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オプジーボの行方
2016年09月04日(日)
年間3500万円する免疫チェックポイント阻害薬オプジーボは今後どうなるのか。
国立がん研究センター研究所の西川博嘉先生による「がん免疫療法の現状と
今後の展望」という拝聴しながら、いろんなことを考えていた。
国立がん研究センター研究所の西川博嘉先生による「がん免疫療法の現状と
今後の展望」という拝聴しながら、いろんなことを考えていた。
免疫療法とは、よく駅の看板に書いてある「免疫療法」ではなく、
免疫チェックポント阻害薬のことであるのでお間違いの無いよう。
オプジーボは難治性がんの代表の皮膚がんの2割に有効である。
皮膚がんと肺がんに続き頭頸部がんや消化器がんへの適応拡大されるだろう。
しかしどんな人に効くのか、事前予測はできない。
PD1がバイオマーカーになる可能性があるがまだ不明だ。
また副作用としての自己免疫疾患がどんな人に起こるのかも事前予測できない。
おそらくひとつのマーカーでは無理で事前予測には複数のマーカーが必要だろう。
一方、イレッサに代表される分子標的薬は遺伝子検査である程度事前予測可能だ。
だから特定のがん患者さんにしか投与されない。
分子標的薬をオッズのある博打だとするなら
免疫チェックポイント阻害薬は、オッズの無い博打ということになる。
これは、多方面から見ても、とても怖いことだ。
がん患者さんの中には「いちかばちかでもいい」という人もたくさんいるだろう。
オプジーボの薬価は、年間3500万円からどんどん下げられるであろう。
今後、続々と認可予定のPD1阻害薬の薬価も3500万円以下であろう。
延命治療にかかるコストを公的保険でまかなうためにはある基準があるという。
年間600万円程度が一応の目安で、国際的にも妥当な額だとされている。
だから今後出るさまざまながんの薬も600万円程度に集約されるのではないか。
ちなみに、人工透析の医療費も年間600万円である。
オプジーボもCMLへのグリベックにせよ、効く人にはよく効くので、
年単位の長期間の投与になることが悩ましい。
つまり10~20年投与すると、億単位になる可能性がある。
問題はその費用を誰が負担するのかだ。
「オプジーボ亡国論」には、異論もあるようだが、社会保障費をひっ迫するのは必至。
誰がどのようにガバナンスを利かせるのかが問われるが、今の国家体制にその機能はない。
国民皆保険制度を維持することを本気で考えるなら、不都合な真実にも向き合うべきだ。
私見では、かなり厳しいチェック制度を設けないと、維持は無理ではないか。
医療の進歩を考える時、ついついお金のことも考えてしまう。
10年後、オプジーボはどうなっているのか?
もしかしたら消えていたりして・・・
この2日間、県立尼崎総合医療センターと関西労災病院の循環器科の先生の話を拝聴。
2つの病院とも日本のトップレベルで素晴らしい施設とスタッフが揃っている。
大動脈瘤が破裂してからでも、生きて病院に入れば助けることができる時代。
一昔前には考えられないこと。
あるいは、胸腹部の大動脈瘤の治療もカテーテル治療(血管内治療)ができる時代。
ハイブリッド手術室内では、循環器内科医と心臓外科医が一緒になって治療する。
もはや内科や外科という概念さえも、医療技術の進歩で無くなりつつある。
群馬大もあの事件を受けて、チーム医療が強化されるはずだ。
こうした素晴らしい成果を見るにつけ、素晴らしい!と思う気持ちと疑問が浮かぶ。
それは、「どこまでやるの?」というテーマだ。
ある専門家はこう言った。
「そんなこと考えなくていいよ。死ぬまでやるだけだから!」
「長尾、なに言っているの?」という感じで返される。
しかしそうなのか。それで人間の尊厳が守れるのか。
私は今、””治療のやめどき”がテーマである。
そんなことを考えている医者は、他にほとんどいないだろうが。
その前に、”やめどき”があるのか、無いのか、、というテーマがどっしりと横たわっている。
この数日間のお勉強を聴きながら、どこかやるせない気持ちになった。
そんな私は変わっているのだろうか。
この週末、穏やかな最期を考えている。
自宅での安楽死を希望した大橋巨泉さんがなぜ集中治療室で3ケ月間も管だらけになったのか。
薬と技術の進歩が、市民を自然な最期から年々遠ざけている。
これを確信したので、今年後半、また活動開始だ。
PS)
