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「血圧」の発見 ー脈のなかに人生を感じたいー
2017年04月06日(木)
産経新聞・不整脈シリーズ第1回 「血圧」の発見
脈のなかに人生を感じたい
今回から不整脈シリーズになります。昨今、介護施設においても体温だけでなく血圧や酸素飽和度までも測る時代となりました。全部機械で測ります。そんな中、私は訪問診療ではいわゆるバイタルサインをあまり測りません。しかし必ず「脈診」はします。「脈診?」。研修医君に聞いても「何ですかそれ?」と返ってきます。「手首の脈を触れて診断することだよ」と言ってもキョトンとしています。「血圧くらい脈診で分かるやろ」と言うと、もう信じてもらえません。なんでも機械で測る時代だからこそ脈診が重要だと思います。血圧とは脈の大きさなので本来は脈を触れば分かるはずですが、そんなトレーニングは受けていないし機械で測らないと信じてもらえないのが現代社会です。よく診て直接触れることから得られる情報に勝る情報は無いと思うのですが、大変な時代になってきました。
「血圧って何年前からあるか知っている?」と研修医君に聞くと怪訝な顔をされます。正解は「200年前にイタリアで発見された」です。現在のような水銀血圧計で血圧を測定したのは1896年。一方、脈は紀元前100年の中国の医学書「黄帝内径」には「脈が鉄を打つように激しく触れる時が病の始まりである。食塩を多量に摂ると脈は強くなる」という記載があります。脈の存在だけでなく脈で病気を診断し、塩分と高血圧の関係までも知られていたのです。つまり血圧の歴史は200年で、脈の歴史は2000年。だから脈を触れることがどれだけ大切かと研修医君に説き、「脈の中に人生を感じるか?」と聞いています。私はどんなに忙しくても必ず脈診をして脈に神経を集中させます。脈にはその人のその日その時の体調が見事に反映されているからです。大袈裟かもしれませんが脈にその人の人生までも感じられる医者になりたい。そんな想いでこれまで33年間、何万人もの脈診をしてきました。占い師ではありませんが沢山の脈診を重ねているうちに脈でその人の体調がなんとなくでも分かるようになりました。怪しいですか?でも本当です。
脈にはさまざまな要素があります。速い遅い、大きい小さい、重い軽い、浮いた沈んだなどと表現されます。この中で誰でも分かるのが「速い遅い」です。安静にしているのに脈が速い状態は正常とは言えません。安静時の脈泊数は少ないほど良い。車のエンジンの回転数のようなもので少ない回数で高いパフォーマンスを発揮できるのがいい心臓です。マラソンの高橋尚子選手は現役時代の安静時脈拍数は1分間の30代だったそうで、素晴らしいエンジンの持ち主です。スポーツ心臓とはまずは脈が遅いことです。しかし普通の人の脈が40以下なら何らかの病気かもしれませんが50台ならたいていは問題なし。一方、脈泊数が1分間に100を超えていると頻脈と呼ばれその原因を探らないといけません。単なる緊張や運動後なのかもしれませんが、心臓の病気や甲状腺機能亢進症などのホルモンの異常かもしれません。あるいは睡眠不足だったり風邪をひいて体調が悪かったり大きな悩みがあるのかもしれません。そうそう薬の影響で頻脈のことも。脈の数と並んで大切なのが脈が規則正しいかどうかです。メトロノームのように規則正しくはない脈を不整脈と呼びます。そして治療の必要がない心配のない不整脈と、治療を要する不整脈があります。(続く)
キーワード 血圧の発見
1896年、イタリアのScipone Riva Rocciは上腕カフを用いた水銀圧力計による血圧測定法を考案し触診により収縮期血圧を測定。米国の脳外科医Cushingはその血圧計を母国に持ち帰り手術前後の血圧を測定した。
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この記事へのコメント
脈の事は不勉強で、そのうえ記憶が朦朧としています。
私は思うに、脈とは脈圧ではないかと思います。
お年寄りの血圧は上が高く、下が低い人が居ます。
これは動脈硬化が影響しているのではないかと思います。
「塩分の摂取量の多い人は脈が強い」と言うことではないかと。
脈のまったく触れない女性もいまして、「私大動脈炎症候群、高安病なんです」と仰っていました。
私は右の脈は浮いて、左の脈は沈んでいます。左の頸肩部の凝りから来てるんじゃないかと思います。
血圧計を取り出して血圧を測ると「白衣高血圧」になる人もいますから、先ず脈診をした方が良いかもしれませんね。
腹診の事ですが、ケアネットかテレビで言っていたのですけど、血液検査で異常が無くても、肝臓組織が線維化していると肝硬変の兆候がある人がいるそうです。ですから血液検査だけでは無く、腹診も重要だなあと思いました。
済みません。不勉強でこんなことぐらいしか分かりません。
Posted by 匿名 at 2017年04月06日 02:46 | 返信
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