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歩行と認知症予防

2016年03月16日(水)

きらめきプラスの卯月号には、「歩く」ことについて書いた。→こちら
歩行は認知症予防の基本中の基本である話は有名である。
そしてコグニサイズなど、さらに進化した歩行法を啓発したい。




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きらめきプラス3月号
 
今回は69歳になる男性からのご質問です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私は今年で69歳になります。
2年前に妻を亡くし現在息子家族と同居中ですが、
実はここ一年ほど、少しづつ物忘れがひどくなり始めたように感じています。
具体的には「朝食や昼食に食べたものを夜になると思い出せない」
「通いなれた道に迷ってしまう」
「以前に話したことを忘れて、何度も同じ話をしている」などです。
家族に指摘されたり自分で気づいたりして不安を感じたので病院の診察を受けましたが、
医師には「認知症ではなく、通常の老化によるもの」と言われました。
特に持病もなく毎日健康に過ごせているので、定年後に学生時代の友人と始めたバンド活動も
続けていきたいと思っています。
物忘れや認知症の効果的な予防方法などがありましたら、教えていただけないでしょうか。
よろしくお願いいたします。



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老化か、認知症か

良かったですね。そのお医者さんに「ハイ認知症です。ハイお薬」なんて言われずに。実は、認知症を検査なしで診断して投薬している医師がいるのが哀しいかな日本の認知症医療の現状です。認知症と診断するためには最低3つの検査が必要であると考えます。問診、頭部CT,そして血液検査の3つです。問診には、MMSEや長谷川式などの記憶力テストを含みます。認知症に造詣の深い医師が診れば検査をしなくてもすぐに大体の診断はつきどうですが、それでも頭部CTは、慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症を除外するために必須です。また血液検査では、甲状腺機能低下症や下剤の飲みすぎによる高マグネシウム血症による認知機能低下などとの鑑別をするために必要です。経過を追うためには、MMSEなど数値化したデータがあると大変便利です。ですからたった1回の診察だけで「はい、認知症ですね。お薬を出しておきましょう」なんて状況は普通あり得ないことは知っておいてください。以上の最低3つのチェックを経て初めて認知症だと判定をします。最低と書きましたが、認知症を疑った場合はさらにいくつかの関連した精密検査を行う場合もありあす。たとえばSPECTや心筋シンチなど検査です。しかしこれらの検査は大変高価であるばかりか大半の人にはまったく不要だと私は考えます。一部の人に研究目的でされる検査であると理解してください。MCI(軽度認知障害)という認知症予備軍かどうかを調べるのは意外と難しい時があります。 
 

認知症予備軍(MCI)とは

 貴方の場合は、「朝食や昼食に食べたものを夜になると思い出せない」とのことですが、その程度ならよくあることで、老化の範囲内かもしれません。しかしまだ69歳で「通いなれた道に迷ってしまう」とか「以前に話したことを忘れて、何度も同じ話をしている」のであれば、認知症予備軍(MCI)の疑いが少しあります。MCIや認知症は、昔は自覚症状が無いと考えられていましたが、最近は自覚症状がある人も相当いることが分ってきました。認知症やMCIは今まで出来ていたことがだんだん出来なくなるのですから、最初に気が付くのは本人のはずです。

最近のトピックスとしては、歩く速度や歩幅がMICから認知症への進展と関連が深い傾向が有ることが分ってきました。歩幅が大きく、歩くスピードの早い人は認知症になりにくいのです。一方、その反対の人は認知症になり易いとうことです。私は最近「病気の9割は歩くだけで治る!」(山と渓谷社)という本を書きました。発売3ケ月で5万部を超えるベストセラーになりましたが、認知症を予防する歩き方の詳細は本書を参考にしてください。まさに「歩行」は認知症の予防、診断、治療の王道だと信じています。しかし認知症は急になる病気ではありません。何年もかけて徐々に進行していくものです。急激に認知機能が悪化すれば他の病気を疑い、必ず検査が必要です。
 
 
コグニサイズの勧

認知症予備軍(MCI)と診断された人にはコグニサイズで認知症への進行を予防できることが分っています。コグニサイズとは「頭の体操」と「運動」を組み合わせた新しい運動方法のことです。ひとことで言うなら、頭と体を同時に使うこと。一番簡単なコグニサイズといえは、計算をしながら歩くことになります。

まずは「頭の体操」のほうですが、一番簡単なものは100から3ずつ引き算をすることです。易し過ぎるという人なら、200から3を引いていっても構いません。あるいは、引く数を5や8に変えてもいいです。また町で見かけた車のナンバープレートの4つの数字を利用する方法もいいでしょう。たとえば、「12-34」というナンバーを見たなら、それをその場で足し算や掛け算をしてもいいし、3番目の数字だけを引くというルールで計算しても構いません。あるいは、その4つの数字を足し算、引き算、掛け算、割り算でなんとか1にするという人もいます。(1+4)―3÷2=1という具合です。

 計算なんて面倒だという人は、動物の名前や食べ物の名前や人の名前など“た”から始まる名詞という風に、できるだけ多くの単語を口に出してみましょう。あと意外と難しいのは、「あいうえお」の五十音を3つか4つの音に区切って声に出すことです。3音ごとなら「あいう」、「えおか」、「きくけ」となります。もちろん計算の代わりに川柳づくりでもいいです。できるという人は俳句にも挑戦。ひとつと言わず慣れてくれば3つでも5つでも構いません。そして運動が終わるまで少しの間自分が作った句を頭で覚えるようにして下さい。ここまでやることは簡単ではありません。

 
どんな運動がいいか?

