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異常死体として死亡診断書??

2016年05月04日(水)

一昨日の看取りに関する記事に何人かの人から書き込みを頂いた。
なかでも「とある勤務医」さんの書き込みに、返事を書いてみたい。
とてもいい書き込みでありこのブログも続ける意味があるのかなあ。
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【とある勤務医さんの書きこみ】

勤務医側からすれば、素直に異常死体として死亡診断書書きます。
ただ、6回も辛い目に合わせる必要はあったのでしょうか?
何のためにかかりつけ医しているのでしょうか?

看取る気がなくて、単にその場しのぎのナンチャッテ医療を見ていて、
吐き気がしました。開業医はこの程度かとも。




【長尾からのお返事】

とある勤務医さんがこのブログを読んで頂いていることに、まずは感謝。
厳しいご意見のようですが、そもそも町医者の戯言に関心があるのか。

あっても普通は無視だろうのに、わざわざ書きこんで下さり、
そして期せずして話題を提供して頂き、感謝です。


さて、「素直に異常死体として死亡診断書書きます」とのことですが、
そこからして、法律違反であることをまずは指摘させて頂きます。

「異状死体」であれば警察に届けないと医師法21条違反で刑罰があります。
「異状死体を診れば24時間以内に警察に届け出」が医師法21条なのです。

またそもそもその患者さんは異状死体では無かったはずです。
異状死体とは、「体表を観察して異状が死体」」のことです。

また、「異状死体」という言葉はありますが、「異常死体」という言葉は
この世にどこにも存在しません。(参考までに、異状死も存在しません)

さらにもし「異状死体」であれば、必ず24時間以内に警察に届け出て
もし書くとすれば「死体検案書」であり、「死亡診断書」ではありません。


以上、とある勤務医さんは最初の一行だけで、3つ間違えています。
病院の医師たちが看取りの法律を知らないことを指摘しています。

のっけから厳しい話で恐縮ですが、
私がなぜこうした記事を書いたのかを、どうか理解してください。

貴方のような勤務医にこそ、ちゃんとした看取りの法律を知って欲しいのです。
それが私の真意であることをどうか理解してください。


さて、後段には2つのことが書かれています。


1)  >6回もそんな目に合わせる必要があったのか・・・・

合わせたのではなく、患者本人と家族の希望があって、
病院がそれを受け入れたわけであり、主体は病院です。

たとえ救急搬送されてきても、受け入れた病院側がしっかり説明して
「その適応無し」で蘇生処置を行わない、という選択もあったはずです。

もちろん我々も何度も在宅看取りの説明をしましたが、上手くいかなかった。
ちなみに当院では末期がん患者さんの90%以上は在宅で看取っています。

しかし非がんの終末期では、このような例も必ず混じってきます。
なにせ救急搬送も蘇生処置も入院費用も、全部タダの国ですから・・・

おまけに家族の権限が世界一強大な国。

私は応召義務と転医紹介義務という2つの医師法にただ従っただけです。
鍵は私たちだけでなく、搬送を受ける側にもあることに気がついて欲しい。

なにせ、その病院に何度も入院されていて時間も充分あったはずだし、そもそも
その病院から紹介された患者さんで、その後も病院の予約通り通っていました。



2) >看取る気がなくて、単にその場しのぎのナンチャッテ医療を見ていて、
  >吐き気がしました。開業医はこの程度かとも。

私は看取る気満々でも、本人や家族がそうでないケースが当院では数%あります。
そして、この数%の原因の一部は病院側にもあるはずです。

「なにかあったら、いつでも来てくださいよ」
「ホスピスにも紹介状を書いておきますからね」・・・

そんなことを言われて病院を出たら、
「そうかな」と思う患者さんが大半です。


仰せのとうり、ナンチャッテ医療もある。
概ね2とうりある。

・たまたまそんな例がある開業医と
・全例がそんな症例の開業医、がある。

ですから、「ナンチャッテ開業医」も、
「開業医はこの程度」も、7~8割は当たっているかも。

私は、近畿の在宅の代表ですが、そんな開業医がいることに頭を痛めています。
患者さんからもクレームが舞い込むので開業医に対しても苦言を呈しています。

ただし勤務医には、在宅医療の悪い面しか見えず、
いい面は見えないことも、この機会に知っておいてください。

だから「吐き気がする」との書き込まれた気持ちはよく分かります。
そうした負担には大きな責任を感じていますし、もっと頑張ります。

それでも吐き気がするのであれば、読まないほうがいいかと。


しかしその問題と、今回話題にした看取りの法律の問題は
まったく関係無い話であることは、どうかご理解してください。

以上、長長と説明申しあげました。
少しでも参考になれば、幸いす。

勤務医さんと、ちゃんとした形で意見交換できれば嬉しい。
こうした意見交換の場がほとんど無いことが、誠に残念です。

今後ともよろしくお願い申し上げます。










 