ジャワ島に145歳男性。 望みは、死ぬこと。 → こちら
免疫チェックポント阻害薬のことであるのでお間違いの無いよう。
オプジーボは難治性がんの代表の皮膚がんの2割に有効である。
皮膚がんと肺がんに続き頭頸部がんや消化器がんへの適応拡大されるだろう。
しかしどんな人に効くのか、事前予測はできない。
PD1がバイオマーカーになる可能性があるがまだ不明だ。
また副作用としての自己免疫疾患がどんな人に起こるのかも事前予測できない。
おそらくひとつのマーカーでは無理で事前予測には複数のマーカーが必要だろう。
一方、イレッサに代表される分子標的薬は遺伝子検査である程度事前予測可能だ。
だから特定のがん患者さんにしか投与されない。
分子標的薬をオッズのある博打だとするなら
免疫チェックポイント阻害薬は、オッズの無い博打ということになる。
これは、多方面から見ても、とても怖いことだ。
がん患者さんの中には「いちかばちかでもいい」という人もたくさんいるだろう。
オプジーボの薬価は、年間3500万円からどんどん下げられるであろう。
今後、続々と認可予定のPD1阻害薬の薬価も3500万円以下であろう。
延命治療にかかるコストを公的保険でまかなうためにはある基準があるという。
年間600万円程度が一応の目安で、国際的にも妥当な額だとされている。
だから今後出るさまざまながんの薬も600万円程度に集約されるのではないか。
ちなみに、人工透析の医療費も年間600万円である。
オプジーボもCMLへのグリベックにせよ、効く人にはよく効くので、
年単位の長期間の投与になることが悩ましい。
つまり10~20年投与すると、億単位になる可能性がある。
問題はその費用を誰が負担するのかだ。
「オプジーボ亡国論」には、異論もあるようだが、社会保障費をひっ迫するのは必至。
誰がどのようにガバナンスを利かせるのかが問われるが、今の国家体制にその機能はない。
国民皆保険制度を維持することを本気で考えるなら、不都合な真実にも向き合うべきだ。
私見では、かなり厳しいチェック制度を設けないと、維持は無理ではないか。
医療の進歩を考える時、ついついお金のことも考えてしまう。
10年後、オプジーボはどうなっているのか?
もしかしたら消えていたりして・・・
この2日間、県立尼崎総合医療センターと関西労災病院の循環器科の先生の話を拝聴。
2つの病院とも日本のトップレベルで素晴らしい施設とスタッフが揃っている。
大動脈瘤が破裂してからでも、生きて病院に入れば助けることができる時代。
一昔前には考えられないこと。
あるいは、胸腹部の大動脈瘤の治療もカテーテル治療(血管内治療)ができる時代。
ハイブリッド手術室内では、循環器内科医と心臓外科医が一緒になって治療する。
もはや内科や外科という概念さえも、医療技術の進歩で無くなりつつある。
群馬大もあの事件を受けて、チーム医療が強化されるはずだ。
こうした素晴らしい成果を見るにつけ、素晴らしい!と思う気持ちと疑問が浮かぶ。
それは、「どこまでやるの?」というテーマだ。
ある専門家はこう言った。
「そんなこと考えなくていいよ。死ぬまでやるだけだから!」
「長尾、なに言っているの?」という感じで返される。
しかしそうなのか。それで人間の尊厳が守れるのか。
私は今、””治療のやめどき”がテーマである。
そんなことを考えている医者は、他にほとんどいないだろうが。
その前に、”やめどき”があるのか、無いのか、、というテーマがどっしりと横たわっている。
この数日間のお勉強を聴きながら、どこかやるせない気持ちになった。
そんな私は変わっているのだろうか。
この週末、穏やかな最期を考えている。
自宅での安楽死を希望した大橋巨泉さんがなぜ集中治療室で3ケ月間も管だらけになったのか。
薬と技術の進歩が、市民を自然な最期から年々遠ざけている。
これを確信したので、今年後半、また活動開始だ。
PS)
ジャワ島に145歳男性。 望みは、死ぬこと。 → こちら
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この記事へのコメント
145歳が真実か否かはわかりませんが、
本人の「望みは死ぬこと」というのは、さもありなん、と納得したのでした。
でもこの人も、突然に目前に死が迫ると、たとえば大蛇や猛獣と出くわしたら、やはり逃げるか、(無駄だとしても)戦うのではないかしら。
やっとこさ死ねる、どうぞ私を食べてください、ありがとうって、身を投げ出すのかな?
