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眠ると記憶が良くなる

2016年04月28日(木)

産経新聞の連載は、睡眠と記憶について書いた。→こちら
眠ると認知機能が良くなる。
認知症予防は、よき睡眠から。
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産経新聞・睡眠シリーズ第3話  記憶の固定・強化
               よく眠る高齢者はボケにくい
 
 7~8時間眠る人が一番長生きするのですが、睡眠には2種類あることを御存知ですか。レム睡眠とノンレム睡眠です。この2つはまったく異質な眠りです。レム睡眠とは浅い眠りのこと。体は深く眠っているのに脳が活発に動いている状態。夢を見たりトイレに起きるのがこの時間です。一方、ノンレム睡眠は脳も体も休んでいる深い眠りで、この時に成長ホルモンが分泌されます。この2つがワンセット90分であり、一晩に5セット繰り返すことで90分x5セットで7時間半の睡眠となります。ただ1回目のレム睡眠は5分にすぎず、2回目は10分としだいに長くなり5セット目の朝方にやっと30分になります。一方、最初にやってくるノンレム睡眠は一番深い眠りで、就寝してすぐにノンレム睡眠に入れるかどうかで睡眠の質が決まります。レム睡眠中は脳機能のメンテナンスのために脳が活動する必要があり、そのノイズが“夢”であると考えられています。

 受験生の中には試験の前に「寝ると忘れるから寝ない」という人がいますが、これは間違いです。さまざまな実験で睡眠は記憶を保持するだけでなく強化することが示されています。勉強や楽器の演奏やスポーツにおいて、練習でその日はうまくいかなかったのに、2~3日後に突然上手にできるようになることがあります。この不思議な現象には記憶のメカニズムが深く関与しています。ハーバード大学のステイックゴールド先生は睡眠によって知能テストの成績が高まることを報告しています。実は記憶だけでなく知的能力や認知能力も向上することが分っています。リューベック大学のボルン先生は学習中にバラの香りなどの特定の香りをかいでもらい、ノンレム睡眠中に同じにおいをかがせると学習効果が強化されることを報告しています。さらにその時に海馬の活動が上がっていることも分かっています。学習時の感覚を睡眠中に再現することで記憶は固定・強化されるのです。

 ワシントン大学のホルツマン先生らは、マウスの眠りを断つことでアルツハイマー病の原因とされるアミロイドβというタンパク質が記憶の中枢である側頭葉の内側にある海馬に蓄積することを報告しました。アミロイドβたんぱく質は覚醒時に脳内に蓄積し、睡眠中に少なくなるというのです。つまり「寝る子は育つ」だけではなく、高齢者においては「寝る高齢者はボケにくい」ということになるのです。

 とはいえ歳をとるにつれ睡眠時間は生理的に短くなってきます。夜中にトイレの回数が増えて眠れない、と訴える人が増えてきます。「なんとかして寝ないと」と睡眠薬を服用している方もいます。しかしある種の睡眠薬はボケ易いことも分っています。あるいは、睡眠薬によるふらつき→転倒・骨折→入院→認知症悪化、という悪循環に陥り易いことも知っておかねばなりません。今日は、睡眠は記憶と深く関係して睡眠が不足するとボケ易いことを知っておいてください。

 最後になりましたが、熊本県・大分県を中心とした大地震で犠牲になられた方と被災された方と関係者に心からお見舞いを申し上げます。21年前に阪神大震災を経験した私たちは、その経験を様々な形で活かし被災地に様々なエールを送らせて頂きます。
 
 
 
キーワード  レム睡眠
急速眼球運動( Rapid Eye Movement, REM)を伴う睡眠。浅い眠りで身体は深く眠っているのに脳が活発に動いている状態。金縛りにあったり夢を見る。脳は働いているのでこの時に目覚めるとすっきり起きられる。

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この記事へのコメント

この、眠りに関してのコラムは認知症のみならず、万人に興味深い内容であると思います。
幼い頃から成長期に至るまでは、色々な夢を見ていたような気がします。
人生のうち 1/3 は眠っている、というのですから意欲のある人は、早寝早起きに勤しむのでしょう。
たとえ、たっぷり気持ち良い睡眠を得られたとしても、私は、朝はマッタリしていたいものです。

検索ヒットした関連、参考記事添付:
http://www.neruzo.com/sleep/time.html

Posted by もも at 2016年04月28日 08:52 | 返信

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