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消化器内視鏡時の抗血栓薬
2017年04月25日(火)
産経新聞不整脈シリーズ第5回 増加する心房細動
消化器内視鏡時の抗血栓薬
高齢化に伴い心房細動という不整脈がある人が増えています。脈が全く不規則になるタイプの不整脈ですが、持続的にある人は特に自覚症状が無い場合が大半です。一方普段は規則正しいけど一定の時間帯のみ発作的に心房細動になり、動悸などの自覚症状を訴える人もいます。いずれにせよ心房細動があれば心房内に血の塊(血栓)ができやすく、それが血流に乗って脳へ飛び重症脳塞栓を起こすことが心配です。特に高血圧や糖尿病や75歳以上の人が起こし易いことが分かっています。ですから抗凝固剤という血液サラサラのお薬を服用して心原性脳塞栓を予防することが増えてきました。一方、狭心症や心筋梗塞で心臓の動脈にステントを入れた人や脳梗塞の再発予防のために、抗血小板薬を飲んでいる人も沢山おられます。抗凝固薬や抗血小板薬をあわせて抗血栓薬と呼びますが、今日は消化器内視鏡検査の前後における抗血栓薬の中止の是非についてお話しします。
胃がんや大腸がんの診断のために抗血栓薬を服用中の人にも胃カメラや大腸カメラを行う機会が増えています。ある病院では胃や大腸の内視鏡を行う人の約2割が抗血栓薬を飲んでいたそうです。私のクリニックでも同様な傾向です。私たち消化器内視鏡医は以前から抗血栓薬のことが気になっていました。すなわち病変が発見された時に組織の一部を採取する「生検」を行うことを前提に内視鏡検査をします。あるいは主に大腸内視鏡では観察しながらポリープを発見すればその場で内視鏡的に切除することもあります。検査と同時に生検や内視鏡手術を行うのですが、その時に予め抗血栓薬を中止しておくべきか続行すべきかという命題に悩まされてきました。もし抗血栓薬を中止せずに生検や手術を行った場合に血が止まらなくなったらどうしようか、という心配があります。一方、もし検査の前後で抗血栓薬を中止した場合、それが原因で重症脳梗塞が起これば誰が責任を取るのかという心配もありました。ですから最近まで検査の前後の一定期間、抗血栓薬を中止して検査や治療を行っていました。ガイドラインには具体的に中止期間が薬の種類ごとに定められていましたが、結構複雑なものでした。
しかし大規模な調査の結果、意外な事実が判明しました。それは「抗血栓薬を中止した時のリスク(脳梗塞の発症)」が、「中止しなかった時のリスク(生検や処置後に重大な出血が起きる)」より大きかったのです。ですから従来とは違い抗血栓薬はできるだけ中止期間を設けずに内視鏡検査や手術を行う方向に変わりつつあります。しかしたとえば検査当日の朝に飲む薬は夕方に飲むなどの工夫はします。専門学会からの発表は少し先になりそうですが、消化器内視鏡時の抗血栓薬の中止の是非については早晩、従来とは逆の方針に転換します。善は急げではありませんが大まかな方向性は知っておいて下さい。詳細は専門医ないしかかりつけ医にご相談下さい。実は在宅医療で診ている患者さんの中に、消化器内視鏡時に抗血栓薬を中止したために検査直前に重篤な脳梗塞を起こされた方がおられます。私自身も疑問を感じていましたがこれでスッキリします。長寿社会とは「抗血栓薬の時代」とも言えます。だから消化器内視鏡時の抗血栓薬の是非についても知っておいて下さい。
キーワード 抗血栓薬
抗血小板薬(低用量アスピリン、クロピトグレル、シロスタゾール)や抗凝固薬(ワルファリン、ダビガトラン、リバーロキサチン、アピキサバン、エドキサバン)などを総称した呼称
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この記事へのコメント
忘れていました。そう言えば大腸がん検査の前に「抗血栓薬を服用していませんか?」と聞かれて、「飲んでいません」と答えたのに、服用している薬の一覧表にメルブラール(魚油)があるので、「前の日だけ飲むのは止めてくださいね!」と言われました。
でもなんともなかったですけどね。
なんとも悩ましい問題ですね。
Posted by 匿名 at 2017年04月27日 04:38 | 返信
健康診断を受け便儉でプラスが出たので内視鏡検査を受けた。血液サラサラの薬を飲んでいるので、治療はポリープがあっても今回は切除できないと言われて9月4日検査を受けた。12日に検査結果がある。今後の対処を悩んでいるので大変参考になった。。
Posted by 梅山末和 at 2017年09月08日 05:34 | 返信
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