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薬剤起因性老年症候群

2017年06月14日(水)

産経新聞・減薬シリーズ第4回は「薬剤起因性老年症候群」で書いた。→こちら
こんな初歩的なことに医者も患者も気がつかないことが少なからずある。
高齢者へのお薬はホントに難しいものだ、と日々思う。

 
 

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産経新聞・減薬シリーズ第4回  向精神薬が最多
                薬剤起因性老年症候群
 
 
「なぜ、減薬なのか。高齢者は病気が増えるので薬が増えるのは当たり前だろう!」とある医師からお叱りを受けました。そこで高齢者の多剤投薬がなぜ問題なのかあらためて考えてみました。高齢者に特有な症状は老年症候群と呼ばれます。具体的にはふらつき・転倒、食欲低下、便秘、排尿障害、認知機能障害など介護や看護を要する諸症状です。これらは加齢により引き起こされる症状であると同時に薬が原因であるケースをたくさん経験しました。どちらなのか区別がつかない場合もありますが主治医とよく相談のうえ中止で症状が改善すれば薬が原因であった、つまり薬剤起因性老年症候群であったと分かります。

 医薬品医療機器総合機構の調査によると、薬効別の老年症候群の発生数では向精神薬が32.3% と最多で、循環器系薬剤(12.9%)、抗ウイルス剤(9.6%)、抗菌薬(6.3%)、代謝拮抗薬(抗悪性腫瘍薬を含む、5.9%)、ホルモン剤(4.2%)と続きます。最も副作用頻度が高い向精神薬による老年症候群の症状としては抗精神病薬では睡眠障害、尿失禁、嚥下障害が多くみられます。なかでもハルシオン(トリアゾラム)に代表される睡眠導入剤では、中途覚醒時の一過性全健忘が有名です。高齢者に慎重に投与すべき薬剤リストは各国で公表されており米国のBeersや欧州のSTOPPなどが有名です。2015年に日本老年医学会が発表した薬剤起因性老年症候群をおこす可能性がある薬を以下、列挙します。

 ふらつき・転倒の原因となり得る薬剤として降圧剤、睡眠薬、抗不安薬、抗てんかん薬、抗パーキンソン病薬、抗ヒスタミン薬など。抑うつの原因となり得る薬剤として降圧剤、ヒスタミンH2受容体拮抗薬、抗不安薬、抗精神病など。認知機能障害の原因となり得る薬剤として降圧剤、睡眠薬、抗不安薬、抗てんかん薬、抗パーキンソン病薬など。せん妄の原因となり得る薬剤として抗パーキンソン病薬、睡眠薬、抗不安薬、降圧剤、ジギタリス、気管支拡張薬、副腎皮質ステロイドなど。食欲低下の原因となり得る薬剤として非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)、アスピリン、緩下剤、抗菌薬、ビスフォスフォネート系薬、抗不安薬、抗精神病薬など。便秘の原因となり得る薬剤として睡眠薬、三環系抗うつ薬、膀胱鎮痙薬、腸管鎮痙薬、ヒスタミンH2受容体拮抗薬、α―グルコシダーゼ阻害薬など。排尿障害・尿失禁の原因となり得る薬剤として三環系抗うつ薬、膀胱鎮痙薬、腸管鎮痙薬、ヒスタミンH2受容体拮抗薬などが公表されていて詳細はネットで検索できます。

 これらはあくまで高齢者に慎重投与すべき薬剤のリストであり決して飲んではいけない、という意味ではありません。一般の人にはなじみが薄い専門用語が並びますが、命に直結する薬もあるので決して自己判断せず必ずかかりつけ医に相談してください。特に「降圧剤を飲むのも不安だがやめるのも不安」という極度の不安症の人は、お薬手帳を持参してかかりつけ薬局で納得がいくまで相談するのも一法です。町医者として長年たくさんの多剤投薬の人を診てきましたが、薬剤起因性老年症候群は決して稀ではありません。しかし誰も気がつかないことがよくあるのです。特に向精神薬とはくれぐれも注意して上手に付き合ってください。次回は具体的な減薬方法についてお話します。
 
キーワード  せん妄
意識障害がおこり頭が混乱した状態。錯覚、興奮、幻覚や妄想などの異常な行動が見られる。入院中にもよく見られ認知症と間違えられることがあるが、認知症と違い急激に発症する。夜間に悪化することが多く「夜間せん妄」と呼ばれる。
 

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この記事へのコメント

「高齢者は病気が増えるので薬が増えるのは当たり前」とおっしゃるお医者様にお答えいただきたい。
クスリで「高齢者の病気」を治癒させることができるとお考えですか?
そもそも「高齢者の病気」って何でしょうか?
長年生きてきた生活習慣の積み重ねが症状として発現しているのではありませんか?
それらは、クスリを飲めば治癒するのでしょうか? 
高齢者が眠れないのは、クスリを飲む必要がある(=健康保険を使って睡眠導入剤を処方するべき)疾病ですか?
「ハルシオン(トリアゾラム)に代表される睡眠導入剤」についてですが、ハルシオンはベンゾジアゼピン系薬物で依存性が強いことで有名で犯罪や「そのスジのお遊び」にも使われています。イギリスやオランダ、ノルウェーなど海外では発売中止です。そういった睡眠薬を日本のお医者様方はなぜ平気で患者に処方なさるのでしょうか?

Posted by 匿名 at 2017年06月14日 03:12 | 返信

私の父は、関西労災病院で耳下腺腫瘍の手術を受け、そのあと放射線治療を2~3週間受けて帰宅したあとハルシオンを飲んでトイレに行こうとして尻もち転倒をして脊椎圧迫骨折をして寝たきりとなり、半年後に、インフルエンザの予防注射を打ったのに肺炎となって救急病院に入院してMRSAに罹患して苦しんで死にました。
父はハルシオンを飲むようになった切っ掛けは、平成元年の日本経済のバブル崩壊で株の値段が暴落してからです。
でも元々長年タバコを飲んで、心筋梗塞(右室梗塞)になるくらい動脈硬化になっていたからだと思います。
父はいつも何かに依存していた性格でしたし、母が「タバコは体に悪いからやめて!」と、いくら頼んで聞かない人だったから、そういう運命だったのです。

Posted by 匿名 at 2017年06月15日 03:29 | 返信

比較的安全と言われている非ベンゾジアゼピン系タイプの睡眠薬で一般内科でも気軽に処方されているマイスリーというのがあり、亡き母も服用していた。どうやらこれも悪さをするのだ。依存性も耐性もあり朦朧状態を引き起こすことがある。
・・・ことがある、可能性がある、などなど「常に必ず生じる」ではないから、歯切れが悪い。だから言い訳となる。

しかしながら、ある症状が出た場合、まず疑うべきは服用しているクスリの副作用ではないのですか。
それなのに、昨今の阿保医者は、その症状が本人の病気が増悪したと勘違いしてまた新しく薬を処方してクスリを増やすのだ。同じ程度に阿呆な医者は、(長尾先生がクスリを減らせと言っているから!!)このクスリやめましょう、と言って一気断薬する。そうすると、処方薬依存症になっている患者はたまったもんじゃない。タイヘンな症状が出る。
そうすると阿保の二乗医者は、「ほらね、やっぱりお薬飲まないとだめでしょ?」って、・・・
これっていったい何だろう?
健康保険という名の税金使って、何やってるんだろう?

Posted by 匿名 at 2017年06月17日 04:57 | 返信

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