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15歳の背中・2017

2017年04月19日(水)

某夜間高校の校医を拝命して、はや20年近くになるのか。
この季節になると必ず新入生の健康診断という仕事がある。
15歳の子供たちの首を触り、胸と背中に聴診器をあてる。
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今日は(今日も)、忙しかった。

私の朝一番は、何軒かの往診や訪問診療から始まる。

初めて出会う末期がんの患者さんと、言葉のキャッチボール開始。

最初は向こうも警戒しているが、20分も話している間に
だんだん打ち解けて、自然と笑顔がこぼれる瞬間が嬉しい。

「ああ、この医者に看取ってもらうんだ」なんてことは言わないが、
患者さんのそんな心の声が聞こえてくるような気がしてならない。

1人看取れば不思議なことにまるで生まれ変わりのように新しい患者と知りあう。
不思議なご縁の連鎖だけで在宅患者さんは看取っても看取っても増えるばかりだ。

午前の外来診療に入ると、遠くから期待に胸を膨らませて来られた人も待っている。
しかし他の多くの患者さんを待たせるわけには行かないので敢えて長くは話さない。

たいてい、午前中の最後の患者さんの診察が終わるのが、12時45分になる。
なんとしても、終わらせないといけないのだ。

なぜならば間髪をいれずに15分間で20~30人の来客(MRさんなど)と対応するから。
1人20秒くらいしか時間が取れないのがたいへん申し訳ないのだが、仕方がない。

13時からの40分間は毎週「白熱教室」という当院スタッフへの授業を続けているからだ。
今日は「フェンタニールからオキソコドンへのオピオイドローテーション」がテーマだった。

終了後は2つの会社に産業医として出向むくと、いろんな仕事が待っている。
安全衛生会議という最重要会議に出て、いろんな発言をして啓発をするのだ。

その後は、健康診断の判定や要面談の数名を呼び出して健康相談もちゃんとする。
いまどきの産業医の業務はほんとうに沢山あるのだ。

その後、首を長くして待っている在宅患者さんを数件回りながら、
本日2人目の新規患者さんの家にも訪問して家族といろんな話に。

その後、再び夕方の外来診療に20分遅れで戻ると、また様々な
ニーズの外来患者さんに対応するが、またタイムリミットがある。

19時30分にはなんとしてもクリニックを出ないと19時40分からの
夜間高校の健康診断に間に合わないので、必死のパッチで終わらせるのだ。


車を飛ばして、保健室に媚び込むと、すでに子供たちの賑やかな声が響いている。

あたり前だが、一人ひとり丁寧に触診して、胸と背中に聴診器をあてる。
今夜はとても急いでいたので白衣を持って出るのも忘れたが気にしない。

毎年、15歳の背中を診ながら、いろんなことを考える。

正直、どの子も様々な問題を抱えていて、いくつもの病気が透けて見える。
一人ひとりに対応していたら、何十時間あっても足りない位、病気の宝庫。

・極端な肥満やヤセや骨格の変形
・肌の状態も正常な子供はいない

しかし病気の烙印を推す事が私の仕事ではない。
一言つぶやき背中に祈るためにここに来るのだ。

今どきの15歳は信じられないくらい大人っぽい。
私よりも貫禄がある男子や女子がいくらでもいる。

15歳ですでにお父さんやお母さんになっている子もいるので
子供だと思って接していると恥をかく。

あと、やたら瞳が大きい女の子が多いなあと思う。
お洒落のためにアイコンタクトを入れているのだ。

色も様々で、どこの国の人か分からない。実際、外国人もいる。
アイコンタクトは度が無く、その外側にメガネの女の子もいる。

ドンキに行けば30枚で3000~4000円で売られている。
ワンデイタイプなので1日あたり約100円という計算になる。

しかしお金が無いので1週間どころか1ケ月間同じコンタクトの子もいる。
結膜炎になるのは当たり前なのだが、それを注意しても聞いてはくれない。


最近は、学校検診に「しゃがむことができるか」というチェック項目も増えた。
要は、「うんこ座り」なのだが、なんとこれができない15歳が沢山いるのだ。

座るとそのまま後ろに倒れて壁に激突してしまうのだ。
彼らは、和式便所にウンコ座りをすることができない。

時代が変わるということをまざまざと実感させて頂く瞬間。
彼らは歩行力やスクワット力が、極端に低下しているのだ。

私は長く町医者をやっているので彼らが20年後、40年後に
どんな病気になっていくのか、なんとなく見えてしまうのだ。

だから彼らの今の健康状態が、気になってしょがない。
しかし私の力の1000倍もの外力が働いていて、残念ながら私は無力だ。


・家庭環境
・経済状態



要は、そういうこと、なのだ・・・
生徒諸君の個人情報もあるので、これ以上は書けないが、どうか想像してほしい。

帰り際に保健の先生が、次回の「いのちの授業」の日程を聞いてくる。
この10何年、ボランテイアでさまざまな命の授業を全校生徒を集めて続けてきた。

150人の子供たちの健康診断の途中でも、在宅患者さんから携帯電話が何度か鳴る。
これも必死のパッチでやった結果、なんとか21時15分に健康診断は無事終了した。

さあ、これからは私の自由時間だ。
待たせている在宅患者さん宅を数件回るのだが、寝ている患者さんはたたき起こして診察。

仕事が終わるのが23時くらいになるので、昼間に電話に出られなかった人に電話をする。
それが終わってから遅い晩飯を食うので、どうしてもメタボになる。(と、言い訳をする)


