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なぜ薬が10種類以上になるのか?
2017年05月25日(木)
産経新聞・減薬シリーズ第1回 高齢者の多剤投与
なぜ10種類以上になるのか?
多剤投与に悩む人が多くいます。そこで今回から高齢者がお薬を減らす方法について述べていきます。薬漬けからの脱却法をできるだけ具体的に指南します。一般に6種類以上の投薬は多剤投与と呼ばれますが10種類以上の薬を飲んでいる人も見かけます。ちょっと油断している間に20種類になる人も。今回は多剤投与になる理由を考えてみましょう。
私は大きく3つの理由があると思います。第一は医療の専門分化です。加齢とともに病気の数が増えます。たとえば胃炎と逆流性食道炎、高血圧症、パーキンソン病があった場合、同じ内科でも消化器内科、循環器内科、神経内科の3つの科にかかることになります。内科の中だけでもかなり細分化されています。そして1つの診療科からは3種であっても2つにかかれば6種、3つなら9種類と投薬数は簡単に増えてしまいます。加えて腰痛、前立腺肥大症、めまい症もあった場合、整形外科、泌尿器科、耳鼻科にもかかることになります。合計6つの診療科にかかると軽く10種類を超えてしまいます。日本の医学は、150年前の明治維新の時に人間を総合的にとらえる東洋医学から分析的にとらえる西洋医学に大転換しました。病気をより細分化することで発達してきた結果が現代医療です。
第二の理由は患者さんの専門医志向とガイドライン医療です。私が医者になった33年前は医学博士が主流で専門医という言葉は聞きませんでした。先輩から「医学博士さえあれば専門医なんて要らない」と言われました。しかし現在、たくさんの医学会が乱立してそれぞれが独自の基準で専門医を認定しています。診療科が専門別に分かれているので病院勤務医はどうしても専門医資格が必要になります。自然に医者同志の縄張りができ自分の守備範囲だけを診ることになります。一方患者さんもテレビ等のマスコミの影響で「○○専門」を求めているので、必ず「先生は何の専門医ですか?」と聞きます。書店に並ぶ名医図鑑には臓器別の専門医が載っていますが、なんでも屋医者は載っていません。患者さんが専門医志向である限り、専門医資格が無いと勤務医として勤めることができません。こうして患者さんは年をとるほどに多くの専門医にかかることになります。
第三の理由は訴訟回避です。医療訴訟が増加していますがもしトラブルが起きた時にまず問われるのは専門医かどうかとガイドラインに従っているかです。ガイドラインとは各専門学会が独自に作成している診療ガイドラインのことです。もし従っていないと裁判所は不利な裁定を下すでしょう。一方多くのガイドラインはひとつの病気に対して複数の薬やそれらの併用を推奨しています。AもBもいいがAとBと一緒に使うともっといいと。だからひとつの病気に対していくつかの薬が処方されることは決して稀ではありません。
以上の3つの理由でどうしても年とともに多剤投与になり易いのです。熱心に病院にかかるほどにすぐに10種類以上になってしまいます。蛇足ですが医者が金儲けのために薬をたくさん出すなんてことは医薬分業が進み薬価差益がほとんど無い現代ではあり得ません。多剤投与の原因は実に複合的であり、医者側の善意と患者側の熱意、そして分析的志向である西洋医学の必然であることを知って下さい。多剤投与の根は想像以上に深いのです。
キーワード 多剤投与
明確な定義は無いが6種類以上の薬が処方されることを多剤投与やポリファーマシーと呼ばれている。多剤投与により予期せぬ副作用、ふらつきによる転倒、認知機能の低下などの危険性が増大する。
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この記事へのコメント
医者が金儲けのために薬をたくさん出すことは有り得ない、かもしれない、とは思います。ではなぜ多種類の薬を長期間処方し続ける「漫然投与」が生じるのでしょうか。
医者がたくさん薬を処方し続ける=薬の消費量が増える=製薬企業が繁栄できる。
長尾先生はわかっているくせにこの核心に言及しようとなさらない、で、現在の医療制度や患者の意識に論点を向けておられる。
確かに、医者にとって、薬をたくさん処方しても国民皆保険下では直接的な金儲けにはならない、かもしれないが、製薬企業と病医院の経営者との関係はそれこそズブズブですよね。ゴルフ接待だけならまだ可愛いものですが ワクチン宣伝や特定の薬が効果がある、というXX医大教授の講演会、札束が飛んでいるでしょ?
製薬企業はどんどん外資と合併しています。その外資混合製薬企業に、日本の医療が牛耳られているのです。
Posted by 匿名 at 2017年05月26日 01:08 | 返信
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