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抗認知症薬の少量投与容認

2016年07月06日(水)

医療タイムスの7月号には「抗認知症薬の少量投与が容認」で書いた。→こちら
「抗認知症薬の適量処方を実現する会」の活動が実り、患者さんに福音になった。
もちろん薬剤は、認知症医療のごく一部にすぎないという前提での話である。
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医療タイムス7月号   抗認知症薬の少量投与容認  長尾和宏
 
 2016年6月1日、厚労省から「抗認知症薬の少量投与を容認する」旨の通達が出た。ドネペジルの場合3mgで開始して2週間後に必ず5mgに増量しなければならない。しかし興奮や易怒性が出現した場合に3mgへ減量することは、たとえレセプト摘要欄にコメントを書いても9つの都道府県においては5月末までは認められなかった。しかし6月1日より認められた。他の3剤の抗認知症薬についてもドネペジル同様に3~4段階の「増量規定」がありたとえ途中で副作用があっても最高容量まで到達することが決まりであった。脳に作用する抗認知症薬のような薬こそ本来、個別化医療が必要なはずであるが、残念なことに患者さんの個別性を勘案した投薬は認められていなかった。高血圧や糖尿病治療薬は病態に応じて適宜増減できるが抗認知症薬には医師の裁量が無かった。そこで昨年11月に現場の医療・介護職と家族・市民が集まり「一般社団法人抗認知症薬の適量処方を実現する会」を設立し、その時にその人のあった抗認知症薬が使えるよう求めてきたのだが、今回まさに「適量処方が実現」した。

 今回の通達の意義として以下の3点を指摘したい。1)興奮や易怒性を副作用と認めた。2)規定量ないし最高容量以下の少量投与を認めた。3)医師の裁量権が確認された。易怒性は認知症改善の良い作用として解釈され副作用としてカウントされなかったが今回副作用と認めたからこそ「適宜調節」が可能となった。また少量投与はエビデンスが無いという理由で認められていなかったが、「少量でも有効な症例がある」ことや「医師の裁量で適宜調節可能」であることが再確認された。たった半年で結果が出たことに多くの臨床医や市民とともに喜んでいる。繰り返し報道して頂いた本誌や支援して頂いた皆様にこの場をお借りしてお礼を申し上げたい。製薬会社も副作用のクレームから解放されると胸をなでおろしていると聞いた。

 一連の活動を通じて感じたことは、抗認知症薬に副作用をあまり知らない臨床医が多いこと。検査なしで物忘れ=抗認知症薬といった構図が一部にあるようだ。しかしレビー小体型には薬剤過敏性のため少量で適量となる人が多い。またピック病には適応が無いばかりか禁忌である。消化器症状、歩行障害のみならず、高度徐脈という重篤な副作用もある。私も心拍数20の3度の房室ブロックが、ドネペジル中止だけで回復した症例を2例経験している。もし気がつかずにいたらそのまま亡くなっていたかも。抗認知症薬の副作用の啓発と適正使用が今後の大きな課題である。またどれくらいの個体差があるのか、至適容量設定の標準化や少量投与のエビデンス構築などが課題になる。日本認知症学会の重鎮のなかにもこの重大な課題に早くから気がつき警鐘を鳴らしてこられた先生もおられる。今回、抗認知症薬の適量処方が認められたが主作用と副作用のバランスを考量しながら、どんな量を適量と考えるべきなのか、つまり至適容量設定の具体的手順、そして抗認知症薬の“やめどき”に関する議論が始まることだろう。

 認知症は一般開業医も相当数を診ているはずだ。在宅医療にも従事している医師は自宅でも施設でも認知症の比率が増加している。今回の通達は小さな紙であるが、現場の医療職・介護職、そして患者・家族にとっては大きな福音であると受け止めている。
 
 

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この記事へのコメント

データを取った訳ではありませんが、認知症かな?と思っても、自然体なままで過ごすことが
できる環境であれば、服薬しない方が進行(変化)が緩やかではありませんか?
服薬しないで済む方は、概して静かに大人しくなっていくような気がします。
自然に子供返りしていくように見えます。
易怒性という言葉は、薬の副作用としての単語で知りました。
怒りっぽいのは、元々の関係性と、何より『不安感』の表出かと思います。鬱が怒りですから。
子育て中に、"子は親の鏡"と聞きましたが、同じ側面もあるように思います。家族の不安が
そっくりそのまま写し出されている側面もあるかも知れません。

Posted by もも at 2016年07月07日 12:40 | 返信

はじめてコメントさせて頂きます。
山口県内のグループホームの介護士です。

厚労省による認知症薬の少量投与を認める通達の件で質問があります。
あの通達には唐突感があるのですが、厚労省との交渉過程で事前に見通しやハードルみたいなものが示されたりしたのでしょうか?
それとも突然にですか?

