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認知症とリビングウイル
2016年03月25日(金)
産経新聞認知症の基礎知識シリーズ第14話 終末期の胃ろう
認知症とリビングウイル
電車やバスの中で耳を澄ましていると「認知症」という言葉があちこちで飛び通っています。当事者であったり家族であったり介護職や医療職であったりです。認知症は予備軍を含めて800万人時代と言われていますが、その周辺には当事者の何倍もの人がいることに気が付きます。いまや自分や家族の認知症と無縁で過ごせる人のほうが少ない時代になってきました。この傾向は今後ますます加速することでしょう。
一方、医療の進歩も日進月歩です。たとえ口から食べられなくなっても“胃ろう”という便利な人工栄養法がいとも簡単に行える時代になりました。その結果、認知症の人が徐々に食べられなくなった時に、人工栄養をするかしないかという悩ましい選択についてご家族と話合うことが医療・介護の現場では日常的です。
「私はボケて食べられなくなったら、胃ろうなどの延命処置はお断りします」と言われる人が沢山おられます。20年以上町医者をしていると冗談ではなく本当にその人が認知症になっていく過程を見ることがあります。そしていざ本当にその人が人生の最終段階になった時、本人の意志とは真反対にご家族の希望で胃ろうが造設されることを時々経験します。長女に先が長くないことを告げると遠くの長男が飛んできて「親父は年金が多いので胃ろうでも何でもいいから1日でも長く生きさせてくれ。それをしないと貴方を訴える!」と言われたこともあります。本人からは常々「胃ろうは絶対イヤ!」と聞いていたましたが、家族の希望に逆らえば裁判で負ける国なので逆らうことは容易ではありません。
どうか終末期のお願いはまだまだ元気なうちから“リビングウイル”として文書で表明しておいて下さい。口頭と文書では重みがまったく違います。しかし日本は残念ながら先進国で唯一“リビングウイル”の法的担保がなされていない国です。約200人の超党派の国会議員らが11年間、本人意思を尊重する法案の議論を続けていますが、「終末期が定義できない」という理由などで停滞しています。法的担保は無いとはいえ、“リビングウイル”を表明しておくことは大認知症時代を目前に今後ますます重要になってきます。
毎年、リビングウイルを表明して亡くなられた方のご遺族へのアンケート調査では90数%の遺族が「リビングウイルが活かされた」と回答しているからです。「どうすればリビングウイルを作成できるのか」とよく聞かれます。一番簡単な方法は日本尊厳死協会のホームページを開いて申し込むことでしょうか。2000円でリビングウイルが作成できます。原本は厳重に保管され携帯用カードが送付されます。
最近「認知症になってからでもリビングウイルを表明できますか?」という質問をよく受けます。日本リビングウイル研究会などで議論を重ねてきましたが、「認知症になっても高度でなければ表明できる」という認識に変わってきました。考えてみれば認知症になっても後見人制度の申し出人になれますし、「後見」がついている人も選挙に行けるのですから当然の話かもしれません。リビングウイルや終活の実際について詳しく知り方は、NHKの「ラジオ深夜便」3月28~31日(4夜連続、23時台)を是非お聴きください。
キーワード リビングウイル
死期が迫った時に延命治療を拒否する旨を文書に書いたもの。日本尊厳死協会では約12万人の人が表明している。最近は病院や施設が独自に定めた書式もあるし公証役場で作成もできる。これに家族の同意を添えた文書を事前指示書という。
認知症とリビングウイル
電車やバスの中で耳を澄ましていると「認知症」という言葉があちこちで飛び通っています。当事者であったり家族であったり介護職や医療職であったりです。認知症は予備軍を含めて800万人時代と言われていますが、その周辺には当事者の何倍もの人がいることに気が付きます。いまや自分や家族の認知症と無縁で過ごせる人のほうが少ない時代になってきました。この傾向は今後ますます加速することでしょう。
一方、医療の進歩も日進月歩です。たとえ口から食べられなくなっても“胃ろう”という便利な人工栄養法がいとも簡単に行える時代になりました。その結果、認知症の人が徐々に食べられなくなった時に、人工栄養をするかしないかという悩ましい選択についてご家族と話合うことが医療・介護の現場では日常的です。
