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がんこそピンピンコロリ

2017年07月24日(月)

月刊公論8月号には「がんの平穏死」で書かせて頂いた。→こちら
がんこそピンピンコロリできる。
最期まで食べて移動して人生を楽しむことができる病気。
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公論8月号   がんの平穏死
        最期まで食べて笑って普通に生活
 
最期まで女優だった野際さん 

6月13日、野際陽子さんが肺腺がんのため81歳で亡くなられた。二度の手術と三度の抗がん剤治療と並行して仕事もしながらの壮絶な三年間であったそうだ。野際さんの訃報を受け、どのワイドショーでも、「先月までドラマに出ていて、あんなにお元気そうだったのに!」という旨のコメントを多くの人がまるで事故か何かで突然死されたように発した。つまり、「死ぬ直前まで元気に仕事をこなしていたことが信じられない!」と言いたかったようだ。しかし野際さんは決して奇跡のがん患者だったわけではない。

多くのがん患者さんと接してきた私から見れば、がんで死ぬとはそういうことなのだ。急激に体力が低下するのは最後の一ヵ月、いや10日間程度だ。終わってから振り返れば本当にアッという間。介護認定を申請しても認定された時にはもう亡くなっているケースが少なくない。なかには亡くなる直前まで食べて会話しトイレに行く人はいくらでもいる。がんになっても可能であればなにか仕事ができる。自分らしい普通の生活を送っていたほうが、気力を保つことができるのだ。野際さんも最後まで女優として輝いておられた。たとえ末期がんであっても生涯現役でいられることを身をもって示された。もはや仕事とがん闘病の両立を諦める時代では無い、というメッセージである。

 
1週間前まで舞台に立った川島さん

 女優といえば、川島なお美さんの最期も多くの人の記憶にまだ新しいだろう。人間ドックで偶然に肝臓に1.5cm大の影が発見され精査の結果、胆管がんと判明したという。すぐに治療すべきであったが、別の医師を訪ねたところ「放置せよ」との指示があったという。果たして半年後には画像上腫瘍は2倍になったことは体積が8倍に成長したことを意味する。慌てて外科手術を受けた。手術自体は成功したかと思われたが再発。結局、手術の1年半後に帰らぬ人となった。享年54歳の若さだった。川島さんは亡くなる8日前までミュージカル舞台で主役を演じていた。余命1週間の体でありながらも踊りながら大きな声で歌っていた。もちろん体重はガタ落ちで誰の目にも死期が迫っていた。それでも彼女は舞台に命をかけた。女優として最期の最期まで舞台に立ち続ける道を選んだ。野際さんの生き方を見た時に、思わず川島さんの舞台を思い出したのは私だけではないだろう。

多くの人は、末期がん=最後は寝たきりになり苦しむのでは、と想像する。しかし在宅医療の現場で千人以上の“平穏死”に接してきた私から見れば、彼女たちは決して稀な例ではない。亡くなる直前まで仕事や旅行や外食を楽しんでいた人の顔が何人も浮かぶ。印象に残っている最近の2人のがん患者さん紹介させて頂く。

Aさんはまだ60歳台の肺がんの在宅患者さん。亡くなる半日前まで家族と外食し、6時間前は自宅で食べて、3時間前にトイレで用を足してから静かに旅立たれた。肺がんの在宅看取りの現場には酸素も吸引器も管など1本も無い。その様子はあるドキュメンタリー番組で放映された。また日本肺がん学会でも講演させて頂いた。しかし残念ながら私の講演に反応してくれた肺がん専門医はいなかった。
もう一人は70代の食道がんのBさんだ。がんで食道が閉塞して病院からはステント挿入や抗がん剤治療を勧められるも拒否。私に在宅緩和ケアを依頼して悠々自適な生活という道を選ばれた。病院からは余命1ケ月と宣告されるも、結局3ケ月半も生きられた。亡くなる2日前は家族に連れられて寿司を、前日は焼き肉を食べた。食道がんも枯れるので食べ物が通過するのだ。仕事の整理を終えた翌日、家族が見守るなか眠るように旅立たれた。

 
がんこそピンピンコロリ

 野際さんや川島さんは亡くなる直前まで女優として演じ続けた。あるいは、AさんやBさんも亡くなる直前まで多くはないが美味しいものを食べてトイレで排泄された。そしてまさにピンピンコロリ。これは一体どういうことなのか、答えは簡単だ。みなさん、“平穏死”であったのだ。

 平穏死とは石飛幸三医師の造語であるが、自然死、尊厳死と同義である。終末期以降の延命処置を断る一方、緩和ケアをしっかり受けた結果の最期である。たとえ肺がんであっても管一本ない綺麗な最期である。胃がんや大腸がん等のお腹のがんでも最期まで食べられるし腹水に苦しむことは無い。最期まで点滴をすると顔も体も浮腫みもがき苦しむ結果、管だらけになって溺れて死ぬことになる。残念ながら日本人の8割が病院のベッドの上で溺れ死んでいる。石飛先生は医者になって50年目に、私も10年目に平穏死に気がついた。しかし病院の医師の大半は一生、平穏死を見ることなく自分自身も管だらけで最期を迎えている。こう説明すれば多くの人の疑問が解けるかもしれない。いずれにせよ、がん療養は最期の10日間をどう支えるかに集約される。点滴はできるだけ控えて熟練した緩和ケアを受けるかに尽きる。詳しくは拙書「痛くない死に方」(ブックマン社)を参考にして欲しい。

 全国各地で1000回以上講演してきたが、どこで聞いても8割の人が「最期は認知症よりがんがいい」と答える。認知症ががんを上回ったのは鹿児島県鹿屋市だけであった。いかに認知症啓発に力を入れているのかが伺えるが、今も認知症への偏見が続くなか、認知症も悪くはないよという講演も続けている。だから最近の演題は「がん、認知症、死ぬまでハッピー」が多い。ハッピーとは「食べて笑って普通に生活できる」こと。それが人間の尊厳。「そんな綺麗ごと言って」と同業者に馬鹿にされるが、私たちの日常なのだからしょうがない。むろん、どちらかを選べるわけでもない。どちらに転んでも最期は「枯れる」ことを受け入れられるかどうかである。そしてがんは直前まで好きな生活を楽しむことができる病気なのだ。
 

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