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抗認知症薬の増量規定撤廃から1年
2017年06月07日(水)
産経新聞・減薬シリーズ第3回 薬には適量がある
抗認知症薬の増量規定撤廃から1年
拙書「薬のやめどき」という本が売れているためか、減薬の相談に来られる方が後をたちません。20種類を超える投薬を受けている高齢者がたくさんおられ、多忙な外来のなか難作業に困惑しています。みなさん「全部やめてもいいですか?」と同意を求めてこられますが、私は決してそんなことは言っていません。減薬はそんな単純ではありません。それぞれの薬はそれなりの理由があって処方されたわけであり、その経緯、メリットとデメリット、そして処方全体のなかでの位置づけを考えて、戦略的に減らすことが大切です。高齢者への6種類以上の多剤投与は一般的にはいいことは何もありません。しかし突然ゼロにすればいいかと言えば決してそうではなく不都合なことが起きることもあります。今回は前回とは逆に減薬の失敗談を話します。前回、抗認知症薬の代名詞とも言えるアリセプト(塩酸ドネペジル)の副作用について書きましたが、中止による失敗もあるのです。
「アリセプト5mgを飲んでいるが毎日怒って暴れまわって困る」という人が家族に付き添われて来られました。表情は硬くみけんに皺が深く刻まれ、落ち着きが無く目はうつろです。徐脈はありませんが、体重減少や歩行障害もありました。そこで興奮剤であるアリセプトを中止してみました。2週間後の診察では易怒性は消失していましたが今度は大好きな野球中継を観ず新聞も読まないなど、元気が無い状態に陥り家族はこれも困る、と言われました。そこで今度はアリセプト3mgを処方してみました。果たして2週間後に来院されると柔和なお顔で意欲も普通に戻ったと家族も大喜びでした。この人に合うアリセプトの量は実は3mgであり、この人には今は必要な薬で、中止は失敗だったのです。
実は4種類の抗認知症薬にはいずれも3~4段階の増量規定なるものが定められていました。アリセプトなら3mgを2週間後には強制的に5mgに増量しないと保険請求レセプトが通らずに医師がペナルテイを受けるというおかしな規則が日本だけに10年以上存在しました。しかし抗認知症薬に限らすすべての薬にはその時のその人に合う適量が存在し、医師は適量と思える量を探し処方する権限を持っています。そこで2015年11月に増量規定に苦しめられた全国の家族や医療・介護関係者が立ち上がり「抗認知症薬の適量処方を実現する会」を設立し、私が代表理事に就任しました。抗認知症薬の過剰投与に苦しむ被害者の声をネットで広く集めて国会でも議論して頂いた結果、わずか半年後に私たちの主張が認められました。2016年6月1日に増量規定は撤廃され厚労省から事務連絡が出てちょうど1年が経過しました。しかし「増量規定の撤廃」は残念ながら充分に周知されていません。案の定、先のアリセプト3mgを数ケ月間継続して調子のいい患者さんのレセプトも返戻されました。レセプトを審査する側も残念ながら「増量規定の撤廃」を知らないのが実態です。私のところには「抗認知症薬(4種ある)が最高量処方されたままで適量探しや減薬を求めても理解されない」という相談が現在もたくさん持ちこまれています。なんでも勝手に中止せよという話では決してありません。主治医とよく相談して「その薬は本当に必要なのか」「どの量が適量なのか」を探してください。こうしたプロセスこそが減薬で一番大切なのです。
キーワード 抗認知症薬の適量処方を実現する会
抗認知症薬の副作用に苦しむ全国の家族や医療・介護関係者が集まり一般社団法人として15年11月に設立。代表理事に長尾和宏、顧問に山東昭子議員が就任。抗認知症薬の副作用事例をホームページで集めた結果、16年6月1日に増量規定は撤廃された。
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ちなみに、最近の国会では大畠議員が、「さらなる周知」に
ついて前向きな議論をしてくれている。→こちら
大マスコミも、そろそろ市民の方を向いた報道に転じて欲しい。
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この記事へのコメント
長尾先生はご自身のブログ内で、
「認知症患者で薬が必要なのは5%」と書いておられます。
このことをもっとアピールしてください。
「認知症疑い患者」には、適量ならばクスリを処方するべきだ、とカン違いする愚かな医者が多いです。少量でも、不要なクスリを飲ませると「病気」症状を呈します。特に高齢者は代謝が悪いから。
Posted by 匿名 at 2017年06月07日 03:14 | 返信
先日も、介護支援専門員の集まりで「アリセプトを3mmからはじめて、10日経ったら5mmそのあとは10mmに増やすのよねえ」と話している人達がいましたけれど、あんまり在宅介護を知らないで、こちらのいう事を攻撃するばかりの人たちなので「増量規定は廃止されてるんですよ」と言うのも疲れていう気持ちにもなれず、「私ってだめだなあ」と反省しています。
「増量規定は廃止されている」と言ったって「そんなことない!そんな話は聞いてない!」と怒鳴るだけの人達ですから。
まあ聞いてないのは、本当なんでしょうけど。
Posted by 匿名 at 2017年06月07日 08:03 | 返信
せんだって老人性膣炎とかで塗り薬とホルモン剤を一週間飲みました。
気分は明るくなるしウオーキングしてもぐんぐん歩けるし若返りましたけど
シニアなりにとホルモン剤は途中でやめました
Posted by はじめちゃん at 2017年06月08日 07:51 | 返信
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