死という観念と、現実の「死ぬまでのプロセス」には大きな隔たりがあるのだと思う。
Posted by 匿名 at 2016年09月04日 04:28 | 返信
「医療の進歩を考える時、ついついお金のことも考えてしまう」
一般人の私の個人的な予算もまったくそのとおりです。
医療や介護の進歩ゆえに、どうやって親をdecentに生活させるか、
本人は「もうじっき死ぬ」と言い続けて8年以上、さほど衰えぬ89歳の父。
私の家系は基本的に長寿です。
明治生まれでも95~98歳程度まで生きた人が多い。
最近特に100歳超の長寿ニュースが流れる。
多面的な理由から、私はどうしても父を直接介護できないのです。
私自身が健全に存在するために、できるだけ父とのかかわりを減らすことが必要。
もう8年、父はずっと介護施設で生活しています。
来年90歳。国民年金ですから、施設費用を払うには毎月10万以上の赤字です。
昨年くらいまでは、95歳程度まで、本人の預金を崩しながらなんとか施設費を払えるから、そのあとは本人の自宅を担保にしてお金を借りればいいだろう、あるいは1~2年なら私が立て替える、など、気楽に考えていました。
でも、
どんどん寿命が延びている。
100歳超えたらどうしよう、
110歳なんてとんでもない、家を処分してもどこをどう叩いても施設費は払えない。
同居して直接介護しろってことでしょうかね。
私は父が26歳の時に生まれたので、父が100歳になったら私は74歳です。
日本の法律では、直接介護義務はありません。
直接介護を強制することはできない、と市役所の職員も明言しました。
栃木だったか群馬だったか、高齢者施設「たまゆら」火災を思い出しました。
費用が安いので大都市から流れ込んだ高齢者が寝泊まりしている雑魚寝施設の火災で、
死亡者の一人が102歳、と載っていたのが、頭の隅に、残っています。
お金持ちだけ、長生きすればいいんじゃないですか?
お金持ちだけ、高い薬を自由診療で使えば、いいんじゃないですか?
