このたびURLを下記に変更しました。
お気に入り等に登録されている方は、新URLへの変更をお願いします。
新URL http://blog.drnagao.com

抗血栓薬と消化器内視鏡

2017年04月14日(金)

胃カメラや大腸カメラをする人の約17%が抗血栓薬を飲んでいるという。
内視鏡検査や内視鏡手術をする時に、抗血栓薬を中止すべきか続行すべきか。
この10年間私たち消化器内視鏡医はこの悩ましい問題に振り回されてきた。
2つの応援
クリックお願いします!
   →   人気ブログランキングへ    →   にほんブログ村 病気ブログ 医者・医師へ
 
 

昨夜は、消化器の勉強会に驚くほど多くの医師が集まった。
みんな困っているからだ。


抗血栓薬とは
 ・抗血小板薬(バイアスピリン、プレタールなど)
 ・抗凝固薬(ワーファリンと
      プラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナの4つは
      DOAC(直接経口抗凝固薬)と総称される。

これらの薬は
 ・心筋梗塞や狭心症の予防や冠動脈ステント挿入後
 ・心房細動による心原性脳塞栓症予防
などのために沢山の人に使われている。

内視鏡検査や生検や内視鏡手術の時に、これらの薬を止めるかどうか。
止めないでやると、生検や手術後に血が止まらなくなる可能性がある。

従来は、一定期間、抗血栓薬を中止することが決まりであった。
内視鏡学会のガイドラインがそうなっていた。

しかし中止している間に重篤な時に致命的な脳梗塞を起こす可能性がある。
実際、病院でそれを起こした患者さんの在宅医療を依頼されることがある。

しかし最近の多くの研究では「中止したほうが患者さんのデメリットが大きい」
という結果が出て、基本的に「中止せずにやってもいい」という方向に転換した。

DOACについて説明すると、従来からのワーファリンに比べて
・頭蓋内出血が少なく
・微調節の必要がなく
・納豆を食べてもいい、という長所がある。

一方、
・薬価がとっても高い
・消化管出血はワーファリンよりも多い?
 (DOACは腸管からの吸収率が悪いので腸管局所で効いてしまうため)
などの欠点もある。

現在、DOACの強烈なプロモーションがかかっていて
半数がDOACで、半数がワーファリンという状況にある。

DOACは半減期が短く、やめると1日で効果が減弱する。
DOACは、48時間以上中止すると危険であるい。
これはワーファリン1週間中止に相当する。


抗血栓薬をやめないで生検や手術をすると、当然、出血の頻度は増える。
この場合の「出血」の定義は、Hb2以上の低下ないし要輸血のことだ。

しかしやめると、血栓症が起きる可能性も高まる。
やめるか、やめないか。リスクと利益を様々な研究で比較された。

その結果。やめないほうが得だときう結論になった、という。
また従来推奨されてきたヘパリン置換もあまり意味が無いことが判明した。

開業医レベルでは、
・通常内視鏡
・生検
・1cm以内のポリープ切除(コールドポリペクトミー)
では、抗血栓剤の中止は必要無くなったのだ!!!

1日1回タイプのDOACは、内視鏡処置の時間を考慮して中止する。
その日のみ、朝をやめて、夕に飲んでもらえば充分と。

ちなみに、病院ではESDなどの粘膜切除を行うので血栓マーカーを測る。
SFやFMCがあるが、FMCがベストマーカーである。(保険に注意)

以上は、世界的な傾向。

数年前までは、中止しないと罪に問われる可能性があった。
現在は、中止すると罪に問われる時代になりつつある。

まさに180度の方向転換だ。

医学ではよくある話。

胃潰瘍なら昔は全例手術だったが、
今手術したら罪に問われるかも。

たぶん、あと5年もすれば「あの時代は抗認知症薬の増量規定があった」
と笑い話になるのだろうが、現時点では増量規定を信じている医師が9割。

専門の教授は、100%信じている。
しかしどちらが正しいかは、時間が自然に教えてくれる。

とにかく、スッキリした夜。

ワインが美味しかった。












2つのランキングに参加しています。両方クリックお願い致します。皆様の応援が日々ブログを書く原動力になっています。

お一人、一日一票有効です。

人気ブログランキングへ ← 応援クリックお願い致します!

(ブログランキング)

にほんブログ村 病気ブログ 医者・医師へ ← こちらもぜひ応援クリックお願い致します!

(日本ブログ村)

※本ブログは転載・引用を固くお断りいたします。

この記事へのコメント

胃カメラも大腸カメラも、患者さんも大変ですけど、お医者さんも大変なんですね。
私は腕に注射をしてもらってその針をテープで固定したまま大腸がん検査をしたような記憶があります。
その注射液に中に抗血栓液が入っていたのかもしれません。
それまでに、前日から絶食して下剤下剤と下剤のオンパレードで、2年後にまた来てねと言われてもなかなか、行く気になれない検査でした。
でも痛みはぜんぜんありませんでした。
一緒に検査を受けた若い奥さんは、下剤にアレルギーがあって、下剤を飲むと吐いてしまうので、結局検査できずに、ご主人の付き添いでやむなく帰途につきました。
私は検査が終わって、まだ意識がもうろうとしている時なのに「お母さんが☎してきて、うちの娘は大丈夫ですかと心配なさっていましたよ」と看護師さんが仰ったので「へえ?すっかりボケている母がどうやって☎番号を調べたのかな?!」と驚きました。その母も、もうこの世にいませんけれど。

Posted by 匿名 at 2017年04月16日 07:38 | 返信

コメントする

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:

このたびURLを下記に変更しました。
お気に入り等に登録されている方は、新URLへの変更をお願いします。
新URL http://blog.drnagao.com


過去の日記一覧

ひとりも、死なせへん

安楽死特区

糖尿病と膵臓がん

病気の9割は歩くだけで治るPART2

男の孤独死

痛い在宅医

歩き方で人生が変わる

薬のやめどき

痛くない死に方

医者通いせずに90歳まで元気で生きる人の7つの習慣

認知症は歩くだけで良くなる

がんは人生を二度生きられる

親の老いを受け入れる

認知症の薬をやめると認知症がよくなる人がいるって本当ですか?

病気の9割は歩くだけで治る!

その医者のかかり方は損です

長尾先生、近藤誠理論のどこが間違っているのですか

家族よ、ボケと闘うな!

ばあちゃん、介護施設を間違えたらもっとボケるで!

抗がん剤 10の「やめどき」

「平穏死」10の条件

胃ろうという選択、しない選択

  • にほんブログ村 病気ブログ 医療・医者へ