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ロカボ食とウオーキングで認知症医療費の削減を

2017年06月27日(火)

「公論」7月号の連載は、「糖質制限食による認知症予防」で書いた。→こちら
ロカボ食とウオーキングでかなりの医療費が削減できるのではないか。
こうしたお金のかからない予防法を国家プロジェクトにすればいいのに。

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公論7月号     糖質制限食による認知症予防
          ロカボ食とウオーキングで医療費削減を
 
700万年続いた糖質制限食
 「糖質制限食」という言葉が広まりつつある。今や書店に行けば糖尿病や肥満をはじめとする生活習慣病の人に糖質制限食が有効であるという趣旨の本がたくさん並んでいる。「糖質制限食」は、1999年に日本で最初に江部洋一医師(高雄病院院長・当時)が取り入れた。2001年に同じく高雄病院の江部康二医師も取り組みを始め現在まで精力的な啓発活動を続けている。2012年には山田悟医師が「糖質制限食のススメ」(東洋経済新報社)が出版し「緩やかな糖質制限食、ロカボ食」を推奨。そして2013年には夏井睦医師が「炭水化物が人類を滅ぼす」(光文社新書)を出版してベストセラーになった。さらに2015年に宗田哲男医師が「ケトン体が人類を救う」(光文社新書)を出版し「ケトン体」の有用性が広く知られるようになった。夏井医師は「湿潤療法」という外傷治療でも高名な外科医であり宗田医師は産婦人科医であり、糖尿病専門医ではないことが興味深い。糖尿病学という専門分野から見れば「外野」から画期的な治療法が提唱された。そして10数年かけて多くの市民だけでなく医師たちの間でも賛同者や実践者がジワジワと増えている。

 人類が誕生したのは約700年前で1万年前までは狩猟採集時代が続いていた。700万年間の人類の食事内容は穀物では無く糖質の少ないものであった。我々の遠い祖先たちの体は糖質の少ない生活で生き残れるようになっていた。しかし1万年前に麦や米などの穀物の栽培が始まった。穀物は効率よく安定してカロリーを手に入れるには有利である。そして現代日本人は摂取カロリーの60%を糖質の形で摂る習慣になっている。要は700万年対1万年。糖質割合でいうと僅かと60%。人類の食生活を長いスパンで考えた時、現代の60%という糖質割合は異常であり、糖質をあまり摂らない食事こそが人間本来の健康食であるはずだ。江部康二医師は近著「糖質制限革命」(東洋経済新報社)の冒頭でそのように述べている。

 
ついに日本糖尿学会も認めた
 しかし「カロリー制限食」を是として貫いてきた日本糖尿病学会は「糖質制限食」に猛烈な反対してきた。対立の時間が流れた。2012年の日本病態栄養学会年次学術集会で江部康二医師は日本糖尿病学会主流派と、「糖質制限食」の豊富なエビデンスを提示しながらデイベート対決しここが国内議論の大きな分岐点となった。

 一方、2013年10月に米国糖尿病学会は数々の研究結果を総合した結果、正式に「糖質制限食」を認めた。これは日本糖尿病学会に大きな衝撃を与え国内の流れも大きく変化した。2017年3月号の「医と食」という専門誌において日本糖尿病学会理事長の門脇孝医師は個人的な考えと前置きしながらも、「一人ひとりの患者さんで糖質制限比率を考慮する方向を目指すのがリーズナブルである」と発言した。門脇医師自身も糖質摂取比率40%の「緩やかな糖質制限食(ロカボ食)」を実践しているという。このように日本糖尿病学会においても糖質制限食容認派の医師が確実に増えつつある。かつては異端児扱いであった糖質制限食が、今や正式な糖尿病の治療食として広く浸透しつつある。
 
3兆5000億円の医療費削減!?
 糖質制限食は様々な病態に効果が期待されている。人類本来の健康食に戻すわけだから当然といえば当然かもしれない。いわゆる現代病や生活習慣病がこの食事法でみるみる改善した例は私もたくさん経験している。全国の多くのメタボ医師(私もその一人だが)が糖質制限食を実践し、自らがその効果を発信している。糖尿病の帰結である脳血管疾患や心疾患の予防効果はもちろんだが、肺炎や認知症関連など幅広い領域での疾病の予防効果が期待されている。