今夜も、150人の15歳の子供たちの背中が私にいろんなことを教えてくれた。

病気はうわべだけ診ていても解決にはならない。
その根っこを直視しないと、医者とはいえない。

経済格差と健康格差や、下流老人ばかりに目が行きがちなご時世だけど、
子供の貧困という深刻な問題が存在し、そこから目を背けないことが大切だ。

確かどこかの偉い先生がそんなことを言っていたが、
「こんな私でも頑張ろう!」という気持ちになった。

この季節の15歳の背中に教えられて10数年になる。

頑張れよ!

元気で、この世を生き抜けよ!



























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この記事へのコメント

15歳の背中・2017 ・・・・・・ を読んで


15歳の若者の背中を見続けて20年。
彼ら彼女らの20年後・40年後の姿が透け
て見える(予測できる)という言葉が重たく
響いています。

医療に疎い私でさえ、この歳(65歳)まで
生きてくると、家族・親族・周囲の人々の様々
な老いと病と死を見る機会があり、このような
状態になったら、次の段階ではこうなる! と
いうような目学問・耳学問の情報がそれなりに
蓄積されてきて、自分や親しい人々の行く末が
少しは分かるような気がしています。

なので、長尾先生のように仕事として四六時中
他の人の背中を見続けて居られる場合、その人
の20年後・40年後の姿が分かるというのは
真実だと思います。

でもそれは、特定のA君やBさん個々の20年
後・40年後の姿という意味なのでしょうか?
それとも150人を一つのグループ(群)とし
ての統計学的な意味での将来の姿を言われてい
るのでしょうか???

長尾先生は四六時中働き、食事も不規則、睡眠
時間も絶対的に不足している毎日を過ごされて
いますが、長尾先生ご自身の20年後・40年
後の姿が見えて居られるのでしょうか???

私には見えるような気がしています。
30年後、90歳近くになった長尾先生がマイク
を片手に “演歌?!” を熱唱している姿が私には
はっきりと見えています。
長尾先生が見据えて居られる30年後。
88歳をどのような形で迎えられているご自身の
姿を見られて居られるのでしょうか ???

Posted by 小林 文夫 at 2017年04月19日 01:31 | 返信

どんどん時代が変わって、
今の15歳の背負っている現実、
記事やニュースで知るだけで、50年近く昔の15歳にはわからない。
私の父は16歳で志願して衛生兵として出兵した。
傷病兵の切り落とした腕や足を抱えて処理場へ捨てに行ったと。
切り落とした腕や足は、とても重たいのだそうな。
大嫌いな人間である90歳の父の後ろに、
生きたいのに生きれなかった兵隊さんがいるような気がする。
自分勝手極まりない老人が黙々と食事をしている姿は、嫌悪の対象だったりする。
けれど、食べたくても食べ物も水も無く死んでいった兵隊さんが、
父の後ろで微笑んでいるように思うことが、ある。
今の15歳が天寿をまっとうするまで、
飢えることなく生きて行けますように。

Posted by 匿名 at 2017年04月19日 03:34 | 返信

こんな私でも高校時代は色気があったのかコンタクトレンズ入れてました。
あんまり小さなコンタクトレンズを失くしてしまうので、父に「眼鏡をかけろ!」と怒られて以来眼鏡をかけて全く色気無しの人生を送っています。
なつかしいなあ!

Posted by 匿名 at 2017年04月19日 02:19 | 返信

印象に残るブログ見出し、"15歳の背中" でしたから、これはいつのページであったかと
思いきや、2015年でした。その時の学生さんも、随分と大人びて成長なさった
ことでしょう。濃密な時間、思春期:青春 ..。オザキの歌 "15の春" を連想させる
詩的情緒のブログページです。15歳という年頃は、三つ子の魂と同類句か、それ以上か、
人の一生の中で、最も多感で大事な時期と思う象徴であると思います。
アンジェラアキが歌う、"手紙~拝啓 15の君へ" も素敵な曲だと思います。
甘酸っぱい、のか、ほろ苦い、のか..。自分が経てきた15歳だけでなく、我が子も過ごした
15歳という時代。いずれにしても、もう戻れはしない。けれど、もしも戻れたならば..。と
思ってしまう、ターニングポイントな時期であるのが15歳なのかも知れません。
今の時代を生きる15歳の背中に、病気が透けて見えるという悲しい事実を受け止め、それを
食い止めることができる社会へと早急に変革し安定させなければと、日本の危機感として
意識できる大人でありたいと思いますし、未来を託すことができる健康な背中を育てる、
成熟した大人社会が生まれますように、と切に願います。

Posted by もも at 2017年04月19日 09:47 | 返信

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