国民の税金は、緊急に投入すべき事案が山ほどあります。
高い薬が自由診療になって使えない貧者の癌が、食養生、生活改善で治ったりするかも。
Posted by 匿名 at 2016年09月04日 05:43 | 返信
癌患者になって以来、治療が効を奏することを期待していますが、治療の辞め時を失することなく選び、可能な限り自宅で普通に暮らし、静かにこの世を去っていきたいと願い続けています。その為にも、訪問診療して下さるお医者が・・・・・。
オプジーボの記事が出るようになって以来の疑問が一つ。この薬の保険適用を認可したお役所は、経済的な試算をどのように行ったのかと、ずっと不思議に思っています。
平穏な療養生活を望んでいる患者として、長尾先生の活動は、暗くなり始めた夕方の部屋の灯みたいな感じです。ぜひ、これからも平穏な生活と死について、世に問い続けて下さい。(いろいろ手を打って貰っていても、抗がん剤はやっぱり身体的・心理的に大変な面は残ります)
Posted by 樫の木 at 2016年09月04日 06:36 | 返信
先日、癌免疫治療セミナーを覗いてみました。認知症セミナーに参加してみて社会勉強になると
実感できましたから、癌治療も後学のためにと、半ば好奇心です。
オブジーボの話も出たような、出なかったような位でした。こちらは熱心な患者さんらしき方々を
よそに、社会科見学のような心境・意識でしたので、簡単な理論と研究の成果の話を聞きながらも、
高額医療と自由診療について、そして又、製薬会社が大きく絡む社会構造などにばかり、気が入って
しまいました。製薬会社から大学に貢がれた献金が資本で、研究が成され、後には独立した医師が
自由診療クリニックを開設する、という図式は、どのように受け止めればよいのでしょうか。
治療効果の確立に話が及ぶと、サラッと話が過ぎた気がしましたが、やはり、
"当たるも八卦当たらぬも八卦" の要素が含まれていると、私は印象を受けました。
中には、治療の相性がバッチリ、という人もいるようです。
before $ after の写真もありましたけれど。
Posted by もも at 2016年09月04日 11:45 | 返信
私も、最近咳がやたらと出るので「まさか肺癌では...。」なんて思うと、他人ごとではありません。
COOPでは、比較的安い医療保険を出しています。
それに入ると、月100円足すだけで、「先進医療」が受けられるらしいです。
私自身はCOOPの医療保険は入っていません。
母が昔から「助け合い」と言う療養型保険に入っています。これは入院したら入院費用をだしてくれるのです。
65歳以上は「愛プラス」と言う療養型保険になっているのですけど、これは医療保険ではないそうです。
う~ん、どうなるのかな。
Posted by 匿名 at 2016年09月05日 05:44 | 返信
アメリカのジャーナリスト(ケイティ・バトラー:堤未果さんのような感じか?)が著した「篆刻の扉をたたくとき」を読みました。長尾先生のブログを読んでいるので色々な事が理解しやすく感謝です。
☆自然死・尊厳死・安楽死の問題⇒言葉にするのも恐ろしいけどケースによって安楽死も…将来的には議論に
☆「医者としての医療」と「患者としての医療」の考え方⇒医療の発達に効果があったのは確かだが…
☆医療の費用対効果は介護者の人生(を犠牲にするコストも考慮すべき)との兼ね合いも考慮…して…
などなど。
でも、個々の患者の死までへの辿る経緯があらかじめ判らないので
長尾先生のブログを読んでいても「唯一の正解やセオリー」は無いと感じており、
親や自分の時 どう判断するか…難しいですね。
とはいえ、このブログは非常に参考になります。
Posted by hinoike007 at 2016年09月05日 09:07 | 返信
思い出しましたのですが、以前大阪のJR福島駅の近くの自然食品店で、肺癌になったお医者さんが、「あしたば(明日葉?)」と言う苦い野菜を食べたら、見事に肺癌が治ったと書いていらっしゃる本を購入しました。その本は、今は持っていないのですけど、サントリーか何かの野菜ジュースに入っている商品もあってと思います。COOPの医療保険は、月2000コースと月4000円コースとあって、それに月100円足したら、「先進治療の費用も出す」そうですけれど、医療保険に入るには、告知義務があるのだそうです。例えば、今肺に白い影があるとします。一年後にもう一度検査をして、白い影が消えていれば、医療保険に入る事ができるのだそうです。ですから、今肺癌の兆候があっても、明日葉を飲んで一年間過ごして、肺癌の兆候が消えれば、月2100円コースか、月4100円コースで先進治療が受けられるわけです。今肺癌の兆候にある人は医療保険には入れないのだそうです。
Posted by 匿名 at 2016年09月05日 07:06 | 返信
いつ
終末か、わかりませんが、
笑って、お別れ、したい。
ばいばい バイバイ
と
おさな子
が
てをふる
ように?!
お
おぎようこ
おこらんど
すあ詩あそび土あそび
Posted by おこ at 2016年09月10日 07:46 | 返信
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