Posted by 藤本九一郎 at 2016年07月30日 02:36 | 返信

藤本九一郎様;質問の意味が分かりません。
山口県のグループホームの現場にまで、「厚労省による認知症薬の適量投与の指示」があったのですか?
それで、山口県の各グループホームの介護士さんが「厚労省によって、強制的に利用者さんの認知症薬を減らすようにされた」実があるのでしょうか?
それとも、長尾先生のブログを読んで、その内容に質問されていらっしゃるのですか?
いつもいつも少量にするのではなく、その利用者さんに会った量を投与するべきだということだと思いますけど。

Posted by 匿名 at 2016年07月31日 10:42 | 返信

ごめんなさい。
長尾先生への質問のつもりです。
コメントした人への質問ではありません。
適量処方を求める会の活動を伝える記事のコメント欄で質問したつもりだったんですが・・・・

匿名から匿名への返信 at 2016年08月01日 07:11 | 返信

匿名さん、私のコメントをどう読んだら、厚労省から少量投与の指示があったなんて読めるんですか?こっちこそ、貴方のコメントの意味が分かりませんよ。

ところで、私の勤め先のグループホームに厚労省からの抗認知症薬の適量処方に関する通達なんか、公的機関のどこからの情報が来ませんよ。市役所の介護保健課が情報をくれればいいんでしょうけど。
現状、入所者さんのほとんどは抗認知症薬を服用していて、ほとんどの方は主治医を在宅訪問医に変えた時点で、在宅訪問医の先生が抗認知症薬を中止して、症状を観ながら抗認知症薬の適量を探ったり、止めたりしてます。
昨年の例だと、神経痛のための不眠で服用していた民剤の影響での妄想によるパニックに対して、以前の主治医(認知症外来を持つ精神病院系の老舗!)が認知症と診断して抗認知症を投与していたた事例がありまはす。
その入所者さん、四肢の神経痛と難聴、肥満による排泄介助の必要性は相変わらずですが、職員の車がどれか覚えてしまったり、入所者さんが離棟したら知らせてくれたり、漬け物などの生活の知恵も豊富と、たいした認知症高齢者です。病院からの申し送りには暴れるとありましたが、入所以来、暴れたことはありません。

匿名から匿名への返信 at 2016年08月02日 10:51 | 返信

藤本九一郎様
大変失礼致しました。
貴方様を侮辱するつもりは全くありませんでした。
長尾先生達は「抗認知症薬の適量処方を実現する会」を立ち上げて、厚労省は「抗認知症薬の少量投与を認める」旨の通達を、出したのでした。
藤本九一郎様は、この通達が、唐突ではないか疑問を持たれたのですね?
私は、家族として認知症(正常圧水頭症から核上性進行性まひ移行した)家族を介護しました。その介護の過程で、どうしても抗認知症薬アリセプトの適量処方を実現して頂きたいと切実に願いました。唐突とは全く思わないばかりか、私達親子の心から願った事であります。「つどい場サクラちゃん」の主催者丸岡多恵子さんも以前からアリセプトを飲ませると、お年寄りが興奮したり、機嫌が悪くなると仰っていましたが、家族や施設でお年寄りを看ている介護者さん達も、もっと以前から訴えていた事です。
藤本九一郎様も、施設の介護士でいらっしゃるそうですね。
そんなに唐突に感じられますか?お年寄りに抗認知薬を飲んで貰ってどうでしたか?なんとも無かったのですか?
一人も興奮したり胃が痛くなったり、怒りっぽくならなかったのですか?
山口県のグループホームで長い間、介護士をなさっていらっしゃるのですね。
海外青年協力隊OBの藤本九一郎様と勘違い致しました。
どうも失礼致しました。

Posted by 匿名 at 2016年08月04日 08:51 | 返信

匿名様、丁寧なコメントありがとうございます。
以前から、コメントさせて頂いている藤本です。

私は厚労省の対応に不信感を持っているだけで、匿名様のコメントに腹を立てているということではありません。
以前、機械メーカーでクレーム対応をしていたので、厚労省の対応に腹を立ててはいます。抗認知症薬の適量処方を認める通達なんて、団体設立から一年近くも経ち、政治家に頼まなければ動かないようでは、課題は溜まって行く一方で、介護の現場はたまったものではありません。
私の勤め先の経営者は山口県の宅老所・グループホーム協会の会長ですが、今回の行動力の対応は、財務省による適量処方の推進による医療費削減と方向性が一致しただけで、厚労省の官僚は認知症の患者本人や家族、介護現場のことは考えていないという見方をしています。いつも、裏切られてばかりいるからです。

ちなみに、私は山口県山口市内のグループホームに勤務する介護士で、今の職場の勤務は三年弱、自動車部品製造下請けの派遣二年を挟んで、病院系の老健で二年働いた程度ですが、離職率の高い介護業界において、今の職場では古株です。サービス残業はしますが、経営者にも言いたいことは言わせてもらってます。 (困難事例も引き受ける良い介護施設とは思いますが、厚労省を信用していません)

また、青年海外協力隊山口県OB会の副会長もさせて頂いています。 同一人物です。

匿名から匿名への返信 at 2016年08月05日 12:42 | 返信

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