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減薬のきっかけ

2017年06月30日(金)

産経新聞・減薬シリーズ第6回は「減薬のきっかけ」で書いた。→こちら
入退院時や施設入所時が、チャンスであると思う。
勇気を出して減薬の希望を担当医に伝えて欲しい。
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産経新聞・減薬シリーズ第6回  減薬のきっかけ
                入退院時や施設入所時がチャンス
 
 「なにかきっかけが無いと薬を減らせませんよ!」という患者さんの声をよく聞きます。そこで高血圧と糖尿病で近所のクリニックに、狭心症で専門病院に、そして脳梗塞後遺症と認知症で脳外科に通院している80代の認知症の人の話をします。3ケ所の医療機関にかかり合計17種類に膨らんだ多剤投与をなんとかしたい、と家族はずっと思っていたそうです。ある日、自宅で転倒して家族が救急車を要請したところ腰椎圧迫骨折の疑いで1ケ月間ほど病院に入院することになりました。家族は紙袋一杯の薬を持参して担当医に減薬の相談に乗って欲しいと嘆願しました。幸運にも担当医は内科系疾患のみならず簡単な怪我も診る総合診療のトレーニングを積んだ総合医でした。腰痛が強いため1週間ほど安静にしている間に担当医から病状説明の機会がありました。その席で引き続き減薬の相談に応じてくれました。まずそれぞれ2種類あった血圧と糖尿病の薬を1種類ずつに減らしました。コレステロールと尿酸の薬も「この際不要」となりました。2種類ずつ投与されていた血液サラサラの薬も睡眠薬も半分に減りました。環境の変化もあり不穏が激しいので興奮系の薬である抗認知症薬も中止になりました。こうして17種類の薬は6種類まで減りました。しかし新たに痛み止めと骨粗しょう症の薬が加わったので結局8種類になりました。それでも入院を契機に処方数が半分以下に減った上に抗認知症薬の中止で穏やかになったので家族は大喜び。このように何らかの理由で入院した時も減薬のチャンスです。

あるいは退院後に在宅医療に移行する時もチャンスです。退院前に必ず病棟内で「退院前カンファレンス」が開催され、私も出席します。退院後の生活を支えるためにケアマネさんや訪問看護師らも同席することになっています。家族が「減薬の相談」も予め担当医に申し出ていたので、10数種類もの薬をその席で半分に減薬できたこともありました。実は親切な担当医が入院中に各科の専門医と相談して10週種類の薬に優先順位をつけてくれていたのです。各専門医は医学会が定めた診療ガイドラインに従って処方します。しかしあくまでそれは標準指針にすぎず個別性や多剤投与回避が最大限に考慮されるべきです。そもそも減薬に「絶対」はありません。各専門医の意向や本人や家族の希望を総合して話し合いで決められるものだと考えます。密室で一方的に決めることには抵抗がある医師もいます。そうであれば退院前カンファレンスや退院後に自宅で開催されるケア会議など、多職種と本人・家族で自由に話し合える場があればそこが減薬のチャンスです。医師は減薬で何か不都合なことが起こらないか心配です。しかし複数の医師と多職種と本人・家族などみんなで話し合って決めたということなら、医者も気が楽なのです。

あるいは介護施設に入所する時も大きなチャンスです。私も施設に入所される人の主治医を依頼されることがありますが10種類以上の薬を持ち込む人は決して稀ではありません。施設に入所するということは薬を処方する医師を一元化することでもあります。病院でのカンファレンス同様、入所時にみんなで話あうことで減薬が容易になります。このようにもしさまざまな転機があれば、それは実は減薬のチャンスなのです。
 
 
キーワード 退院前カンファレンス
入院加療を終えて自宅療養になる場合、病院の担当医と在宅療養を担当する医師の間で患者情報を共有する会議が開催される。医師同志が直接話し合うことで療養生活へのスムーズな移行を目指す

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この記事へのコメント

本当に、何処に適切なお薬を、適切な量で出して下さるお医者さんが、いらっしゃるのか分かりませんね。
私は、鍼灸師会と言う組織を除名されました。理由は「参議院議員鴻池瑞祥先生を顧問にして(鍼灸医師法)を成就し貰うよう運動する。その為に鍼灸師一人一人が25万円をローンで寄付して、鴻池組に鍼灸会館を建設してもらって、運動を推進する」という政策に反対したから除名されたのです。
鍼灸師会を除名されて、鍼灸あんまマッサージ師会に貼っていた時に「介護保険と介護支援専門員」についての資料を見て試験を受けました。
ですから、鍼灸師会と言う組織に、除名されて良かったと思っています。
それでお医者さんも医師会に入っていないお医者さんに家族そろって診てもらうことになりました。
薬の件では本音が言いやすいと思います。
特に母のアリセプトの総領規定については、いろいろあったけれど、結局3ミリを1/4にして服用しました。晩年には進行性核上性麻痺になったかもしれませんが、91歳で「アルツハイマーでは無い」と神経内科で診断されました。
結果として、初めからアリセプトを飲まない方が良かったのかもしれませんが、私としては、こういう介護しかできませんでした。
名古屋に住んで河野先生の近所に住んでいて診察してもらったら、別の選択肢もあったかもしれません。

Posted by 匿名 at 2017年07月01日 05:16 | 返信

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