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深夜対応は辛いよ

2016年04月18日(月)

在宅医療は24時間対応が基本である。
しかし深夜の対応は年々増えて辛い。
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きらめきプラス4月号   深夜の対応体制  長尾和宏
 


【質問内容]】

東京在住の女性(59歳)です。現在自宅で月2回訪問診療をお願いしながら要介護4の実母(85歳)を介護しています。病状が急変したときなどは24時間365日電話してもらえば対応します」というお話しでしたので、申し訳ないと思ったのですが2回深夜に電話させていただいた時のことです。事務員さんが出て、症状などを聞かれ「折り返し電話します」と言われました。
私は事務員さんが先生に連絡をとり、先生から直接電話をもらえるものだと思っていましたが、
待っていると事務員さんから「先生に連絡したら、こういうふうに指示が出ました」という電話が入っただけで、結局先生とお話をすることは出来ませんでした。私の説明が悪く、2回とも差し迫ってないと判断されたのかもしれませんが、直接先生に母の病状を説明してお話を聞けせていただければ、家族としては安心できるのですが。無理な事なのでしょうか?変な質問で申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。
 
 
【回答】

在宅医療は24時間対応が基本
 
 昔は在宅医療や訪問診療という言葉は無く、ただただ「往診」という言葉だけでした。深夜に開業医のドアをドンドン叩いて医者を起こしたものです。1976年に病院死が在宅死を上回りました。果たしその40年後、在宅医療は「ザイタク」と略されて一般的なものになりました。この20年間、国が一貫して在宅誘導政策を続けてきたことが主因です。

 一方、現在の在宅医療制度は複雑化しました。たとえば医者は医療保険制度下なのに訪問看護は介護保険制度下だったりします。在宅医療を提供する医療機関にも機能強化型在宅療養支援診療所、在宅療養支援診療所、ただの診療所の3区分があります。それぞれ診療報酬体系が異なり一物三価になっています。さらにこの4月からは在宅専門クリニックも正式に認められました。いずれにせよ、現在の在宅医療は「24時間対応」が基本になっています。ただし「対応」と言っても大半は電話で済むことが多く、深夜に車を走らせることは私の場合、年に数回程度です。しかし深夜帯(22時~6時)に電話がかかることはしばしばあります。
 
病院に入院してナースコールを押した場合、最初に対応するのは看護師です。看護師は当直室で寝ている当直医に電話をかけて重大な要件でないと医師が判断すれば病室に行かずに口頭で指示を出すことは普通です。もちろん病棟看護師が「来てください」と要請したり、医師が「ただならぬ状態かも」と感じたら急いで病室に行って診察をします。

 一方、在宅医療の場合、深夜も主治医に連絡がつくことが基本条件です。しかし最初に電話に出ること(ファーストコールと言います)を事務員や看護師が肩代わりしていることもあります。医師が高齢や病弱である場合や、かかってくる電話が多すぎる場合、ワンクッションを置いたシステムで対応している医療機関があります。医者も人間ですから寝ている間に何度も電話で起こされる日が続けば病気になったり早死にします。実際、私の周囲にはそうなった在宅医が何人かいます。私自身も365日24時間対応を20年以上ひとりだけで続けてきましたが、年間100件近い看取りがある日々に年齢的・体力的に限界を強く感じているところです
 
 
 
深夜の電話の相談内容
 
 さて実際には、深夜の電話の相談内容はどんなものがあるのでしょうか。私の経験では発熱や嘔吐・下痢などの風邪症状が多く、時には転倒や吐血・血便などの相談もかかってきます。なかには午前3時に「眠れないので眠剤を持ってきてくれ」という電話に困ることも。多くの医療器機関では、発熱や吐き気などのありふれた症状に対して置き薬を用意しています。
 
電話がかかってきても往診を要しない軽症の相談が9割以上なので、看護師などが医師に代わって事前指示(事前に医師からもらっている指示)で対応する場合があります。あるいは往診を要すると思ってもずぐに行けない場合はまずは看護師が行く場合がよくあります。法律的にはすべての責任は医師にあり、どんな形でも医師に判断を仰ぐことになります。
 
 医療機関によっては当直医を雇用したり複数の医師で分担するなど医師が過重労働にならないための工夫をしています。しかし多くの医療機関は医師1人で対応しているのが現状でしょう。医師の疲弊を防ぐため医師会単位で当直者を配置したり、何ケ所かの医療機関が組んで「今夜の電話当番は○○先生」と輪番制を組んでいるところもあります。国はこうした医療機関同士の連携による夜間対応を認め推奨しています。労働者は週40時間労働という労働基準法で守られていますが、多くの開業医は個人事業主であるので週24X7=168時間労働に黙って耐えているのが日本の在宅医療の舞台裏です。ちなみに台湾では、開業医の在宅医療は末期がんにしか認められていませんが、夜間の対応は地域の病院の当直の医師や看護師が往診しています。ちなみに私は日本も台湾に見習うべきであると主張しています。
 
