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日本老年医学会イン金沢

2016年06月10日(金)

金沢で開催されている日本老年医学会に参加した。→ こちら
最新の情報収集に加えて、全国の懐かしい人たちにも会えた。
珍しく朝から晩まで、いくつかの会場で真面目にお勉強をした。
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全国80ある医学部のうち老年医学講座があるのはたった20しかない。
この超高齢化社会に医学界や大学病院は全く対応できていないのだ。

在宅医療や地域包括ケアや終末期医療を教える大学は無いのだ。
だから一生懸命に本も書くが、そもそもそんなものに興味が無いのだ。

大学教授が定年退官して名誉教授になり、そして自分が後期高齢者になって
はじめて、そういったことの必要性に目覚めるのであるが、それでは遅すぎる。

いろんな想いで、たくさんの講義を拝聴した。
アカデミアと実学の融合」が、日本の医学の大きな課題である。

経産省ヘルスケア産業課長の江崎禎英氏の講演に感銘を受けた。
こんな役人さんが1割いればこの国も変わるのだが。

以下は自分のメモ

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●便秘の診断と治療
 横浜市大 中島淳氏
 
全人口の14%が便秘症。
しかし便秘は「秘め事」なので調査が難しい。

医者は便秘を正面視してこなかった。
医学教育でも便秘の項目はほとんどない。
 
60歳以上になると便秘の頻度が増える
60歳までは女性が多いが、60歳後は男性が多い
 
便秘とは
・排便回数の減少(週3回未満)
・排便困難、である。
 
快便 直腸に入って便意を感じる大蠕動が大切。
 
甲状腺機能化症、大腸がんなどの器質性、薬剤性(抗コリン剤)
などが原因のことがあるので、全身の診察が重要。
 
便秘のタイプ。
 
●結腸通過時間遅延型 =女性が多い
月経と同時期にはじまり、30歳を過ぎても残ると慢性便秘で
 
●結腸通過時間正常型=外来で最多、高齢者も多い
排便回数は正常
緩下剤に反応する
直腸まで便は来ているので
 
 ●便排出障害型
怒責がある
 
●骨盤底筋協調障害もある=きばっても出ない
 

医者は排便回数を聞いて、「毎日出ている」と答えると
多くの医者は便秘は無いと考えるが、それは間違いだ。

 
たとえ毎日出ていても硬くて排便困難があるのが多いのが「便秘」。
医者は、排便困難にもっと向き合わなくてはいけない。

 
治療は自然排便を目指す
・排便の頻度
・便形状
・気分などを総合して満足度を高めることが大切。
 
食物繊維を20g摂る=キャベツ1ケ、リンゴ6個に相当。
江戸時代の日本人は100gも食べていた
しかし若年女性では2gの人がいるのが現状だ、
 
姿勢も重要。
便秘でない人はどんな姿勢でも出る
便秘の人は、かなり前かがみ(35度)にならないと出ない=考える人のスタイル
和式トイレが理想的
若い人はだれも和式トイレを使ったことがない
 

薬物療法

●酸化マグネシウム
日本ではよく使うが米国では使わない
米国では、ぽりえちれングリコール
日本は便秘治療でも完全にガラパゴス化している
高マグネシウム血症に注意
1日2gが上限
胃酸で活性化される
胃酸分泌が低下した人やPPI投与中の人は効きにくい
高マグネシウム血症は、めまいやふらつきを訴える人が多い
CKDがある人は要注意
 
●刺激性下剤
センナ、アロエ、ダイオウなど
切れはいいが、腹が痛くなる
あくまで頓服用と考えるべき
漫然と使わない 
結腸無力症になる
 
●アミテイーザ 分泌型
同様な新薬が続々と開発中だが日本では唯一の薬
飲んで1日で効く
便の硬さの改善(正常な便にする)
電解質異常はない
下痢があると量で調節
食事のあとすぐに飲むことで、悪心は
併用注意や併用禁忌がない

しかし薬価が高い(1日300円)が難点
 
●治療の骨格は
緩下剤(酸化マグネシウムとアミテイザ)を基本として、刺激性を屯用として使うこと。
 
レシカルボンは、高齢者では迷走神経反射に注意が必要
 
腹部膨幡には、漢方(桂皮芍薬湯や大健中湯)も有効
 
緩下剤を少しずつ減らしながらアミテイーザを使う
常に刺激性下剤を頓服としておいておくと安心する


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●免疫細胞と健康長寿
 金沢大学  華山力成氏
 
アポトーシス誘導因子(deate factor)による細胞死
Fasリガンド=殺し屋細胞の武器=相手を自殺に追い込む
 
アポトーシスはがんの発症にも重要な役割を果たしている
細胞の数をコントロールしている
アポトーシスの欠落=がん化
 
P53やAPCは、アポトーシスを誘導してがんを抑える
 
Fasリガンドによるアポトーシス
 
生理作用は、
免疫反応の不活化と
がん細胞の除去
 
アポトーシスの異常として
自己免疫疾患
異常に活性化されると肝炎、アルツハイマーなど
Fasリガンドはもろ刃
 
 アポトーシス細胞はマクロファージが貪食する
 
マクロファージは、生きた細胞と死んだ細胞を
アポトーシス細胞はEat-meシグナルを発している
Eat-meシグナルとは、フォスファチジルセリン(PS)
 
