが 不眠になり バーンアウト寸前です
電話当番を放棄してきたため 解放しました

看取りが続くと スタッフのメンタルが危なくなります
病院とは違い 患者さま、利用者さま、ご家族さまとの関係が密になります
さらに お医者さま ケアマネージャーさまなどとの関わりが とても難しいです
おうちで療養し ご本人はおうちで過ごしたいと思っていても
最後は 病院へ送り込まれそうなのを ご本人の気持ちを 大きく前に出し 進めていくことは かなり労力がいります

2月26日に エンドオブライフケアの小澤先生の研修に参加させていただきました
穏やかな小澤先生が 来たる2025年 9年後、在宅療養をすすめることは もちろんのこと 急性期病院も守らなくてはいけないと叫んだ姿に カミナリが打たれた気分でした
行政はデータばかりで出して 具体的に何も進みません
住民…民衆が立ち上がるしかないです

Posted by 訪問看護師 宮ちゃん at 2016年02月28日 10:55 | 返信

TV 情報番組で見た、気になる有益情報をお知らせします。
都内に本部を置く、" 医療法人社団 悠翔会 24時間対応 在宅医療ネットワーク " が紹介されて
いました。文字通りネットワーク システムが確立されての 24時間対応の訪問診療のようです。
主治医として対応して下さり、専門医が必要とあればサポート医もあるようです。
想像ですが、深夜の電話対応にはオペレーターが居たりするのでしょうか。
関東で着々と拠点を広げ、増えているようです。
個人の志と熱意に依存するばかりでは、24時間対応できる医療・介護従事者の身が持たないのは必致
でしょう。ネットワークシステムの実現は、安定した在宅医療の提供であると番組を見て思いました。

Posted by もも at 2016年03月03日 07:23 | 返信

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