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患者さんに本当に寄り添えているのか?

2017年05月24日(水)

よく「患者さんに寄り添う」と言うが、「寄り添う」とはなんだろう。
本当に「寄りそえて」いるか?と医療タイムス5月号の連載に書いた。→こちら
そう問い直しては反省することばかりの毎日。人生とはその繰り返し。
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医療タイムス4月号  患者さんに本当に寄り添えているのか?  長尾和宏
 
 
「在宅看取りをしています。本人も遺族も満足されています」そんな自画自賛を何百回もしてきたような気がする。たしかに管だらけではないし、そこそこは満足されているのかもしれない。しかし所詮自己満足に浸っているだけではないのか・・・。

 そんな気持ちになったイベントがあった。去る4月23日都内で開催された「エンドオブライフケア協会設立2周年シンポジウム」には250人が参加した。登壇者は小澤竹俊医師、小野沢滋医師、西川満則医師、戸松義晴住職、そして故・金子哲夫さんの妻の金子稚子氏らであった。総合司会を務めた私は医療者の自己評価はともかく、住職や遺族らの言葉が気になってしょうがなかった。「本当に寄りそえているのか?やっぱり自己満足では?」という疑問がさらに大きくなったイベントであった。遺族は火葬場でお骨を拾う時にお坊さんにふと本音を漏らすという。「ああ、家に帰れば良かった」「ああ、あの医療は本当に必要だったのか」云々。もちろんお世話になった医療者に正面切って不満を表出する遺族はそうはいない。しかしなにかモヤモヤした疑問が残るのが遺族であるとのこと。

 確かに人間は思ったことを100%口に出せるわけが無い。私などはこう見えても2割程度しか表出できず、8割は一応胸にしまう。おそらく多くの日本人も大半はホンネを胸の内にしまったまま生きている。しかし本当にたった2割のお世辞で満足してしまっていいのだろうか。医療者自身が調査した「患者満足度」ほどいい加減なものは無い、と思う。本当の情報や統計はなかなか表に出にくい。その意味でもこのシンポジウムは私が見聞きしてきたなかでも極めて内容が濃いシンポジウムであった。

 先日、別の席である医師が私にこう呟いた。「私は自分がやっている医療が本当の患者さんのためになっているのかを聞くためにカフェや飲み屋も始めました」。確かに、医療機関の外に出れば医者への感謝より苦情の方が多い。電車やバス、喫茶店や食堂などどこに行っても医療機関や医者への愚痴が自然と耳に入ってくる。「患者は医者の前で演技をしているだけで本当は不満だらけではないのか?」そんな疑問が頭をよぎる時がある。しかし本気で考える医者はあまりいないだろう。しかしシンポジウムの超ヘビー級の講演を聴きながら、「本当に満足できているのか?」という素朴な疑問が私の中でより大きくなった。

 平成31年度から医学教育のコアカリキュラムが一新されるという。医学部1年生からコミュニケーションスキルや在宅医療や終末期医療を教えることになる。素晴らしい転換であるが歴史の必然だろう。しかし素朴な疑問が残る。「いったい誰がそれを教えるのか、その資格があるのか。そして逆評価にも耐えうるのか」などなど。まあ、どう考えてもすぐには答えが出ない。しかし今後23年間かけて多死社会のピークとなるであろう2040年に準備しないといけない。医学教育は2025年問題ならぬ2040年問題に本気で舵を切る。しかしそれまでをどう繋ぐのかという問題が残る。

 ひとつ名案が浮かんだ。「なんでも相談室」のように患者さんが苦情でも吐き出せる場を提供してはどうだろうか。○○カフェより進化した何かを医者自身が運営するのだ。もしかしたら、それが本コラムのタイトルである診療所経営のひとつのヒントになるかもしれない。

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この記事へのコメント

寄り添うって、その人に、より良く伴走することではないでしょうか。そんな風に勝手に思いながら利用者に接しています。

Posted by 社会福祉士河本健二 at 2017年05月24日 03:24 | 返信

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