MFG-E8を出している
 
ネクローシス細胞から自己抗原(DNA,RNA)の漏出がおこる
 SLEの原因になり得る
 
死細胞が除去されないと・・・
 
ヒトMFG-E8の遺伝子多型はSLEのリスクを高める
 
 
マクロファージによる組織障害
他者融解(Heterolytis)は昔から知られている
Myoferlinによるリソソーム酵素の放出
Myoferlinは好中球による細胞障害を促進する
 
 
 新たな老化抑制因子“エクソソーム”
シャボン玉のような小胞を放出し免疫応答を引き起こしている
老廃物が溜まらないようにしている
エクソソームにはいろんな作用がある
自分の環境を調節している

エクソソームの中に、マイクロRNAが入っている
エクソソームを介した神経細胞―グイア細胞
神経変性疾患関連蛋白質
特に、パーキンソンに関連するαシヌクレイン

@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@


●老化の多様性
 京都府立医科大学 近藤祥司氏
 
老化先進国日本における高齢者の多様化、3極化している

 600年前のサルの寿命は20歳
 19世紀は45歳 =600万年で30年伸ばしたのに、
 
たった100年で先進国は爆発的寿命延長を獲得=100年で30年伸ばした
その結果、人類は寝たきりになるという代償も得た。
 
老化という巨大な像をどう俯瞰するか
 
メタボローム解析
メタボライトは大きく3つに分かれる
高齢化の多様化があるが、メタボライト自身にもそれが見られる
 
●Apop遺伝子を標的とした抗老化研究
 鹿屋体育大学 安田修氏らが研究中


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 ●糖尿病とがん
 聖路加国際病院 能登洋氏
 
糖尿病患者は、予備軍を含めて、がんになりやすい。
メタアナリーシスでは1~2割発がんリスク、死亡リスクが高い。
発見バイアスがあるので、13%程度と考える。

がん治療後の経過も悪い。
臓器別では肝臓、すい臓、大腸がんのリスクを高める(日本も外国も)
不思議なことに前立腺がんはリスクは減る。
 
やせている二型糖尿病でもがんになりやすい。
がんと糖尿病は直接関係している。
 
厳格な血糖コントロールをしてもがんのリスクは減らない(国際的な研究でも)
 
高インスリン、糖尿病治療薬ががんのリスクを増やす?
 
糖尿病とがんリスク増加 : 赤肉 過剰飲酒、高GI食
下げる        : 野菜、食物繊維、魚
 
運動は発がんリスクを減らす(観察研究)
 
減量 胃腸のバイパス術で糖尿病もがんもリスクは半減する
 
禁煙でも何歳からでも、がんのリスクは下がる
 
メトホルミンは、mTOR(発がん遺伝子)を介してがんのリスクを下げる
しかし80歳以上やCKDは禁忌
 
ピオグリタゾンは、膀胱がん、すい臓がんのリスクを増やす?(まだ不明)
 
インスリン治療では有意差は出ていない。

 
●糖尿病と脂肪老化
 新潟大学 清水逸平氏
 
過剰なインスリンシグナルは老化を促進する
テロメアの短縮
 
肥満→p53→脂肪の炎症→高インスリン血症
 
内臓脂肪と心不全
インスリンは心臓に負荷をかける 

 
●糖尿病と認知症
大阪大学 里直行氏
 
アルツハイマー病 神経原線維変化(タウのリン酸化亢進)、老人斑
 
家族性 APP遺伝子変異 Presereln
孤発性  APOE   糖尿病など
 
 
全体ではリスクは  1.9倍
無治療      1.8倍
経口薬      2.4倍
インスリン治療   4.8倍
 
 
糖尿病患者さんの脳の画像診断上の特徴は?
側頭葉、前頭葉の変化
 
そもそも、なぜ糖尿病がアルツハイマー病を増やすのか?
足し算ではなく、掛け算の関係
 
タウのリン酸化=Aβ蓄積xファクターX(未同定)
 
アルツと糖尿病の悪循環もある
 
レプチンの関与は?
ハイファットダイエットは?

 
●糖尿病とフレイル
 愛媛大学 茂木正樹氏
 
社会的フレイル(貧困や独居)や
心理的フレイル(認知症)も糖尿病と関係する
 
糖尿病になると脳血液関門が破たんして漏出する
ARBやスピロノラクトンを投与すると認知機能が改善する
 
サルコペニアを進行させる最大の因子は糖尿病である
 
「サルコペニア肥満」
加齢に伴い筋肉内に異所性の脂肪沈着が増加する
 
 
 
●糖尿病ワクチン
 大阪大学 中神啓徳氏

ワクチン開発には 
1 安全性の担保
2 有効性
3 経済性 が求められる
 
高血圧ワクチン(アンジオテンシン対象)は既に実施されている。
 
DPP4ペプチドワクチンを開発している
 
低開発国から応用されるかもしれない


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