 
「医師の声を聞きたい・・・」

 実際、「困った時に主治医の声を聞きたい。聞くだけで安心する」と言われる患者さんやご家族が少なくありません。それは町医者冥利であると同時に、100%応じていたら間違いなく早死にします。一方、「夜中に息を引き取ったが先生にはよく寝て欲しいので朝になってから電話した」という人もおられ、涙が出そうになることもあります。

 さて、貴方の母親の急変とは具体的にどんな様子だったのでしょうか。「2回電話した」とあるので入院を要するほどの急変ではなかったのでしょうか。「急変」とひとくちに言っても発熱などの「想定内のできごと」から突然の激しい胸痛や背部痛などの「まったくの急変」までかなりの幅があります。なので看護師や事務員がまず間に入って訴えを聞いてから医師が判断し、指示を伝える行為自体は違法ではありません。但し、それが間違った判断なら医師が責任を負うことになりますが。

もし貴方が「どうしても主治医と直接相談したい」や「主治医に家に来てほしい」と判断されたなら、次回からは電話に出た事務員にその旨をはっきりと伝えてください。私のなら行きますが、もしやむを得ぬ事情で行けない時はとりあえず看護師に行ってもらうか、セカンドコールの医師にお願いするなどバックアップ体制を工夫してうます。もしそうした対応が無いのであれば「24時間対応」の看板は看板に偽りあり、となります。

「24時間365日間の電話対応や往診体制」は在宅医療の要です。在宅医療とは患者さんとご家族にそうした安心を与えることです。従って在宅医療を開始する時に、今回のような夜間対応についても充分な説明を聞いてから契約してください。今からでも結構です。もし対応できないという話であれば主治医変更も一法かと思います。
 

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この記事へのコメント

本当にいつもおつかれさまです。
いつも思いますが、倒れません様に。

Posted by 匿名 at 2016年04月19日 12:30 | 返信

戦前のお医者さんは、健康保険が無かった時代ですから、昼間や、貧乏な患者さんからは、普通か、安くしてあげたり、夜間や、お金持ちには、少し高めに請求しても、誰からも、文句は言われなかったと、勝手に想像するのですけど、中々赤ひげ先生の理想通りには行かなかったでしょうね。
初代の先生が、真面目にやり過ぎで若くして亡くなったり、だから2代目、3代目は、要領よく仕事をしてしまうのかも。
長尾先生も、そろそろ、お年ですから、「在宅医療専門」と「来院患者専門」に分けるとか、合理的な治療に変えて行かないと、長尾先生が倒れたら「親亀こけたら、皆こけた」状態になるのでは。
医療も企業と考えると、持続可能で合理的な運営が、求められると思います。
浅野内匠頭みたいに部下の上に立つ人は、感情的になってはいけないのだそうです。

Posted by 匿名 at 2016年04月19日 07:09 | 返信

「医師の声が聞きたい」について、気持ちは分かりますが、通常の受診でも半年待ちが当たり前な
昨今にあって、「在宅=24hr.対応」契約であるから、せめて電話でも..というのは少々違うような
気もします。日中の出来事でしたが過去に、「貴方だけではない!」とハッキリ声にする医師を
見たことがあります。時に、それも一理あるような気もします。

Posted by もも at 2016年04月19日 11:38 | 返信

深夜対応は辛いよ! ・・・・・・ を読んで


長尾先生は本ブログで、深夜対応が年々増加して
きて、その対応が辛くなってきていることを述懐
されています。
それでも、在宅医療は365日24時間対応が基本
とも述べられています。
本当にそのような途切れのない対応が必要なので
しょうか? 理想なのでしょうか?

在宅医療に携わられるお医者さんが、如何に誠実
に、如何に努力されようとしても、もし受け持っ
ている患者さんのお二人が、不幸にして同じ時間
帯に緊急事態に陥られたとしたら、その両方に誠
実に対応することは不可能です。
それを指して“話が違う!” or “契約不履行!”
等と言われても対応のしようがないと思います。

国が今進めていて、私たちのまちでもその構築を
目指している“地域包括ケア”、多職種の人の連携、
地域の団体、地域の住民の連携も、がちがちの強固
なものでなく、“ゆるやかな連携”・“ゆるやかな連
帯”で良いと私は思っています。

先生の言われるような “辛い!”・“厳しい!”枠組み
では無理が生じて永続させることが難しいと思って
います。

誰かの超人的な頑張りや、誰かの犠牲の上に成り立
っているような社会システムが正しい姿とは思えま
せん。
長尾先生の言われるような、365日24時間切れ目の
ない完璧な社会システムを目指すのではなく、もう少
し緩い社会システムを容認する社会でありたいと思っ
ています。
完璧なシステム:365日、24時間、休みなし!と言
った、非人間的な社会システムを目指すことも、そろ
そろ止め時ではありませんか?
完璧な対応を期待はするが ・・・・・・・、状況に拠っては
待つこと、そして最悪の場合は諦めることさえも容認
する人間的な社会システムで良いのではないか? と
思っています。 
当事者となったら、そんなゆるいシステムは受け容れ
られないんでしょうか???

Posted by 小林 文夫 at 2016年04月19日 11:52 | 返信

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