「私はボケて食べられなくなったら、胃ろうなどの延命処置はお断りします」と言われる人が沢山おられます。20年以上町医者をしていると冗談ではなく本当にその人が認知症になっていく過程を見ることがあります。そしていざ本当にその人が人生の最終段階になった時、本人の意志とは真反対にご家族の希望で胃ろうが造設されることを時々経験します。長女に先が長くないことを告げると遠くの長男が飛んできて「親父は年金が多いので胃ろうでも何でもいいから1日でも長く生きさせてくれ。それをしないと貴方を訴える!」と言われたこともあります。本人からは常々「胃ろうは絶対イヤ!」と聞いていたましたが、家族の希望に逆らえば裁判で負ける国なので逆らうことは容易ではありません。
どうか終末期のお願いはまだまだ元気なうちから“リビングウイル”として文書で表明しておいて下さい。口頭と文書では重みがまったく違います。しかし日本は残念ながら先進国で唯一“リビングウイル”の法的担保がなされていない国です。約200人の超党派の国会議員らが11年間、本人意思を尊重する法案の議論を続けていますが、「終末期が定義できない」という理由などで停滞しています。法的担保は無いとはいえ、“リビングウイル”を表明しておくことは大認知症時代を目前に今後ますます重要になってきます。
毎年、リビングウイルを表明して亡くなられた方のご遺族へのアンケート調査では90数%の遺族が「リビングウイルが活かされた」と回答しているからです。「どうすればリビングウイルを作成できるのか」とよく聞かれます。一番簡単な方法は日本尊厳死協会のホームページを開いて申し込むことでしょうか。2000円でリビングウイルが作成できます。原本は厳重に保管され携帯用カードが送付されます。
最近「認知症になってからでもリビングウイルを表明できますか?」という質問をよく受けます。日本リビングウイル研究会などで議論を重ねてきましたが、「認知症になっても高度でなければ表明できる」という認識に変わってきました。考えてみれば認知症になっても後見人制度の申し出人になれますし、「後見」がついている人も選挙に行けるのですから当然の話かもしれません。リビングウイルや終活の実際について詳しく知り方は、NHKの「ラジオ深夜便」3月28~31日(4夜連続、23時台)を是非お聴きください。
キーワード リビングウイル
死期が迫った時に延命治療を拒否する旨を文書に書いたもの。日本尊厳死協会では約12万人の人が表明している。最近は病院や施設が独自に定めた書式もあるし公証役場で作成もできる。これに家族の同意を添えた文書を事前指示書という。
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この記事へのコメント
長尾先生、何時もおつかれさまです。
Posted by 尾崎 友宏 at 2016年03月25日 03:40 | 返信
2月に、先生の講演会に参加し、リビングウイルの事を知り、入会しました。もちろん、息子にも、キチンと話しています。
Posted by 渕上祥子 at 2016年03月25日 09:48 | 返信
NHKラジオ深夜便、初日は宮川アナですね、懐かしい。
番組内タイトルを拝見しても期待できます。楽しみです。
http://www.nhk.or.jp/shinyabin/pro/a1.html
Posted by もも at 2016年03月25日 07:31 | 返信
長尾先生の、「平穏死10の条件」
を読んだものです。
このブログを見つけまして、長尾先生が、ご自分の著書の朗読をされたり、劇をおやりになっていることを知り、興味を持ちました。
私は、癌で亡くなった夫の看取りの経験や、現在、認知症が進みつつある母との関わりの中で、人生の終焉に対しての深い思いを持つようになりました。
私は今、アメリカのホスピス看護師、デニー・コープさんが書いた、「大切な人の看取り方」という本の朗読をしながら、身近な人たちと、安心、安全の中で人生に向き合える場を考え会う時間を作っているところです。
長尾先生と、交流ができれば嬉しいと思い、コメントさせていただきました。
東京近郊で講演などのご予定があれば、ぜひ伺いたいです。
Posted by あさまる at 2016年03月25日 09:39 | 返信
堪えず直球勝負な長尾先生を時に「無謀すぎる..大丈夫かな、この方。」と思う事度々ですが、
たくさんの人間模様を、ただひたすらに受け留める作業をしてきたという百戦錬磨は、やはり
万人には想像にも及ばない経験を積んでいらした、ということなのでしょうか。
上記、親御さんの年金に纏わる話を鑑みても、世の中に多くある事柄かも知れないけれど、相手が
それを口に出した=カミングアウトした、という事実が凄いこと、それを言わせた長尾先生が
「恐るべし!」という存在なのかな、という気がしました。
Posted by もも at 2016年03月25日 11:14 | 返信
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