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この記事へのコメント

半世紀前のことですので、うろ覚えで恐縮です。
養父死亡の際、警察官から「死体検案書」をいただき、あとでかかりつけ医から「死亡診断書」を受け取りました。
当時の役所への「死亡届」に前者を添付済みでしょうから、写しの交付請求をすれば、入手できるでしょう。
後者は、探せば出てくるかもしれません。
ただ、なぜ2枚もらったのか、定かではありません。
かかりつけ医が、警察に連絡(異状死体の届出)したからでしょうか。
大病院と往診医とのあいだで、このようなやり取りが、あちこちで、なされているのでしょうか。

近年、「現場で心肺停止中」の方が、搬送先の病院で「死亡確認」というニュースが流れています。
「遺体」という表現を避けているのか、「生死不明」だからなのか、素人にはよく分かりません。
それとも、横ならびマスメディアの、横着なことながれ主義のなせるワザ?

ところで、「とある勤務医」さま。
大阪梅田につぐ神戸三宮の暴走事故でも、運転手が「意識不明のままアクセルを強く踏み続けた」と、見てきたように報道していますが、そんなの「アリ」ですか。ご専門外でなければ、お教えください。

Posted by 鍵山いさお at 2016年05月04日 02:43 | 返信

先生のblogを読んでいていつも思うのですが、「とおり」と書くべきところを「とうり」と書く癖、どうにかなりませんか。

×「仰せのとうり」
○「仰せのとおり」

×「2とうり」
○「2とおり」

漢字で書けば「通り」になります。「とうり」を変換しても「通り」にはなりませんよね?
先生は何冊も本を出版なさってます。その際、校正で何度も指摘されていると思うのですが。なぜ改まらないのでしょうか。
それとも、数々の著作を実際に書いておられるのはゴーストライターで、ご自分では読んでチェックをしているだけなんでしょうか。

Posted by 匿名 at 2016年05月04日 04:39 | 返信

私ごときが…
書き込んでよいのかと思いつつ すみません

うちの訪問看護ステーションは…
患者さま 利用者さま お一人お一人 主治医が違います
大病院の先生であったり…開業医の先生だったり…
在宅専門の先生だったりします

大病院の先生vs開業医の先生
…とひとくくりにしてしまうのは
どうかと考えています

開業医の先生の中には
何かあれば 救急搬送と 当然のように 訪問看護指示書にお書きになる先生もいらっしゃいます

お医者さまを始め 患者さま ご家族…誰もが
病院で亡くなることは 言われなくても 理解しています
しかしながら
在宅でお看取りすることは 全くご存知でないと言っても過言ではありません
主治医の先生も
在宅看取りのお話をしてくださる先生はいません
なので
訪問看護にうかがい
日々 状態が悪化していく中で
何度も 何度も 繰り返し
「最期をどこで迎えたいか」と問いかけるんです
どのケアマネージャーさんからも
最期は病院ですよねと言われてしまいます
いつも 在宅推進派と間違えられてしまいますが
そうじゃ ありません

逆に
ケアマネージャーさん お医者さまに
勝手に 病院死を決めないでくださいと言いたいです

今までにも
在宅看取りとお決めになったが
ご本人の苦しい状態をなんとかしたいとご家族が思い
救急搬送になったケースもあります

あくまでも お決めになるのは
ご本人であり ご家族です
私たちは 意識決定支援です

「6回も 辛い目に合わせて…」とありますが

これは ご本人 ご家族が望まれたことです
少なくとも
5回救急搬送されて 5回 命を長らえたことは
ご本人 ご家族は満足されているのではないかと推察します
だから
6回目も生き返ると望みをかけたんです
それが ご本人とご家族の希望だったんでしょう

いずれにしても
最期の時を迎え お亡くなりになった診断を
尊厳を持って 行っていただきたいと願います

Posted by 訪問看護師 宮ちゃん at 2016年05月04日 08:42 | 返信

私なぞが口出しすべきことではないとは存じますけど、その癌患者さんは、思う存分在宅生活を楽しんで、病院で、お亡くなりになったのですから、大往生だとおもいます。
病院の先生にもご迷惑を、お掛けしたとは思いますけど、あの世で患者さんは、深く感謝していると思います。
救急病院のお医者さんも、開業の在宅医療をしているお医者さんも仲良くして頂きたいです。
長尾先生の腰痛さえなかったら、サッカーか、ラグビーか、腕相撲の試合で決着を付けたらいいのにと思います。
すみません、こんなことしか思いつかなくて。

Posted by 大谷佳子 at 2016年05月04日 09:22 | 返信

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