 現在、我が国における糖尿病関連薬剤費は約2000億円と推定。もしすべての医療機関で糖質制限食をすべての患者さんに指導したと仮定すると薬剤費は3分の1に削減できると江部康二医師は近著で試算している。糖尿病関連薬剤費だけでなく人工透析費用も大幅削減できる。人工透析には1人あたり年間500万円の医療費がかかる。現在、糖尿病性腎症による人工透析は12万人いるので6000億円の医療費がかかっている。そして網膜症や神経障害などまで含めた糖尿病関連の医療費は1兆2000億円と推計されている。糖尿病関連の医療費として脳血管疾患9000億円、虚血性心疾患4000億円、高血圧9000億円などの医療費がかかっている。以上の数字を合算すると3兆5000億円になるが医療費が糖質制限食により削減できると江部康二医師は述べている。これが実現できれば、さらなる消費税増税は不要だろう。
 
認知症予防の救世主
 激増する認知症の発症には糖尿病が大きく関与している。糖質制限食は認知症の予防にも効果を発揮するはずだ。介護保険制度の創設以来、介護保険市場は拡大の一途で多額の社会保障費が認知症関連に注がれている。世界一の長寿国である日本は認知症大国でもあるが、認知症周辺の社会的損失は医療費・介護費以外でも多額である。認知症亡国論まで囁かれる中、糖質制限食が救世主になる可能性が充分ある。

 最近、健康寿命の延長が盛んに啓発される。いくら世界一の長寿国であっても要介護期間が10年もある現状には早急な対策が求められている。そこで糖質制限食の推進により健康寿命が延びれば、介護や雇用の在り方をはじめ社会の在り方が劇的に変化する可能性がある。町医者である私は毎日、ロカボ食とウオーキングを壊れたテープレコーダーのように患者さんに説いている。ほとんどお金がかからず対費用効果抜群の「ロカボ食とウオーキング」を国家プロジェクトとして本気で推進してはどうだろう。社会保障費削減の切り札であると考える。

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この記事へのコメント

素人なりにわかることは
認知症にはドーパミンというのが深くかかわっているらしい。
ドーパミンニューロンが健康でドーパミンが適度に産出されていれば
認知症の症状は顕著ではないらしい。
糖質はこのドーパミン産出を刺激するらしい。
父が生活している介護施設の職員さんたちは、認知症の人は甘いものを欲しがる、と。
父はアンパンや饅頭を毎日食べたいと言う(が3日に一度くらいにしている)。
もし、ドーパミン産出を刺激して身体が動きやすく気持ちも前向きになれる、だから、甘いものを食べたいのなら、もう90歳なのだし、どんどん食べさせようか、と、迷っている。
でも、「不自然にドーパミン神経系が刺激されるのは、ほどほどにしておかないと神経が疲弊してしまう」そうです。次のリンク参照。
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-987.html#more
最近、長尾先生のブログと、この医師のブログを読んでいます。
医者って、金儲けビジネスに邁進しているタイプと、長尾先生やたがしゅう先生みたいに修行僧タイプに分かれるのかもしれませんね。

Posted by 匿名 at 2017年06月27日 03:56 | 返信

白砂糖より、黒砂糖を使うとか、白米より発芽玄米のお粥にするとか工夫すれば、「糖尿病」になり難いという事はありませんか?
NHKの朝のテレビで「ミランダ.カー」も、いた事がある世界的下着のファッションショーのトップクラスのモデルは、世界的にロシア人もアメリカ人もフランス人も「蕎麦の実」のお粥を食べて体形を維持しているそうです。
蕎麦粉は糖質がゼロのわりに、ミネラルや栄養が豊富なのだそうです。

Posted by にゃんにゃん at 2017年06月29日 12:58 | 返信

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