次に「運動」ですが、一番簡単な方法は胸を張り背筋を伸ばして腕を大きく振って歩くことです。歩幅は広いほうがいいです。最初はゆっくりで構いません。慣れてから徐々にスピードをあげてもいいですが決して走らないでください。膝や心臓に負担がかかります。あくまで歩きながら話しができる程度のスピードで結構です。その人に適した運動強度は当然、持病や年齢によって違ってきますが1分間の脈拍数が120を超えない程度に留めて下さい。もし外出できない時は室内で足踏みやステップをしてください。あるいは高さ10cm程度の踏み台を用意して、それを上り下りしてもいいでしょう。
運動する時間は最初は5分でも10分間でも構いません。慣れてきたら徐々に延ばしていき、ウオーキングならもし1回に30分以上できれば理想的です。前述した「頭の体操」とこうした「運動」を組み合わせることで、認知症予備軍から認知症への進展を予防できるという科学的根拠がちゃんと出ているので信じて継続することが大切。コグニサイズは手軽なうえにお金がかからないことも大きな魅力です。こうした運動は、いわば“ながら運動”とも言えます。つまり脳を「頭の体操」と「運動」という異なる回路で同時に刺激することがポイントです。

しかし飽きっぽい人や何事も三日坊主やなあ、という人は、誰でもいいので一緒にこれをする仲間を作ることも大切です。探せばみなさまが住む地域には様々なサークルがあるはず。新聞の地域版に載っています。最近流行っているのはダンスです。優雅なフラダンスもいいですね。もし可能であれば社交ダンスはかなりの効果があります。しかし歯を食いしばって額に皺を寄せて行うのではなく、笑顔でそれを楽しみながら続けることです。趣味のお友達をたくさんつくり、ランチや音楽や遊びのために毎日外出をしてください。
 

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この記事へのコメント

「頭の体操」に「運動」を、「運動」に「頭の体操」を組み合わせると、気血水の流れがよくなり、脳の活性化も運動能力もよくなりそうですね。
長尾先生提唱の「歩く」が、そのキーポイントだと、つねづね思います。
ただ、デイサービスでの、計算ドリルや塗り絵、なつめろ合唱、規定時間内歩行数や年齢別歩幅など、機械的なパターンの押し付けは、いかにもトレーニングという感じで、やらされ感がいなめません。
見学デイサービスでの集団風景を見て、行く気になれない人もおられるでしょう。
また、いすや車椅子でのトレーニングは、かえって血流を阻害し、首、肩甲骨、骨盤、股関節にもよくないでしょう。
なぜ、たたみにへたりこんだり、寝転んだりして、頭と身のストレッチなど、やらないんでしょうか。

先日、介護認定更新のため、役所の方が、本人にあれこれ質問しているのを、そばで聞いていましたら、「短期記憶はありますか?」「物取られ妄想はありますか?」ですって。
「マニュアル」どおり読み上げればいい、ってもんじゃないでしょう。
よく、どこかに電話すると、「お名前いただいていいですか?」と問われます。「いただかれては困ります」と応えることにしています。

ブログ読者の方々が、「認知症」という呼び名をなくして「呆け(惚け)」を復活すべし、と提案されておられますが、賛成です。
官製用語には、うんざりです。たのしく呆け(惚け)たり戻ったり。行きつ戻りつで逝きましょう。
朝めざめたら、今日することがある。とりあえず、これで活きましょう。

Posted by 鍵山いさお at 2016年03月16日 12:56 | 返信

御質問者の年齢が69歳とありますが、本当に良い医師を受診したお蔭で命拾いしましたネ、と
声掛けしたい気分です。
50歳代から順次、何かの愚痴やエピソード・打ち明け話には、このような単なる老化に伴う悩みが
付き物だと思います。偉そうな事を申し上げるつもりは有りませんが、歳を経るにつけ、
又その過程に於いて、気軽に馬鹿な話ができる相手を探しておく事が、お互いの財産になるのでは
ないかと最近になって思う事しばしばです。
私自身の最近ですが、タイミングが訪れているのだと思いますが、「老化」についてを気軽に
話す事ができる相手が身近にいるという、それは恵まれた人脈を持っているのだ、と思うことが
できる有難みを感じています。50歳代の会話で「以前には、こうできたのに...」とカミングアウト
する事、その話題に追随して、話に花が咲く事があります。

Posted by もも at 2016年03月16日 07:20 | 返信

「コグニサイズ」(認知運動)は、元気で几帳面なひと向けでしょう。
もひとつ、長尾先生推奨のフラダンスや社交ダンス。
ご近所で、ひとりくらしの妙齢の女性たちが、ダンスレッスンに出かけられています。
当方は、フォークダンスが始まる前の世代なので、とても、手が出ません。
そこでというわけではないのですが、老若男女が、「1対1」でできる、「推手」(すいしゅ)をおすすめします。
お互いに、相対して右脚を踏み出し(小指側を接する)、次に右手を前に出し、互いに甲と甲を接します。
この体勢で、手の甲で、相手の体の重心を押し(推し)、相手のバランスをくずそうとします。
相手は、くずされまいとして、互いの甲を密着させてまま、その押し(推し)を、重心をずらせ、いなします。
互いの体は前後に前進後退し、互いの甲は密着したまま水平回転します。
慣れてきたら、今後は、左脚、左甲で、行います。
日本では、楊進、郭福厚が、広めてきたものですが、身長差、体重差、年齢差、性差、場所などに関係なく、スキンシップを楽しみながら、からだ全体のバランス、ストレッチ、気血水の流れを調えます。
自画自賛、宣伝っぽくなりましたが、お許しください。

Posted by 鍵山いさお at 2016年03月18日 12:52 | 返信

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